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心の闇  ◆i7XcZU0oTM




 少し、夜の闇が薄くなってきた頃。
 街中を歩く、4人プラス1台。
 やはり、殺し合いの最中とだけあって、緊張感に包まれている……かに見えた。
 だが、その中でも。
 ある意味、異彩を放っている人物が、1人がいた。

「うーん、やっぱり……いや……」
「……まださっきのこと考えてるのかよ……」
「だって、あんなオイシイ場面、忘れろって方が酷だしー」
「勘弁してくれよ……」

 そう、801の姐さんである。
 残念ながら現実では未遂に終わったが、801の姐さんの脳内では、ドクオ×照英の妄想が危険な領域まで達していた。
 それこそ、一般人が内容を知れば、即座に引いてしまう程の濃厚な……。
 そんな様子に呆れたように、ドクオが言う。

「この状況、理解してるのか? そんな呑気な事考えてる場合じゃないだろ」
「だからこそだよー。こんな状況だからこそ、こうやってリラックスさせようと思ってさー」
「じゃあさっきのはなんだったんだよ……どう考えても、自分の欲のためにやったろ!」
「まあまあ、固い事言わないで……」
「『固い事』じゃねーよ……普通だろ……」

 相変わらずの解答に、ドクオは溜息を付く。
 ……下手したら、命が無くなる前に、俺の後ろの童貞が無くなるんじゃないか。
 そんな心配が、ドクオの心を刺激する。

「でも、何だか羨ましいです。……僕なんか、怖くてどうしようもないのに……」

 つい、照英の口から弱音が零れる。

「……本音を言えば、私も怖いよ……」

 ……別に"現状を理解していない"から妄想に耽っている訳ではない。
 "現状を理解した上で"妄想に耽っているのだ。
 本名は思い出せないものの、あくまで801の姐さんは2chの住人。つまり、一般人に分類される。
 ……心の中では他人と同様に、死ぬのを恐れている。
 だが、自棄になっても何にもならない。ドクオに出会う前に、少し考えていたのだ。
 自分には、「生きて帰って同人誌を書く」と言う目標がある。
 それを、果たすために、最初は殺し合いに乗ろうかとも思っていた。
 だが、どうしてもそんな"勇気"を、801の姐さんは持てなかった。
 ……今考えてみれば、そこで殺し合いに乗らなくて良かった。

「でも、立ち止まっててもどうしようもないし! だから、前向きに生きた方がいいじゃん」
「……そうですね!」

 照英の顔に、笑顔が浮かぶ。
 ……まだまだ幾多の困難は待ち受けているだろうが、諦める訳にはいかない。
 ――――自分たちが、こんな所で死ななきゃいけない理由なんてない。
 だからこそ、生きなければならない。
 そして……生きて、帰らなければならない。












「……ん? あれって……」

 照英が、突然声を上げて一点を指差す。
 そこには……誰でも知っているような、スーパーマーケットのチェーン店があった。
 ……店舗は大きく、スーパー本体だけでなく他の店舗も附属しているようだ。
 もちろん、駐車場も広々としている。

「ふぅん、スーパーかぁ……ちょっと、行ってみない?」
「僕は構いませんよ……お婆さんは?」
「わしも構わぬ」
「よーし、それじゃ……T-72神には駐車場で待っててもらうとして……ドク君はどうするの?」
「え、俺?」

 素っ頓狂な声を上げ、自分を指差す。

「私たちと一緒に行く? それとも、残る?」
「あ、いや、じゃ、残るわ」
「そう……もったいないなぁ」

 何がだよ……と言いかけたが、何とか寸での所で呑み込む。
 下手に何か言えば、またネタにされそうだ。

(建物の中では、何が起こるか分かりません。できれば、私がついて行きたいが……その代わりと言っては何ですが、
 私の支給品を使いなさい。中身の確認はしていないので、役に立つ物があるかは分かりませんが……)
「ありがとう、助かるわー……あ、私も残りの支給品、2つ分見てなかったなぁ」

