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知らない方が幸せだった  ◆i7XcZU0oTM





(すみません、川越さん。僕は……貴方を、信用できなくなってしまいました)

 夜道を歩きながら、心の中で呟くマウンテンバイク。
 一体、何があってこうなったのか?
 それを説明するには、少々時間を遡る必要がある。








 睨みあったまま、動かない川越とポルナレフ。

(こいつは、何故スタンドを出さない……?)

 ポルナレフの心に、疑問が浮かぶ。

 ……何故、こいつはスタンドを出さないのか。
 どんなスタンドなのか、悟られたくないからか?
 戦闘を行えるようなスタンドではないからか?
 一度出したら、自分でも生命の危機に陥るかもしれないから?

 ポルナレフの考えは、どれも間違いだった。
 ……ここでは、スタンドは特別な物ではない。誰でも、見えるのだ。
 だからこそ、スタンド使い"ではない"川越にも、姿を確認できた。
 それが、ポルナレフに勘違いをさせる事となった。
 ――――スタンドはスタンド使いにしか見えない。
 この前提が頭にあったからこそ、川越を「スタンド使いでは?」と疑う事になったのだ。
 だが、前述した通り、ここでは"誰でも"スタンドが見える。
 それを、ポルナレフが知る術は……今の所、無い。

(……どうするべきか)

 川越もまた、動けずにいた。何故か?
 ……得体の知れない相手に、何も考えずに突っ込んで行くほど、川越は愚かでは無かった。

(さっきの、甲冑のアレは……多分、この人が操っているはず……)

 そこまでは思いついた。だが、その先には至れなかった。
 "スタンド"と言う、科学では証明できない存在を、川越が知る由もない。

(……僕はまだ死ぬ訳にはいかない。でも、この状況が長く続くようでは……)

 さっきの一撃は、何とか躱せた。だが、次はない。
 次斬りつけられたら……腕が落ちるか、足が切れるか、首が飛ぶか、この3つの内のどれかが待っている。

(せめて、バイク君が帰ってきてくれれば。……2人で行けば、取り押さえられるかもしれない)

 だが、当のマウンテンバイクはここにはいない……まだ、キバヤシの所から帰って来ていない。
 流石に一人では、相手にするのは無理だ。
 だが、この状況では逃げ出すこともできないし、そもそも逃げ出すつもりもなかった。
 ……自分の誇りである"料理"を貶された以上、自分から引く気は無かったのだ。


 ――――そして、張り詰めた空気が辺りを支配した時。


 それを打ち破ったのは……川越でも、ポルナレフでもなかった。

「川越さん!」

 店内に飛び込んで来た、マウンテンバイクだった!

「……って、これは――――!?」

 倒れた机に、床に乱雑に散らばる皿や食器。
 そして……虚空を見つめるオエーの生首を見て、言葉を失うマウンテンバイク。
 一体、ここで何があったのか。
 この、奇妙な髪形の男は誰なのか。
 その男のすぐ近くにいる、甲冑姿の奴は何者なのか。
 ……床に転がる、鳥らしき生首は何なのか。
 幾つもの疑問が、マウンテンバイクの頭に浮かぶ。

「バイク君! 丁度いい所に帰って来てくれました!」
「川越さん、これは一体どういうことなんですか!? 何故、この人と睨みあってたんですか!?」
「何故かって……そりゃあ、この人が僕の料理を貶したからですよ!」
「その"料理"が問題なんだろうッ! こいつはあろう事か、参加者を殺して、その肉を料理に使ったんだぞッ!」
「えっ……!?」

 マウンテンバイクの顔から、血の気がサッと引いていく。

「どうせ鳥じゃないですか。こうやって料理になった方が、ただ殺されるより報われるてるってもんですよ」
「……てめえッ!」
「待って下さいっ!」

 今にも川越に襲い掛かろうとするポルナレフを、しがみついて必死に止めるマウンテンバイク。

「暴力は……いけませんよ……!」
「だが……!」
「とにかく! 僕が、お互いの話を聴きますから! それまでは、絶対何もしないで下さい!」
「…………チッ、分かったよ」

