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feeling of love

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feeling of love  ◆i7XcZU0oTM






「……ふぅ……」

 椅子に腰掛け、もう何度目かも分からない溜息をつく。
 ……この"時間稼ぎ"も、いつまで持つか。

 あの時、"俺の武装を探す手伝いをしろ"と言われた時に、俺が言った言葉は……。
 ――――病院内を先に見て来ても良いか?どうするかはその後で答える。
 こうやって答えて、ずっと病院から出てないんだから。
 外で、何十分と待たされれば、怒るのも無理はないだろうが。
 だが、別にこうやって時間を稼いでいたのは、手伝うかどうか考える為って訳じゃ無かった。
 正直な所……A-10神に従う気はさらさら無かった。

「……」

 もちろん、最初は何とか会話でも交わしてみようかと思った。
 だが、あの機関銃がそうはさせてくれない。
 ……少しでも下手な事を言えば、即座に俺は殺される。
 その危険性がある以上……他の事は何も言えなかった。
 それに……俺は、他にも"考えたい事"があったんだ。
 その為にも、俺はその場を無難にやり過ごしたんだ。

「おいッ、いつまでやってるつもりなんだッ!?」

 外から、A-10神の声がまた聞こえてくる。
 ……これで何度目だろうか?確か、もう10回はやってたような……。
 とにかく、無視する訳には行かない。
 窓を開け、答えようとした時。

「もう少し……うわぁっ!?」

 タタタッ、と音がした瞬間に、ガラスが窓枠ごと砕け散る……!
 突然の出来事に足が滑り、その場で尻餅をついてしまった。
 A-10神も、とうとう痺れを切らしたようで……あの機関銃っぽい奴で撃たれたようだ。
 幸いにも当たりはしなかったけど……もし当たってたらマズかった。
 ものの数秒で、俺は床に散らばる窓の残骸のようになっていただろう……。
 間髪入れず、A-10神の怒号が聞こえてくる。

「いい加減にしやがれッ!! これ以上俺を待たせるってんなら、腹いせにテメェを蜂の巣にしてやらぁ!!」

 これは相当怒ってるな……。
 できるだけ、神経を逆撫でしないように、下出に出る必要がある。
 だが、もう少しだけ時間が無いと困る……。

「あと……もう少しだけ、時間が欲しい」
「…………ざけんじゃねぇ。と言いたい所だが……今の俺は気分がいい。もう少しだけ待ってやろう。
 俺の寛大な心に感謝するんだな」
「……どうも」

 ……ホッと胸を撫で下ろす。何とか時間ができた。
 とにかく……これからどうするのか、最終的な判断を下さなければならない。
 椅子に再度腰掛け、頭を抱える。

(そうさ、これは夢。なら、自分のやりたいようにやる。……でも、俺のやりたい事って一体何だ?)

 椅子に座ったまま、一人思案に耽る。
 何度も何度も考え、それでも答えが出ない。
 俺の頭の中は、モヤモヤと纏まりの無い状態に陥っていた。
 互いに対立する考えが、俺の中でぶつかり合っている。
 心の中の"俺"が、声を上げる。



 ――――どうせ夢なら、好きにやろう。イーノックのように、全てを救おうじゃないか。



 それに反発するように持ち上がる、もう一人の"俺"の意見。



 ――――目を覚ませよ。これは、紛れもない現実だろ?俺に何ができるって言うんだ。




 俺は、どちらの声を聞くべきなんだ?俺は、どちらに従うべきなんだ?
 ……分からない。夢を信じるか、夢を捨てるか。2つに1つ。どちらかしかないんだ。
 だから、選ぶ必要が……いいや、選ばなきゃいけない。
 このまま夢を信じて、"イーノック"として歩んで行くか?
 それとも夢を捨てて、"竹安佐和記"として歩んで行くか?
 中途半端は存在しない。どちらかしか、ないんだ。

「……一体、俺はどうすればいいんだよ」

 どうすればいいのか。一体、どちらが正しい判断なんだ。
 俺の心なのに、俺ですらどうなっているのかが読めない。
 俺は……俺は、どうすれば。
 誰か、教えてくれよ。
 俺は、どうすればいいんだ。