 そう言うや否や、猛スピードでT-72神の中に入りこむ801の姐さん。
 ……中から感嘆の声が漏れてくる。
 まさか、戦車をもネタにするのか……?
 だが、別にそんなことは無く、少し時間をおいた後に鞄を抱えて出て来た。

「入ってたのは……煙幕弾とダイヤモンドの指輪だったけど、私の分は……良く分からない物だったよ」
「……指輪はともかく、煙幕弾は役に立つんじゃないか」
「なら、ドク君が持ちなよー。何かの役に立つかもしれないしさ」

 結局、5つあった内の2つを俺が持って、残りは姐さんたちが持つことになった。
 その後、軽く手を振って、姐さんたちはスーパーの中に入っていった。

「……」

 急に、静かになった気がする。まあ、当然と言えば当然か……。
 と言うか、殺し合いの最中なのに騒がしかった今までの方がおかしいような気がする。
 ……まあ、一人でビクビクしながら歩くよりは、まだマシかもしれないが。
 その時、ふと頭に浮かんだ事があった。
 ……もし、本当に殺し合う事になったらどうなる?
 今はまだ、運良く誰にも襲われてはいないが、いつかは襲われるかもしれない。
 そうなったら、俺はどうなる?少なくとも俺は……戦えない。
 俺は所詮、とりえも何もない男だ。そんな俺に、何が出来ると言うんだ。
 頭が回る訳でもない。腕っ節が強い訳でもない。統率力がある訳でもない。
 そんな俺に…………何が…………。

「畜生……何で俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ……」

 頭を抱え、肩を落とす。
 本当、何で俺がこんな目に。
 俺は、何も悪い事なんかしてないじゃないか。
 特に、こんな殺し合いに巻き込まれるような事なんて、何もしてないじゃないか。
 なのに、何故。もう、訳分かんねえよ。
 ただでさえ暗い気分が、さらに淀んでいく。
 あぁ……憂鬱だ。

「もう最悪だ……もうどうしようもねえ……」
(そんなに悲観することはない、人の子よ)

 突然、T-72神が話しかけて来た。
 いったい、何なんだ。
 こんな状況で、悲観的にならない方がおかしいだろ……。
 いつ死ぬか分からないのに、楽観的でいられるかよ。

(今の所、弾薬はありませんが……手に入れた暁には、必ずやひろゆきを粛清して……)

 ……そんなものはうんざりだ。
 具体的な方法もないくせに、そんなこと言うなよ。
 そんなことは、方法を見付けてから言ってくれよ。
 ……何だか腹が立ってきた。
 そう思った途端、自分でも意識せずに、つい本音が口から飛び出していた。

「……その弾薬をどうやって手に入れるってんだ。探し回るのか? ……何処にあるのかわからないのに、
 そんなこと、出来る訳ないだろ! そもそも、『ひろゆきを倒す』って言ってるが、ひろゆきの居場所知ってるのか!?
 それも知らないで、そんなこと言ってんのかよ!? 無責任にも程があるだろ!!」
(それは……)
「……ハァ、ハァ……」

 全て吐き出して、荒く息を付く。
 ……ここに来て、初めて本音を言ったような気がする。

(…………)
「……ふっ」

 胸の内を少し吐き出したせいか、頭が幾分か冷えた。
 それと同時に、何となく後ろめたさも、何故か感じてしまった。

(……確かに、少々無謀とも言える計画です)
「……少々どころじゃないだろ……」

 ボソッと呟いたこの一言は、幸運にもT-72神には聞こえなかったようだ。
 結果、それに気付かずにT-72神は話を続ける。

(…………ですが、今は……この『無謀』に賭けるしか、方法がないのです)
「…………そうか」

 何か、余計に鬱になった気がしてきた。
 結局、何の解決案も無く、ただ俺の気分が余計に沈んだだけ。
 ……いいことなんか何もありゃしない。

「……はぁ……」

 もう一度、溜息をつく。……さっきよりも、溜息が重い気がする。
 当たり散らした所で、状況が良くなる訳でもない。
 T-72神を責めても、どうにもならない。
 そんなことは重々承知している。
 だだ、それでも愚痴りたい時だってあるだろ。
 俺なんか、精々こうやって愚痴ってるのが精一杯なんだ。
 ――――俺にできることなんか、何もねえんだよ。