 不満の残る表情で、川越から距離を取るポルナレフ。
 川越もまた、不満げな表情を浮かべて、近くの椅子に腰かける。

「川越さんの方から、先に話を聞かせてもらいます。場所を、変えましょう」








 厨房の奥の部屋……おそらく、事務室のような物だろう。
 僕と川越さんは、2人でそこにいた。
 落ちついて、何があったのか話を聞きだすために。

「一体、何があったんですか?」


 川越さんの口から、今までの出来事が語られる。
 この店を訪れたポルナレフに、料理を振舞った事。
 その際、マウンテンバイクに出した肉と同じ物を出した事。
 その後、あの鳥を出して、口論になった事。
 そして……ポルナレフに自身の料理を貶され、さっきの状態に至った事。

「……」

 暫しの沈黙の後、僕は口を開いた。

「川越さん……何故です」
「何がです」
「何故、そんな事を? 首輪が付いていたなら……その鳥も、僕らと同じ境遇だったって事じゃないですか!
 なのに何故、殺してしまったんですか!?」
「ハァ……どうやら、バイク君も分かってくれないみたいですね……」

 やれやれ、といった様子で溜息をつき、首を横に振る川越さん。
 ……その姿を見て、思わず僕は後ずさった。
 ――――何だか、急に川越さんが恐ろしく見えて来たからだ。
 ここで、出会った時はにこやかな顔を浮かべていたのに。
 今では、その顔が恐ろしい物に感じられてしまう……!

「首輪があったって事は、まあ十中八九参加者だったんでしょう。でも、考えてみて下さい。
 僕が見た限り、あの鳥はどう考えてもただの鳥でした。そんな鳥が、戦えると思ってるんですか?
 出来る訳ないでしょう。なら、無意味に殺されて無駄になる前に、料理にした方がいいでしょう」

 何てことを言い出すんだ。
 川越さんの考えを聞き、一番最初に思ったのは、それだった。
 何故そんなことを。
 いくら鳥とは言え、自分と同じ参加者ならば、殺すのはいけないんじゃ……!

「それに……」

 薄々感づいていたことが、次に飛び出した川越さんの一言で、現実になった。

「――――バイク君も、料理を食べましたよね?」
「あっ……」
「あれだけ美味しそうに平らげておいて、僕を責めるつもりですか? それはおかしいでしょう。
 そもそも、人は他の命を頂いて生きているんですよ。バイク君、君は肉料理を食べないんですか?」
「それとこれとは話が!」
「違いませんよ。同じ事です」

 確かに、僕はベジタリアンでも何でもない。
 普通に、肉も食べる。
 だけど……。

「我々人間は、他の動物の命を頂いて生きているんですよ? 僕を攻めるのは、お門違いでしょう」

 ……言い返せない。
 川越さんの言っている事は、間違いではないから。でも……正しい、とも言い切れない。
 その鳥も参加者だったんだ。なら、殺してはいけないのではないか?
 わざわざ殺し、そして食すことは、許される事なのだろうか?
 それが正しい事なのか、間違っている事なのか……僕には分からない……。

「とにかく、僕には何も責められる謂れは無いはずです。だから、こんな事はもう打ち切って、
 厨房に戻らせて欲しいな」

 ――――一瞬だけ、川越さんの目が、冷酷な物になった気がした。
 気のせいか、それとも。

「……と、とりあえず、もう少しだけ待っていて下さい」

 返事も聞かずに、部屋を出る。
 ……そのまま、力無く壁にもたれかかる。
 川越さんは、一体、何者なんだろうか?
 料理人だと思っていたけど……今の川越さんからは、何か、おぞましい物を感じる。
 信じてもいいのだろうか。出来れば、疑いたくはない。
 でも……今の川越さんは、"本当に信じていいのか?"と迷わせる程に……恐ろしかった。

