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fate of the blood

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匿名ユーザー

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fate of the blood  ◆m8iVFhkTec




いわっちが2階へと降りた時、1階ロビーが騒がしい事に気がついた。
彼はそこから見下ろしたところ、驚愕の光景が広がっていた。
異様に頭のデカいスパゲッティヘアーの女性が、熊と一人で戦っていたのだ。

「ふざけるな! ふざけるなぁあああああああ!! 意味不明な事ばかり起きやがってよォ~~~~!!
 この熊ヤローがァ!! こんなとこでおまえに食われて終わってたまるかよクソッタレが―――ッ!!!!」

何故かわからないが、物凄い形相でキレているようだ。
いや、キレているというよりも自暴自棄のそれに近いかも知れない。
普通なら熊に出くわしたら逃げるだろう。いや、闇雲に逃げるのは得策ではないけれども。

エルメェスは不運にもテレビ局に入って早々、クマーと鉢合わせした。
彼女は知っていた。熊は時速40Kmで走る、つまりはダッシュで逃げれるような相手ではないと。
死んだふりも効かない。木に登るのも無意味。つまり、目があった時点でほとんどの場合詰んでいると。

死ぬのか。またここで理不尽に殺されるのか。
絶望した彼女はやけくそになった。どうせ死ぬなら、その怒りをぶつけてやらねば気が済まない。
じわじわと迫り来るクマーに対し、むしろ懐に突っ込んで殴りつけてやった。

「これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも!
 これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも! これも!
 全部理不尽への八つ当たりだァアアアアアアアアア!!!」

凄惨な運命に対する怒りが、悲しみが、憎しみが、熊の腹に拳となって叩き込まれる。
人は追い込まれると感覚が冴え渡るのだろうか。クマーの振り払う腕を見事かわしてのけ、股に思いきり膝をぶつけてやる。
怯むクマーに対し、エルメェスの猛攻は止まらない。

『キッス!!』

手のひらを広げ、クマーを叩くと同時にシールを貼り付けた。

        ∩__  _∩
        | ノ    | |  ヽ
       /  ●  | |  ● |
        |    ( _| |●_)  ミ
       彡、    | | ||  、`\
      / __ ヽ| |ノ /´>  )
      (___) | | / (_/
       |□    | | /
   ペタッ |  /\| | \
       | /     )  )
       ∪    (  \
              \_)

     !?                !?
   ∩___∩三 ー_        ∩___∩
   |ノ      三-二     ー二三 ノ      ヽ
  /  (゚)   (゚)三二-  ̄   - 三   (゚)   (゚) |
  |    ( _●_)  ミ三二 - ー二三    ( _●_)  ミ
 彡、   |∪|  、` ̄ ̄三- 三  彡、   |∪|  ミ
/ __  ヽノ   Y ̄) 三 三   (/'    ヽノ_  |
(___) ∩___∩_ノ    ヽ/     (___)

クマーの肉体が二つに分裂ッ!!
さらに戸惑うクマーの片方を殴りつける。
もはや押されんばかりの怒涛の攻撃。
そこまで呆然と見守っていたいわっちは我に返り、エルメェスに声をかける。

「やめなさい! 武器の一つも無しに危険です! こっちへ逃げてください!!」

勢いとは裏腹にエルメェスの徒手空拳は、ダメージとしては皆無に近かった。
クマーとの体格差の時点で既に人間の腕力では絶望的、それに加えて毛皮と筋肉の鎧を纏っているのだ。
例え格闘家であったとしても、生身の人間に勝ち目があるとは考えられない。

「武器ィ? 武器ってのは……」

エルメェスは低い声でそう呟き――。
クマーに張り付けたシールに触れ――。

「これの事かぁあああああああ!!!」

――思いきり剥がすッ!!
ムチを打ち付けるような衝撃音!! 二つのクマーの肉体が結合する!
そしてその結合は同時に、破壊を伴う……ッ!!