(……大丈夫かなぁ、ドク君)

 何だか、不安だ。
 一応、T-72神と一緒に待たせてあるから、少しは安全だろうけど。
 いくら弾が無くて戦えないとは言え、まかりなりにも戦車だ。
 少しくらいなら、攻撃に耐えられるはず。

「かなり広いですね……」

 その心配をよそに、照英さんはしきりに辺りを見回している。

「こう広いと、誰かが潜んでいても不思議ではないのう」
「ですね……気をつけて行きましょう」

 もし、襲われでもしたら……。
 嫌なイメージが、頭によぎる。
 振り払おうにも、こういう物に限ってしっかりと頭に残るんだから……。
 でも、実際襲われでもしたら、どうなるだろうか?
 今の所、武器になり得る物を持ってるのは、私と照英さんくらいだ。
 でも、もし相手が銃でも持ってれば……。とても太刀打ちできそうにない。
 できれば、誰もいないでいてくれればいいなぁ。
 ……そう言う訳にも行かないかもしれないけど。

(……置いてある物は、どれもよくあるものばっかりかぁ)

 改めて辺りを見てみると、本当に何の変哲もないスーパーだ。
 食料品やら何やらが、普通に陳列されている。
 その内の1つを手に取ってみるが、特に変わった所もない。
 ……至って普通だ。


 そして、少しの時間が流れた後。

「…………」
「特に、何もありませんでしたね……」

 事務室やら業務員用の更衣室なども見て回ったが、結果は変わらず。
 ……なんだか、徒労に終わってしまった感が強いなあ。
 でも、危険な目に遭わなかっただけ、まだいいか。

「そろそろ、ドク君達の所に戻ろっか。何も無かったって事も、一応教えてあげないとね」

 そう思って、出口に歩き出した時だった。

「……何か、変な音がしませんでしたか?」

 確かに、変な音がした。
 いや……今も、その"音"は聞こえている!
 その音は……2人が待つ駐車場から聞こえてくる……。
 ――――何だか、嫌な予感がする。
 というか、とんでも無い事が起こっているに違いない……!

「……急がなきゃ!」










(まだ帰って来ないな……)

 姐さん達が、スーパー内に入っていってから結構経った。
 と言っても、具体的にどんだけ経っているかは良く分からないが。
 どっちにしろ、とっとと帰って来て欲しいもんだ。
 さっきのやり取りの後から、T-72神はずっと黙ったままなんだ。
 このままだと、どうにも気まずくていけない……。
 とはいえ、こっちから話題を振る気にもなれない。
 別に、T-72神の過去やら何やらを知りたい訳でもないし。

「……2ちゃんでも見るか……」

 やる事なんてない。
 せめて、スレに書き込めればマシなんだが、それも出来ないんじゃ、出来ることは限られる。
 結局、特に目的も無く板を巡り、スレを巡るくらいしかできない。
 ……相変わらず、下らないスレばっかだな。
 俺はいつ死ぬか分かんねぇってのに、こいつらは呑気に無駄な時間を過ごしてやがる。
 ――――いつもなら馬鹿にするような奴らでも、今は羨ましいよ。
 少なくとも、俺みたいに命の危険に晒されてる訳じゃねえんだから。
 ……本当なら、俺も今頃は暖かい布団の中で眠ってるって言うのに。
 くそ、何で俺がこんなことに……。