「やっと、俺に順番が回ってきたみたいだな……」

 ふらふらと、店舗部分まで戻る。
 ……頼んだ通りに、変な髪形の人はここで待っていてくれた。

「あの、お名前は?」
「……ポルナレフだ」
「じゃあ、ポルナレフさん。さっきあった事を話していただけませんか?」
「分かったよ……」

 ポルナレフさんの口から、先程あった事が語られる。
 明かりの付いたここを見付け、中に入って川越さんに遭遇した事。
 そして、例の料理の正体を知らずに食した事。
 真実を知り、激昂した事。
 その際の一言で、自分が目撃したような状況になっていた事。

「……こんな所だ」
「そうですか……」

 こうやって、話を聞く限り……ポルナレフさんが怒るのも、頷ける。

「……まだ他に、お聞きしたい事が」
「さっきの事なら、もう話しただろ」
「いいえ、それとは別に……」

 僕が、聞きたい事。
 それは……さっき見た、甲冑を着た何かの事。
 あれの正体は何なのだろうか?

「……さっき、川越さんとポルナレフさんが睨みあっていたときに、近くにいたのは何だったんでしょうか?
 甲冑を着てた……等身大の、人形みたいな。ポルナレフさんは、知りませんか」

 もしかしたら、支給品なのかもしれない。
 今はいないけど……多分、仕舞っているのかもしれない。
 あの大きさじゃ、いつも持って歩くのは大変そうだし。
 ――――だけど、ポルナレフさんの反応は、僕の予想していない物だった。

「……お前も見えるのか?」
「え? まぁ、そうです、けど……」
「もしかして……スタンド使いじゃなくても……?」

 そう言って、ポルナレフさんは黙ってしまった。
 聞いちゃいけない事を、聞いてしまったのかな。
 だとしたら謝らなきゃいけないかな。
 でも、今ポルナレフさんの口から零れた台詞が気になる。
 ――――スタンド使いじゃなくても……。
 一体、"スタンド使い"って何の事だろう?

「……あ、すいません、何か変な事聞いちゃったみたいで……」
「……」

 僕の声に耳も貸さずに、ポルナレフさんは何かを考えている。
 ……聞かれたくない事だったんだろうか。
 でも、"スタンド使い"が一体何なのか、凄く気になる。

「え、えーっと……その、"スタンド使い"って、一体……」

 恐る恐る、僕はポルナレフさんに尋ねる。

「……俺に聞かずとも、知ってるだろう」
「いいえ、全く……聞いたこともありませんけど……」
「本当か?」
「本当に決まってるでしょう。冗談言ってる余裕なんてありません」
「そうか……」

 そう言うと、ポルナレフさんはおもむろに立ち上がり、外へ出て行こうとする。

「ちょ、ちょっと! 何処へ行くんですか!」
「……もう、ここには用は無いからな」
「……そうですか……」








 どれだけ経ったのだろうか。
 いつまで経っても戻って来ないマウンテンバイクに業を煮やした川越が、店舗に戻ると。
 ……ポルナレフも、マウンテンバイクもいない。
 だが……レジの横に、書き置きが残されていた。

「これは……」


 川越さんへ
 黙ってここを出たのは申し訳無く思っています。
 ですが、今の川越さんを……僕は、信用しきれません。さっきの話も含めて……。
 なので、暫くキバヤシさんの所に行って来ます。
 自分勝手なのは、十分分かっています。ですが、こうするしか無いんです。
 お互い生きていたら……また、会いましょう。