「くそっ……くそっ!!」

 まるで、たった一人で、何も無い砂漠を歩いているような気分だ。
 どうすればいいのか分からない。
 何処に行けばいいのかも分からない。
 ただただ歩いて、当てのない旅を続けているような……。

「俺は……夢を見ていたい、のか?」

 分からない。

「……」

 だが、もし夢を見るのならば。夢を追うのならば。
 俺……"竹安佐和記"とは、ここでお別れになるだろう。
 "竹安佐和記"としてではなく、"イーノック"として生きて、戦うしかない。
 もしかしたら、これはただの現実逃避なのかもしれない。だけど、それでもいい。
 俺は、夢を追う。現実が悲しいならば、楽しい夢に変えてしまえ。だからこそ、俺は。
 竹安佐和記と言う名を、捨てよう。そして、新たな俺……。


「俺は――――"イーノック"だ」


 ――――イーノックとして生きよう。
 例えそれが、人の夢のように儚くても……俺は、生きよう。
 戦えるかどうかは……ちょっと不安だけどね。












 時間は遡り、少し前へ。
 依然、1さんを探し求め、真っすぐ病院を目指している八頭身。

「……」

 もう少しで、病院に到着するはずだ。
 そう思って、ただただ歩く。

(待っててね、1さん。必ず守るからね……!)

 幾度となくくり返した台詞を、再度心の中で反復する八頭身。

(全速力で病院に行かないと……。じゃないと、1さんが……!)

 1さんの身を案じるあまり、八頭身の足に力が籠る。
 ……するとどうだろう、見る見るうちに速度が増して行くではないか!
 ダダダッと薄暗い街中を走り抜け、一気に病院まで突っ走る!
 グングン速度がます度に、ドンドン病院が近づく。
 そしてついに……少々時間は掛かったが、病院に辿り着いたのだ!

「ハァハァ……や、やっと着いた……」

 速度を落とし、フラフラを病院の敷地内に入る。
 流石の八頭身と言えど、走り詰めだったお陰で、結構体力を消費してしまった。
 病院の壁に背をつき、肩で息をしながら座り込む。

「と、とにかく……1さんがいるか調べないと……」

 未だふらつく足で立ち上がり、歩き出す。
 ……何処から病院に入ろうか?とりあえず、ここから近いのは、裏口のようだ。なら、そこから入ろう。
 そろりそろりと、裏口に近づく……。
 多分、ここはお医者さんなんかが通る入り口なのだろう。
 ……早く、1さんを探さないと。

「1さん? どこ? 何処にいるんだい?」

 目に付いた部屋のドアを片っ端から開け、中に入って1さんを探し回る。
 ベッドの下、机の中、棚の上……ありとあらゆる場所を探った。
 階段をかけ登り、階にある全ての部屋を、見て回る。
 トイレ、病室、ナースセンター……だが、どこにも1さんはいない。

「……1さん、一体何処にいるんだろう……」

 この階最後の病室。
 そこにあるベッドに大の字に寝転がる八頭身。
 ……流石に、少し疲れ過ぎた。少し休まないと、体がもたないかもしれない。
 もし、大事な時に疲労で動けなかったらどうする?
 それじゃあ、1さんを守れないじゃないか。それじゃ駄目なんだよ。
 いざと言う時には、僕が1さんの盾になる必要があるんだから……。
 だから、今は、少しだけ休もう……必ず行くから、待っててね、1さん……。

「……」


 ……。
 …………。
 ………………。
 …………………。


「…………」



 …………………。
 ………………。
 …………。
 ……。


「……はっ!?」

 完全に眠る寸前に、飛び起きる。
 ……疲れと少々の眠気が、どうやら僕を夢の世界に誘おうとしてたみたいだ。
 寸での所で、目が覚めたみたいだけど……下手すれば、このまま眠っていたかもしれない。
 危ないところだった。いくら疲れて休んでいるとはいえ、流石に眠る訳には行かない。
 もし、僕が眠っている間に1さんに何かあったら……僕は、僕を一生許せないだろう。

「いけないいけない……」

 部屋にあった洗面台に向かう。
 蛇口を捻り、冷たい水を掌に溜めて、顔を洗う。少しは、目が覚めたかな?
 ……とにかく、1さんを探さなきゃ。
 そう思って、病室を出ようとドアノブに手をかけた時。

