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夢で逢えたら  ◆shCEdpbZWw




夜になると涼しげな風が吹き抜ける公園。
昼間なら子どもを連れたお母さんたちや、営業回りの途中で休憩するサラリーマンで一杯だろう。
だけど、今この場にいるのは俺とエルメスさんの二人だけだった。

「……」
「……」

お互いに何も言うことが出来ない。
俺はともかくとして、エルメスさんだってもう子供じゃないんだ。
こんな時間にこんなところに連れてきたからには、これから何が起こるかってことくらい想像出来てるんじゃないか?
それなのに、何も言わないってことは、俺から切り出すのを待ってるのに決まってんだろ。

勇気を出すんだ、俺!
スレのみんなだって応援してくれてんだぞ、ここで日和って何も出来なかったらガッカリさせちゃうんだからな!
ととと、とにかく落ち着け俺、素数を数えて落ち着くんだ。

「……」
「……」

ホラ、エルメスさんだって俺が話してくるのを待ってるんだって!
最後に深呼吸だ……すぅ~……はぁ~……よし!

「あ、あの……」
「ごめんなさい」
「ファッ!?」

俺が切り出したその瞬間に……謝ら……れた?
何で何で? どういうこと?
ごめんなさい、ってつまり俺はフラれた、ってことか……?

「……勘違いしないでください」

か、勘違い……? え、エルメスさん、それは……どういう……?
もしかして好きで好きで仕方なくて舞い上がってたのは俺だけ、ってこと?
エルメスさんにとって俺は最初から眼中になかった、ってこと?

「……あっ、いや、その、そういうことじゃないんです」

俺の顔色が真っ青になっていたんだろう、エルメスさんが慌てて取り繕う。

「貴方が何を言いたいのか、ってことは私にも分かりますよ。
 それがきっと、私にとってはこの上ない喜びになるんだろうなぁ、ってことも」

いつも通りの笑顔に戻ったエルメスさんが話し続ける。

「私だって、そんな貴方の思いに応えたい……でも」

そこまで一気に話し続けたエルメスさんの表情が、愁いを帯びたものへと変わった。

「……出来ないんです、私には……貴方の思いに応えることが」

一筋の涙が、エルメスさんのほんのりと赤く染まった頬を伝った。

「で、出来ないって、それは一体どういうこくぁwせdrftgyふじこlp……」

何を言っているのか分からないエルメスさんに必死で問い詰めようとした。
で、そこでいつも通りに噛んじゃって俺が何を言っているのか分からなくなってしまった。
あぁもう、こんな大事に時に何をやってんだよ俺は……

「そ、その、もう付き合っている人がいる、とか……
 もしかして許嫁、っていうんですか? そういう人がいるとか……」

まくしたてる俺に対するエルメスさんの返事は、ただ黙って首を横に振ることだった。
目尻に溜まった涙を、その細い指で拭ったエルメスさんが声を震わせながら続ける。

「……そうじゃないんです。
 貴方と出会って2ヶ月ちょっと……本当に楽しかったんです。
 そして、それがこれからもずうっと続いたらいいな、って本当に思っているんです」
「じゃあなんで……」

思わずエルメスさんの手を握ろうとして……そこで俺は異変に気付いた。
伸ばした俺の手は、何も掴むことが出来ずに虚空を握りしめることしか出来なかったということに。

「……へ?」

情けない声をあげてしまったことに恥ずかしさを覚えながら、それでも俺は何とかしてエルメスさんの手を握ろうとした。
何度も、何度も手を伸ばしても……すり抜けてしまうかのようにエルメスさんをその手に掴むことが出来ない。

「……私は、もう貴方と一緒に歩くことは……出来ません」
「そ、それってどういう……」

見上げたエルメスさんの身体は、まるで苔が輝くかのように淡い光を帯びていた。
その光が、足元の方から少しずつ散らばっていくかのように薄れていく。
まさか……それって……う、嘘だろ……!?

「もう貴方といられないのは本当に残念なの……でも」
「ま、待って! 待ってください!」

叫ぶ俺の声は、もうエルメスさんの耳には届いていないかのようだった。
瞳から涙を零しながら……エルメスさんが最後にもう一度、俺が心底惚れ込んだあの笑顔を見せてくれた。

「最後に一緒にいられたのが貴方で……よかった」





その言葉を最後に、パァッと光を放って……エルメスさんは俺の隣から姿を消した。



「え……エルメスさん!? エルメスさんっっ!!??」





 *      *      *





「エルメスさんっっ!?」

思わず飛び起きてしまった。
そこは……俺の知らない部屋だった。
え……? ここは……いったい……? 今のは夢……だったのか……?