                        マウンテンバイク


「全く……仕方ないですね」

 それを読み、再び「やれやれ」と言った表情で溜息をつく川越。

「そうだ、店内を片づけないと。あんなに散らかったままじゃ、お客さんに悪いですよね」

 そう言って、倒れた机を起こす。
 地面に散乱した食器を拾い集めて、厨房へ持って行く。
 ……その際に、オエーの生首も厨房へと持って行く。

「全く、どうして分かって貰えないんでしょうか? おかしい事は、何も言っていないんですがねぇ……」

 ブツブツと呟きながら、厨房へ引っ込んでいく川越。
 そして……オエーの頭部を再びゴミ箱に入れる。

「……あの鳥だって、美味しい料理になれて、幸せなはずなのになあ……」

 もう一度小声で呟いた後に、川越は再びまな板と向きあった。



【D-3・レストラン/一日目・早朝】
【川越達也@ニュー速VIP】
[状態]:健康
[装備]:包丁@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)、不明支給品×1~3
[思考・状況]
基本:僕の料理の力で、殺し合いを止める
1:もっと料理を作る
2:バイク君もポルナレフも、何故分かってくれないんでしょうか?








(すみません、川越さん……僕は……貴方を、信用できなくなってしまいました)

 夜道を歩きながら、僕はそう心の中で呟いた。
 結局、あの後ポルナレフさんとも別れ、僕もレストランを出た。
 幾ら鳥とは言え、参加者を簡単に殺してしまう人を信用することは……難しい。
 そう考えて……レストランを飛び出した後に、夜の商店街を歩いていた。

(…………)

 僕は……川越さんに、騙されていたんだろうか?
 それとも、僕が、川越さんを裏切ったんだろうか?
 どちらにしろ、僕の心のモヤモヤは、簡単には晴れてくれそうにない。
 あの時、"鳥は鳥だ"と割り切ってしまえば良かったんだろうか。
 確かに人は、他の生き物の命を頂いて生きている。それと同じと考えれば良かったんだろうか。
 そうすれば、こうやって川越さんの元を離れることも、モヤモヤすることも無かったのかもしれない。
 でも、僕は割り切れなかった。
 あの鳥も僕と同じ参加者だと考えると、どうしても、割り切れない。

「……とにかく……キバヤシさんの所に行こう」



【D-3・商店街道中/一日目・早朝】
【マウンテンバイク@オカルト】
[状態]:健康、精神疲労(小)、川越への恐れ、苦悩
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品×1~3、治療用具一式@現実
[思考・状況]
基本:殺し合う気はない
1:キバヤシさんの所に行く
2:レストランには、あまり戻りたくない……
3:"スタンド使い"って何だろうか?








(まさか、スタンド使い以外にもスタンドが見えているのか?)

 今までの出来事が、俺の考えに疑問を投げかけてくる。
 ……スタンド使いではないような奴にも、スタンドが見えていた?
 そんな事があるはずがない……と言いたいと所だが、そう言う訳にはいかなかった。
 良く考えてみれば、おかしい事が沢山あった。
 最初に出会った、あの中年男にも見えていた。
 川越サンにも、見えていた。
 そして、あのバイクとか言う奴にも、見えていた。
 幾ら何でも可笑しい。そんなに都合よく、スタンド使いに遭遇するか?
 出会う奴出会う奴全てが、スタンド使いだなんて、都合が良すぎないか?

(……だが、まだ断定はできない……クソッ、どうする?)

 まだ、どちらか判断するには要素が少ない。

(……夜が明けるまで、あまり時間がない。やらなきゃいけない事が多すぎて、イヤになるぜッ!)

 心の中で毒づきながら、俺は夜の街に歩き出した。



【D-3/一日目・早朝】
【ポルナレフ@AA】
[状態]:疲労(小)、首元に血を吸われた跡
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品(1~3)
[思考・状況]
1:スタンド使い以外にもスタンドが本当に見えるのか、判定する材料が欲しい
2:太陽が昇るまでに仲間を集めて吸血鬼(田代)を倒す。DIOも、居るようなら倒す
3:承太郎達を探す


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