「さて……!?」

 タタタッ、とどこかで音がした……!今のは、もしかして銃声?
 音から察するに、外から音がしたみたいだ。慌てて、窓から外の様子を伺ってみる。

「あ、あれは一体……」

 ……その時、僕は確かに、それを見た。
 ――――駐車場の明かりに照らされた、戦闘機の姿を。
 一体何でこんな所に戦闘機が。誰かの支給品なのかな?
 そうだとしたら、こんな所に放置していていいのかな。


「いい加減にしやがれッ!! これ以上俺を待たせるってんなら、腹いせにテメェを蜂の巣にしてやらぁ!!」


 誰かの怒鳴り声が聞こえてくる。……一体、誰の声だろう?
 駐車場の方から聞こえたけど、見た所、誰もいない。
 あるのは、例の戦闘機だけだ。もしかして、誰か乗ってたのかな?

「……まあいっか。1さんとは関係なさそうだし」

 1さんと関係ないなら、別にどうだっていいや。
 ……1さんを探しにいこう。












「………………」

 重い足取りで、フラフラと町を歩く。
 ……あれから何度立ち止まって、何度頭を抱えただろうか。
 もう、自分でも何がなんだか分からない。

「私は…………どうすればいいの?」

 自分で自分が分からない。自分の心が、分からない。
 ……最初は、タケシを護ろうと思っていた。でも……。
 ――――もしかしたら、私はそれを理由にただ人を殺したいだけなんじゃないか。
 そんな考えが、頭に浮かぶ度に、必死に振り払う。
 そんな訳ない。私は、タケシを護るために、危ない人間を……。
 だけど、そう思う度に、頭の中で響く声がある。
 一番最初に、私が手にかけてしまった人の、声。




 ――――人なんて表じゃどんないい顔してても、裏じゃどんな闇を抱えてるか分からないんだよ?




 そうだ。誰だって、表には出ない一面……心の闇がある。
 物によっては、自身でも窺い知る事の出来ない、心の深淵。
 もしかしたら……いや、多分私にも。
 ――――誰かを殺したい、殺してしまいたい。
 そんな、心の闇があるんじゃないか。

「…………違う。私は、絶対違う」

 人を、徒に傷つけたい訳じゃない。私はただ、タケシを護りたいだけだ。
 だって……私は、タケシの母親だから。母親として、愛しているから。
 だからこそ、死なせる訳には行かない。私が、護らなきゃならない。
 私の愛する息子だから……護らなきゃいけない。
 その結果、自分が死ぬことになっても――――構わない。

「……」

 だけど、一体どうすればいいのか。
 当のタケシが何処にいるのか、全く以て分かっていなかったし、見当もつかなかった。
 今は、とにかく探し回るしかない。自分の足で、歩いて……。

「タケシ……何処にいるのよ……」

 何か、便利な……人の居場所が分かるような物でもあればいいのに。
 そんな事を思いながら、ただただ歩いて行く。
 ……人っ子一人いない街が、これほどまでに不気味に見えるなんて。
 本当に、ここが現実なのか疑わしくなるくらい……。
 もしかして、これは性質の悪い夢なんじゃないか……。
 そんな、下らない事まで頭に浮かぶくらい、私の心は疲れ果てているようだ。

「……あ」

 辺りもろくに見ず、ずっと歩き続け……ふと顔を上げたら、何かの建物が目に入った。
 あそこには誰かいるのだろうか?もし誰かいて、その人が殺し合いに乗っているのなら……。
 私は、心を鬼にして、その人を――――。

(……でも、誰かいたとしても、その人が殺し合いに乗っていなかったら?)

 私は、どうするべきなのか。
 ……幾ら何でも、そんな人までは、殺せない。

(だけど……心の中じゃ…………もしかして)

 私は超能力者なんかじゃない。人の心の中は読めない。
 もし、一見して殺し合いに乗ってないような感じでも、本当は。
 ――――裏では、他の人を殺そうとしているかもしれない。
 例えば、食事に毒を盛って。
 例えば、背後から忍び寄って刃物で。
 例えば、離れた場所から銃で。
 考え出せばキリが無い。
 それならば――――怪しい人は全部、この手で"排除"するべき?
 ……キリキリと、頭が痛む。
 どうすればいいのか。
 どちらが正しいのか。
 今の私では、正常な判断が下せそうにない。
 そう思っていた時。


「いい加減にしやがれッ!! これ以上俺を待たせるってんなら、腹いせにテメェを蜂の巣にしてやらぁ!!」


 銃声と怒号が、いきなり聞こえて来た。
 近くに、誰かがいる!?聞こえて来た方向は……あの、建物の方。

(そんな……あれほど乱暴な声の人がいるなんて……)

 恐ろしい。
 間違い無く、出会ってしまったら、手も足も出ずに、殺される……。
 ……向こうに、行ってはいけない。
 怖くて、足が動かない。

(……私は、どうすればいいの……?)