(あぁ……もう最悪だよ……)

 どんどん鬱が酷くなってきた……。
 もう、どうすりゃあいいんだ。
 そう思っていた時だった。

「――――おや、こんな所に人が」
「……何だお前」

 誰かが、歩いてくる。
 街灯に照らされたその姿は……どこかで見た事のあるような中年の男だった。
 スーツの袖には血を滲ませ、何を考えているか分からない表情でこちらに近づいてくる。
 一体、こいつは何者だ?
 どう考えても、まともな奴じゃなさそうだが……。

「ほう、これは……戦車ですか。あなたの支給品ですか? だとしたら、ずいぶん羨ましいですねえ。
 私も欲しいですよ」
「いや、これは……」
(……残念ながら、私は支給品ではありません)

 俺が答えようとしたが、そこにT-72神が割り込む。

「では、私と同じく参加者の1人ですか……これは面白い……なら……」
「おい、一人で何ブツブツ言ってんだ?」

 俺の問いにも答えずに、中年の男は何やらブツブツ呟いている。
 ……何だよ、また変な野郎なのか?
 もうこれ以上変人が増えるのは勘弁して貰いたいんだが。

「――――さあ、出てきなさい」

 そう言うと、男は何か球のようなものを取り出し、その場に放り投げる。
 すると……光と共に、何かが球から飛び出してきた!

「……どうです、この姿。美しいでしょう」

 ……何を言っているんだこいつは。
 こんな、四足歩行の何とも言えないバケモノが、美しいだって?
 一般的な感性を持ってるか怪しい俺でも、そうじゃないと思える。
 しかし……こいつは、強そうだ。
 威圧感とでも言えばいいのか、そんな物をこいつからひしひしと感じる。

「何言ってるんだ……ふざけてるのか」
「ふざける? ご冗談を。私は至って真面目ですよ」

 ……どこをどう見れば真面目なんだ。

(……我が名はT-72神。汝に問う。私と共に闘う意思はあるか?)
「誠に残念ですが、そのお誘いは丁重にお断りします。私には、私の『仕事』があるので。
 ――――このネメアと共に、優勝すると言う仕事がね」

 と言う事は……こいつ、殺し合いに乗ってるのか!?
 だとしたらヤバい!
 とてもじゃないが、こんな化け物相手に戦える訳がない。
 ……一応、武器みたいな物はあるが、こんなもんじゃあいつは倒せない。

(……ならば、ここで汝を粛清する!)
「いいでしょう、やってご覧なさい。……できるものならね。ネメア、アイアンヘッド」

 男がそう言うと、化け物は大きく跳躍し……T-72神に攻撃を仕掛けた!
 だが、意外にもバックでかわす。

「ほう……戦車の癖に、小回りが効くんですね! ……もう一回、アイアンヘッド!」

 ここで、俺の頭の中にある考えが浮かぶ。
 ――――今、あいつの意識はT-72神に向いている。
 なら……それを利用して、ここから逃げ出せるんじゃないか?

(うぐっ……!)
「ほほう……直撃は避けましたか。ですが、その美しいボディがヘコみましたよ?」
(この程度……損傷の内に入らないッ!)

 幸いにも、T-72神自身も戦いに集中している。
 こんな手強い相手をしている時に、俺なんかを気にかけてたらやられるからな。
 その選択は、当然とも言えるか。
 とにかく……逃げ出すなら今しかない!

