2ちゃんねる・バトルロワイアルwiki
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2ちゃんねる・バトルロワイアルwiki
ja
2019-04-08T16:05:03+09:00
1554707103
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キバヤシ
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/32.html
【名前】キバヤシ
【出典】AA (漫画キャラ)
【AA】
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ト.l ヽ l
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\`.、_ _,. _彡'ノリ__,.ゝ、 |
`ゞf‐>n;ハ二r^ァnj< y=レヽ
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ヾl.`ー- べl,- ` ー-‐' ,ン
l r─‐-、 /:|
ト、 `二¨´ ,.イ |
_亅::ヽ、 ./ i :ト、
-‐''「 F′:: `:ー '´ ,.' フ >ー、
ト、ヾ;、..__ , '_,./ /l
ヽl \\‐二ニ二三/ / /
}}}
【人物】
様々な超常現象について解明していく、マガジンミステリー調査班のリーダー
IQ170の頭脳と3カ国語を操る高度な語学力を持つ超天才
何かにつけて、超常現象をノストラダムスの予言や人類滅亡に結びつけたがる
外見は眼鏡をかけた凛々しい男性。年齢は20代から30代、もしくは40代から50代くらい(196X年生まれであるため)
【一人称】
【特徴的な口調など】
|台詞|解説|
|&color(purple){「~~~だったんだよ!」}|お決まりの反応は&color(red){「な、なんだってー!!」}|
|&color(purple){「オレ達はとんでもない考え違いをしていたんだ」}||
|&color(purple){「おれたち(人類)は……何もかも…… 何もかも遅すぎたんだ…………」}|結果的には1999年に何も起きませんでした|
|&color(purple){「オレにだって……わからないことぐらい…ある…」}||
【あだ名】
【能力と制限】
【解説】
週刊少年マガジンに連載された漫画「MMR マガジンミステリー調査班」の登場人物のAA。
作中であらゆる超常現象を無理やりノストラダムスの大予言や地球滅亡に結び付けようとしたことから、
2ちゃんねるでは酷いこじつけな理論をキバヤシ理論と呼んだりする。
[[パロロワ用語にもあったりする>http://www11.atwiki.jp/row/pages/192.html]]
>以下、ネタバレを含む
#region(close,開示する)
*本ロワにおける動向
【スタンス】
殺し合い反対、真相解明主義
【勝利時の願い事】
【本編での動向】
|登場話数|タイトル|出来事|
|No.25|[[かなりやばい資料見つけました]]|初登場|
|No.56|[[調査未だ足りず]]|支給品を調べる|
|No.73|[[キバヤシで学ぶバトルロワイヤルの忍法帖システム]]|忍法帖の把握|
|No.83|[[――の前の静けさ]]|川越をどうするか……|
【キャラとの関係(最新話時点)】
|キャラ名|関係|呼び方|解説|初遭遇話|
|マウンテンバイク|仲間|バイク|図書館で出会う|[[かなりやばい資料見つけました]]|
|川越達也|仲間?||図書館で出会う|[[かなりやばい資料見つけました]]|
【最終状態】
【座標/場所/日数/時刻】
D-3・図書館/一日目・朝
#endregion
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2019-04-08T16:05:03+09:00
1554707103
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孔明「これがチハちゃんですか」
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/256.html
*孔明「これがチハちゃんですか」 ◆m8iVFhkTec
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キュラキュラキュラキュラキュラキュラ……
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'、_ソ:' / (● ●`::' .`::' .`::' .`: /三/ 二/‐' /三/
ヾ 、ゝ (__人)',リ'、',リ'、',;::爰:'',リ'、',リ'、',;::爰:''
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`ー ′ .|)
し' J
}}}
迷彩色が施された巨大な鉄の塊が、歯車の軋んだような音を立てながら石畳を踏みしめ行く。
傍らに付き従うのは小太りの男。前のめりになった姿勢からは疲労の色が伺える。
「ふむ、兵士にしてはだらしなさ過ぎる体型だが……。
とりあえずあの顔つきからして、日本人なのは間違いあるまい。
加えて殺し合いにおいて戦車を走らせるなど、参加者にしてはあまりにも異色」
「うむ、いささか不自然にもほどがある。
スターリン殿、やはりあの者たちはファシストの一員なのでしょうか」
「あぁ、私はそう見ている」
物陰に身を潜めつつ、軍服と道服の二人の男が尾行していた。
数刻前にライオンを生捕る事に成功した、スターリンと孔明である。
まず、彼らは『学校を本拠地に据えて反逆を行う』事を行動方針と決めた。
それに際し、周辺の地理を把握する必要があるとして、散歩を行っていたのだ。
また散歩を兼ねて、スターリンは孔明に現代に関する知識を教えていた。
そりゃあ、パルチザンの参謀が現代的知識ゼロでは非常に都合が悪い。
そんなわけで「わからない物があれば全て聞け」とスターリンが言った所、孔明はひっきりなしに尋ねまくっている。
そんなこんなで殺し合いが開始されてから10時間が経った、今。
ようやく敵と思わしき日本人を発見したのである。
「ところで……スターリン殿、あの『戦車』とは一体どのような物なのでしょうか」
孔明にとっては未知の物体であるソレを指さして尋ねた。
彼の居た時代には当然、そのようなカラクリ兵器は存在しない。
三国時代における戦車と言えば、俗に言うチャリオットの事を指す。
説明を求められ、スターリンは快く応える。
「我が時代における陸上の主力兵器よ。
簡単に言えば、鎧を被った動く大砲だ。
中に乗り込んで操作すればいい、力は要らない」
「ほう」
「大砲の破壊力もおそらく貴様の想像以上だろう。
引き金を小指でちょいと動かせば、建物一つが木端微塵だ」
「素晴らしい……」
深く関心した孔明は、撫でまわすように車体を観察していた。
全方位へと可動する砲塔、不整地に強いキャタピラ、攻撃が飛ぶであろう前面を重視された装甲。
戦車には一切の無駄な要素は無い。その形状は、どこまでも洗練されている。
孔明はそんな戦車に強い魅力を感じていたのである。
「おいおい戦車も知らねーのかよ。サバンナですら常識だぞ」
そこへ水を差してきたのは、言葉を話すライオンである。
学校へ置いておくのには若干危険だと考えたため、連れて来たのだ。
「そんなんじゃ真っ先に狩られるぞ?
これ王からのアドバイスね」
「…………」
誰も反応を返す事は無く、忠告は黙殺される。
下手に返答を返しても、人間側が不快になるかライオンが逆上するか、となるからである。
学校から移動している間に、ライオンは度々このような皮肉を投げていた。
まるで手錠のように縄で前足を縛られ、しかも拳銃を突きつけられたまま先頭を歩く状態。
自由奔放を好む彼には相当不快な状況なのだ。
ライオンを手駒として使う事を企むスターリンだが、捕虜としては手に余る存在である。
(今は放置しておくに限る。学校へ戻ったらキッチリと躾けてやろう)
というのがスターリンの考えである。
「あの戦車を手中に収めれば、さぞかし大きな力となるでしょうな」
孔明の一言。
決して、何気なく羨んで発言したわけでは無い。
彼は『望むならば、手中に収めてみせよう』と宣言している。
スターリンはその意図を汲み取った。
「まぁあれは戦車の中でも弱小なモノだが、拳銃よりはまともな威力は出せる。
孔明、あれをファシストから奪う事が可能と言うのか?」
「その前に戦車の構造や機能について幾つか質問をしてもいいですかな?」
「構わん」
「乗組員からの視覚はどうなっておられるのでしょう」
「上部のハッチから頭を出す、もしくは前方及び側面に付けられた視察口から見る事が出来る」
「視野は相当狭いみたいですね」
「その分装甲を減らすならば、360度パノラマビューも可能だがな!」
「ははは、お戯れを」
「だが、さっき言った通り、あの戦車は相当弱小な品だ。
前方の装甲はともかく、サイドの装甲なんぞもはや段ボールだ。
威力のある小銃ならば容易に打ち抜けるくらいにな」
「なるほど。ではもう幾つかの質問を……」
・・・・・・
「コイツらよぉ、百獣の王を居ない物扱いとか、クーデターだからね?
