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やっぱ母艦かな

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やっぱ母艦かな  ◆i7XcZU0oTM





 真っ暗で何も見えない。
 感じるのは、さっきからゴウゴウ唸っている風だけだ。
 この風は何なんだ?
 何で俺はここにいるんだ?
 俺は、どうなってしまうんだ?
 こんな、何処かも分からねぇような場所で、死ぬのか?
 ……いいや、そう言う訳にはいかないだろ――――常識的に考えて。
 俺は、死ぬ訳にはいかねえ……。
 だが、自分から進んで、人殺しになる気も、ない……。

「――――ない夫、どうしたんだお? 顔色が悪いお」
「え?」
「もしかして風邪かお? ない夫が風邪引くなんて、珍しいこともあるもんだおwww」
「わ、笑ってんじゃねえよ!」

 おいおい、何で急にこいつが出てくるんだよ。
 こいつも近くにいたのか?
 ――――風は、今も強く吹いている。
 俺を、吹き飛ばしてしまえ……そんな、意思が宿っているかの様に。
 一体、この風は何なんだよ。

「ない夫…………お前は、どうするつもりなんだお…………」
「おい、何言ってるんだ」

 風に吹き飛ばされる塵のように、やる夫の体が消えて行く。
 おい、勝手に行くなよ……!行かないでくれよ!!

「ま、待て、やる夫! 待ってくれ――――っ!!」





「うああぁぁぁっ!?」

 急に、意識が現実に引き戻される。
 地面が、揺れた。そのお陰で、俺は現実に引き戻されたようだ。
 と言う事は……あれは、夢だったのか。
 夢で、良かった。
 心底、ホッとする。
 ホッとしたのもつかの間、ここはどこなんだ、と言う真っ当な疑問が浮かぶ。
 ……陸地のような気もするが、何だかおかしい。
 波の音が、聞こえてくる。
 と言う事は、ここは海の近くなのか。
 だったら、何で地面は鉄で出来てるんだ。
 砂か、あってもコンクリだろ。常識的に考えて……。

「こうも暗くちゃどうしようもねぇな。確か、支給品とやらがあったはずだ……」

 目を凝らしながら、鞄からランタンを取り出す。これで、明るくなった。
 しかし、明るくなったところで、結局ここがどこなのか良く分から……。




(ちょっと……)




 ――――。何だ、今のは。
 声が、聞こえた?
 いや、聞こえたと言うより、頭の中に直接……。

「誰だ!?」
(何で、あなた……私の上に、勝手に乗ってるんですか!!)
「は?」

 上に乗ってる?
 どういう意味か、さっぱり分からん。
 一応足元を見てみたが、誰もいない。
 だが、あの声は間違い無く、俺の頭の中に響いてきた。
 気のせいとかじゃない、はずだ。

「お、お前は何処にいるんだ!」
(だから、あなたの下ですよ……別に、痛いとかそう言う訳じゃないんですけど……)
「下って言っても、俺の足元には地面しかないぞ」
(わたしは航空母艦・加賀です。あなた今、わたしの飛行甲板部分にいるんですよ)
「……??」

 良く分からん。
 航空母艦?飛行甲板?……お前は何を言っているんだ。母艦の知識なんて、俺には無い。
 そんな事いきなり言われても、分かる訳ないだろ……常識的に考えて。
 ……そもそも、こいつは何で喋る事が出来るんだ。
 まさか、人工知能搭載のハイテク母艦!?……な訳ないか。ゲームや漫画の世界じゃあるまいし。

「お前、何で喋れるんだ……?」
(そんなの、わたしが聞きたいくらいです……。気が付いたら喋れるようになってましたからね。
 ――――と言っても、あなたのように言葉を発することはできないようですが)
「……どうなってんだ」

 しょっぱなから、常識とかけ離れてやがる……。
 いや、そもそも殺し合いなんて時点で、常識はぶっ壊れてたのか?
 ……まあ、それを今考えてもどうしようも無い。

(どうなってるのか、わたしも知りたいですよ。何か、知っている事があれば、教えていただけませんか……?
 ……えっと、お名前は?)
「俺か。俺は……まあ、やらない夫とでも呼んでくれ」
(そうですか。よろしくお願いしますね、やらない夫さん。……さて、知っていることを教えて下さい)
「いや、そう言ってもな。ここに来て、最初に出会ったのがお前だったからな。特に何もないぞ。
 まぁ……俺の友達のことなら、話せるが」
(お友達、ですか?)
「あぁ……やる夫って言ってな……多分、あいつもここに連れてこられてる、と思う」
(……どうしてです)

「…………まぁ、まだいるって決まった訳じゃ無いが。とりあえず、あいつはアレだ。馬鹿だ。
 馬鹿だけど、命に関わるような馬鹿はしないはずだ。……この殺し合いに、乗るとかな。
 もしくは、こんな異常事態の中で、ふざけ回るとか……。流石に常識はあると、俺は信じてるよ」

 何で、俺はこうも熱く語ってんだ?
 ま、あいつの事が心配じゃない訳じゃないが。
 ……流石に、まだ殺されちゃいないよな?