「フン、やっと出てきやがったか」

 こうやって、A-10神の前に立つのは久々かもしれないな。
 だが、やる事はもう決まってるんだ。
 だから、戸惑うことも、恐れる事もない。

「で、どうする? 俺の武装を探しに行くか、行かねぇのか。白黒つけやがれ」
「――――俺は、行かない。俺の道を行く」
「……ほぅ」

 A-10神の声のトーンが下がる。

「するってぇと……俺の言う事が聞けねぇ、ってのか?」
「そうだ」
「なら……ここで、テメェの人生は終わりだッ!」
「……!!」


 ……来る!!
 俺は、イーノックになる!なるんだッ!
 これくらい――――躱してやる!!



「はッ!!」

 するとどうだろうか……。体が、軽い!
 連続バック転で、機関銃から放たれる銃弾を、危ないところで躱すことが、できた!
 ……自分でも、信じられない。こんな事が、できるなんて。
 本当に、俺は――――イーノックになったのか。
 ……だが、今はその事を深く考える余裕はない。
 とにかく、A-10神をなんとかしないと。

「ちょこまかと動き回りやがって……うざってぇんだよ!!」
「えいやッ!」

 今度は、側転で躱して行く。
 一発でも食らえば、そのままズルズルとやられる。
 なら、やはり躱すしかない。そして……スキを見て、ここから逃げる。
 ……今の俺の力では、流石にA-10神を破壊するのは少々厳しいだろう。
 今の俺の武装は、非力なナックルダスター……所謂"メリケンサック"だ。
 腕力全開で殴りつければ、表面をへこませるくらいはできるかもしれない。
 だが、それでは駄目だ。余計に、相手を怒らせるだけだ……。

「いつまで躱してるつもりだ!? とっとと……食らいやがれッ!!」

 このままじゃいけない。
 ここは、一旦引いたほうがいいのか。
 そう思った瞬間、足が動いていた。

「うおおおぉっ!!」

 丁寧に、入り口から入る余裕なんかない。
 なら、どうするか?あまり好ましくはないが、これしかない。
 ――――助走を付けて、頭を庇いながらガラス窓に飛び込む!!

「何ィ!? あいつ、イカれてやがるのか!?」

 外から、A-10神の驚きの声が。
 ……その直後、また機関銃の連射音と、銃弾が壁に当たる音。
 ここなら、少なくとも銃弾は防げる。

「……どうしようか……」

 とにかく、今は逃げよう。
 A-10神は、後で、何とかしよう。アレは俺の手に余る。
 幾らなんでも……倒せない、ってことはないはず。必ず、倒す方法はあるはずだ。
 だが、今は倒せない。それだけははっきりしている。



「もう、さっきから一体何なの? 銃声がうるさくて、落ちついて1さんを探せないじゃないか」



 何故か、いきなり声をかけられた。一体、こいつは?
 見た所、八頭身のスラっとした奴だけど……何か、怪しい。
 だが……敵意はないようだ。
 もしあるなら……こいつの持つ拳銃で、俺は今頃。

「と言っても、もうここは調べ終わったんだけどね。1さんいないし、もう用はないや」

 じゃ、と小さく言うと、そいつは廊下を走り去って行った。
 ……何なんだ、一体。
 って、呆気に取られている事態じゃない。
 ……銃声は止んでいた。

「こんなヒョーロク玉じゃダメだ! アヴェンジャーなら壁ごとブチ殺せるってのによぉ!」

 攻撃が無駄と見て、やめたらしい。
 こっちにとっては幸運だ。
 とにかく、ここから逃げなければ。

「……裏口から出よう」

 姿勢を低く保ち、裏口へと走る。
 ……所々の部屋のドアが開けっ放しのまま放置されている。
 あの八頭身の奴が、"1さん"なる人物を調べて、そのままにしているのだろう。