つーか暇なんだけど。一狩りしてぇ……」
蚊帳の外に居るサバンナは、ダラダラと数歩先を歩く。
退屈そうにハァーとため息をつき、その後振りむいて憎々しげにスターリンを睨んだ。
#aa(){{{
,、,, ,、,, ,, ,,
_,,;' '" '' ゛''" ゛' ';;,,
(rヽ,;''"""''゛゛゛'';, ノr) 自らの支配下に置くにしたって
,;'゛ i ノ ー iヽ゛';,. 暴力による弾圧は逆効果だろ
,;'" ''| (・) (・) |゙゛ `';, 法によって規制するのが
,;'' "| ▼ |゙゛ `';, __現代に相応しいやり方、これ常識
,;'' ヽ_人_ / ,;'  ̄ フ(__ )、
/シ、 ヽ `´ / リ こ´ヽ (__ )、
/ "r,, `"'''゙´ ,,ミ゛ `ヽ __(__)
/ リ、 ,リ r  ̄ ´
/ ,イ ゛r、ノ,,r" |
/ / | |
〈 < | |
}}}
おおよそ動物とは思えぬ批判をぼやいた。
流石百獣の王だ、他の動物とは一線を画している。
だが、当然解答は返ってこない。
ましてや話している最中なのだから、構ってもらえるはずもない。
「……くそう、この紐だって牙を使えばカツンカツンって一発よ?
武力の象徴である拳銃がこっち向いてなければ余裕なんだがなー。
やめて欲しいわ全く。マジ拳銃に頼るとか、そんなん本当の強さじゃねーから」
王は己の無力さを憂いた。
所詮は弱肉強食。丸腰な自分は、武力の前に惨めに跪くしかない。
とりあえず、どうにか逃げれられる術は無いかと考えた。
(そうだ、あいつらが戦車を奪い取ろうとしている隙なら行けるんじゃね?
流石にずっと俺ばっかり見てられるわけが無いし……)
うん、それだ。今がまさにビッグチャンス到来。
スターリンと孔明がよそ見している間に紐を噛みちぎる。
そしてさっさと逃走、もしくは背後から噛み殺す……行ける!
ふふ、一流のバンナー(サバンナマニア)を舐めきった事を後悔させてやんよ。
「おい、ライオンよ」
唐突に名前を呼ばれ、サバンナは呆気にとられた。
どうやら話し終えたらしい。
「今更話しかけてき、何さ?」
「我々が動いている間、食事を済ませておけ」
「はぁ?」
そういって孔明はデイパックからラップされた食肉を取り出した。
ぞぬの肉である。
軍鶏に似ていて美味とされる、ぞぬの肉――
「はい喜んでーッ!」
疑いもせずサバンナはホイホイと釣られた。
ダッシュで近づくサバンナに対し、孔明は振りかぶって投げた!
もうお肉しか見えていないサバンナはそれを追っかける。
「あぁ……しっかり食え」
肉が着地したのは、戦車の進行するちょうど目の前であった。
◆
「うげええええええええぇぇぇぇぇぇ何故かライオンがあああぁぁぁぁ!!」
そりゃあ驚くよ。
街中で突然ライオンが現れたとか、驚くに決まってるだろ。
特に外に居るやる夫はパニック全開。
このままだと食べられてしまう!
「やる夫、早く登ってきなさい!」
「あばばばばばば……こ、腰が、腰が抜けた」
(やる夫が早く登らないと、逃げられないよ)
「じゃあチハも何とかしなさいよ!」
(何とかって言われても……このまま進んだら轢いちゃうし……)
「J( 'ー`)し 関係ない、行け」
(アグレッシブ過ぎるよ!)
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____
; /ノ|||| ヽ\;
; /( ○) (○)\ ;
, /::::::\(__人__)/::::: \; 「中に入れてぇぇぇ!」
; | | |r┬-| | |,,
′\ `ー'ォ /´
./ ⌒ ̄ ̄`r:´> ) :
(_ニニ>-‐'´/' (/ ;
; | | ;
' \ ヽ/ / :
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; し’ ' `| | ;
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}}}
気力を振り絞って体を起こし、チハにしがみ付いた。
ハッチが開き、そこからマッマは顔を出す。
「だらしない! もたもた登ってるんじゃないの!」
「いや、だから、恐怖で力が入らな……」
一方、サバンナはその様子を何だか満足そうに眺めている。
「俺が登場するだけでキャーキャー騒ぐとは、やっぱ百獣の王たるゆえんだね。
普通のケモノとはオーラが違うからね、オーラが」
肉をバリバリと噛み千切りながら、自らの偉大さを噛み締めていた。
――さて。
孔明が動き出していた。
脇差を構え、戦車をよじ登るやる夫へと迫る。
スターリンはUZIを、愚かにも頭を丸出しにしている操縦主へと向けた。
(待って!誰か近づいてる!!)
「お?」
(お姉さんも頭を引っ込めて!)
「え?」
いち早く気付いてやる夫に警告を出したのはチハだった。
まさか戦車本体が意志を持っているなど、孔明やスターリンには想像も出来ない。
「やや、気付かれたか」
「これは……襲撃だったのね……」
すぐさまマッマは頭を引っ込めた。
一足遅く上へと登ったやる夫はハッチをゴンゴンと叩いた。
「ちょっと開けておおおぉぉぉぉ!」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い! やる夫さんもどこか隠れて)
「遅いっ」
既に孔明は戦車に飛び乗ろうという状況であった。
このままやる夫を捕え、交渉の材料及び捕虜とする算段だ。
(乗っちゃダメェェェェ!)
咄嗟の判断で、チハが後方へと急発進する。
「わわ」
「ウワアアアァァァァァ!!」
体勢を崩した孔明は左側部へと、やる夫は前方へと転げ落ちた。
やる夫はその際に戦車の主砲にズボンが引っかかってしまった。
「チハ、覚悟を決めるわ! 襲撃者を撃つのよ――!」
(あー、でもやる夫がそこに居たら撃てないよ!)
「ひえぇぇええぇええ」
「さっさと降りなさい!! さもなきゃ一緒に発射するわよ!」
「はああぁぁぁ!?」
抗議しつつもやる夫は手足をバタバタさせて逃れようとする。
ついでに、マッマは遠心力で振り落すために砲塔が右側へブンッと回転させた。
宙ぶらりんになった状態から、(もがいた弾みで)ズボンが脱げてしまい
車体で顔とお腹を強打しつつ下半身丸出しでアスファルトに投げ出さた。
落ちた時に体の側面を強く打ってしまい、ブッ!と屁をこきながら失禁してしまった。
痛くて意識が朦朧としているようだ。
(ああぁ……、やる夫さんが悲惨な状況に……)
「でも横に落ちたおかげで、うっかり轢く心配はないわ。
さぁ、さっきの刀持った男はどこ!?」
そう言ってマッマはチハの一式四十七耗戦車砲のトリガーに手をかける。
(あの民家の塀の裏に行ったよ!)
「わかったわ!」
チハが車体を動かして、銃口をそちらへと向ける。
マッマが視察口を覗き込み、そしてトリガーを引いた――!
――その頃、サバンナはぞぬの肉を食べていた。
「うめ うめ うめ」
その頃、スターリンはサバンナの背後に回り込んでいた。
「!?」
その手にあるのは黒の教科書の薬物を染み込ませた布。
完全に油断しきったサバンナの鼻に被せる。
ちょwwwwwwwまたスかwwwwwwwwwwwwwエンッ!!!