「グマアアアァァァァァッ!!」

胸部の皮膚が裂け、鮮血がはじけ飛んだ。

「ハァ…ハァ………って人ッ! 人いるじゃねーか!! な、なぁアンタ、一体ここは……」
「まだ! まだ死んでない!」
「ハッ!?」

シールによる一撃も、ほんの一瞬だけ怯ませただけに過ぎない。
飛びかかるクマーに、エルメェスは押し倒される。
クマーはエルメェスの首めがけて口を開き、その肉を噛み千切ろうとする。
いわっちは咄嗟にリュックの中から『http://www.hellowork.go.jp/』を取り出し、クマーへと投げつける。
ベキッ、と音を立ててクマーの頭に直撃!
うめき声を上げながら頭を押さえて怯む、その隙にエルメェスは抜け出した。

「クソッ……これじゃあすぐには倒せねぇのか……ッ!」
「その熊を地下駐車場へ誘導してください! 今援軍を呼んできますから!」

エルメェスの無事を確認したいわっちはそう言うと、急いで階段を駆け上がっていった。

「おい、行っちまいやがったよ……ホントに来るのかよ援軍なんてよぉ!?」

さっきメガネのおっさんが助けてくれなければ、自分はそこでやられてたに違いない。
しかし、彼が言う『援軍』なんて本当に来るのだろうか。

「クマアアアァァァァァァァッッッッ!!!」

……あぁ、もう考えている時間は無い……!

「チッ…ちゃんと連れてこいよ!」

エルメェスはすぐさま地下へと階段を降りた。


「クッ……流石に疲れが……」

前半で死力を尽くしたエルメェスの体力に限界が訪れる。
熊の一撃をかいくぐって、シールを貼り付けて剥がす、そこまで出来る体力は無い。
そうして、彼女は柱を盾にぐるぐると逃げ回っていた。

「い、いつまでこれをやってればいいんだ……」

援軍を呼んでくる、という言葉はやはり当てにならないものであったのか。
……そうだ、もし助けてくれるのであれば上に逃げて合流するという手段があるじゃないか。
それなのにあえて地下へ移動させたのはどういうことだ?
まさか自分がこの建物から脱出するために、アタシを犠牲にするつもりだったのかもしれない。

「ああそうかよ、やっぱこうなるのかよ、ふっざけんなクソ野郎ォ―――ッ!」

エルメェスがそう叫んた時に、エレベーターの扉が開いた。
そこにいたのは天高くそびえ立つ銀髪の男、そして黒縁メガネの髭親父。
足を負傷したポルナレフは階段を使えず、結果田代に肩を貸しながらエレベーターまで移動する必要があったのだ。
到着した二人は、まずエルメェスの顔のデカさに驚く。

「お、思ったよりでけぇじゃねえか。ヘディング上手そうだな」
「何かの呪いでも掛けられてるのでは無いか? 顔を縮めれば南米の美女だぞ。肉体が残念だが」
「やっと来たのか……! って、てめーら言いたい放題言ってんじゃねぇぇぇ――!!」
「このやろー……助太刀しに来たおれらになんてこと言いやがる!」

ポルナレフはそう言いながら、シルバーチャリオッツを呼び出す。
田代もいち早く地を蹴り、クマーへと飛ぶッ!

「血管針攻撃!!」

切り落とされた右腕、その先から無数の血管がクマー目掛けて伸びる。
その針のように鋭い先端が、クマーの肉体へと突き刺さるッ!!

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!」

獣の血液の吸収ッ……! パワーが湧き上がり、スタミナが向上するのを感じる。
クマーの怪力によって血管針は引き裂かれ、周囲に血が飛び散った。
怒りを露わにしたクマーは田代へと突進していく。

『チャリオッツッ!!』

ヒュンッ……と音を立ててレイピアは風を切り裂く。
その鍛え抜かれたスタンドの技術、高速の乱れ突きがクマーの肉体を次々に穴を穿つッ!
クマーは突進を止め、思いきり腕を振り払い、怪物のような一撃が甲胄の騎士へと放つ。

「甲胄を外すッ!!」

刹那―――シルバーチャリオッツの鎧が四散、その重量から解き放たれる。
それはもはや羽の如く軽やかな動作で、その腕を回避してみせたッ!

「目に焼き付けるがいい、人間には決して超えれぬ壁をッ、吸血鬼の優れた力を―――ッ!!」

田代まさしの両腕、両足に切れ込みが入る。
人差し指と中指の間から、肩口に至るまで2つに割れる。

『奥義・細き八本足(ミニにタコ)ッ!!』

四肢が全て枝分かれすることにより、両腕、両足の手数を100%上昇させる技。
右腕が切り落とされた田代は、この能力により従来と同じ二つの道具を持つことが可能となる!
彼の手に握られるのはポルナレフの支給品『トールの剛弓』、いわっちの支給品『モデルガン』。
"片腕"に二つの武器をそれぞれ握り……

それを思いきり叩きつけるッ―――!!

「WRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRYYYYYYYYYY――――!!!!」
「クマァッ……!」

四本の足による踏み込みは、その一撃の重さをより強固なものとする……!
矢が無ければ意味をなさないはずの弓も、吸血鬼の力をもってすれば立派な鈍器へと変わるのだ。

クマーの鍛え抜かれた拳が振るわれ、田代へと叩きつけられようとする。
だが、インパクトの瞬間、クマーの視界がブレるッ!

「HEY!! シールにはこんな使い方もあるんだぜェェェェ!!」

シールを貼り付けられた事によって、クマーの肉体は左右に分裂ッ!
田代へと振り下ろした拳の位置は大幅にずれ、虚しく空を切った。
そして一瞬の混乱と、状況把握のための隙が、チャリオッツによる攻撃を許した。

繰り出されるレイピアの刃、その速度は甲胄を纏っている時とは比にならない速度。
突きの威力はスピードと比例する。故にその殺傷力も上昇するッ!!

ここで攻撃はまだ止まない。エルメェスの手により、シールが剥がされる。

―――肉体の結合 その瞬間に生じる 肉体の破損

地下空間に、血の雨が降り注いだ。

「グッ……マアアァァァァアアアァァァッ!!!」

咆哮が地下駐車場に響き渡り、続いて巨体が地面に崩れ落ちる音。
ボロボロの皮膚から溢れ出す血液が、黒いアスファルトを赤く塗りつぶす。

力の権化が、野生の災害が、今ここに倒れ伏したのだ……!


「……や、やったのか……ついに、倒したんだな……!」
「あぁ、そうだ。勝ったんだぜ俺たちはよ…!」
「アハハハハハッ…………勝利ィ――――ッッ!!!!!!」














ぐちゃり

「は…………?」

【エルメェス@エルメェス菌 死亡】

熊の討伐から、10秒にも満たない時間。
エルメェスの巨大な頭部が、後ろからトマトのように潰された。
何が起きたか理解する暇は無い。それよりも早く、彼女の脳みそは形を失ったのだから。
力を失った"物体"は、そのままゴトリと床に倒れこむ。

「お、おい………………あ、あんた………」

彼はエルメェスの名を知らない。
死んだその瞬間にも、名前を呼んでやることは出来ない。
呆然と、その悲しみを感じ、そしてすぐさまエルメェスを殺した者への怒りに変わる。

「田代……てめぇ…………!」
「あぁ、若い女の血だ……いい、いいぞ。素晴らしい!
 酒なんかよりもよっぽど美味だ! 力が溢れるようだ、気分が上昇していく!」

田代はエルメェスの首筋から、一気に血液を吸い上げる。
その心躍るような、目の回るような、魅惑の味に口角をつり上げた。
人間ではない、歪な笑みはまさに怪物のそれである。

「ククク、最初に言った通り、私は本能に忠実なのだよ! 私はずっと"若い女の血"を飲みたいと考えていたのだ!
 そして何より、あの熊がいなければもはやここは私の城だ。さて、第二回戦と洒落こもうか、ポルナレフ君?」
「絶対に、絶対に許さねぇ! やはりてめーは信用出来ねぇと思ってたんだ! いわっちさんの好意を裏切りやがって!!」
「何とでも言うがいい! ここには日光は差し込まぬ! そしてチャリオッツの戦法は既に見切らせてもらった!
 もはやお前など、私の敵ではない……私の昼食になるがいい、ハハハハハハハハハハh……」

田代の笑い声が止まる。
己の肉体の異常を感じ取った。
それはまるで、体の奥底を何かに侵食されたような……。



        ¶


「な、なんだこれは!?」
     ¶   ¶
真っ先に田代の右腕の断面から、エルメェスの髪の毛を構成していた『エルメェス菌』が顔を出した。
彼女の血液を体内に摂取したが故に、彼もまた感染してしまったのである。
¶¶     ¶¶¶¶¶¶     ¶¶
「な………なんだ……? こいつ、何が起きている……?」¶¶
「クソォォォォ!! どういう事だ!? まさか、罠だったというのか……!?
 バカなッ! 何故、この私が……この私がこのような不可解な目にィィィイイイWRYYYYYYYY―――――ッ!!! 」

