※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

Thank you for...  ◆i7XcZU0oTM




「うぐ…………」

 民家のブロック塀にもたれかかるファヌソ。
 左手で胸の辺りを押さえ、青ざめた表情で脂汗を浮かべている。
 どうして、このような事態に陥っているのか?

(胸が……痛い)

 ファヌソを突然襲った、胸の痛みのせいである。

「……なぜ」

 こんな事態に陥っている理由を、頭の中で考えるファヌソ。
 ……浮かんだのは、1つの仮説。

(竹安の身に、何か、あった…………)

 ……この予想は、当たっていた。
 だが、今のファヌソには、それを確かめる術はない。

(このままじゃ、碌に、行動することも……ああ、頭がクラクラする)

 こうしている内にも、鋭い痛みが胸から頭へと伝わっている。
 油断すれば、そのまま気を失って地面へと倒れ伏してしまいそうなほどに。
 ……こんな所で倒れるなんて、危険にも程がある行為だ。
 それが分かっているからこそ、ファヌソは何とか意識を保とうと努力している。
 ……それでも、胸から迫り来る痛みが、ファヌソの意識を遠ざける。

(……ああ、そうだ……お医者さんカバン、を……つかえ、ば……)





 背負っていた鞄を地面におろそうとしたところで、ファヌソの意識はプツリと途絶えた。








「…………」
「ぽぽ」

 街の真ん中を目指して、ただ歩き続ける内藤ホライゾン一行。
 時折八尺様が「ぽぽぽ」と呟いたり、3ゲットロボが良く分からない事を言ったり……。
 会話らしい会話は、ほぼ無いに等しかった。
 それほど、内藤の気持ちは沈んでいるのかもしれない。
 ……同行者1人+1体とは、会話が成り立たないと言う理由も、あるかもしれないが。

(いつまでもこんな調子じゃ、Tさんに申し訳ないお……でも……)
「ぽぽ、ぽぽ……」

 そんな様子の内藤の肩に、まるで励ますかのように、八尺様の手が触れる。
 おおよそ恐ろしさとはかけ離れた、しなやかで美しい手が。

「……」
「ぽ、ぽぽっぽ」

 何を伝えようとしているのか、相変わらず理解できなかった。
 相変わらず、内藤にはただぽぽぽと言っているようにしか聞こえなかった。
 それでも、何だか、少し元気が出てきた気がした。
 少なくとも、悲しみを一人で抱えて歩むよりはいい。


「慰めてくれた……のかはわからないけど、とにかくありがとうだお……」
「ぽ」


 殺伐とした空気が、少しだけ緩んだ。
 まるで一陣の風のように、内藤の心にかかった雲を、少し吹き払ってくれたような気さえした。
 もちろん、Tさんの事を乗り越えることが出来た訳ではない。
 だが、この八尺様の行動が、もしかしたらその手助けになる、かもしれない。



『がしゃーん、がしゃーん』
「ど、どこにいくんだお!」



 いきなり、3ゲットロボが内藤の傍を離れ、走り出した。
 あわてて内藤たちもその後を追うと……。

「……って、あれは……!」

 立ち止まった3ゲットロボの傍に、男が倒れていた。
 いち早く男の存在に気づいた3ゲットロボは、内藤にその存在を教える為に行動を起こしたのだ。

「な、なんで所にこんな倒れてるんだお……」
「ぽぽぽ……」

 恐る恐る首元に手を当ててみると。
 ……予想とは裏腹に、生命の鼓動が、伝わって来る。つまり……死んでいない!
 しかし、仰向けに倒れた男の胸の辺りは、しっとりと血のようなもので濡れている。

(ち、血が出てるお……!)

 傷を確認しようと、内藤は男の服の胸の辺りをはだけさせた。
 そこには、銃弾を受けたかのような"傷跡"が……。
 これは、一体どういうことなのか?
 どうして、この"傷跡"が胸にあるのか?
 この男は一体誰なのか?
 一瞬にして、内藤の脳内にいくつも疑問が浮かぶが、その1つ1つを考えている暇はない。
 ……どんな事情があるにしろ、この男をここに放置していくのは危険だ。

「とにかく、ここに寝かせたままじゃダメだお……! どこか、安全な場所に運んだほうがいいお!」
「ぽぽっぽ」

 自身より大きい男の体をなんとか抱え、フラフラと近くの民家に入っていく内藤だった……。








 ……ゆっくりと、目を開く。
 見えるのは、天井だけ。

(ここは……?)

 首を動かさず、目だけをキョロキョロと動かして辺りを見る。
 どうやら、何処とも知らぬ民家の一室のようだ。
 ……今まで、私はベッドの上に横たわっていたようだ。

(一体、何故私はこんな所に?)

 ……私は、不覚にも道端で気を失ってしまったはず。
 なのに、どうしてこんなところにいるのだろうか……?