鼻血で布が赤く染まる。かわいそう。
これは孔明の指示、ライオンを気絶させておく事で逃亡を防ぐ。
(本来の戦略としては混乱に乗じて無防備な男を人質に取り、交渉もしくは強奪を行う。
相手が交渉に応じない、もしくは攻撃の意志を見せればこのように私が登場し、UZIで不意打ちを放つ。
これが孔明の策……、全く、少々彼への期待が過ぎたかもしれんな……)
続けてUZIを構え、こちらに一切注意の向いていない戦車へと向けた。
(……やれる事の限られてる現状では、別段問題がある策では無い。
だがこの策は言うなれば、山賊と同等。歴史に名を残す軍師と言えども、実際はこの程度か)
人数も道具も少ない中で戦車を奪うとなると、ある程度のリスクを負うのは仕方ないだろう。
そのリスクの大半も全て孔明が引き受けてるため、スターリンは別に構わないと考えた。
……そしてその結果として、隠れた位置へと銃口が向けられている。
接近に気付かれると言う不慮の事態があったとは言え、己の命を危機に晒す軍師は実に哀れだ。
(このまま砲弾の餌食となるならば、その程度の男と言う事だ)
その前にUZIは、戦車の操縦席目掛けて火を噴いた。
鼓膜に叩きつけられる断続的な銃声――
飛び散った薬莢は、コンクリートへ降り注ぐ。
空気中を音速で貫いた銃弾は、チハの装甲に突き刺さる。
勢いを止め切れない鉄板は破けて、内部へ向けて口を開く。
一つ、二つ、三つ、四つ。凶弾が次々に侵入する。
(痛―――ッ!!)
「あぐッ……」
最初に感じたのは、体を思い切り引っ張られたかような衝撃だった。
間もなく胸元から内側を通って背中へと、凄まじい激痛が何本もの線となって襲った。
肺が損傷したことで反射的にむせ込み、そして血を吐き出す。
(そんな……嘘、嘘だよこんな……)
「…………」
動揺した声色でチハが話す。
苦痛に苛まれるマッマは、口元を抑えたままチハに意識を向ける。
(……弾が、入っていないだなんて……)
主砲のトリガーは確かに引かれた。
しかし、銃口から飛び出す物は何もなかった。
チハは知った。今、自分に弾が入っていないのだと。
どうして気付かなかったんだ。
一発でも試射すれば、簡単に気付いたはずなのに……。
(知らなかったんだ! ここに来る前はきちんと入ってたんだもん!
嫌だ! どうしよう……このままじゃ僕たち殺されちゃう!)
抗争が怖くて、そこからずっと目を背けた結果がこれだ。
自分には当然のように兵装があると勘違いして、この危機的状況になってから事実を知る……。
愚かすぎる。情けなさ過ぎる。
このままじゃお姉さんも僕も、成す術もなく殺されて……。
――ゴンッ!
鉄板を思い切り蹴り上げられて、鈍い音が車内に響いた。
(ちょっ……)
「私が、撃たれてッ……ゲホッ、第一声がそれェ!?
先に……、心ッ、配、しなさいィッ!!」
(ご、ごめんなさい!)
彼女は今、まともに呼吸する事も許されないような激痛が襲っているはずなのに。
どうしてこんなにしっかり話せるんだろう。
苦痛に顔を歪ませながらも、僕を蹴飛ばせるだけの気力がある。
そしてしっかりとハンドルを握っている。
……凄く、強い人だ。
かつて僕と一緒に兵隊さんたちに、負けないくらい強い……。
「撃てない、ならッ……とっ……特攻するッ!!」
(えっ)
蹴飛ばしたのと同等の脚力で、アクセルを思い切り踏み込まれる。
ディーゼルエンジンがガラガラと雄叫びを上げる。
(怖い――ッ!)
強いというより、暴走してないこの人!?
あぁダメ激突する! 車体が爆ぜてももう知らない!!
続く轟音。
ブロック塀と木造平屋を押し倒し、キャタピラで踏みつけながら方向転換。
狙うのは刀で襲撃を掛けて来た男じゃない。
あの機関銃の男を先に、潰す――。
もはや己の命は助からないだろう。
だが、マッマは『一矢報いてやる』という執念に突き動かされていた。
彼女はカッとなりやすく、アグレッシブであり、負けず嫌いであった。
チハの15トンの重量が、猛獣の如く迫りくる――。
スターリンは即座に側方へと飛んで避ける。
だが、気絶していたサバンナは別だ。
「くそっ……」
それに気付いたスターリンに出来る事は何もない。
止める術など、もうどこにも存在しない。
まるで水風船の如く、野生の王者の肉体は飛散した。
その凄惨な最期を遂げるにあたり、意識が無かったのは彼にとって幸いに違いない。
戦車の後方からUZIの銃弾が撃ち込まれる。
鉄の塊が一つ、また一つと体を突き抜ける。
数秒の猶予も与えられず、彼女の気力も限界を迎えた。
スッ、とアクセルから脚が離れる。
ハンドルへと上半身がもたれかかる。
(お姉さんッ!)
家屋への激突を避けるために、チハは自力で車体を停止させた。
(お姉さん……ダメな戦車で本当にごめんなさい……。
僕じゃなかったら、きっと銃弾から完璧に守れたかもしれなかったのに……)
マッマは薄れていく意識の中、何故か冷静な気持ちで状況について考えていた。
――あぁ、視界が赤く染まっていく。
醤油のほのかな香りが漂っていた車内は、今や操縦者の血と焼けた鉄の嫌な臭いに溢れている。
きっとこれが、『戦死』なんだろうな。
戦争で命を失う者って、きっとこういう光景の中で最期を迎えるんだろうな。
……最後に言っておきたい事くらい、言わないと……。
「チ……は……ゲホッ! ゲホッ!」
(……お姉さん)
喉に絡んだ血で声が上手く出せず、ほとんど息が漏れるようなか細い言葉が紡がれる。
「……息、子に……ゲホッ!! つ、伝え……」
(うんっ……、わかってる……!
何て伝えればいいの……!?)
「……ほ……」
マッマは苦痛に顔を醜く歪めながらも、スゥッと息を吸い込み……。
「J( 'ー`)し 保険掛けて無いから餓死したくなきゃ働けよ」
(……え)
……容赦の無い辞世の言葉。
彼女はそれを想像も出来ないほど、ハッキリとした口調で言い切った。
そして、咳き込みながら多量の血を吐き散らす。
(………………わかった、必ず伝えるから……)
チハの返答を聞いてから――マッマは、静かになった。
◆
「最悪だお……最悪だお……!」
脇腹を抑えながらヨタヨタとやる夫は逃げた。
本来なら悶絶レベルの痛みを泣くレベルにまで我慢して、とにかく逃げた。
「どうしていちいちこんな悲惨な目に遭わなくちゃいけないんだお!
世の中はあまりにも理不尽だお!」
幸いなことに、自分は襲撃者の意識から離れてたのだろう。
振り返る先に追っ手はない。一安心した。
幾らか歩いた先に大きなスーパーマーケットがあった。
電気は消えているが、扉が開いている。
そこへと駆け込み、トイレに入って鍵を掛けた。
「危機一髪だったお……」
一先ず安心出来る空間へ逃げ込み、安堵の息を吐く。
そして先ほどの恐怖を思い返し、ブルルっと身震いをした。
運が悪ければあのまま刀でザックリとやられていたかもしれない。
きっとあの厳しいおばさんは、自分が殺される寸前になっても入れてくれないだろうし……。
そうだ、やっぱりアレについていくのは間違いだったに違いない!
最初からもっと別の道を取るべきだったんだ。
「でもやる夫一人じゃ正直希望の光なんて見えないお……。
きっと成す術もなく殺されてしまう気がするお……」
まだ殺されたくない。
せめて、悔いを残したまま死にたくない。
――今、自分は一人になった。一体何をしたい?