キョロキョロと辺りを見回してみると、飛び起きた俺に驚いたように、こちらをじぃっと見つめる女の人がいた。

「あ……えっと……ここは……」

俺が尋ねると、その女の人は不思議そうな顔をして答えた。

「どなたの物かは分かりませんが、住居の中です。……覚えてはいないのですか?」

そこまで言われてようやく思い出した。
そうだ、俺はいきなりひろゆきに殺し合いをするように言われて……
それからどこか知らない場所に放り出されて、この女の人と出会って……
その後に見知らぬ人に襲われて何とかその場を逃げ出して……

そうだ、確か人探しをするにも明るくなってからにしよう、って俺が言ったんだ。
さっきみたいに暗がりに潜まれて襲われたらたまったものじゃない、って何とか説得して。
それで、適当に見つけた民家に上がり込んだんだ……何故か鍵が開いていたけど。
誰もいないのを確かめてから、この女の人が見張りを買ってくれたんだっけ。
確か、「神である私は多少睡眠を取らずとも問題はありません。ただ、人間の貴方はそうもいかないでしょう」って言ったっけ。
近くにいる人の気配を感じられるから、とか言ってたし、それじゃあ、ってことで少しだけ、って横になったんだ。
そしたら、訳の分からないこと続きで疲れが溜まってたんだろな。あっという間に眠りに落ちて……それで……

「……やっぱり、夢……じゃなかったんですね」
「残念ながら」

俺は思わず頭を抱えそうになった。
だって、誰かを殺すだとか、誰かに殺されるだなんてことは今までまるで考えたこともなかったから。
そんなのはマンガやアニメ、ゲームや小説、映画、ドラマだけの世界だと思ってたのに。

「えっと……イオナズン様、でしたっけ……?」
「イズン、です」
「あ、ああっと、ご、ごめんなさくぁwせdrftgyふじこlp……」

思わず口ごもってしまった。
会って間もないとはいえ、女の人の名前を間違えちゃうなんて、なにをやってんだよ俺……_| ̄|○

「どうしました? 何やらうなされていたようですが……」

俺の言い間違いも特に気にする様子もなく、むしろイズン様がうなされていたことを心配して俺の顔を覗き込んでくる。
その距離があまりにも近いものだから、思わず気恥ずかしさから顔を背けそうになってしまう。

「い、いや、ちょっと……だ、大丈夫です。少し嫌な夢を……」

そう説明すると、一安心したかのようにホッとした表情をイズン様が見せる。
どうやらそれ以上の追及はしてこないようだ。

「……俺、どのくらい寝ちゃってたんですか?」
「そうですね……ざっと3時間くらいでしょうか。外も少し明るくなってきましたよ」

言われてみれば、窓の外の光景が闇一色だったころからは幾分色を変えているようだった。
こんな訳の分からないところにもしっかり朝は来るらしい。

「ところで、電車男。少々尋ねたいことがあるのですが……」
「はい?」

そう言うイズン様の手にはPDAが握られていた。

「貴方が寝ている間に使い方を覚えようと思ったのですが……
 なかなか難しいものでしてね……私の世界にはこのようなものはありませんでしたから」
「は、はぁ……」

神と言っても全知全能の存在、ってわけじゃないのかな。
俺も、自分のデイバッグから自分のPDAと説明書を取り出し、説明書とにらめっこをしながらPDAの使い方を教えた。
豊富な知識を持っている、そう言っていたイズン様は知的好奇心を刺激されたか、俺の言うことを大人しく、それでいて目を輝かせながら聞いていた。
そして、やはりと言うかなんと言うか、呑み込みの早かったイズン様は、あっという間にPDAの使い方をマスターしてしまった。

「色々とこのPDAとやらを調べてみようと思います」

そう言うと、イズン様はジッとPDAを弄り始めた。
そんな様子を見て、俺はあることを思い出した。
エルメスさん自身も、それほど機械には詳しくないってことを。

いつだったか、エルメスさんからノートパソコンの購入について相談されたことを知った時。
スレのみんなに何とかしてそれを手伝う目的で上がり込め、と発破をかけられたことを。
まだ、そのことはエルメスさんには言い出せずにいたけれど、その時どうするかというシミュレーションが俺の頭の中をグルグルと渦巻いていた。