「くうっ……!」

 そこからの行動は素早かった。
 持っていた鞄を素早く背負い、あいつらと真反対の方向に走る。
 …………これでいい。
 これで、いい。
 俺は死にたくないんだ。
 死にたくないだけだ。




















「まさか、気づいていないとでも?」




















「え……」

 その声に反応して振り返った時。
 もう、その時には全てが遅かった。

「――――メタルクロー」

 化け物の爪が、いとも簡単に、俺の服を引き裂く。
 そのすぐ下にある、俺の体も。
 まるで、紙でも破るかの如く。
 あっさりと、切り裂かれた。

(ドクオ……!!)
「うぐ、あ」

 その場に、崩れ落ちる。
 何か、生温かい液体が、俺の体から……流れ出てる……。
 ああ、そうか。
 俺の血か。

「痛、え……こん、なに、痛いなんて」

 死ぬって、こんなにも苦しくて、辛くて、痛い物なのか。
 今まで、人生に絶望して自殺を図ったこともあったけど、そんなの目じゃないな。
 まあ、いままでと違って、今度は本当に死ぬんだから、苦しいのは当然か。
 ああ、でも何か急に痛く無くなってきたな。
 多分、大量出血で意識がヤバいんだろう。
 ……何で、こんな時だけ頭が回るんだ。
 この頭の回転の良さが、もっと前に発揮できてれば、俺も変われてたかもな。
 今更、そんなこと考えても、無駄だけどさ。

「く、そ………………」

 今までの人生、面倒なことばっかりだったな。
 だけど、それももう少しで終わる。
 それと同時に、この殺し合いからも解放される訳だ。
 ……やっと終わるのか。
 ここに来てからそんなに時間は経ってないはずだが、ずいぶん長かった気がするな。

「………………こんなとこで、死ぬなんてなあ………………」

 もう、体も動きゃしない。
 まあ、今更動いた所でもうどうしようもねえけど。
 それなら、諦めて死んだ方がいいかもな。
 あ、でも未練も無くはないな。
 童貞のまま、死ぬことになるのがなあ……。今更どうしようもねぇけど。
 何か、考えるのももう面倒だ。

「……ドクオ殿……」

 ん?
 今、何か声が聞こえたような。
 何だよ、聞こえない。
 誰かが、どっか遠く離れた場所で話してる。
 聞き取れねえ。
 ……まあ、もうどうでもいいか。

「あー…………マンドクセ…………」

 倦怠感の中、俺は、深い闇へと堕ちていった……。












「……そんな……」

 目の前に広がる光景に、思わず息を飲む。
 謎の人物と生き物に向かいあっているT-72神。
 そして……血の海に倒れる、ドクオ君の姿。

「ドクオ殿!」
(来てはいけません!!)

 思わず駆け寄ろうとしたお婆さんを、T-72神が制止する。
 しかし、その制止を振り切り、そのまま倒れているドクオ君の傍に駆け寄る!

「お仲間が注意してくださったのに……行きなさい、ネメア」

 一瞬の出来事だった。
 何かが、猛スピードでお婆さんに突っ込んできて……。
 ――――そのまま、撥ね飛ばした。
 それだけでは終わらずに、地面へと打ち付けられたお婆さんを……。

「――――この程度ならば、技を使う必要もありませんね」




 ――――あっけなく、踏みつぶした。




「お、お婆さん……!」
「おっと、動かない方が良いですよ? ……あのお婆さんのようになりたいのなら、話は別ですがね」

 走り出そうとしていた足が、止まる。

「……今の一撃……即死には至らずとも、あの様子なら遅かれ早かれ死ぬでしょう」
「ちょっと……今、自分が何をしたか分かってる!?」

 お姐さんの怒声が飛ぶ。
 しかし、その怒りを嘲笑うかのように、男性は答える。

「フフフ、まあそう怒らずに……」
「こんなことされて、怒らない方がおかしいって!!」
「怒りは冷静さを失わせます。落ち着いた方が良いですよ?」
「そうねぇ……あんたを一発殴れば、少しは落ち付けるかもね!」
「これはこれは、相当御怒りのようで…………2人も殺害したことですし、私は退散するとしましょう。
 ここでやりあって、無駄に体力を消費するのは、私とネメア共々、得策ではないので」

