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「これはまずいことになりましね…」
深刻な表情を浮かべそう言うファヌソは焦っていた。
さきほどの青年が、お医者さんカバンを使用してくれたおかげで一命は取り留めた。
しかしファヌソは自身の体の異変を感じていた。
神通力で自身をスキャンして細部まで確認した結果、ファヌソは詳細を理解した。
外傷は癒えたが全身から神通力そのものが失われていっている。
急激にではないが、常温に置かれた氷の塊がじわじわと溶け出すように、少しずつ神通力は失われていった。
おそらく竹安の装備が大きく破損するか消滅するような事態が起きたのではないかとファヌソが推理する。
それが原因で神通力そのものの根底の部分に致命的な損傷を受けた。
そして、このまま放置すれば自分は消滅する。
神族である彼にとって、神通力の源泉は魂そのものであり、それが傷付くことは生命に関わる緊急事態だった。
この状況を打開する方法が一つだけあった。
神通力ではなく、肉と血の力で生命を維持する存在になる。
つまり神格を捨てて生身の人間になることだった。


ファヌソは手強いローグ型ダンジョンRPGをプレイしているときのように頭をフル回転させて考えを巡らせていた。あまり時間はない。
今のうちに何かできることはないのだろうかと。
どうせ消えてしまう神通力だ。これを使って今後の展開を有利にするには…
「名案が浮かびました!同僚の神々の力を借りればよいではありませんか!」
そもそも自分が本来持つ力を思うように使えないのは、この忌々しい首輪のせいだ。
ならば外部に助けを求めて彼らの力を借りれば良いだけの話だった。
本来であれば相手の都合などお構いなしに強制召喚して参戦させてやりたいのだが、神を召喚するには神通力が足りない。
そこで手紙を送ることにした。向こうからこちらに来る分には自分の神通力が不足していてもまったく問題はなかった。
神通力を使えば手紙の10通や20通、次元の壁を超えてでも発送可能だった。
「これでいよいよひろゆきもおしまいですね。このような名案を思い付くとは、さすが私」
自分の置かれた状況と救援を求むと旨をしたため、さっそく手紙を送る。

返事はすぐに帰ってきた。
他の神々曰く。

元祖神「新作ゲームプレイ中。だめだめ( `・ω・´)ノシ」

紙様「事務用品A4普通紙の生産が急ピッチ。行けそうにない。ごめん」

武田徹夜神「101回目のプロポーズ リメイク版の主演俳優になった。忙しいから無理」

をーでぃん「斬鉄剣とグングニル修理中。また今度」

「…はぁ」
ファヌソはため息をつきながら返信されてきた誠意のかけらもない手紙をまとめてビリビリと破り捨てた。
「自宅のゲーム機が全部煙を吐きながら爆発してしまいなさい」
憎しみを込めてファヌソが他の神々を呪った。

他に頼れる者がいないか、ファヌソが再び思案する。
「仕方ない子羊で我慢しますか」
ファヌソは神通力で召喚の印を結び、魔法陣を空中に描く。
すると空間に亀裂が入りそこから子羊たちが1匹、2匹、3匹と召喚される。
眠いときに眺めて数えたりしたら、そのまま眠ってしまいそうな光景だった。
「ん?ここはどこ?さっきまで自宅でテレビゲームをしていたのに」
「僕、徹夜でレベル上げしてて、ちょうど寝てたのに…誰こんな朝早くから?」
「来ましたね、子羊たちよ」
ファヌソが声をかけると、彼の存在に気が付いた3匹の子羊たちがファヌソに挨拶をする。
「あ、髪様!お疲れ様です!」
「あの~僕たち今日は何で羊の姿なのでしょうか~?」
「神通力節約のためです」
「はぁ」
ファヌソが神通力をケチって負荷の少ない方法で子羊を召喚したため、彼らは本当に雲のような羊毛に覆われた羊の姿だった。
だが人間だった頃の名残りが、全員二足歩行をしている。
彼らはファヌソが在中しているスレで、懺悔する側の子羊たちだった。
子羊たちが懺悔し神々が裁くというのが、懺悔するスレの基本的な流れだ。
「では早速懺悔しますね。ええと海外の暴力ゲームで…」
「いえ、せっかくですが、今日は懺悔と裁きはお休みです。実は、今私は面倒なことに巻き込まれていましてね。そこで貴方たちの助力を得るために貴方たちを召喚したわけです」
「面倒なことって何ですか?」
「実はかくかくしかじかの事情で…」
ファヌソはかいつまんで、殺し合いに巻き込まれてしまい戦力増強のため子羊たちを召喚したことを彼らに簡単に説明した。
「そんなことになっていたのですか。ひろゆきって野郎、許せませんね」
「ひろゆきに髪様の裁きを下しましょう」
「それがいいと思います。殺っちゃいましょう、髪様」
「話が早くて助かります。私もそうしようと考えていたのですよ」