↓ シミュレーション ここから



「電車さん……これ、どうやるのか分からないんですけど」
「分かりました、今から伺っても大丈夫ですか……? ええ、はい、ではこれから……」



「zzz......」
「エルメスさん……寝ちゃったなぁ。じゃあ、起こさないようにそぉっと、そぉっと……」



「電車さん、この前はありがとうございました。ごめんなさい、私、途中で寝ちゃったみたいで……」
「いえいえ、お仕事で疲れていたみたいですし……気にしてませんから。どうですか? パソコンは動いてますか?」
「ええ、もうバッチリですよ! ……ところで、手持ちのCDをMP3プレイヤーに入れたいんですが、どうすればいいか……」
「ふむふむ、それじゃあ、またこれから伺ってもいいですか? はい、それじゃあすぐに……」



「今日は頑張って起きてますから、電車さんも勝手に帰らないで下さいね」
「分かってますって。ええっと、CDの曲をMP3にするには……」



「すっかり遅くなっちゃいましたね」
「そうですね、すいません、思ったより手間取っちゃって……」
「いえいえ、私が頼んだことですから……知らないお店の人にサポートを頼むよりも、ずっと頼りになりましたよ!」
「そ、それなら僕も嬉しいんですが……」
「それで……こんなこと言うのもなんですけど……これから私自身のサポートもしてくれませんか……?」
「ええもちろん、一生涯サポートします」



↑ シミュレーション ここまで



直接顔を合わせたらこんなくだらないシミュレーションなんてすっ飛んでしまうくらい緊張しちゃうんだけど……
それでも、スレのみんなに沢山背中を押してもらって、そしてエルメスさんの優しさに支えられて……
いよいよ決戦の時……だったのに。
なんで……なんでこんなことになっちゃったのかな……。

さっきの夢だって不吉だった。
まるで、エルメスさんが死んじゃったみたいな……そんなことを暗示するかのような……あの夢。

夢……だよな? 虫の知らせ、だとか……正夢、だとか……そんなんじゃないよな?
だって、イズン様はああ言ったけれど、エルメスさんがここに来ているなんてそんな保証は無いんだよな……

不思議なもので、強がれば強がるほど、俺の心の中に巣食う不安感はにょきにょきとその首をもたげてくる。
違う、そんなはずはない、そう否定すればするほど、不安感はその負のエネルギーを食らって成長していくようだ。

俺は頭を抱え、一つ大きなため息をついた。
イズン様は諦めるな、勇気を出せ、そうでないとイズン様も、エルメスさんも脱落してしまう……そう言った。
でも、一度不安感を覚えてしまうと、もうそれから目を背けることは出来ない。
生き残るために必要な自信ってやつが、不安感に圧迫されて息をしていないようだった。




「……ところで電車男よ」

そんな俺の心を知ってか知らずか、イズン様がまた語りかけてきた。

「この箱はなんでしょうか?」

イズン様の指さす先には、今どき珍しいブラウン管のテレビがどん、と鎮座していた。
俺が、それをテレビという物体で、遠くからの映像を受け取る為の機械です、と説明するとイズン様がPDAの説明を受けた時と同じ表情に変わる。

「なるほど。気になりますね、これも動かしてみましょうか」
「え、動かすったって……」

普通に考えればそんなことは無駄だと思った。
ここに来るまでに軍服男を抜かせば誰にも会わなかったんだ。
この家だって、家具はちゃんと揃っているのに、そこにいるべき人が誰一人としていなかった。
殺し合いを本気でさせよう、ってことなら他に巻き添えになるような人はいない……そう考えた方が自然だった。
だから、テレビだってオブジェとして置かれているだけで、何の役にも立たない、そう思っていた。



――だが、現実はそうではなかった。

「おや、何か映りましたね」

リモコンを手にしたイズン様が呟くのを聞いて、俺は思わずテレビの方に目を向けた。
一体何が映っている、っていうんだ……?

「机……ですね」
「どういう……ことでしょうか?」
「私にも……さっぱり」

画面に映っていたのは、まるでニュース番組のスタジオのようだった。
ただ、そこに映る人はいなかったのが、ニュース番組とは違う点だった。

「確か、この近くにテレビ局なる建物があったはずです」

そう口にしながら、イズン様がPDAから地図を呼び出す。
自分たちが今いる地点が……どうやらE-3らしい。
その隣にあるE-2というブロックに、テレビ局がある、そう地図が示している。