さて、ここはトイレという密室的な空間。
さらに逃げる際にズボンが脱げて下半身丸出しの自分。
この時点で彼の思考が性的な方面に傾くのは無理はない。
というか、本来彼が求めていたのはソレだったはずなのだから……。
/)
///)
/,.=゙''"/ 人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人
/ i f ,.r='"-‐'つ____ < >
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\ < 死ぬ前にせめて童貞を捨ててやるお!!!!!!!!!!! >
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/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \ YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY
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/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
賢者モードから解き放たれた彼は外道へと身を落とす……。
【B-2/スーパーマーケット/一日目・午前】
【やる夫@ニュー速VIP】
[状態]:負傷(中程度)、血が付着、下半身丸出し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2(確認済み)、しょうゆ一㍑(1/4消費)@現実
[思考・状況]
基本:性欲を満たす
1:死ぬ前に童貞を捨てる
2:チハとマッマから離れて非常に心細い、怖い、死にたくない
3:やらない夫が心配
※やる夫を駆り立てたのは、保存本能。
かつて体験したことの無いほどの殺気を一身に浴びたやる夫の本能は、即座に生命の危機を認識した。
追い詰められた本能は可及的速やかに種の保存を選択。
結果、生殖行為を求める事になるが――男が己が行動に原因を知る術はない。
◆
チハの内部から妙齢の女性の亡骸を取り去る。他には誰も居ない。
無数の弾丸が装甲に弾痕を作りまくっていたが、コックピットばかりを狙ったおかげで機動に支障はないようだ。
操縦席は大量の血で染められているため、学校へ戻ったら清掃をする必要があるだろう。
支給品のデイパックを取得、死体はすぐそばの住宅の庭に捨てておいた。
スターリンは少し苛立った様子で、孔明に話しかける。
「ひとまずは戦車を手にする事は出来たようだが……。
想定していた策とはずいぶんと外れたようだな、孔明」
「いいえ、このような結果となるのは何かの間違いです。
私はスターリン殿のおっしゃった視察口の位置を参考に、死角を選んで接近したのですから」
「ほほう、私に問題があると言うのか」
「別に責任を転嫁するつもりはありません。
ファシストたちの勘がよほど鋭かったのかもしれませんしね」
少し不穏な空気が漂うのを、孔明は上手く丸める。
別段、喧嘩を売るつもりは毛頭ない。ただ、自分の正当性だけは証明したかったのだ。
「まぁいい」
と、スターリンは咎めるのを止めた。
彼もここで仲違いに発展させるのは悪手であると考えたからだ。
「ただ、言葉を話すライオンが犠牲になったのは少々惜しかったな……。
貴様としても手駒が減った事はマイナスであろう」
でもライオンの犠牲は、多少残念という気持ちはあった。
言葉を話せる動物とはさながら神話のようではないか。
しかし、孔明の返答は冷徹である。
「いいえ、私はあのライオンを抱えるのは反対でございます。
いやむしろ事故死した事は幸いだったと思います」
その言葉にスターリンは怪訝な目を向ける。
孔明はしれっと語り続けた。
「殺し合いを強いられている現状、ライオンを手懐ける余裕は無いでしょう。
特にあのライオンは我々に反発を抱いており、協力する意志は感じられませんでした。
ゆえにあの場で踏み殺されたのは決して悪い事では無かったのです」
「……まさか、狙っていたのか」
先ほどの策――てっきりリスクの大きさは【孔明>ライオン>スターリン】かと思っていた。
だが違うのだ。私がUZIにて狙撃を行なった時点で、それぞれの危険度は入れ替わっていたのだ。
脇差による人質取り……それだけであれば孔明が最も危険なのは間違いない。
ただし機関銃を持つ者が居れば当然、戦車側としてはそちらを最優先で潰しにかかる必要が出てくる。
弾丸が撃ち込まれた方向に居る気絶したライオン、そして機関銃を構えた私。
もう、刃物を武器としていて退避し始めている孔明なぞ、後回しで良くなるのだ。
リスクの度合いは【ライオン>スターリン>孔明】へと変わる。
しかし、彼らが起こすアクション――主砲を向ける、もしくは特攻をかける――この間には、5秒ほどのタイムラグが生じる。
5秒もあれば私は退避出来る……が、ライオンはどうしようもない。
結果としてライオンは特攻を受けて轢死した。
足手まといであると判断されていた存在が処理されたのだ。
「なるほど、これは一杯食わされたようだな」
「スターリン殿に危害が及ばぬよう配慮した結果、そのしわ寄せが来てしまっただけですとも」
問いかけを有耶無耶にしつつ、さらに正当性を主張。
この立ち回り、やはり狡猾な男だ。
「お怒りですか?」
「……いや、構わん。むしろ面白いと思うほどだ!
その知力は間違いなく、パルチザンにおいて強力な武器となりうるだろう。
うむ、これは私も寝首をかかれないようにせねばな」
「お褒めに預かり光栄です、スターリン殿。
ですが私はこの状況で、意志の一致する者を討ったりはしませんのでご安心を」
「ははは、『意志の一致する者は』か、食えぬ男だ。
だが次からはその趣旨を私に伝えるんだな。良好な関係を築くためにな」
孔明は了承する。
「では周辺の散策は中断だ。一度学校へ戻り、準備を整えるとしよう」
そう言ってチハへと乗り込もうとするスターリン。
だがその時、二人の脳内に幼い少年の声が響いた。
(あ、あの……僕はこれからどうなるんでしょうか……)
戦車がここでようやく言葉を発し、二人の男は驚いた。
【サバンナ@AA 死亡】
【畜生マッマ@なんでも実況J 死亡】
【B-2/路上/一日目・午前】
【孔明@三国志・戦国】
[状態]:健康
[装備]:脇差@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、黒の教科書の毒物@コピペ(現地調達)、ビニール紐@現地調達
ぞぬの肉@AA、マッマの支給品
[思考・状況]
基本:蜀に帰る
1:スターリンに従い、対主催の策を練る。
※共産主義の素晴らしさを刷り込まれつつあります。
※マッマの支給品(基本支給品×2、PDA(忍法帖【Lv=01】)、ぬるぽハンマー、ハイヒール一足@現実)を入手。
また、マッマのランダム支給品0~1は、0でした。
【スターリン@軍事】
[状態]:健康
[装備]:UZI@現実(12/32)、iPod@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)、ランダム支給品1~2、トカレフTT-33(7/8)、UZIの予備マガジン
[思考・状況]
基本:ファシストを倒す集団のトップに立つ
1:疑わしきものは粛清する。
2:孔明の狡猾さを理解。同時に警戒しておく。
3:喋るライオンの死は個人的に惜しい
※1942年初めあたりの参戦です。日本人はファシストとみなされる可能性があります。
※図書室で三国志@現実を読みました。孔明の出自をある程度把握しましたが、誇張もあるかもしれないと考えています。
※死んだはずの人間が生きている事に疑念を抱いているようです。
※サバンナの鞄(基本支給品、サバンナのPDA)が、学校の給食室に放置されています
【チハ@軍事】
[状態]:損傷(中:装甲と操縦席に多数の弾痕)、燃料残り70%、内部は血だらけ
[装備]:一式四十七耗戦車砲(残弾無し)、九七式車載重機関銃(7.7mm口径)×2(0/20)
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品1~3(治療に使えそうなものは無いようです)
[思考・状況]
基本:死にたくない
1:おじさん二人に、何をされるのか不安
2:殺し合いに乗った人には会いたくない
3:やきう兄とグンマーを警戒。だが、やきう兄にマッマの辞世の言葉を伝える。
※チハは大戦中に改良が施された、所謂「新砲塔チハ」での参戦です。
※マッマの死体は撤去されたが、内部は非常に汚れている。