そしてファヌソは召喚した子羊に命令を行う。
「では、ひろゆきを地獄へ落とすために私に貴方たちの力を貸しなさい。いいですね?」
ファヌソがそう言うと、子羊たちは足をそろえビシッ!と敬礼し次々に返事を返す。
「わかりました!僕たち全身全霊、粉骨砕身の覚悟で髪様を支援いたします!」
「僕たち、いつも髪様にお世話になっている身です。今度は僕たちが髪様をお助けしてみせます!」
「僕たちを髪様の目標達成のための尖兵として使役してください!」
実はファヌソは見た目弱そうな彼らを見て内心あまり当てにはできないだろうと感じていたが、なけなしの神通力を消耗してまで召喚した子羊をタダで返すのも惜しいという思惑と、それにこれから危険な戦いが待っている、多少弱くても仲間は不可欠だと考えた。
言葉には出さないが、そういった打算もあった。
「よしよし、良い心がけです。頼りにしていますよ」
「「「はっ!おまかせください!」」」
3匹の子羊の声がはもる。
いつも面倒を見てあげた子羊たちが、ファヌソの援助要請を快く受け入れる。
まさに子羊の恩返しだ。
私の人望(神望?)をもってすればこんなものである、私の人徳(神徳?)による彼らとの絆はとても深いのだとファヌソは内心自己陶酔していた。
「さて、とりあえず仲間の頭数はそろいましたか…次に準備するのは…」
ファヌソの計画は神通力を失う前に、可能なかぎり次の戦いの準備をすることだった。
ゲーマーとしての経験がファヌソに告げる。今のうちに仲間、装備、消耗品をなるべく充実させておくべきだと。
どうせあと数十分で失ってしまう神通力だ。今ここで惜しまずにガンガン使ってしまうべきだと。
「武器や防具に始まり、薬草、毒消し草、聖水、あとMP回復アイテムと状態異常回復アイテムも…」
綿密な計画を立てるファヌソに対し子羊たちは呑気に雑談を始める。
「そうは言ったものの、僕たちって何をすればいいんだろう?」
「何もしなくても大丈夫なんじゃね?髪様の後ろに黙ってついて行くだけで良いよね?」
「そうそう、だって髪様がジゴスパークやアルテマ、メテオ連打して、無双すれば全部問題解決じゃん」
「もしくは核ミサイルを1ダースくらい召喚して、ひろゆきごと消し炭にして一掃っていうのもありだよね?」
「じゃあ次の回で最終回だよね?僕たちすぐお家に帰れるよね?」
小声のヒソヒソ話ではあったが、神の聴力を持つファヌソには丸聞こえだった。
普通の人間には聞き取れないような小さな音でも聞き逃すことはない。
「ああ、そうそう。いま私はそういった大掛かりな力は使うことができないので、期待しないでくださいね」
「え?どういうことですか?」
理不尽な殺し合いに巻き込まれたことは話したが、自分の能力の事を話し忘れたファヌソは子羊に大まかに説明することにする。