次々と体中から¶¶¶¶¶を強引にむしり取る。
しかし、その数は一向に減る様子が無い。
ポルナレフも、田代もそれに目を取られている時に、予測していなかった事が起きた。

「クマアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!」

"あくま"はまだ死んじゃいない。
眠りから目が覚めたならば、バーサーカーは暴れだす。
雄叫びと共に、その強靭な腕が田代の首を軽く撥ね飛ばした。

バレーボールのように生首が飛び、コンクリートの地面に強く叩きつけられる。
田代の顔の半分が潰れ、見るも無残なものへと変わる。

「くそッ……情けねぇ、哀れ過ぎる最後だな……。これが人間をやめた者の末路……か……」

血で赤く染まる視界いっぱいに、無数の牙が並んだ口の中が映った。
……その時、田代の脳内には、多くの観客に囲まれて舞台に立つ若き自分の姿が写っていた。
眼鏡の奥の俺の瞳は輝いていて、それを見る観客たちの目もキラキラとしていた。

(―――あぁ違う、たくさんの人たちを裏切った者の末路か……)

俺の目は今や濁りきって、俺を見る目も冷たくなっていた。
盗撮、そして覚せい剤、彼はいくつもの誘惑に負けて、人々を幻滅させた。
さらにたった今自分は、吸血衝動に負けた。これはその報い。

「……こんなはずじゃ、なかった……のになぁ……」

クマーの口は閉じられ、吸血鬼の頭蓋骨はペチャンコに砕かれた。


【田代まさし@ニュー速VIP 死亡】
【残り46人】


びちゃびちゃっと滴り落ちる血や体液、骨を砕きながら肉と脳を貪る。
唾液が滴り落ち、顔を覆う体毛を醜く濡らす。
なんて残酷な光景だろうか。しかし、これが自然の摂理。
ポルナレフはその様子を見て、底知れぬ恐怖を感じた。

階段を駆け下りる音。
只ならぬ異変を聞き付け、1階で待機していたいわっちが顔を出す。

「いったいこれは……!? ポルナレフさん、田代さんとあの女性は……」
「死んじまった……クソッ、もうどうすりゃアイツを殺せるんだ……?」
「に、逃げましょう……!」

いわっちは足を負傷しているポルナレフに肩を貸し、逃げようとする。
しかし、その移動速度はあまりにも遅く、クマーはすぐに追いついてきた。
獣の吐息はすぐ後ろまで迫る、エレベーターに逃げ込む事も出来ない。
そしてその鋭い爪で、無慈悲に二人を引き裂く……。




エイチティーティーピーレーザー!!
      ∧∧
     (,,゚ー゚)//
   ~(__つhttps://llllllll.llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll
        \

階段にいるしぃが青い光線を放ち、それはクマーの目に直撃した。

「クマアァッ!?」

クマーは予期せぬ痛みを受けたこと、そして視界を奪われたことに戸惑う。
あの猫が何かしたせいで左側が何も見えなくなった、それはクマーに恐怖を抱かせる。
猫と反対を向き、駐車場の出口へと一目散に走っていく。
外へと逃げようとするクマー。
だが、いわっちたちにはそれを止める術はなく、ただ見ていることしか出来なかった。


2階からクマーの頭にぶつけた『https://www.hellowork.go.jp/』は見事に割れてしまった。
いわっちが地下へ向かう時、上で待っているように言われたしぃはその文字列『https://』を見て、閃いたのである。
かつて自分の仲間が、これを使って行っていた技、『httpレーザー』を。

「……結局、二人も味方を殺してしまい、熊にも逃げられてしまいましたね……」
「いわっちサン……」
「あぁ……情けない限りです……。何故私は当初の計画通り3階へあの女性を呼ばなかったのでしょう。
 上に昇らせたら追いつかれてしまうと思い、地下へ向かわせた結果、こんなことになるなんて」