「……そうだっ、胸は!?」

 ガバッと、自分の服をはだけさせて胸を見てみるが……。

(……何ともない……妙な痕があるだけで、おかしいところは何も無いですね……)

 一体、何がどうなっているのだろうか?
 不可解な事ばかりで、流石の私でも少々混乱してしまいました。
 ……とにかく、もう何とも無いのならば、引き続き竹安を探しに行かなければならない。
 こんなところで時間を食って、竹安に何かあれば、私にも何かあるかもしれない……。
 ならば、こんな所で寝ていられない。今すぐにでも出発しないと。
 そう思ってベッドから降りようとした時……。
 閉まっていた部屋の扉が開いて、何者かが入ってきた。

「目が覚めたかお?」

 入ってきたのは、何とも言えぬ体型の青年(?)だった。
 私を、心底安心している目で見つめている。

「道端で倒れてた所を、僕がここまで運んでベッドに寝かせたんだお……」
「なるほど。だから私はここに」
「ついでに……怪我もしてたから、きちんと手当てしておいたお」

 ……怪我?
 少なくとも、気絶するほどの怪我は負っていないはず。
 状況がいまいち飲み込めずに少々困惑する私の事などお構い無しに、青年は話を続ける。

「それで……その、手当てする時に、お兄さんの荷物にあった道具を、使わせて貰ったお……」
「道具……」
「お兄さんの物を勝手に使って申し訳ないお! でも、手当てしなきゃどうなってたか……」

 そう言うと、青年は深々と私に頭を下げた。
 ……確かに、勝手に私の持ち物を探られてなおかつ無断使用されたのは少々気になりますが。
 ですが、そのお陰で私が助かったのも事実……。







「…………私を……」







 ポツリと、柄にもないことを呟いて、私は足早に部屋を出た。









「……あの人、すぐに出てっちゃったお」
「ぽぽ」

 リビングの椅子に腰掛け、八尺様に話しかける内藤。
 ……特に礼を言うでも無く、出ていってしまった男に、内藤は想いをはせる。
 一体、あれは誰だったのだろうか。今の内藤や八尺様に、それを知る術はない。

(でも……不思議と、悪い人とは思えなかったお……)

 出て行く前に見せた、あの和やかな笑顔。そして、ぽつりと呟いたあの一言。

「……また、どこかで会えたら……」
「ぽっぽ、ぽぽ」

 ほんの少し、気分の晴れた内藤だった。


【C-3とC-2の境目付近/一日目・朝】
【内藤ホライゾン@AA】
[状態]:健康、絶望感、クマーに対する強い恐怖と敵対心、少しばかりの希望
[装備]:木刀@現実
[道具]:Tさんの基本支給品一式、注射器@現実、ハロゲンヒーター@AA、ドーピングコンソメスープ@魔人探偵脳噛ネウロ
[思考・状況]
基本:生き残り、Tさんの父に謝る
1:クマーは必ず倒す
2:少し休憩したら、街の真ん中の方へ向かう
3:ドーピングコンソメスープを使う……?
※彼自身のデイパックは依然どこかに放置されています

【八尺様@オカルト】
[状態]:健康、深い悲しみと後悔
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、エルメスの基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、モナーの銅像@FLASHゲーム「密室船」、釣り竿@現実
[思考・状況]
基本: ぽっぽぽ……
1:“悲しみ”を少しでも減らす

【3ゲットロボ@AA】
[状態]:支給品、異常無し
[思考・状況]
基本:持ち主の命令に従う。内藤ホライゾン、八尺様に同行。









 歩きながら、私は先程の事に考えを巡らせる。
 ……私があそこにいたのも、胸の傷が治ったのも、あの青年のお陰。
 だが、そもそもどうしてこうなったのかがまだ分かっていない。

(少なからず、竹安に何かがあったのは間違いないでしょう。ですが、その内容が……)

 ……まあ、この事は実際に竹安に会ってみれば分かる事。
 とりあえず、この事はまた後で考えましょう。

(それにしても……まさか、私があんなことを言おうとは……我ながら、気恥ずかしい)

 あの青年の元を去る際に、私が思わず漏らした一言。



『……私を助けてくれて、ありがとう』



 私自身、こんな事を言った事実に驚いているのです。
 あの青年は、さらに驚いていることでしょう。

(……実際、感謝はしていましたが……)

 どんな形であれ、私があの青年に救われたのは事実。
 その事に対して感謝しない程、私も非常識ではありません。
 ですが、その思いを言葉にして出すとは、私も随分と変わったことを……。
 まあ、たまには良いでしょう。

(……とにかく、今は竹安を探さなければ)



 まだまだ、私は死なない。まだ、死ぬには早い。



【C-3とC-2の境目/1日目・朝】
【髪の子ファヌソ@ゲームサロン】
[状態]:肩に痛み、疲労感(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)、お医者さんカバン(3/5)@ドラえもん、ヘリコプター@現実
    12.7mm弾×25、25mm弾×5
[思考・状況]
基本:気まぐれに行動する
1:竹安を探さなければ……
2:ひろゆきをゆくゆくは地獄に落とす
3:手に入れた弾薬は、相応しい仔羊に与える
4:『裏ワザ』(死体やヘリをデイパックに収納できること)を誰かにひけらかしたい
5:青年(内藤ホライゾン)にはちょっと感謝

※神通力が制限されています。自分が生み出したものが損傷を受けると、ファヌソにもダメージが及びます。
 竹安の装備が損傷を受けた際のダメージの程度については次以降の書き手の方にお任せします。
※ファヌソが立ち寄った小さな公園の中に、弾薬箱とわさび@オラサイトが放置されています。
 ファヌソが入手した物以外にも弾薬はあるようですが、種類と量は不明です。
※デイパックに参加者の亡骸を入れて持ち運べることを知りました。生者にそれが適応するかは次の書き手の方にお任せします。


No.98:天才あらわる 時系列順 No.100:究極の味、究極の代償
No.98:天才あらわる 投下順 No.100:究極の味、究極の代償
No.84:unknown 八尺様 No.:[[]]
内藤ホライゾン No.:[[]]
No.86:神々の戦い 髪の子ファヌソ No.:[[]]