「この首輪のせいで不本意ながらフルパワーで力を使えません。しかも神通力の使い方を間違えて、神格を捨てて、さらに力をセーブする必要があるのです。これから先は強さ的には普通の人間と大して変わらなくなってしまいます。まったく参りましたよ」
「じゃあ、髪様って相当弱体化しているのですか?」
「残念ですがそうなりますね。ですから生き残るには貴方たちの力を借りなければなりません。頼みますよ」
その言葉を聞いた子羊達は互いにアイコンタクトを交わして、最後にコクリと頷くとファヌソに向かってニコリとほほ笑んで言葉を放つ。
「ざ…」
「ザ?」
”ザ”から始まる言葉でゲーム脳のファヌソの頭に真っ先に浮かんだのはジオン軍の最下級モビルスーツだったりしていた。
だが子羊らから帰った答えは

「「「ざまあああああああっ!」」」

「!」
ざまあみろと言う意味の言葉である。
もちろん誠意もクソもあったものではない。
続けざまに、子羊たちが歓喜しながらファヌソを愚弄する。
「日頃の行いが悪いから、こんな目に合っているんだ!自業自得だ!ざまあ見ろ!」
「なんで僕たちが命がけで、こんなヤバいゲームに付き合わなくちゃいけないんだ!冗談じゃない!」
「お前がどうなろうが僕たちには一切関係ないね!死ぬならお前一人で死ね!」
次々と口から暴言を吐きまくる子羊たち。
さっきまであんなに忠実だったのに何故こんなことに?
ファヌソは子羊たちのパラメータを確認してみる。
もしかしたら原因がわかるかもしれない。
何らかのステータス異常ってことも考えられる。
さっそく神通力を行使し子羊たちをスキャンする。
RPGや地域制圧型シミュレーションで敵味方を問わずキャラの能力を確認するのはゲーマーの基本行動の一つだ。
すると…

HP 9
MP 1
物理攻撃力 2
魔法攻撃力 1

(-中略-)

物理防御力 3
魔法防御力 3
忠誠度 0
状態異常 なし

「…」
ファヌソはステータスのある1点を凝視する。
子羊達が突然手のひらを返した理由が、そこにすべて書かれている。

忠誠度 0

「忠誠度0って…」
多少の事では動じないファヌソであったが流石にこれには言葉が出ず、目が点にった状態で、呆けたように、ただ茫然と立ち尽くす。
私と子羊たちの絆だの、人望だの人徳だのと言っていた自分が滑稽な道化のようだった。


