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emotion  ◆i7XcZU0oTM





「6時だ……」

 誰に言うとも無く、俺は呟いた。

(……)

 PDAを見ようとしては止め、見ようとしては止め、の繰り返し。
 どうしても、嫌な想像が、拭えない。
 ……心の底から、怖れている。定時更新を、見る事を。
 エルメスさんが、本当にここに来ているのかはっきりしてる訳じゃないのに。
 まだ、そうだと分かってる訳じゃないのに。怖くて怖くて、仕方がない。
 俺の恐れを感じ取ったのか、イズン様が俺に声をかけてくれた。

「……大丈夫ですか?」
「……ええ」

 できるだけ心配をかけないように、無理に笑いを作って返した。
 ……だが、逆効果だったようだ。

「本当に、大丈夫なんですか?」
「……大丈夫ですよ。それより、お願いがあるんですが」
「何でしょうか」
「――――少しの間でいいので……一人にしていただければ、ありがたい、です」

 ……雰囲気やらで、察してくれたのかもしれない。
 イズン様は、何も言わずに、俺に優しい笑みをかけて、静かに部屋を出てくれた。

(…………見なくちゃ、載ってるかどうか分からないけど……どうしても)

 運動したわけでもないのに、息が荒くなる。自然と、体も震えて来た。
 ……もしも、名前が載っていたとしたら。もしも、だ。
 俺は、その事実を受け止められるのだろうか?
 俺は……その現実に、負けずにいられるのだろうか?
 ……分からない。見てみなければ、分からない。
 そんな事は分かってる。けど……。
 見る勇気が、持てないんだよ……。

「ハァ、ハァ…………」

 何てことはない。
 ただ、スレを読むだけじゃないか。
 そう言い聞かせようとしても、心がそれをはねのける。
 心は……既に分かってるんだ。
 そんなに、単純なことじゃないって事を。

「……」

 手が汗ばむ。震える。
 ……あんまり、イズン様を外で待たせている訳にもいかない。
 それに……いつまでも、迷っていられないし……。

「くっ…………!」

 素早く画面をタッチして、板を呼びだす。
 それと同時に、俺は目を瞑ってしまった。

(神様……どうか、俺が杞憂してたってだけにしてください!)

 恐る恐る、そしてじわじわと、目を開く。



 生存者のみなさん、おはようございます。
 第一回定時更新の時間となりました。
 まずはこの6時間での脱落者の発表です。



 ひろゆきのコメントが、まず目に入った。
 重要なのは、ここじゃない。重要なのは……。



 MSKK
 ショボーン
 オエー
 ウララー
 エルメス
 寺生まれのTさん
 …


「――――あ、ああああ、あ」


 載っている。
 載ってしまっている。
 ということは、つまり。


「ああ、ああぁぁ……」


 そんな馬鹿な。
 有り得ない。
 あってはならない。
 こんなことは。


「う、うう、ううっ……」

 俺の手から、PDAが落ちる。

「……こんな、こんなのって」

 頭の中が、一気に真っ白になる。
 エルメスさんが。
 エルメスさんが、そんな。

「あ、うっ……うぅうっ……」









「…………嘘だ――――――――ッ!!!」









~~~~


「……これは!?」

 突然の大声に驚いたイズン様が、部屋に飛び込んでくる。
 そこには……半狂乱で暴れる電車男の姿が。

「うあああああっ、あああああっ!!!」

 その場にある物全てに当たり散らし、とにかく暴れ回る電車男。
 今までの姿とは全くかけ離れた姿に動揺したものの、ハッと我に返るイズン様。

「……どうしたのです!? 落ちついて、ください!」
「俺は、俺は……! くそおおおおぉっ! 俺は――――ッ!」
「とにかく落ちついて、私に事情を話してください!」

 ……イズン様の言葉も耳に入らないようで、依然として暴れるのをやめない電車男。
 少々洒落ていた部屋も、今ではまるで強盗にでも入られたかのように荒れている。
 棚が倒れ、中身は無残にも床に散らばり、傷一つ無かったフローリングも、今では傷だらけだ。

 ……大切な人の死。今までにない程、電車男の心を責め、壊し、砕いた。

「ううっ…………こんな事って、ない、ぞ…………」

 先程とは打って変って。
 今度は、地面に手をつき、嗚咽をこぼし始める。

「……何で、エルメスさんがぁ……」

 その言葉で、イズン様は何が起こったのか悟った。
 初めて出会った際に聞いた、電車男が想いをよせる人の名。

「……」

 体に刻まれた、細かな傷には目もくれずに、ただただ涙を流すことしかできない電車男と。
 何も言えずに、ただ立ちつくす事しかできないイズン様。
 だが……今の電車男には、何を言っても意味が無かっただろう。