駐車場は大量の血液がぶちまけられ、人間の亡骸が二つ横たわる。
人喰い熊は結局街の中へと放たれた。なんて最悪の結末だろうか。

「……いわっちサンよ、味方だったのは一人だけだぜ? あの吸血鬼は結局裏切ったんだ。
 それにあの熊に逃げられたのはおれたちの力不足だ。あんたがそこまで責任を感じる必要は無いさ」
「ポルナレフさん……」
「さぁ、どうする? 熊がいなくなってテレビ局に平穏が取り戻されたんだ。
 ここからがあんたの仕事の本領だろ。さぁ、言ってくれよ。これからどうすればいいかを」

どれほど心苦しい思いをしても、ここで足を止めてはいけない。
今、この瞬間にも誰かが殺されているのかもしれないのだから。

いわっちはそれを理解している。
沈み込みたい気持ちを抑え、彼は彼の頭の中の戦略を話す。

「……E-3エリアに市役所があります。そこで街全体に町内放送をかけるのです。
 『今から2時間後、テレビを見るように』、と」
「なるほど……って、それだったら町内放送で交渉をすればいいんじゃないのか?
 街中に声を流せば、流石のひろゆきにも聞こえると思うんだが」
「それではいけないのです。あなたは誰とも知れぬ声に『殺し合うな』と言われて、信用出来るでしょうか?」
「…………」
「姿を晒すことは大きなリスクを伴います。しかし、声だけ、文字だけではなく、姿を見てもらう事は大切なんです。
 私の一挙一動、雰囲気、そういった私の情報をテレビ越しにダイレクトに提供したい……それは私のこだわりでもあります。
 参加者たちにもひろゆきにも、私の全身全霊の姿を"直接"お届けすることに意味があるんです」

それが、今この場で指揮を執るいわっちの持論である。
自分の姿を見てもらうことで、誠意を、こだわりを、意志の強さを訴えかけねばいけないのだ。
そうでなければ参加者は振り向くことはないだろう。主催者にも伝わることはないだろう。
リスク無くして、何物も得ることは出来ないと、そう考えている。
そして彼を信じるしぃも、ポルナレフも、その考えに対して意義を唱えることはない。

「し、しかしよ…おれは足が負傷しているぜ。誰が市役所へ向かうんだ?」
「そうですね……やはりここは私が走って……」
「いわっちサン、……ソノ……ワタシが行くヨ」

ずっと静かにしていたしぃが手を挙げた。
その顔は平気そうにしているものの、少しだけ不安げな様子を隠しきれていなかった。
彼女の思いがけぬ発言にいわっちは戸惑う。

「い、いいのでしょうか? 外を単独で行動するのはかなり危険ですよ……?」
「ワタシ、いわっちサンに助けられてばかりデ、まだ何も出来てない……。
 だから、少しでも手伝いたいノ。怖いケド、なんとか上手くやるカラ……」
「しぃさん……」

常に殺し合いの中で怯えていわっちに守られていて、出来ることと言えば時々慰めるくらいだった。
そんな臆病なしぃが恐怖を押し殺し、手伝いたいという想い、それを無下にするのは憚られた。
いわっちはしぃに片方のトランシーバーを手渡す。

「それで私といつでも通信が出来ます。いざという時はそれで私にいつでも知らせてください。
 熊もまだ近くにいるかもしれません。なるべく隠れながら、襲われないようにしながら向かってください。いいですか?」
「ウン」
「しぃ、あんたのその勇気、尊敬に値する。
 ……あぁ、俺も足さえやられてなければ、あんたをこんな危険な目には合わせねぇのに……」
「イイノ。それじゃあ、行ってクル」

しぃはそう言って朝の柔らかな日差しが溢れる、戦場へと向かっていった。
その様子を見送るいわっちの顔は、しぃ以上に不安そうな顔をしていた。

「私たちも行動します。我々がすべき事は報道フロアで機材の調整です。
 いつでも放送出来るように準備をしましょう」
「あぁ、了解した」

と、その時、エレベーターに向かおうとした彼らの耳に、第三者の声が聞こえた。

「う、う~ん……な、なんやもう……」

潰されたエルメェスの頭の残骸の中には、やきうのお兄ちゃんの顔がそっくりそのまま残っていた。
¶¶¶は死滅していき、エルメェスの頭部は造形を失い、黒い液体と残りカスへと化していく。