「いつもいつも僕たちに遠まわしに死ねと言ったり無理難題を押し付けやがって!こっちこそ許さないぞ!」
「僕たちが自分でお金を出して買ったゲームソフトだぞ!そのゲーム内で僕たちが、どんな酷い事をしたってお前にとやかく言われる筋合いはない!」
「そうだ!そうだ!エロゲーは地雷が多いんだぞ!金返せ、この馬鹿野郎!」
中にはファヌソに責任が無いような事まで因縁をつけ、さらに子羊たちは追い打ちをかけるように暴言を吐きまくる。
「小さなメダルを集めるために、土足で民家に勝手に上がり込んで住人の目の前でタンスの中身を物色しようが、壺を壊そうが文句は言わせない!何が悪いんだ!」
「盗んだ車で歩行者達を次々と轢き殺して死体から財布を奪おうが、鉄砲で武装して銀行強盗しようが怒られるいわれは無い!」
「小さい女の子を拉致監禁してレイプしようが調教しようが何をしようが僕たちの自由だ!やらせろ!」
ギャアギャア騒ぎながら子羊たちは、氷属性の剣を殺して奪ったこと、女性キャラにリョナを強要したこと、視点操作を悪用し女の子のスカートの中を覗いたこと、などなどベラベラと犯した悪事を自慢するように話し始める。
当然その姿からは反省している様子などはまったく見られない。
そして一しきり言いたいことを言い尽くした子羊たちは、ファヌソに背中をむけて反対方向に歩きはじめる。
「んじゃ僕たちテレビゲームの続きやるから帰るわ。僕たち参加者じゃないから、好きにここから退場できるしね。バイバ~イ」
「せいぜい殺し合い賛成派の危険人物にチェーンソーとかでバラバラにされないように気をつけることだな。じゃあな~」
「死んだら骨は拾ってやるからな。ま、骨が残ってたらの話だけどね(笑)あばよ~」
歩きながら首だけ後ろを向けて小馬鹿にしたように手を振りながらファヌソに別れの挨拶を告げる。
そんな彼らを黙って見送るファヌソではない。
表情は穏やかだが、殺意を込めてファヌソは右手に神通力を集めていく。
「地獄へ落ちなさい」
「うわーーーーっ!」
突然1匹の子羊の足元に直径2mほどの底が見えないほど深い穴が発生し、その場所に立っていた子羊は叫び声を上げながら奈落の底へと落ちていく。
「え?」
「うそ!」
仲間の一人が穴の中へ消えて行く様を見せられて子羊たちはびっくりして飛び上がる。
「あ…あの~髪様って神通力を失ったのでは…」
先ほどまでの威勢の良さが消え、オドオドと尋ねる。
「ええ、この首輪のせいで神通力の大半が封じられています。大規模な力は行使できませんが、それでも1人でドラゴンやキメラを軽く捻るくらいの強さは十分ありますよ」
「で、でも人間と大した変わらなくなるって…」
「ああ、それはこれからなる、と言ったのです。でも今はまだ神通力はたっぷり残っていますよ。そう、貴方たち全員を地獄へ送るくらいはね」
子羊は汗だくになりながら土下座して謝りはじめる。
「ごめんなさい!許してください!さっきのは嘘です!髪様に忠誠を誓います!」
「いいえ、許しません」
ファヌソは冷たく言い放つ。
あそこまで言われて、こいつらを生かして返すつもりはなかった。
すると子羊の1匹が自分の能力について説明をはじめる。
「僕は僧侶で回復魔法が得意なんです!きっと髪様のお役に立てます!許してください!」
「ほう、本当に回復魔法が使えるのですか?」
「はい!」
ファヌソは半信半疑だったが、もし本当に回復魔法の使い手だというのならば、手放すのは惜しい。
今後の戦闘で大いに役立つだろうと考え、子羊の魔法を確認することにする。
「論より証拠です。回復魔法を使ってみなさい」
「は、はい!」
子羊は小さなチューブを取り出した。
「これはどんな傷にも効果がある、魔法の薬なのです!」
しかし、よく見ると、ただのオロナイン軟膏だった。
「それで?」
「それだけです」
「…」
「だめ?」
ファヌソは、もう呆れて自称僧侶との交渉を強引に打ち切った。
「そんな物ここでは何の役に立ちません。地獄へ落ちなさい」
「うわーーーーっ!」
2匹目の子羊も、大きな穴に落ち、地獄へ消えていった。
銃火器や刃物を使用して、殺し合いをしているのに、オロナインって…しかも使いかけときている。
これはもう最後の子羊も、とっとと地獄へ落として武具やアイテムの準備にとりかかった方が、よほど有意義だとファヌソは判断した。