2019-03-03T16:43:54+09:00
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*&color(red){フィクションはフィクションであると見抜ける人でないと}
*&color(red){(パロロワを読むのは)難しい}
&color(red){本編には、殺人をはじめとした暴力シーン、グロテスクな表現が含まれています。苦手な方はご注意ください。}
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2016-10-06T22:33:18+09:00
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孔明「あれがチハちゃんですか」
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*孔明「あれがチハちゃんですか」 ◆m8iVFhkTec
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キュラキュラキュラキュラキュラキュラ……
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'-_-,,―,,..¬、、'''''-''''‐,,"", ̄=、-`、二二ヽ=、´-、
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ヾ 、ゝ (__人)',リ'、',リ'、',;::爰:'',リ'、',リ'、',;::爰:''
~~ | 、/ ) ヽ~~~~~~~~~~~~´ ~~~~~~~~~~´
`ー ′ .|)
し' J
}}}
迷彩色が施された巨大な鉄の塊が、歯車の軋んだような音を立てながら石畳を踏みしめ行く。
傍らに付き従うのは小太りの男。前のめりになった姿勢からは疲労の色が伺える。
「ふむ、兵士にしてはだらしなさ過ぎる体型だが……。
とりあえずあの顔つきからして、日本人なのは間違いあるまい。
加えて殺し合いにおいて戦車を走らせるなど、参加者にしてはあまりにも異色」
「うむ、いささか不自然にもほどがある。
スターリン殿、やはりあの者たちはファシストの一員なのでしょうか」
「あぁ、私はそう見ている」
物陰に身を潜めつつ、軍服と道服の二人の男が尾行していた。
数刻前にライオンを生捕る事に成功した、スターリンと孔明である。
まず、彼らは『学校を本拠地に据えて反逆を行う』事を行動方針と決めた。
それに際し、周辺の地理を把握する必要があるとして、散歩を行っていたのだ。
また散歩を兼ねて、スターリンは孔明に現代に関する知識を教えていた。
そりゃあ、パルチザンの参謀が現代的知識ゼロでは非常に都合が悪い。
そんなわけで「わからない物があれば全て聞け」とスターリンが言った所、孔明はひっきりなしに尋ねまくっている。
そんなこんなで殺し合いが開始されてから10時間が経った、今。
ようやく敵と思わしき日本人を発見したのである。
「ところで……スターリン殿、あの『戦車』とは一体どのような物なのでしょうか」
孔明にとっては未知の物体であるソレを指さして尋ねた。
彼の居た時代には当然、そのようなカラクリ兵器は存在しない。
三国時代における戦車と言えば、俗に言うチャリオットの事を指す。
説明を求められ、スターリンは快く応える。
「我が時代における陸上の主力兵器よ。
簡単に言えば、鎧を被った動く大砲だ。
中に乗り込んで操作すればいい、力は要らない」
「ほう」
「大砲の破壊力もおそらく貴様の想像以上だろう。
引き金を小指でちょいと動かせば、建物一つが木端微塵だ」
「素晴らしい……」
深く関心した孔明は、撫でまわすように車体を観察していた。
全方位へと可動する砲塔、不整地に強いキャタピラ、攻撃が飛ぶであろう前面を重視された装甲。
戦車には一切の無駄な要素は無い。その形状は、どこまでも洗練されている。
孔明はそんな戦車に強い魅力を感じていたのである。
「おいおい戦車も知らねーのかよ。サバンナですら常識だぞ」
そこへ水を差してきたのは、言葉を話すライオンである。
学校へ置いておくのには若干危険だと考えたため、連れて来たのだ。
「そんなんじゃ真っ先に狩られるぞ?
これ王からのアドバイスね」
「…………」
誰も反応を返す事は無く、忠告は黙殺される。
下手に返答を返しても、人間側が不快になるかライオンが逆上するか、となるからである。
学校から移動している間に、ライオンは度々このような皮肉を投げていた。
まるで手錠のように縄で前足を縛られ、しかも拳銃を突きつけられたまま先頭を歩く状態。
自由奔放を好む彼には相当不快な状況なのだ。
ライオンを手駒として使う事を企むスターリンだが、捕虜としては手に余る存在である。
(今は放置しておくに限る。学校へ戻ったらキッチリと躾けてやろう)
というのがスターリンの考えである。
「あの戦車を手中に収めれば、さぞかし大きな力となるでしょうな」
孔明の一言。
決して、何気なく羨んで発言したわけでは無い。
彼は『望むならば、手中に収めてみせよう』と宣言している。
スターリンはその意図を汲み取った。
「まぁあれは戦車の中でも弱小なモノだが、拳銃よりはまともな威力は出せる。
孔明、あれをファシストから奪う事が可能と言うのか?」
「その前に戦車の構造や機能について幾つか質問をしてもいいですかな?」
「構わん」
「乗組員からの視覚はどうなっておられるのでしょう」
「上部のハッチから頭を出す、もしくは前方及び側面に付けられた視察口から見る事が出来る」
「視野は相当狭いみたいですね」
「その分装甲を減らすならば、360度パノラマビューも可能だがな!」
「ははは、お戯れを」
「だが、さっき言った通り、あの戦車は相当弱小な品だ。
前方の装甲はともかく、サイドの装甲なんぞもはや段ボールだ。
威力のある小銃ならば容易に打ち抜けるくらいにな」
「なるほど。ではもう幾つかの質問を……」
#aa(){{{
・・・・・・
}}}
「コイツらよぉ、百獣の王を居ない物扱いとか、クーデターだからね?
つーか暇なんだけど。一狩りしてぇ……」
蚊帳の外に居るサバンナは、ダラダラと数歩先を歩く。
退屈そうにハァーとため息をつき、その後振りむいて憎々しげにスターリンを睨んだ。
#aa(){{{
,、,, ,、,, ,, ,,
_,,;' '" '' ゛''" ゛' ';;,,
(rヽ,;''"""''゛゛゛'';, ノr) 自らの支配下に置くにしたって
,;'゛ i ノ ー iヽ゛';,. 暴力による弾圧は逆効果だろ
,;'" ''| (・) (・) |゙゛ `';, 法によって規制するのが
,;'' "| ▼ |゙゛ `';, __現代に相応しいやり方、これ常識
,;'' ヽ_人_ / ,;'  ̄ フ(__ )、
/シ、 ヽ `´ / リ こ´ヽ (__ )、
/ "r,, `"'''゙´ ,,ミ゛ `ヽ __(__)
/ リ、 ,リ r  ̄ ´
/ ,イ ゛r、ノ,,r" |
/ / | |
〈 < | |
}}}
おおよそ動物とは思えぬ批判をぼやいた。
流石百獣の王だ、他の動物とは一線を画している。
だが、当然解答は返ってこない。
ましてや話している最中なのだから、構ってもらえるはずもない。
「……くそう、この紐だって牙を使えばカツンカツンって一発よ?
武力の象徴である拳銃がこっち向いてなければ余裕なんだがなー。
やめて欲しいわ全く。マジ拳銃に頼るとか、そんなん本当の強さじゃねーから」
王は己の無力さを憂いた。
所詮は弱肉強食。丸腰な自分は、武力の前に惨めに跪くしかない。
とりあえず、どうにか逃げれられる術は無いかと考えた。
(そうだ、あいつらが戦車を奪い取ろうとしている隙なら行けるんじゃね?
流石にずっと俺ばっかり見てられるわけが無いし……)
うん、それだ。今がまさにビッグチャンス到来。
スターリンと孔明がよそ見している間に紐を噛みちぎる。
そしてさっさと逃走、もしくは背後から噛み殺す……行ける!
ふふ、一流のバンナー(サバンナマニア)を舐めきった事を後悔させてやんよ。
「おい、ライオンよ」
唐突に名前を呼ばれ、サバンナは呆気にとられた。
どうやら話し終えたらしい。
「今更話しかけてき、何さ?」
「我々が動いている間、食事を済ませておけ」
「はぁ?」
そういって孔明はデイパックからラップされた食肉を取り出した。
ぞぬの肉である。
軍鶏に似ていて美味とされる、ぞぬの肉――
「はい喜んでーッ!」
疑いもせずサバンナはホイホイと釣られた。
ダッシュで近づくサバンナに対し、孔明は振りかぶって投げた!