「何故先ほどの息子さんがここに……」
「…よくわからんが、とりあえず、こいつも上に運ばなくては…。
 ていうか、この化物がさっきの女に化けてたって考えで合ってるのか……?」
「さぁ……彼はそんな力があったんですかねぇ……。
 それより彼を上に運べるのって、私しかいないようなのですが」
「あぁ、すまん。おれに肩を貸しながらこいつを背負うのは重労働だよな…置いていくか…。化物だし…」
「いえ、一応知り合いですしね……連れて行きますよ……」

複雑な気持ちが二人の心の中を交差したという。


【やきうのお兄ちゃん@なんでも実況J 復帰】


【E-2 テレビ局・地下駐車場/1日目・午前】

【いわっち@ゲームハード】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、モデルガン@サバゲ、救急箱@現実、不明支給品(0~1・本人確認済み)、田代まさしのデイパック
[思考・状況]
基本:殺し合いをやめさせる
1:準備を整えて2時間後にテレビから"直接"停戦の意思を主張する
2:情報や人を集めたい。"異世界"の事も調べたい……
3:しぃが心配
※田代のデイパックには、基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、石仮面@ジョジョの奇妙な冒険、が入っています


【ポルナレフ@AA】
[状態]:疲労(大)、首元に血を吸われた跡、肋骨を打撲、足を重傷(骨折&噛みちぎられた肉・治療済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品(0~2・打撃武器は無し)、トールの剛弓@斬撃のレギンレイヴ
[思考・状況]
1:いわっちに協力する
2:承太郎たちがいれば合流を目指す


【やきうのお兄ちゃん@なんJ】
[状態]:健康、気絶
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本:生き残る
1:……
2:もうマッマに会う気はない。次に出会ったら……
※H&K USP@現実(6/16)、基本支給品一式×3、PDA(忍法帖【Lv=03】)、PSP@現実、木製のバット@現実、釘バット@現実、
 ひかりのこな@ポケットモンスター、台風コロッケ(残り11個)@現実、不明支給品×1~3(確認済み)
 エルメェス化して混乱していたため、これらの支給品をデイパックごと置き忘れました。


【E-2 テレビ局周辺/1日目・午前】

【しぃ@AA】
[状態]:健康
[装備]:httpレーザー@AA
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、トランシーバー@現実
[思考・状況]
基本:皆死んじゃうのはイヤ
1:E-3にある市役所の町内放送で、テレビを見るように呼びかける
2:ギコ君、大丈夫カナ……?
3:カイブツ(ネメア)がコワイ……できればもう遭いたくない


【クマー@AA】
[状態]:右腕骨折、全身にダメージ(極大)、左目失明
[装備]:鍛えぬかれた肉体
[道具]:無し
[思考・状況]
基本:野生の本能に従うクマー
1:ク
2:マ
3:|
4:!
※重傷を負ったので体を休めます。


《支給品紹介》
【トランシーバー@現実】
携帯用無線通話機。旧式仕様。通信可能な二つセット。
ボタンを押して音声送信、離して音声受信。

【https://www.hellowork.go.jp/@AA】
働かない息子の前に叩きつける。

\ ⊂[J( 'ー`)し     
  \/ (⌒マ´
  (⌒ヽrヘJつ 野球見てないで働けよ!
    > _)、
    し' \_) ヽヾ\
          丶_n.__
          https://www.hellowork.go.jp/
              ̄   (⌒
            ⌒Y⌒
【トールの剛弓@斬撃のレギンレイヴ】
トールの力を宿す剛弓。引き絞るのに相当な力が必要だが、その破壊力は絶大!
7秒で引き絞れるのは神々だけです。

【httpレーザー@AA】
2chの掲示板にて、http://~と入力するとリンクになり、文字色が青色になる。
その現象を利用した青色の光線発射装置がこちら。
ハローワークのアドレスが折れたことにより入手した。


No.88:ひと時のマターリ 時系列順 No.90:神は死んだ/俺が殺した
No.88:ひと時のマターリ 投下順 No.90:神は死んだ/俺が殺した
No.85:茶鬼 いわっち No.:[[]]
No.85:茶鬼 しぃ No.:[[]]
No.85:茶鬼 クマー No.101:悲しみの弔鐘はもう――
No.85:茶鬼 田代まさし 死亡
No.71:知らない方が幸せだった ポルナレフ No.:[[]]
No.75:アクシデントは突然に やきうのお兄ちゃん No.:[[]]

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