「では、貴方も地獄へ…」
「ま、待ってください!実は僕魔法使いで、攻撃魔法が使えるんです!」
ファヌソの言葉を遮り、懸命に助かる方法を模索する子羊。
「やれやれ、またですか…」
「実は僕、30歳まで童貞でした!だから魔法使いになれているはずなんです!」
「え?そうなのですか?」
そんなことで魔法が使えるなら苦労はしないのでは…?と疑問を持った。どう考えてもおかしい。
「いやいや。それってネラーどもが、おふざけで言っているだけなのでは…?」
「そんなことありません!僕ベギラマやファイラ並のそこそこ役に立つ魔法が使えます!」
「ふむ、火属性魔法ですか。では、実際に魔法を使うところを見せてください」
たぶん僧侶の子羊のときと同じ結果になる予感がしつつもファヌソは一応子羊にチャンスを与えた。
「はい!わかりました!」
子羊は懐から透明な液体の入った瓶を取り出し、入口に布きれを詰めていく。
火炎瓶だった。
-やっぱりですか。もういいです。だいたいわかりました。
「貴方のやろうとしていることは、放火魔と一緒です。地獄へ落ちなさい」
「うわーーーーっ!」
健闘虚しく3匹目の子羊も地獄へ落ち、子羊たちは全滅した。
そして騒々しい連中が一掃されたため、あたりに静寂が戻る。
「やれやれ、子羊どものせいで余計な力を使う羽目になりました」
そして穴の近くに落ちている自称魔法使いたちの秘密道具に目をやる。
「ふう、オロナインに火炎瓶ね…」
呆れつつも、一応子羊が残していったアイテムは回収しておいた。
何かの役に立つこともあるかもしれない。
そして、ファヌソは計画通り神通力を惜しまず使い、武具やアイテムの作成に乗り出す。
まずファヌソは武器の作成を優先した。
攻撃は最大の防御である。
これからの戦い、しっかりとした武器がないと始まらない。
ファヌソが作成した武器は裁きの杖というアイテムだった。
実はこの裁きの杖は、鈍器としての性能は低いが、道具として使用することで小さな真空攻撃ができるメリットがあった。しかも武器本体が破壊されない限り何度でも使用できる。
呪文の詠唱を必要とせず、近距離、中距離両方で活躍できる万能性をファヌソは評価した。
-それに武器名も私にぴったりではありませんか。
もっと殺傷能力が高いロケットランチャーのような武器も考えたが銃火器は弾薬がなくなると戦力が0になるのであえて使用回数に制限がない武器をチョイスした。
本当は上位の天罰の杖が欲しかったが神通力不足で、作れそうになかった。まあ仕方がない。
「やれやれ、子羊召喚なんて後回しにして、先にもっと強力な武器を作成すればよかったですよ。まったく子羊どもめ」
子羊に頼ろうとした自分が馬鹿だったと毒づきながら、次に防御力の強化をすることにした。法衣に永久持続する補助魔法をかける。ほんの少しだが法衣の強度が増した。
そしてファヌソは残りの神通力を行使し、役に立つであろう消耗アイテムを適当に作成する。
道具袋の中にはファヌソがゲーマーの知識で今後色々な局面で役立つであろうと考えるアイテムが、詰めこまれていった。
「不思議のダンジョンだって、道具のおかげで何度も生還しているし、やっぱ道具は必要でしょう」
そして、アイテムをいくつか作るうちにファヌソの神格は完全に消滅したのであった。


人として生まれ変わったファヌソはまず作成した杖の性能を確かめることにする。
自分が所有している道具や武具がどの程度の性能を有しているかを知ることの大切さをゲーマーのファヌソは理解していた。
未知のアイテムが使えるか否か事前に入念にチェックする。
彼を知り己を知れば百戦殆からずと言うが、まさにそれだ。
裁きの杖を少し離れた位置にある樹木に向かって振りかざす。
すると小さな風の刃が発生し、それらは杖を離れビュンと唸りながら太い幹を浅く傷つけ、細い枝をいくつか地面に落とす。
けっして強力ではないものの神通力をまったく行使しなくても、杖に込められた力だけで、まずまずの結果が出せたことに満足するファヌソ。
「よし、ここからが本当の戦いです」
杖を握りしめ、決意を新たにする。
そして口では参ったと言いながらも、ファヌソは口元に笑みを浮かべていた。
今までは、神通力が制限されていたとはいえ、ファヌソの能力は他の参加者に比べてかなり高く、向かうところ敵無しの状態だったが、弱体化したことによって、もう生身でA-10神のような強敵を倒すことはできなくなった。
しかし、これで本当に歯ごたえのあるゲーム難易度になった事でファヌソは心のどこかで高揚している自分がいることに気が付いた。
「我ながら救いようがないオタゲーマーってことですか…フフッ」
こんな状況下にありながら、ファヌソは根っからのゲーマーだった。
「まずは仲間を増やす必要がありますね。今度はまともな人材希望です」
いきなり裏切った子羊たちが欠員となったことで、それは最も優先する課題だった。