「つまり、これは今のテレビ局の様子を逐一流している……?」
「恐らくはそうでしょう。チャンネルを変えようとしても……」

そう言いながらイズン様がリモコンを弄る。
チャンネルが変わることは無かった。

「どうやらここから映像を切り替えることは出来ないようです。
 つまり、このテレビに限らずこの場にあるテレビは全て同じ映像を受け取っている可能性が高い、ということです」
「何でまたそんなことを?」
「一つは、仲間集めを容易に行う為でしょう。
 ミズガルドの民は狼煙などを使って情報の伝達を行なっていましたが、貴方の世界ではこうして情報を伝達するのでしょう。
 広く手を組むことを呼びかけるための手段としては打ってつけではないですか?」
「なるほど」

さっきまでテレビの存在すら知らなかったとは思えないほどにイズン様が持論を並べ立てる。
そして、それがどこにも綻びの無い推論のように俺には思えた。

「一つは、と言いましたが他には?」
「もう一つ、それはこの死亡遊戯に乗った者たちにターゲットを提供するためです」
「……へ?」

どういうことです、と俺が聞く前にイズン様が続けた。

「まず、テレビ局でしか呼びかけが出来ないと想像できれば、そこに向かえば助けを呼ぶ者がいることも想像できるでしょう。
 テレビ局に急行し、呼びかけを行ったものを襲撃することも容易くなるはずです」
「は、はぁ……」
「そればかりではありません。仮に力を結集するとしても、その為にはどこかに集まる必要があるでしょう。
 その為の情報もテレビを使って呼びかけたとしたらどうでしょう?
 集合地点に待ち伏せて、集まる者たちを襲うことだって出来ます」
「じゃ、じゃあテレビは罠、ってことになるんですか……?」

俺は思わず狼狽えてしまうが、イズン様は冷静さを保っていた。

「そうとは言い切れないでしょう。
 リスクは大きいですが、それで力をまとめることが出来ればその効果や計り知れないでしょう」
「ハイリスク、ハイリターン、ということですか」

俺の言葉にイズン様がコクリ、と頷いた。

「電車男、貴方の言うエルメスさんを探すのにも使えるかもしれません。どうします?」
「ど、どうしますか、って言われても……」

急に決断を求められてまた俺は狼狽えてしまった。
確かにテレビをうまく使えばエルメスさんに会えるかもしれない。
エルメスさんがここに呼び出されていないとしても、殺し合いなんてしたくない人を集められるかもしれない。

でも……一歩間違えば、軍服男のような奴に一気に狙われるかもしれないんだ。
どうする……どうする、どうするどうするどうする……



口ごもってしまった俺を見て、イズン様が小さくため息をついた。

「……いいでしょう。もうすぐ朝の6時……でいいでしょうか?
 巨神の使いと思しきひろゆきなる男の言うには、6時間ごとに亡くなった方の名前や、立ち入りが出来なくなる場所の告知があるそうです。
 それまでに、テレビを使って何かやる者がいないとも限りません。
 6時の放送を待って、次なる指針を決めましょう……よろしいですね?」

スラスラと指針を並べるイズン様に、俺はただ頷くことしか出来なかった。
闇を彷徨い続ける俺の気持ちとは裏腹に、世界には朝が訪れようとしていた。



【E-3 住宅内/一日目・早朝】

【電車男@独身男性】
[状態]:健康
[装備]:アジ@おや、ポッポの様子が…
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、アクアブレイカー@Nightmare City
[思考・状況]
基本:生きて帰りたい
1:朝が来たら行動を開始する
2:エルメスがいれば保護する
3:イズン様…信用していいんですかね?


【イズン様@ゲームハード】
[状態]:健康
[装備]:ライオットシールド@現実
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本:殺し合いから生還し、アスガルドへ戻る
1:朝が来たら行動を開始する
2:どうにも頼りない電車男に助言しつつ、脱出策を探す
3:テレビやPDAのような現代の機械が気になる


※バトルロワイヤルを巨神たちによる娯楽だと予想
※原作では遠方の物と対話する力を持っているため、制限がなければ使用できるかもしれない

※共通で迷彩服の男(グンマー)を危険人物と認識しています

※会場中のテレビではテレビ局のスタジオからの映像を受信できます。他の映像は受信できません。


No.53:ファヌソ、探索始めるってよ 時系列順 No.57:Knight of Nights
No.53:ファヌソ、探索始めるってよ 投下順 No.55:暇を持て余した神々の馬鹿騒ぎ
No.15:ヤバイ。最近の若者ヤバイ。マジでヤバイよ。 電車男 No.77:emotion
No.15:ヤバイ。最近の若者ヤバイ。マジでヤバイよ。 イズン様 No.77:emotion