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おしょくじのじかん  ◆XG.R2oT3cE




ああ、僕は何という見落としをしていたのでしょう……















この世界に、こんなにも美味しい『食材』があっただなんて!











□□□


「ふう……」

川越達也は一人、厨房のイスに座って額の汗を腕で拭っていた。
料理に関してはほぼ出来上がったので、後はお客さんを待つのみ。
現在はそれに備えての休憩をしているところであった。
ふと川越は、テーブルに置かれている自分と、あの大きな鳥のデイバッグを見る。
そういえば料理に夢中で中身を確認していなかったな……

「折角ですし。確認しましょうか」

そう言って立ち上がり、テーブルに置いてあった二つのデイバッグを自分のほうに寄せた。
再びイスに座り、まずは大きい鳥のバッグの中身を確認する。
出てきたのはラベルが貼られたビンと、看板だった。

「えーと、この看板は一体……」

___
|現 実|
 ̄ || ̄
何やら現実という二文字が看板に書かれている。
何故だろう。その看板を見ているだけで、物凄い緊張感と圧迫感に襲われる。
現実と書かれた面を後ろにしてテーブルに置いたところで、別の物――ラベルが貼られたビンを調べることにした。
なにやらラベルに何か書かれているようだが……


『743 名前:名無しさん@おだいじに 投稿日:03/02/07 11:20 ID:YMEEQVa4

 睡眠薬飲み過ぎると中毒になるってホントですか?


 745名前:名無しさん@おだいじに投稿日:03/02/0711:34ID:???
 >>743
 デマ。俺もう22年間毎日飲んでるけどちっとも中毒になんかなってない
                                   』

文字が小さくて分かりにくいが、書かれたものを見る限り、どうやらこれは睡眠薬らしい。
いや、22年間でしかも毎日飲んでたら、それは中毒じゃないのでしょうか……
本人が中毒じゃないと言っているようですし、気にしないほうがいいですね。
……誰と話しているのだろうか。

「まぁ、使う機会なんてないでしょう」

そう言って、川越は睡眠薬をテーブルの上に置いた。
もし使うとするならば、料理に睡眠薬を混入して相手に食わせるという方法だろう。
しかしそれは自分の料理に対する冒涜ともいえる。よってナシ。
大きな鳥のデイバッグにはもう何も残ってないので、川越はデイバッグをゴミ箱に放った。
次は自分のデイバッグを確認する番だ。
中を漁ってみると、パック詰めされた肉が入っていた。
ラベルが貼られていない為、何の肉であるかは分からない。

「? 一体何の肉なんでしょうか?」

とりあえずパックから取り出して、まな板の上に置く。
果たしてこの肉は既存の動物の物なのか、はたまたこの世には存在しない物なのか……
いずれにせよ、川越は料理人である。

「料理してみましょうか」

食材を眼にして、料理せずにはいられないのであった。


□□□


「さて、出来上がりましたね」

目の前には軽く調理して皿に盛り付けた、名前が分からない食材。
手にはフォークとナイフ。
とりあえずは調理してみたものの果たして、これは食せるものなのかが不安で手を出すことができない。

「……覚悟を決めましょう」

例えこれが食べられぬ物で、それで死のうとそれは料理人として本望である。
もしこれが非常に美味しい物ならば、それを美味しく調理した料理人としての誇りが増すだけだ。
ナイフで肉を切り、フォークで肉を刺し口元に運ぶ。

「…………はむっ」

意を決して、肉を口に運ぶ。
……美味しい。

「こんな肉、初めて食べました……。なんて美味しいんでしょう……」

惜しむらくは、この肉が何の肉であるか定かではないことだ。
つまりこの食材はもう二度と、調達することができず食べれることができないということ。
それを認識して大事に、一つ一つ、ゆっくりと味わって咀嚼していく。
柔らかく、それでいて肉汁も溢れ出てきて、甘美である。
最後の一口になった時、川越の手が止まった。
これが最後の一口―――名残惜しい。
そして、川越は最後の一口を口に含んだ。
ごくり、そうして胃の中へ送り込んだ時、彼の顔は満ち足りた笑顔となった。

「はぁ……素晴らしい一時でした。こんなに美味しい食材を僕は忘れることはないでしょう」

ゆっくりと川越はイスから立ち上がり、ぐっと伸びをする。
心なしか、体が軽く感じた。
美味しい料理を食べた所為だろうか。いずれにせよ、気分が非常に良い。

「さて、片付けの時間ですね」

その後に先ほど使った食器類を、厨房の流し台で洗う。
洗い終わったので、テーブルに置いてあったデイバッグと、肉が入っていたパックをゴミ箱へ放る。
その時、一つの切れ端のようなものが、デイバッグから落ちた。
遠目で見たのでよく分からなかったが、何かが書かれているようだった。
近づいて拾ってみると、裏面がベタベタしている。