【B3/1日目・午前】
【髪の子ファヌソ@ゲームサロン】
[状態]:健康(体調は完全回復しましたが神格を失いました)
[装備]:裁きの杖@ドラゴンクエスト9、白い法衣+1
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)、お医者さんカバン(3/5)@ドラえもん、ヘリコプター@現実
    12.7mm弾×25、25mm弾×5、オロナイン(使いかけ)×1、火炎瓶×1、道具袋(中にファヌソが用意したアイテムがいくつか入っています)
[思考・状況]
基本:気まぐれに行動する
1:神としての高い能力は失ったがゲーム関連の知識をフル活用し生存してみせる
2:ひろゆきをゆくゆくは地獄に落とす
3:手に入れた弾薬は、相応しい参加者に与える
4:『裏ワザ』(死体やヘリをデイパックに収納できること)を誰かにひけらかしたい
5:青年(内藤ホライゾン)にはちょっと感謝
6:仲間を見つけなくては
7:くそ……子羊どもめ

※神格を失い神通力が激減しました。ホイミやメラ程度の軽い力を数回だけは使える模様。そのほかどれくらいの力が残っているかは次以降の書き手の方にお任せします。
※ファヌソが立ち寄った小さな公園の中に、弾薬箱とわさび@オラサイトが放置されています。
 ファヌソが入手した物以外にも弾薬はあるようですが、種類と量は不明です。
※デイパックに参加者の亡骸を入れて持ち運べることを知りました。生者にそれが適応するかは次の書き手の方にお任せします
※なんだかんだ言っても子羊らと仲が良い。

※B3エリアの道路のど真ん中に直径2mほどの底が見えないほど深い穴が3つ空きました。落ちたら即死します。道具や死体を投げ入れた場合、回収不可になります。


ブロンドさんは近鉄百貨店から、西に向かって歩いていた。
拡声器での呼びかけが無駄に終わったので、別の場所で仲間を募る計画だった。
「なぜ誰からもテルがこないおかしいだろこれもきたないひろゆきの陰謀なのかテル機能を妨害しているんだろ俺がさらに強くなることを奥歯をガクガク言わせながら恐れているな、きたないひろゆきめ」
幸か不幸か、ここまで誰とも会わないことに苛立ちを覚える。過疎が進んでいるネトゲでも、ここまで人がいないことなどなかった。
メンテナンス中に自分だけログインしてしまったのか?そんな錯覚さえ覚える。
「もうこの際だから忍者でも…いやダメだな俺の誇り高きナイトのハートがそれだけはやめろと叫んでいる」
こんな状況下であっても毛嫌いしている忍者など、絶対に仲間にはしたくなかった。それだけ忍者を嫌っていた。
「を?あれは?」
交差点をまがった100mほど先に人影を見つける。
少し遠いが何をしているのかもはっきり見てとることができる。
おれ視力検査で2.0とか普通に出すし。
白い法衣を纏った男が手にしている少し変わった形の杖を少し離れた位置にある樹木に向かって振りかざす。
すると小さな風の刃が発生し、それらは杖を離れビュンと唸りながら太い幹を浅く傷つけ、細い枝をいくつか地面に落とす。
ブロンドさんが見つけた男はファヌソだった。
ネットゲーマーのブロンドさんにとって、男が何らかの魔法のようなものを行使したことをすぐに見切る。
「きた!後衛っぽいキャラきた!これでひろゆきに勝つる!」
能力的にも自分の補助要員として申し分なし。そして杖装備法衣装備で、いかにも「私、後衛が得意です」と言わんばかりのいでたち!
できれば後衛ジョブの黒魔や白魔は可愛い女の子の方が良かった。
そうすれば超カッコ良く前衛的に皆を守るナイトの俺は、ほぼ間違いなく100%モテモテになるのは確定的に明らかだ。
だが、もうこの際贅沢を言ってはいられない。
ブロンドさんは相手が危険人物か否かの確認などもせず、問答無用で白い法衣の男にカカッと猛ダッシュをかけ、脳内で男にマウスカーソルを合わせてオンラインゲーマー的操作を行う。


  情報を見る
  tellする
  トレードを申し込む 
→ パーティ申請をする
  フレンド申請をする
  ギルドに招待する
  メールを送信する
  遮断リストに加える
  不正行為を運営に通報する