(そうですか。話を聞く限り、かなり親しい仲のようですね)
「親友だしな」
(……他にも、何か?)
「他は……特にないな……さっきも言ったが、最初に会ったのがお前なんだ。他の奴の事は知らない」
(どうも、ありがとうございました……お返しに、わたしも情報を話したい所ですが……わたしも、特に
 何か知っている訳じゃないんで、申し訳ないですが……)

 ま、俺も大した事を話した訳じゃないから、別にいか。
 ……しかし、改めて辺りを見回してみると、マジで広いな。
 母艦ってのは、こんなに大きいのか。
 ……待てよ?こいつがいれば、ひろゆきを倒すのなんて、簡単じゃないか?
 これだけ大きけりゃ、流石に武装してるだろう。

「おい、この船には、武装はあるのか?」
(ええ。20cm単装砲、12.7cm連装高角砲、25mm連装機銃がある……にはあるんですが……。
 何故か、全て弾切れしてるんです。確かに、装填されていたはずなんですが……。それと、
 12.7cm連装高角砲が、使えないようです)
「本当か?」
(ええ。わたしの体の事ですから、分かります。何なら、全部チェックしますか)
「いいや、やめておこう。……使えないってのは、どういう意味でなんだ」
(どうやら、何者かの手によって外されているようです)








 さっきのやり取りから数分。
 俺は、その間に鞄を調べておいた。
 ……加賀に、鞄の事を聞いてみたが、よくわからないらしい。
 もしかしたら船内のどこかにあるかも、とか言っていたが……この広さじゃ、探す気になれない。

(そう言えば、あなたは武装しなくていいんですか)
「今の所は必要ない。お前に乗っている間はな……」
(それはどういう意味です?)
「変な意味じゃない。これ、見てみろ」

 PDAの『オーナー情報』を開く。
 俺の忍法帳レベル――――当然の事だが、0だ。
 そして、隅に記載されている現在地。

「D-6……これが、俺達のいる場所だろう。地図と合わせて見れば……完全に、海の上じゃないか。
 ……とにかく、陸地に行かないとダメだ。こんな海の上じゃ、誰も来ないだろ」
(じゃあ、陸地に向かいましょうか)
「単純に向かうってだけじゃダメだ……。何処に向かうか、はっきりしないとな」

 一体、何処に向かうのがいいか?
 常識的に考えるなら……俺が、陸地に降りる事の出来る様な場所。
 船着場か何かに行きたいが……。
 もし向かったとして、加賀のこの巨体が入るかどうか。
 ……最悪、ギリギリまで近づいて、俺が海に飛び降りる、って事も……出来る訳ねえだろ。
 こんなとこから飛び降りたら、下が海とは言え無事じゃ済まない。
 船から飛び降りて、打ち所が悪くて死ぬ……なんて事態は、絶対に避けたいからな。

「……不安要素はあるが、船着場に向かおう」
(どうやら、船着場は3箇所あるようですよ? どこに向かいます?)
「そうだな……」

 船着場の場所は、B-5、C-6、そしてF-6。
 ……C-6はないな。大して、何かある訳でもなさそうだしな。
 余裕があるなら、行ってもいいが……そんな余裕があるかどうか。
 次は、F-6だ。
 近くに、温泉があるようだが……。
 それ以外は、特に何もない。まあ、ここも余裕があれば行く事にしよう。
 残りは、B-5だ。
 ……前の2つが「保留」なら、必然的にここしかないじゃないか。
 だが、ここは悪くないぞ。ここに行けば、陸地の大部分に向かえるじゃないか。
 ……向かうとなれば、加賀を置いて行く事になるが。
 いくら喋れるとはいえ、陸を進む事はできないだろ?

「……よし、加賀。B-5に向かってくれ。どれくらいかかるか、分かるか?」
(ちょっと時間がかかりますね……何だか、航行スピードも落ちてるようなんです)
「そうか……まあ、辿り着けるならいいさ」

 これからどうなるのか。俺は、どうなるのか。その答えは、果たして見つかるのか。
 まだ、何も分からない……。
 だが、いつかは……辿り着ける、かもしれない。


【D-6/1日目・深夜】
【やらない夫@ニュー速VIP】
[状態]:健康、常識的
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品(確認済み)×0~3
[思考・状況]
基本:殺し合う気なんてないだろ、常識的に考えて……
1:とりあえず、加賀に乗って今はB-5の船着場へ
2:やる夫が心配

【加賀@軍事】
[状態]:損傷無し、燃料満タン
[装備]:20cm単射砲(0/1)×10、25mm連装機銃(0/15)×10
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗る気はないけれど……
1:やらない夫さんと共に、B-5に向かう
2:どこかで弾薬を補給できれば……
※制限により、全ての弾薬と12.7cm連装高角砲が没収され、航行速度が低下しています
※他にも制限があるかは不明です


≪支給品紹介≫
【20cm単射砲@現実】
加賀のメイン装備。
射程約30000mと言うとんでも無い射程を誇る。

【25mm連装機銃@現実】
加賀のサブ装備。
こちらも射程が広い(約5500m)。


No.16:思えば遠くへ来たもんだ 時系列順 No.18:バトルロワイアル?サバンナでは日常茶飯事だぜ!
No.16:思えば遠くへ来たもんだ 投下順 No.18:バトルロワイアル?サバンナでは日常茶飯事だぜ!
加賀 No.34:こんな加賀は嫌だ! ~安価でトランスフォームする~
No.00:オープニング やらない夫 No.34:こんな加賀は嫌だ! ~安価でトランスフォームする~

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