もうお肉しか見えていないサバンナはそれを追っかける。
「あぁ……しっかり食え」
肉が着地したのは、戦車の進行するちょうど目の前であった。
◆
「うげええええええええぇぇぇぇぇぇ何故かライオンがあああぁぁぁぁ!!」
そりゃあ驚くよ。
街中で突然ライオンが現れたとか、驚くに決まってるだろ。
特に外に居るやる夫はパニック全開。
このままだと食べられてしまう!
「やる夫、早く登ってきなさい!」
「あばばばばばば……こ、腰が、腰が抜けた」
(やる夫が早く登らないと、逃げられないよ)
「じゃあチハも何とかしなさいよ!」
(何とかって言われても……このまま進んだら轢いちゃうし……)
「J( 'ー`)し 関係ない、行け」
(アグレッシブ過ぎるよ!)
#aa(){{{
____
; /ノ|||| ヽ\;
; /( ○) (○)\ ;
, /::::::\(__人__)/::::: \; 「中に入れてぇぇぇ!」
; | | |r┬-| | |,,
′\ `ー'ォ /´
./ ⌒ ̄ ̄`r:´> ) :
(_ニニ>-‐'´/' (/ ;
; | | ;
' \ ヽ/ / :
, / /\\ .
; し’ ' `| | ;
⌒
}}}
気力を振り絞って体を起こし、チハにしがみ付いた。
ハッチが開き、そこからマッマは顔を出す。
「だらしない! もたもた登ってるんじゃないの!」
「いや、だから、恐怖で力が入らな……」
一方、サバンナはその様子を何だか満足そうに眺めている。
「俺が登場するだけでキャーキャー騒ぐとは、やっぱ百獣の王たるゆえんだね。
普通のケモノとはオーラが違うからね、オーラが」
肉をバリバリと噛み千切りながら、自らの偉大さを噛み締めていた。
――さて。
孔明が動き出していた。
脇差を構え、戦車をよじ登るやる夫へと迫る。
スターリンはUZIを、愚かにも頭を丸出しにしている操縦主へと向けた。
(待って!誰か近づいてる!!)
「お?」
(お姉さんも頭を引っ込めて!)
「え?」
いち早く気付いてやる夫に警告を出したのはチハだった。
まさか戦車本体が意志を持っているなど、孔明やスターリンには想像も出来ない。
「やや、気付かれたか」
「これは……襲撃だったのね……」
すぐさまマッマは頭を引っ込めた。
一足遅く上へと登ったやる夫はハッチをゴンゴンと叩いた。
「ちょっと開けておおおぉぉぉぉ!」
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い! やる夫さんもどこか隠れて)
「遅いっ」
既に孔明は戦車に飛び乗ろうという状況であった。
このままやる夫を捕え、交渉の材料及び捕虜とする算段だ。
(乗っちゃダメェェェェ!)
咄嗟の判断で、チハが後方へと急発進する。
「わわ」
「ウワアアアァァァァァ!!」
体勢を崩した孔明は左側部へと、やる夫は前方へと転げ落ちた。
やる夫はその際に戦車の主砲にズボンが引っかかってしまった。
「チハ、覚悟を決めるわ! 襲撃者を撃つのよ――!」
(あー、でもやる夫がそこに居たら撃てないよ!)
「ひえぇぇええぇええ」
「さっさと降りなさい!! さもなきゃ一緒に発射するわよ!」
「はああぁぁぁ!?」
抗議しつつもやる夫は手足をバタバタさせて逃れようとする。
ついでに、マッマは遠心力で振り落すために砲塔が右側へブンッと回転させた。
宙ぶらりんになった状態から、(もがいた弾みで)ズボンが脱げてしまい
車体で顔とお腹を強打しつつ下半身丸出しでアスファルトに投げ出さた。
落ちた時に体の側面を強く打ってしまい、ブッ!と屁をこきながら失禁してしまった。
痛くて意識が朦朧としているようだ。
(ああぁ……、やる夫さんが悲惨な状況に……)
「でも横に落ちたおかげで、うっかり轢く心配はないわ。
さぁ、さっきの刀持った男はどこ!?」
そう言ってマッマはチハの一式四十七耗戦車砲のトリガーに手をかける。
(あの民家の塀の裏に行ったよ!)
「わかったわ!」
チハが車体を動かして、銃口をそちらへと向ける。
マッマが視察口を覗き込み、そしてトリガーを引いた――!
――その頃、サバンナはぞぬの肉を食べていた。
「うめ うめ うめ」
その頃、スターリンはサバンナの背後に回り込んでいた。
「!?」
その手にあるのは黒の教科書の薬物を染み込ませた布。
完全に油断しきったサバンナの鼻に被せる。
ちょwwwwwwwまたスかwwwwwwwwwwwwwエンッ!!!
鼻血で布が赤く染まる。かわいそう。
これは孔明の指示、ライオンを気絶させておく事で逃亡を防ぐ。
(本来の戦略としては混乱に乗じて無防備な男を人質に取り、交渉もしくは強奪を行う。
相手が交渉に応じない、もしくは攻撃の意志を見せればこのように私が登場し、UZIで不意打ちを放つ。
これが孔明の策……、全く、少々彼への期待が過ぎたかもしれんな……)
続けてUZIを構え、こちらに一切注意の向いていない戦車へと向けた。
(……やれる事の限られてる現状では、別段問題がある策では無い。
だがこの策は言うなれば、山賊と同等。歴史に名を残す軍師と言えども、実際はこの程度か)
人数も道具も少ない中で戦車を奪うとなると、ある程度のリスクを負うのは仕方ないだろう。
そのリスクの大半も全て孔明が引き受けてるため、スターリンは別に構わないと考えた。
……そしてその結果として、隠れた位置へと銃口が向けられている。
接近に気付かれると言う不慮の事態があったとは言え、己の命を危機に晒す軍師は実に哀れだ。
(このまま砲弾の餌食となるならば、その程度の男と言う事だ)
その前にUZIは、戦車の操縦席目掛けて火を噴いた。
鼓膜に叩きつけられる断続的な銃声――
飛び散った薬莢は、コンクリートへ降り注ぐ。
空気中を音速で貫いた銃弾は、チハの装甲に突き刺さる。
勢いを止め切れない鉄板は破けて、内部へ向けて口を開く。
一つ、二つ、三つ、四つ。凶弾が次々に侵入する。
(痛―――ッ!!)
「あぐッ……」
最初に感じたのは、体を思い切り引っ張られたかような衝撃だった。
間もなく胸元から内側を通って背中へと、凄まじい激痛が何本もの線となって襲った。
肺が損傷したことで反射的にむせ込み、そして血を吐き出す。
(そんな……嘘、嘘だよこんな……)
「…………」
動揺した声色でチハが話す。
苦痛に苛まれるマッマは、口元を抑えたままチハに意識を向ける。
(……弾が、入っていないだなんて……)
主砲のトリガーは確かに引かれた。
しかし、銃口から飛び出す物は何もなかった。
チハは知った。今、自分に弾が入っていないのだと。
どうして気付かなかったんだ。
一発でも試射すれば、簡単に気付いたはずなのに……。
(知らなかったんだ! ここに来る前はきちんと入ってたんだもん!
嫌だ! どうしよう……このままじゃ僕たち殺されちゃう!)
抗争が怖くて、そこからずっと目を背けた結果がこれだ。
自分には当然のように兵装があると勘違いして、この危機的状況になってから事実を知る……。
愚かすぎる。情けなさ過ぎる。
このままじゃお姉さんも僕も、成す術もなく殺されて……。
――ゴンッ!
鉄板を思い切り蹴り上げられて、鈍い音が車内に響いた。
(ちょっ……)
「私が、撃たれてッ……ゲホッ、第一声がそれェ!?
先に……、心ッ、配、しなさいィッ!!」
(ご、ごめんなさい!)