 こうしている間も……あの化け物が、僕達を睨み付けている。
 僕も、お姐さんも、T-72神でさえ、身動きがとれない。
 ……怖い。
 お婆さんや、ドクオ君を殺された怒りや恨みがあるはずなのに。
 真っ先に出て来た感情は、"恐怖"だった。

「それでは……さようなら。……ネメア、追撃されないように3人を見張っていなさい」

 悠々と、男性は立ち去っていく。
 ……そして、男性の姿が消えた頃、化け物も走り去っていった。












 静寂。

「…………」
「…………」
(…………)

 誰も、何も言えなかった。
 誰もが、心に後悔を抱える結果になった。
 ただ、2人の亡骸の前で、立ち尽くすしかなかった。

何故、ドクオ君が、お婆さんが死ななきゃならないんだ……! 僕が、しっかりしていれば……!」

 照英が、涙を流しながらその場にへたり込む。

(責任は…………私にあります)

 T-72神も、見た目では分からないが、自身を責めて項垂れる。
 ……T-72神の不注意も、確かにこの惨事の原因と言えなくもない。
 だが、原因は1つとは限らない。
 もしかしたら、あの時ドクオが逃走を図らなかったら。
 図ったとしても、店舗の方に向かったとしたら。
 そもそも、内部を調べずにここを通り過ぎていれば。
 ……可能性の話をしたら、切りが無い。
 重苦しい雰囲気の中、801の姐さんが口を開いた。

「………………ねえ、2人とも。そんなに、自分を責めないでよ」
「でも……」
「考えてみれば、悪いのはドク君とお婆さんを殺したあいつだし、元を辿れば、ひろゆきがこんな事しなければ、
 こんな事にもならなかったんだから……だから、自分を責めないでよ」
「……」

 そう語る801の姐さんの目にも、涙が。
 そうやって考えを切り替えて割り切ろうとしても、やっぱり悲しい。
 短い付き合いではあったものの、かけがえのない命。
 失われてからでは、もうどうしようもない。

「とりあえず……こんな所に放置してちゃかわいそうだよ。だから……きちんと、埋めてあげよう」
「……はい」
(……私も、協力しましょう)




【ドクオ@AA 死亡】
【麦茶ばあちゃん@ニュー速VIP 死亡】

【残り 53人】



【B-2・スーパー駐車場/1日目・早朝】
【801の姐さん@801】
[状態]:健康、悲しみ
[装備]:グロック17(16/17)
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品×2(801の姐さん視点で役に立ちそうに無い物)
[思考・状況]
基本:生き残って同人誌を描く
1:とりあえず、2人を埋葬する
2:ドク君……お婆さん……

【照英@ニュー速VIP】
[状態]:健康、不安、悲しみ
[装備]:金属バット@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、冷蔵庫とスク水@ニュー速VIP、サーフボード@寺生まれのTさん
[思考・状況]
基本:殺し合う気は無い。皆で生きて帰る
1:……
2:いざ闘うとなると、やっていける自信がない……
3:誰も死なないで済む……はずなのに……

【T-72神@軍事】
[状態]:装甲の一部にヘコミ、燃料満タン、カリスマ全開、悲しみ
[装備]:125ミリ2A46M滑空砲(0/45)、12.7ミリNSVT重機関銃(0/50)
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、煙幕弾@現実×3、親のダイヤの結婚指輪のネックレス@ネトゲ実況
[思考・状況]
基本:人民の敵たるひろゆきを粛清し、殺し合いを粉砕する
1:……
2:私は、保護対象を守れなかった……
3:弾が欲しい……
※制限により、主砲の威力と装甲の防御力が通常のT-72と同レベルにまで下がっています。
※制限により、砲弾及び銃弾は没収されました。













「……戻りなさい、ネメア」

 ボールに、ネメアを戻す。
 ……常時出しっぱなしにしておくのも、あまり意味はない。

(…………予想外だった)