「……あっ、あれは」

 俺の目に映ったのは……



  _/ ̄ ̄\_
 └-○--○-┘


「……タクシー?」

 1台の車だった。
 ……こんなところに車が。病院内は調べたが、外は調べてなかった。
 調べていれば、もっと早くこれに気付いてたのに。
 だが、今さらボヤいてもどうしようもない。
 とにかく、これを借りよう。

「アイヨー」
「……喋った!?」

 何故だろうか、そこまで驚きはしなかった。
 まあ、前例をさっきまでイヤってほど見ていたからか。
 ……静かに、助手席の扉が開く。乗れ、ってことなのか?
 ええい、どうだっていい。とにかく、今は乗るしかない。

「失礼するよ!」
「アイヨー」
「えーっと……とにかく、急いで行ってくれ!」
「アイヨー」

 そう言うと、急にエンジンがかかった。
 そして……タクシーは、ゆっくりと走り出した。












「……ううん、1さんはどこにいるんだろう?」

 街をとぼとぼと歩いてゆく八頭身。
 ……結局、病院には1さんはいなかった。しかし、クヨクヨしてる時間はない。
 僕には、一刻も早く1さんを見つける使命があるんだから。
 だからこそ、早く探さないと……。

「あぁ……どこにいるんだい、愛しの1さん……早く君に会わないと、僕はおかしくなりそうだよ」

 急がなければ。
 1さんを、護るために。
 早く、見つけなければ……。

「他にも人が集まりそうな場所は何処だろう……? 思い付かないや……」

 仕方無く、地図を取り出し、近くに何があるか確認する。

(百貨店、公園、工場……ううん、何処に行こうかな……)

 迷っても仕方が無い。
 とにかく、今は進むしかない。
 そう思って、僕は歩き続けた。



【C-3・病院付近/1日目・早朝】
【八頭身@AA】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:デザートイーグル(7/7)@現実、トンファー@トンファーキックのガイドライン
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)
[思考・状況]
基本:1さんを護る。邪魔する奴には、容赦しない。
1:百貨店、公園、工場……どこに、人が集まるかな?
2:1さん……どこにいるんだい……?
3:さっきの人から、話を聞いてなかったけど、まぁいいや
※ZUN、壁殴り代行、竹安佐和記の名前を聞いていません
※八頭身が、百貨店・公園・工場の何処に向かうかは、以降の書き手さんに任せます












「畜生が……あのクソ野郎、俺の命令を聞かねぇとはな……」

 駐車場で、一人愚痴をこぼすA-10神。
 ……さっきまで、てっきり"もう一人パシリが増えた"と思っていたのだが。
 結果は、このザマである。始末することも出来ずに、逃がしてしまった。

「クソッタレが……!! この俺をナメやがって……!!」

 だが、あまりの怒りから、辺り構わず滅茶苦茶に銃を乱射しまくるA-10神。
 …………頭が冷えた頃には、機関銃の弾倉は空になっていた。

「あの野郎……イーノックとか言ったか……次見かけたら、ブッ殺してやらァ!!!」

 ……A-10神の声が、辺りに響いた……。

 だが、彼はまだ分かっていなかった。
 武器が手に入っても、彼の体躯では飛び立てない。
 いや、無理を押し通せば出来なくもないのかもしれない。
 ただし、その状態で戦えるかは……分からない。




【C-3 病院・駐車場/一日目・早朝】
【A-10神@軍事】
[状態]:損傷無し、燃料微消費、激怒
[装備]:MINIMI軽機関銃(0/200)@現実、アヴェンジャー(0/1350)@現実
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品(0~2)
[思考・状況]
基本:「敵」は全て殲滅する
1:イーノック(竹安佐和記)は絶対にブッ殺す
2:次誰か来たらどうするか……?
3:T-72がいれば戦う
4:兵器が手に入ったら、存分に暴れる
※竹安佐和記の名前を「イーノック」だと思っています。












「一体……どうすればいいの……」

 さっきまで響いていた銃声は、すでに静まっている。
 だが、依然身動きは取れずにいた。…………恐ろしくて、足が動かないのだ。
 ここまで弾が飛んでくるかは分からない。多分、届きはしないだろうが……。
 ――――それでも、恐ろしい。死にたくない。その思いが先行して、動けなかった。
 少しは、「あそこにタケシがいたら」と思ったが、やはり動けない。
 ……命を賭けてでもタケシを護るんじゃなかったのか。
 それなのに、この程度のことで恐れていていいのか?