彼女は今、まともに呼吸する事も許されないような激痛が襲っているはずなのに。
どうしてこんなにしっかり話せるんだろう。
苦痛に顔を歪ませながらも、僕を蹴飛ばせるだけの気力がある。
そしてしっかりとハンドルを握っている。
……凄く、強い人だ。
かつて僕と一緒に兵隊さんたちに、負けないくらい強い……。
「撃てない、ならッ……とっ……特攻するッ!!」
(えっ)
蹴飛ばしたのと同等の脚力で、アクセルを思い切り踏み込まれる。
ディーゼルエンジンがガラガラと雄叫びを上げる。
(怖い――ッ!)
強いというより、暴走してないこの人!?
あぁダメ激突する! 車体が爆ぜてももう知らない!!
続く轟音。
ブロック塀と木造平屋を押し倒し、キャタピラで踏みつけながら方向転換。
狙うのは刀で襲撃を掛けて来た男じゃない。
あの機関銃の男を先に、潰す――。
もはや己の命は助からないだろう。
だが、マッマは『一矢報いてやる』という執念に突き動かされていた。
彼女はカッとなりやすく、アグレッシブであり、負けず嫌いであった。
チハの15トンの重量が、猛獣の如く迫りくる――。
スターリンは即座に側方へと飛んで避ける。
だが、気絶していたサバンナは別だ。
「くそっ……」
それに気付いたスターリンに出来る事は何もない。
止める術など、もうどこにも存在しない。
まるで水風船の如く、野生の王者の肉体は飛散した。
その凄惨な最期を遂げるにあたり、意識が無かったのは彼にとって幸いに違いない。
戦車の後方からUZIの銃弾が撃ち込まれる。
鉄の塊が一つ、また一つと体を突き抜ける。
数秒の猶予も与えられず、彼女の気力も限界を迎えた。
スッ、とアクセルから脚が離れる。
ハンドルへと上半身がもたれかかる。
(お姉さんッ!)
家屋への激突を避けるために、チハは自力で車体を停止させた。
(お姉さん……ダメな戦車で本当にごめんなさい……。
僕じゃなかったら、きっと銃弾から完璧に守れたかもしれなかったのに……)
マッマは薄れていく意識の中、何故か冷静な気持ちで状況について考えていた。
――あぁ、視界が赤く染まっていく。
醤油のほのかな香りが漂っていた車内は、今や操縦者の血と焼けた鉄の嫌な臭いに溢れている。
きっとこれが、『戦死』なんだろうな。
戦争で命を失う者って、きっとこういう光景の中で最期を迎えるんだろうな。
……最後に言っておきたい事くらい、言わないと……。
「チ……は……ゲホッ! ゲホッ!」
(……お姉さん)
喉に絡んだ血で声が上手く出せず、ほとんど息が漏れるようなか細い言葉が紡がれる。
「……息、子に……ゲホッ!! つ、伝え……」
(うんっ……、わかってる……!
何て伝えればいいの……!?)
「……ほ……」
マッマは苦痛に顔を醜く歪めながらも、スゥッと息を吸い込み……。
「J( 'ー`)し 保険掛けて無いから餓死したくなきゃ働けよ」
(……え)
……容赦の無い辞世の言葉。
彼女はそれを想像も出来ないほど、ハッキリとした口調で言い切った。
そして、咳き込みながら多量の血を吐き散らす。
(………………わかった、必ず伝えるから……)
チハの返答を聞いてから――マッマは、静かになった。
◆
「最悪だお……最悪だお……!」
脇腹を抑えながらヨタヨタとやる夫は逃げた。
本来なら悶絶レベルの痛みを泣くレベルにまで我慢して、とにかく逃げた。
「どうしていちいちこんな悲惨な目に遭わなくちゃいけないんだお!
世の中はあまりにも理不尽だお!」
幸いなことに、自分は襲撃者の意識から離れてたのだろう。
振り返る先に追っ手はない。一安心した。
幾らか歩いた先に大きなスーパーマーケットがあった。
電気は消えているが、扉が開いている。
そこへと駆け込み、トイレに入って鍵を掛けた。
「危機一髪だったお……」
一先ず安心出来る空間へ逃げ込み、安堵の息を吐く。
そして先ほどの恐怖を思い返し、ブルルっと身震いをした。
運が悪ければあのまま刀でザックリとやられていたかもしれない。
きっとあの厳しいおばさんは、自分が殺される寸前になっても入れてくれないだろうし……。
そうだ、やっぱりアレについていくのは間違いだったに違いない!
最初からもっと別の道を取るべきだったんだ。
「でもやる夫一人じゃ正直希望の光なんて見えないお……。
きっと成す術もなく殺されてしまう気がするお……」
まだ殺されたくない。
せめて、悔いを残したまま死にたくない。
――今、自分は一人になった。一体何をしたい?
さて、ここはトイレという密室的な空間。
さらに逃げる際にズボンが脱げて下半身丸出しの自分。
この時点で彼の思考が性的な方面に傾くのは無理はない。
というか、本来彼が求めていたのはソレだったはずなのだから……。
#aa(){{{
/)
///)
/,.=゙''"/ 人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人
/ i f ,.r='"-‐'つ____ < >
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\ < 死ぬ前にせめて童貞を捨ててやるお!!!!!!!!!!! >
/ ,i ,二ニ⊃( ●). (●)\ < >
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \ YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-| |
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
}}}
賢者モードから解き放たれた彼は外道へと身を落とす……。
【B-2/スーパーマーケット/一日目・午前】
【やる夫@ニュー速VIP】
[状態]:負傷(中程度)、血が付着、下半身丸出し
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2(確認済み)、しょうゆ一㍑(1/4消費)@現実
[思考・状況]
基本:性欲を満たす
1:死ぬ前に童貞を捨てる
2:チハとマッマから離れて非常に心細い、怖い、死にたくない
3:やらない夫が心配
※やる夫を駆り立てたのは、保存本能。
かつて体験したことの無いほどの殺気を一身に浴びたやる夫の本能は、即座に生命の危機を認識した。
追い詰められた本能は可及的速やかに種の保存を選択。
結果、生殖行為を求める事になるが――男が己が行動に原因を知る術はない。
◆
チハの内部から妙齢の女性の亡骸を取り去る。他には誰も居ない。
無数の弾丸が装甲に弾痕を作りまくっていたが、コックピットばかりを狙ったおかげで機動に支障はないようだ。
操縦席は大量の血で染められているため、学校へ戻ったら清掃をする必要があるだろう。
支給品のデイパックを取得、死体はすぐそばの住宅の庭に捨てておいた。
スターリンは少し苛立った様子で、孔明に話しかける。
「ひとまずは戦車を手にする事は出来たようだが……。
想定していた策とはずいぶんと外れたようだな、孔明」
「いいえ、このような結果となるのは何かの間違いです。
私はスターリン殿のおっしゃった視察口の位置を参考に、死角を選んで接近したのですから」
「ほほう、私に問題があると言うのか」
「別に責任を転嫁するつもりはありません。
ファシストたちの勘がよほど鋭かったのかもしれませんしね」
少し不穏な空気が漂うのを、孔明は上手く丸める。
別段、喧嘩を売るつもりは毛頭ない。ただ、自分の正当性だけは証明したかったのだ。
「まぁいい」
と、スターリンは咎めるのを止めた。
彼もここで仲違いに発展させるのは悪手であると考えたからだ。
「ただ、言葉を話すライオンが犠牲になったのは少々惜しかったな……。
貴様としても手駒が減った事はマイナスであろう」
でもライオンの犠牲は、多少残念という気持ちはあった。
言葉を話せる動物とはさながら神話のようではないか。
しかし、孔明の返答は冷徹である。
「いいえ、私はあのライオンを抱えるのは反対でございます。
いやむしろ事故死した事は幸いだったと思います」
その言葉にスターリンは怪訝な目を向ける。
孔明はしれっと語り続けた。
「殺し合いを強いられている現状、ライオンを手懐ける余裕は無いでしょう。
特にあのライオンは我々に反発を抱いており、協力する意志は感じられませんでした。
ゆえにあの場で踏み殺されたのは決して悪い事では無かったのです」
「……まさか、狙っていたのか」
先ほどの策――てっきりリスクの大きさは【孔明>ライオン>スターリン】かと思っていた。
だが違うのだ。私がUZIにて狙撃を行なった時点で、それぞれの危険度は入れ替わっていたのだ。
脇差による人質取り……それだけであれば孔明が最も危険なのは間違いない。
ただし機関銃を持つ者が居れば当然、戦車側としてはそちらを最優先で潰しにかかる必要が出てくる。
弾丸が撃ち込まれた方向に居る気絶したライオン、そして機関銃を構えた私。
もう、刃物を武器としていて退避し始めている孔明なぞ、後回しで良くなるのだ。
リスクの度合いは【ライオン>スターリン>孔明】へと変わる。
しかし、彼らが起こすアクション――主砲を向ける、もしくは特攻をかける――この間には、5秒ほどのタイムラグが生じる。
5秒もあれば私は退避出来る……が、ライオンはどうしようもない。
結果としてライオンは特攻を受けて轢死した。
足手まといであると判断されていた存在が処理されたのだ。
「なるほど、これは一杯食わされたようだな」
「スターリン殿に危害が及ばぬよう配慮した結果、そのしわ寄せが来てしまっただけですとも」
問いかけを有耶無耶にしつつ、さらに正当性を主張。
この立ち回り、やはり狡猾な男だ。
「お怒りですか?」
「……いや、構わん。むしろ面白いと思うほどだ!