~~~~


 心の中が、荒野に変わっていく。
 一筋の光も差さない、闇の荒野へと。
 何も生えない、不毛の大地。
 俺は、その真っ只中に、たった一人で立っている。
 ただただ、冷たくて、寂しい。
 何もない。がらんどうの世界。
 俺だけが……いや、俺すらもいない、空虚な、世界。
 何故。何故……。

 俺はここで、エルメスさんに、何もしてあげられなかった。悔しい。
 ……悔しくて、仕方が無い。
 俺はここで、今まで、何も出来なかった。自分が、憎い。
 ……憎くて、仕方が無い。
 誰に、この憎しみをぶつける?誰に、この悔しさをぶつける?
 ぶつける相手なんていない。ぶつけたって、どうしようもない。
 現実は変わらない。時間は戻らない。どれだけ憎んでも、どれだけ悔やんでも。
 だけど、それでも……悔しくて悔しくて仕方がない。

 何故なんだ。
 どうして、俺は無力なんだ。
 エルメスさんを護れる強さが、何で俺にはないんだ。
 俺が強ければ、エルメスさんを護れたはずなのに。
 なのに……何故なんだ。
 何で、俺はこんなにも、弱いんだろう。





~~~~



 ただ項垂れ、ピクリともしない電車男。
 儚い"光"は失われ、代わりに底も見えぬ程の"闇"。
 脆い"希望"も砕け散り、代わりに先の見えぬ"絶望"。
 その2つが……心に、深い傷を与えた。
 知りたくない真実を知ってしまった結果。
 負いたくない傷を負い、直視したくない現実を直視させられて。
 後に残るのは、闇だ。

(……)

 それでも、まだ心の底には。微かな光が、残っている。
 蝋燭の炎の様に、少しの風で消えてしまうほどの、光。
 その光が失われた時に……電車男の心が、完全に壊れるだろう。

(この短時間で、あれほどまでに豹変してしまうなんて……)

 そんな状態に陥ってしまった電車男を、心の底から案じるイズン様。
 ……今は、何も言わずに落ちつくまで待った方がいい。
 そう考えたイズン様は、黙って電車男の隣に寄り添うのみ。

(……完全に立ち直るのは難しいでしょうが、少しでも……)

 少しでも、元に戻ってくれれば。
 そうすれば、立ち直って生きて行くことも、できるのかもしれない。
 今はただ、来るか分からないその時を、待つだけだ。



【E-3 住宅内/一日目・朝】
【電車男@独身男性】
[状態]:健康、精神疲労(大)、傷だらけ、悔恨
[装備]:アジ@おや、ポッポの様子が…
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、アクアブレイカー@Nightmare City
[思考・状況]
基本:???
1:……。

【イズン様@ゲームハード】
[状態]:健康
[装備]:ライオットシールド@現実
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本:殺し合いから生還し、アスガルドへ戻る
1:電車男が、少しでも元に戻るまで、今は待つしかない
2:どうにも頼りない電車男に助言しつつ、脱出策を探す
3:テレビやPDAのような現代の機械が気になる
※バトルロワイヤルを巨神たちによる娯楽だと予想しています
※原作では遠方の物と対話する力を持っているため、制限がなければ使用できるかもしれません
※共通で迷彩服の男(グンマー)を危険人物と認識しています
※会場中のテレビではテレビ局のスタジオからの映像を受信できます。他の映像は受信できません


No.76:さー、新展開。 時系列順 No.78:存在があまりに大き過ぎた
No.76:さー、新展開。 投下順 No.78:存在があまりに大き過ぎた
No.54:夢で逢えたら 電車男 No.101:悲しみの弔鐘はもう――
No.54:夢で逢えたら イズン様 No.101:悲しみの弔鐘はもう――