立て続けに白チャットで大声でどなる。
「おい!そこのお前!最強に強くて謙虚な俺の仲間に加えてやる!嬉しさのあまり沸騰してしまうくらい猛烈に感謝汁!」
謙虚な人間は自分を強いなどと言わないし、しかも日本語がおかしいし、パーティ申請のマナーもクソもあったものではない。
なぜか道にできている大きな穴3つを軽やかなステッポで回避し、男の下へときょうきょ駆けつける。
「!」
突然背後から大声で意味不明なことを言いながらマッハな全力疾走で接近してくるブロンドさんを見て驚いたファヌソは、慌てて裁きの杖を構え先端をブロンドさんに向ける。
ステージやダンジョンなど危険な場所で猛スピードで自分に接近して来る物体は基本敵と考えるゲーマーの習性からか体が勝手に動いた。
普通に考えれば、お互いが敵かもしれないという状況下において、初対面の相手にいきなり猛ダッシュをかけるような行為は相手に不用意な警戒心を抱かせると考えるものだが、ブロンドさんの頭の中は違っていた。
俺が駆けつけたなら誰しもが大歓喜し俺を英雄扱いし歓迎するのが当然であると考える。

【B3/1日目・午前】
【ブロントさん@ネトゲ実況】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:そんな装備@エルシャダイ
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、拡声器@現実、手裏剣@AA(20/20)、肉まん×3、あんまん×3
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、ひろゆきを倒す
1:白い法衣の男を仲間に加えて、さらにあと4人募集する。リーダーは俺(後衛優先)
2:さきほどの募集に対するテルを待つ
3:汚いなひろゆきさすがきたない

※B-4の周囲のエリアにメンバー募集が掛かりました。
※パーティ上限が6人と限られていない事に気付いていません。
※近鉄百貨店内にいる他の参加者には気付いてません。
※まず、Lvが存在しない事に気付いていません。
※Tellが存在しない事にも気付いていません。
※軽率な行動のせいでブロンドさんを危険人物だと誤解したファヌソに攻撃されるかもしれません。


場所は変わって、ここは地獄の1丁目。
夕焼けよりも、さらに赤みがかった色の空の下、子羊たちは貸し切り状態の温泉に浸かりながら疲れを癒している最中だった。
暇さえ見つけては、ゲームをしたりゲームをしたりゲームをしている彼らは、いつも疲労との戦いだった。
ゲーマーと言う名の戦士にも休息は必要だ。
神々の裁きにより何度も地獄に来ている…もとい落とされている子羊たちは、地獄の観光組合にとっては大のお得意様だった。
現金の持ち合わせが無くてもツケがきく。もう顔パスだ。
さきほども、すれ違った赤鬼や青鬼に挨拶をされた。
「ありゃ~、あんたたち、また来たオニか~。まあゆっくりしていくオニ」
と、こんな感じだ。

「ちくしょうめ!ひどい目にあったぞ!」
「ファヌソめ!許さないぞ!」
「すぐに蘇って仕返ししてやる!奴が弱体化している今がチャンスだ!」

湯けむりが立ち込める地獄谷温泉の上空に向かって子羊たちが吠えた。


【子羊@ゲームサロン-ゲーム内でした悪行を懺悔するスレ】
[状態]:ゲスト、健康
[思考・状況]
基本:生き返ってファヌソに仕返ししてやる!

※アイテム扱いです。倒しても忍法帳のレベルは上がりません
※ファヌソの神通力不足で本当に羊の姿で召喚された
※攻撃力は乏しく、参加者にとってはさほど脅威にならない程度
※反面、何度神々に裁かれ地獄へ落とされても、すぐに復活できるほどしぶとい。何度でも湧いてくる
※普段は真面目だが、ゲーム内では極悪人でも目を覆いたくなるような悪行三昧を繰り返している

子羊1:自称戦士。勝手に民家に上がり込んでタンスを勝手に開けたり、壺を壊すなど基本に忠実なゲーマー
子羊2:自称僧侶。聖職者のくせに暴力系残虐ゲームを好む。破戒僧。
子羊3:自称魔法使い。エロゲーを好む子羊。本人曰く30歳まで童貞だったため魔法使いになったとの事。8歳の頃から親に隠れてエロゲーをやっていた大物。

子羊が再登場するかどうかは、次以降の書き手の方にお任せします。