 最初は、私のスキを突こうとして、逃げ出した情けない男のみを殺害してから撤退しようと思っていた。
 ……最初の一撃で、あの戦車を破壊するのは骨が折れると判断したからだ。
 それに、あの発言――――私と共に闘う意思があるか。
 間違い無く、殺し合いに反抗しようとする者の言葉だ。なら、最初から「協力」を申し出る必要はない。
 しかし、運の悪い事に、仲間であろう連中が出て来てくれたお陰で、もう1人殺害することになった。
 私の『仕事』のためだと割り切り、もう1人殺害しておくことに決めて……それを決行した。
 この調子で、減らしていけば……私が優勝するのは、時間の問題だ。
 もちろん、殺し合いに乗っているのは私だけではないだろう。
 他の殺し合いに乗っている連中も、今頃は殺し合っている最中だろう。
 しかし……このネメアがいる限り、私の負けは有り得ない。
 ――――それに、ちゃんと"切り札"だってあるのだ。
 だが……今の所懸念材料が、1つだけある。

(……腕の傷の、まともな手当てをしなければ)

 確か、まだ地図を見ていなかったな。
 ……何か、役に立つ場所が載っているかもしれない。

「どれどれ……病院がありますが、ここからは少々距離が離れていますね……」

 よく見れば、先程までいた公園の方が病院に近かったようだ。
 ……もう少し早く気がつけばよかったのだが。
 まあ、こちらに向かった事で、得られたメリットもあったから、良しとしよう。

(さて……行きましょうか……)

 痛む腕を抑え、歩き出す。
 ……『仕事』の為にも、私は立ち止まってなんかいられない。



【B-2・スーパー付近/1日目・早朝】
【クタタン@ゲームハード】
[状態]:右腕に切り傷(中)、健康
[装備]:ネメア@ポケットモンスターアルタイル・シリウス
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=02】)、ちくわ大明神@コピペ、不明支給品(0~1)
[思考・状況]
基本:優勝し、世界を美しいモノへ創り上げる
1:相手を見極め、出来るならば他の参加者に「協力」を呼びかける
2:いわっちには自分の思想を理解してもらいたい


【ネメア@ポケットモンスターアルタイル・シリウス】
[状態]:支給品、健康
[思考・状況]
基本:クタタンの指示に従う
※使える技は、アイアンヘッド、悪の波動、メタルクローの他にもう1つあるようです。
 何があるかは次の書き手の方にお任せします。


≪支給品紹介≫
【煙幕弾@現実】
5つセットで支給された。
ピンを抜いて投げると、一定範囲に煙幕を張り、視界を遮る。
煙幕内に入ると咳き込むかもしれない。

【親のダイヤの結婚指輪のネックレス@ネトゲ実況】
ブロントさんの親の物。
これを指に嵌めて殴ると多分奥歯が揺れるくらいの威力があるらしい。
だが大した武器にはならない。


50話時点 現在位置地図


No.45:カルネアデスの板 時系列順 No.52:おっぱいなんて、ただの脂肪の塊だろ
No.49:銭闘民族の特徴でおまんがな 投下順 No.51:メンタルヘルス
No.31:8→0→1 完成でスーパー戦隊のブルーとピンクタイム T-72神 No.72:戦争を知らない大人たち
No.31:8→0→1 完成でスーパー戦隊のブルーとピンクタイム ドクオ 死亡
No.31:8→0→1 完成でスーパー戦隊のブルーとピンクタイム 801の姐さん No.72:戦争を知らない大人たち
No.31:8→0→1 完成でスーパー戦隊のブルーとピンクタイム 照英 No.72:戦争を知らない大人たち
No.31:8→0→1 完成でスーパー戦隊のブルーとピンクタイム 麦茶ばあちゃん 死亡
No.36:すべては、セカイ動かすために。 クタタン No.76:さー、新展開。
添付ファイル