「ひょっとすると、あのパックのラベル……!?」

そう考えると、川越の期待が高まった。
なにせ、もう一度あの食材を食べれるかもしれないのだ。
川越はラベルを反転させた。

『 人 肉 ( 解 凍 )
 原材料名:人(国産)
 消費期限
 XX.XX.XX
           100g当り
            (円)  36
            内容量       106
 保存温度4℃以下 (g)  300  価格(円)
 ―――――――――――――――――――――
 加工者 不明           外包装       』


□□□



あまりにも衝撃的な単語が目に入った。
私が食べたのは人肉だったのか……?

「あ、ああ……あああ!」

その単語を目にした川越は、数秒の後に泣き出した。
顔が驚愕の色に染まり、頭を抱えその場にうずくまる。

「ああっ……あっ、えぐっ、いっ、いっいっいっ、ふ、えへへっ、あはははっ」

しかし、泣いているのと同時に、笑っていた。
僕はなんてものを食べてしまったんだという、恐怖と罪悪感よりも、こんなにも身近なところにいたのか、という喜びのほうが勝っていた。
徐々に驚愕に染まった顔は、次第に笑みに変っていく。

「僕は……僕はっ! 何て素晴らしい食材を見落としていたのでしょう!!」
「この世の中にたくさん存在していて、尚且つ半永久的に尽きることのない食材をッ!」
「なんだ、他の家畜と同じじゃないか……! 牛、豚、鶏に続く新たな家畜ッ!」
「こんなにも甘美な食材を私は……ッ、何故ッ! 何故、見過ごしたのか!」
「この美味しさを皆にも、是非とも分かってもらわないといけませんね!」
「殺し合いもきっと! きっとッ! 止まるはずです!」
「料理された人も本望でしょう! 何せ、この私が調理するのですからッ!」
「美味しい料理になって、お客様に食われて! 絶対に幸せになれる!!」
「うふ、あはっはははっ、いひ、えふふ」

また、あの素晴らしい体験が出来るという喜び。
また、調理できるという喜び。
あの素晴らしさを他者に分け与えれるかもしれないという喜び。
これさえあれば殺し合いが止まるだろう、という喜び。
川越の心は歓喜し、川越の体は震え、川越の顔は歪みに歪む。
人肉という食材に魅入られ、狂ったように川越は笑う。

「あはっ、そうだ。こうしてはいられません」
「一刻も早く、この食材を皆さんに提供しなければいけませんね」

そうと決まれば今すぐに動かなくては。
お客様に最高の料理を。
その為には最高の食材を。

「さぁ、調達の時間です」

その屈託の無い笑顔に、悪意など一つたりとも無い。
ただその眼はどこか、笑っていなかった。


□□□


【D-3・レストラン/一日目・朝】
【川越達也@ニュー速VIP】
[状態]:健康
[装備]:包丁@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)
[思考・状況]
基本:僕の料理の力で、殺し合いを止める
1:最高の食材である人肉を調達する

※厨房のテーブルに看板と睡眠薬と放置されています。
※人肉の虜になりました。


≪支給品紹介≫
【現実と書かれた看板@FLASHゲーム「人生オワタ\(^o^)/ の大冒険」】
現実の二文字だけが書かれた看板。本来ならば→か↓の後に現実がつく。
矢印通りに進むと、現実の非常さを思い知ることになる。

【睡眠薬@現実】
多くの場合は不眠症や寝不足の人が用いる薬。
しかし中には多用しすぎて中毒になる人もいたり、自殺の道具に用いる人もいる。
オエーに支給された睡眠薬が何の種類かは不明。

【人肉@Elona】
ウマい! これはあなたの大好きな人肉だ!
美味しいかどうかは定かではないが、少なくとも人肉を食べた人にとっては美味しいらしい。
どうやら川越シェフもそちら側だったようだ。
また人間が人肉を食べる行動、或いは宗教儀礼としての習慣のことを、カニバリズムと言う。


No.92:答えのない自問自答 時系列順 No.95:鬼子「どうしましたのクラウドさん、いきなり私を押し倒すなんて……」
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No.71:知らない方が幸せだった 川越達也 No.100:究極の味、究極の代償