「タケシ……カーチャンね、もうどうすればいいのか分からなくなっちゃったよ……」

 ――――そんなの知るかよ。
 いつもなら、そうやって返されそうな言葉。そうそう吐く事の無い弱音。
 だが、どうしても。
 こうやって、力無く口から零れてしまう……。
 ああ、私は母親失格なのかもしれない。
 だって、いざと言う時に動けないのだから……。

「ああ……私は……どうすれば……」

 がっくりと項垂れ、ボロボロと涙をこぼす。
 私は、タケシを護れないのか。絶対護る、とさっきまで言っていたのに。
 ……ああ、神様。何故、私にこんな辛い経験をさせるのですか?
 今まさに、私の心は狂いかけているのです。
 それでもまだ、こんな辛い目に遭わせようと言うのですか?
 それでもまだ、私に選択を強いるというのですか?
 私には……私には、もう何が何だか分からないのです。

「…………もう……嫌……」

 いっその事、何もかも捨てて狂いきってしまおうか。
 タケシの事も、自分の事も、何もかも忘れて。
 そうすれば、もう恐れることなんてなくなる。
 そうだ。完全に壊れてしまえば、何も恐れる事なんか……。
 ――――いや……駄目だ。私は、タケシを護らなくちゃ……。
 私の心が、激しく揺れ動いていた、そんな時。

「……えっ?」

 車道を、1台の車が走り抜けていった。
 普通ならおかしくはないが、今の状況では……。
 ……通り過ぎたと思ったその車は、何故か引き返して私の近くに停車した。

(どういう事? 何故、私の所に?)

 まともに考えようにも、今の私の頭は混乱しきっている……。
 道端で弱っている私を見つけて、殺しに来た?
 それとも、一見助けに来たように見せて、私の命を……?
 駄目だ。もう私は、まともな思考が出来なくなっているのかもしれない。
 それとも、タケシ以外を信じる事が出来なくなっているのかもしれない。
 ……誰かが、車から降りてこちらに向かって来る。
 私は、反射的に武器を鞄に仕舞った。

「……大丈夫ですか?」
「……」

 車から降りて来た人……何だか、ゲームに出てきそうな格好をしている。

「怪我とかは……してませんか?」
「ええ、大丈夫……」
「良かった……」

 男性は、心の底から安堵したような表情を浮かべる。
 ……だけど、信用なんか出来ない。
 表じゃこんな顔しても、裏じゃほくそ笑んでるかもしれないのだから。

「とにかく、この辺りから離れた方が良い。……乗って下さい」

 そう言うと、閉まっていた後部座席の扉が開いた。
 ……私は、タケシ以外の人は信用しない。
 だが、ここで下手に断って怪しまれるのも……。

「……あ、貴方は誰なの?」
「俺の名前は……イーノックだ」

 ……外国人? でも、どう見ても日本人だし……。
 まさか、偽名?

「イーノック……さん」

 ……ここで、私の頭にいい案が浮かんだ。少しの間、この人と行動してみよう。
 それで、この人が"使える"ならそのまま利用させてもらおう。
 "使えなさそう"なら、車だけ貰ってこの人とは別れよう。
 そして……"乗っている"なら、頃合いを見て……。

「分かりました……急ぎましょう」
「なら、後部座席にどうぞ!」

 鞄を抱え、車に乗り込む。
 ……勝手に扉が閉まった後、車は走り出した。

「……行ってくれ」
「アイヨー」

 ……とにかく、色んな事を聞きださないと。

「あの……貴方は、何故あそこに……?」
「とんでも無い化け物に、命を狙われてて……命からがら逃げ出したんです」
「そうだったんですか……」

 本当にそうだろうか。
 もしかしたら、嘘をついているんじゃないか。
 怪しまれない程度に、その話題に踏みこんでゆく。

「……その場には貴方と、その化け物しか?」
「ええ。……まあ、逃げる途中で妙な奴にも出会いましたが」
「妙な……?」
「八頭身の、スラッとした奴です。どこかに行ってしまいましたが」

 八頭身……こっちは、別に注意しなくてもいいだろう。
 記憶の片隅にでも、留めておけばいい。

「……あと1つだけ、聞いてもいいかしら」
「いいですよ」

 ……タケシに遭遇したかどうか。
 聞いておかなければ。
 例え名前は聞いていなくても、誰かに会ったことくらいは覚えているはずだ。

「……これまで、私とさっきの話に出て来た人以外で、誰かに会ったの?」
「ああ……1人いますね。神と名乗る、奇妙な男でしたけど……何か、"裁き"とか言って俺の服を
 この装備に変えたんですよね……今じゃ、ある意味感謝してますが」
「……そう」

 ……望んでいた情報は得られなかった。まあ、仕方が無い。

「かなりお疲れのようですし、少し休んでてください……」
「ええ……」

 もし今後、この人に何か聞かれるなら……絶対に黙っていなければならないことが2つ。
 ――――私が、既に1人殺めている事。
 そして……息子を護るために、危険人物を排除しようとしている事。
 この2つは、何があっても話す訳には行かない。
 ふと……車の中にあるデジタル時計に目が行った。
 今の時間は、5時45分。……最初の更新まで、あと15分。
 ――――私の額を嫌な汗が伝う。

(更新の時に、私の名前が……!)

 このままではマズい。
 だが、下手な行動を取れば間違い無く怪しまれる!
 最悪、私の行いが知られてしまう可能性も……。
 何か、防ぐ方法はないか……!

(……このままじゃ……何か、良い方法は……!?)

 一体、どうすれば……この危機を乗り越えられるのか。
 何とかして、乗り越えなければならない。
 タケシを護るためにも、必ず……。



【C-3/一日目・早朝】
【カーチャン@ニュー速VIP】
[状態]:健康、強いストレス、焦り
[装備]:アロハ調館内着@現地調達
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(忍法帖【Lv=01】)、不明支給品(武器無し)×1~2、防弾ベスト@現実、
    壁殴り代行のチラシ@ニュー速VIP、匕首@現実、ベレッタM92(15/15)@現実
[思考・状況]
基本:必ずタケシを生き残らせる
1:何とかして、イーノックに私の素性を悟られないようにする
2:イーノックが使えるかどうか見極める。ダメなら……
3:タケシの害になりそうな参加者を、命を賭けて排除する
※竹安佐和記の名前をイーノックだと思っています
※竹安佐和記と共にタクシー@AAに乗っています


【竹安佐和記@ゲームサロン】
[状態]:健康、現実逃避、疲労(小)
[装備]:一番いい装備@エルシャダイ、ナックルダスター@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品(1~2)
[思考・状況]
基本:"イーノック"として生き、全てを救う
1:女性を助けたはいいけど……これからどうするか……
2:何処に向かおうか……?
3:A-10神を倒す方法が見つかり次第、A-10神を倒す
4:さっきの男はいったい……
5:――――現実は見たくないけど、いつかは……
※自身をイーノックと思いこむ事で、運動能力が向上するようです。それを疑うと力が無くなります。
 ファヌソの力による物かは不明。
※カーチャンと共にタクシー@AAに乗っています



≪支給・現地調達品説明≫
【ナックルダスター@現実】
メリケンサックとも。拳による打撃力を上げるのに用いられる。

【タクシー@AA】
≪衝撃】白昼の惨事【映像】≫より。先頭のカッコが抜けているのは仕様。
(゚」゚)がタクシーを呼ぶ度に轢かれると言うAAスレ。
運転手がいると言うより、タクシー自体が意思を持っているようである。
(゚」゚)が何処にいようと、一度呼び止められたらどこまでも追いかける。
なお、ロワ内では呼び止めても轢かれることはない、はず。


No.66:Moral Hazard 時系列順 No.68:unknown
No.66:Moral Hazard 投下順 No.68:unknown
No.55:暇を持て余した神々の馬鹿騒ぎ A-10神 No.86:神々の戦い
No.55:暇を持て余した神々の馬鹿騒ぎ 竹安佐和記 No.83:――の前の静けさ
No.51:メンタルヘルス カーチャン No.83:――の前の静けさ
No.42:探し物はなんですか~? 八頭身 No.88:ひと時のマターリ

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