その知力は間違いなく、パルチザンにおいて強力な武器となりうるだろう。
うむ、これは私も寝首をかかれないようにせねばな」
「お褒めに預かり光栄です、スターリン殿。
ですが私はこの状況で、意志の一致する者を討ったりはしませんのでご安心を」
「ははは、『意志の一致する者は』か、食えぬ男だ。
だが次からはその趣旨を私に伝えるんだな。良好な関係を築くためにな」
孔明は了承する。
「では周辺の散策は中断だ。一度学校へ戻り、準備を整えるとしよう」
そう言ってチハへと乗り込もうとするスターリン。
だがその時、二人の脳内に幼い少年の声が響いた。
(あ、あの……僕はこれからどうなるんでしょうか……)
戦車がここでようやく言葉を発し、二人の男は驚いた。
&color(red){【サバンナ@AA 死亡】}
&color(red){【畜生マッマ@なんでも実況J 死亡】}
【B-2/路上/一日目・午前】
【孔明@三国志・戦国】
[状態]:健康
[装備]:脇差@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、黒の教科書の毒物@コピペ(現地調達)、ビニール紐@現地調達
ぞぬの肉@AA、マッマの支給品
[思考・状況]
基本:蜀に帰る
1:スターリンに従い、対主催の策を練る。
※共産主義の素晴らしさを刷り込まれつつあります。
※マッマの支給品(基本支給品×2、PDA(忍法帖【Lv=01】)、ぬるぽハンマー、ハイヒール一足@現実)を入手。
また、マッマのランダム支給品0~1は、0でした。
【スターリン@軍事】
[状態]:健康
[装備]:UZI@現実(12/32)、iPod@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)、ランダム支給品1~2、トカレフTT-33(7/8)、UZIの予備マガジン
[思考・状況]
基本:ファシストを倒す集団のトップに立つ
1:疑わしきものは粛清する。
2:孔明の狡猾さを理解。同時に警戒しておく。
3:喋るライオンの死は個人的に惜しい
※1942年初めあたりの参戦です。日本人はファシストとみなされる可能性があります。
※図書室で三国志@現実を読みました。孔明の出自をある程度把握しましたが、誇張もあるかもしれないと考えています。
※死んだはずの人間が生きている事に疑念を抱いているようです。
※サバンナの鞄(基本支給品、サバンナのPDA)が、学校の給食室に放置されています
【チハ@軍事】
[状態]:損傷(中:装甲と操縦席に多数の弾痕)、燃料残り70%、内部は血だらけ
[装備]:一式四十七耗戦車砲(残弾無し)、九七式車載重機関銃(7.7mm口径)×2(0/20)
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品1~3(治療に使えそうなものは無いようです)
[思考・状況]
基本:死にたくない
1:おじさん二人に、何をされるのか不安
2:殺し合いに乗った人には会いたくない
3:やきう兄とグンマーを警戒。だが、やきう兄にマッマの辞世の言葉を伝える。
※チハは大戦中に改良が施された、所謂「新砲塔チハ」での参戦です。
※マッマの死体は撤去されたが、内部は非常に汚れている。
|No.101:[[究極の味、究極の代償]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|No.:[[]]|
|No.101:[[究極の味、究極の代償]]|[[投下順>51~100]]|No.:[[]]|
|No.97:[[You are next]]|やる夫|No.:[[]]|
|~|畜生マッマ|&color(red){死亡}|
|~|チハ|No.:[[]]|
|No.75:[[試される……]]|スターリン|No.:[[]]|
|~|孔明|No.:[[]]|
|~|サバンナ|&color(red){死亡}|
2016-10-06T22:27:38+09:00
1475760458
-
参加者名簿(ネタバレあり)
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/16.html
*参加者名簿(ネタバレあり)
※&color(red){●}のついたキャラクターの名前をクリックするとそのキャラクターが退場してしまった話にジャンプします。
黒幕:[[俺ら(創作板パロロワスレ住人)]]
主催:[[ひろゆき]]、[[FOX]]
【AA】12/21
&color(red){●}[[モナー>You are next]]/○[[モララー]]/○[[ギコ猫]]/○[[しぃ]]/○[[ウラー]]/&color(red){●}[[ウララー>ワッフルワッフル]]/○[[内藤ホライゾン]]/&color(red){●}[[ミルコ・クロコップ>You are next]]/○[[キバヤシ]]/&color(red){●[[サバンナ>孔明「あれがチハちゃんですか」]]}/&color(red){●}[[オエー>川越シェフがバトルロワイアル中に料理をしている画像下さい]]/○[[お断りします]]/&color(red){●}[[ショボーン>Across the――――/お断りします]]
○[[一条三位]]/&color(red){●}[[夜神月>神は死んだ/俺が殺した]]/&color(red){●}[[ダディクール>絶望ダディ/壊れた救世主]]/○[[クマー]]/○[[ポルナレフ]]/○[[ゆっくりしていってね!!]]/○[[八頭身]]/&color(red){●}[[ドクオ>心の闇]]
【ニュー速VIP】5/9
○[[やる夫]]/○[[やらない夫]]/○[[カーチャン]]/○[[タケシ]]/&color(red){●}[[麦茶ばあちゃん>心の闇]]/&color(red){●}[[壁殴り代行>意思が混ざり合う時、事件は起こる]]/&color(red){●}[[田代まさし>fate of the blood]]/&color(red){●}[[川越達也>究極の味、究極の代償]]/○[[照英]]
【軍事】4/6
○[[スターリン]]/○[[T-72神]]/&color(red){●}[[A-10神>神々の戦い]]/○[[チハ]]/&color(red){●}[[一等自営業>ちはやぶる たらちねの]]/○[[加賀]]
【ゲームハード】4/5
○[[クタタン]]/○[[いわっち]]/&color(red){●}[[MSKK>MSKK「不遇キャラってレベルじゃねぇぞ!」]]/○[[イズン様]]/○[[クラウドさん]]
【なんでも実況J】1/4
&color(red){●}[[ノリさん>Drop out]]/○[[やきうのお兄ちゃん]]/&color(red){●}[[原住民>それでも人ですか?]]/&color(red){●[[畜生マッマ>孔明「あれがチハちゃんですか」]]}
【ゲームサロン】2/4
○[[髪の子ファヌソ]]/&color(red){●}[[竹安佐和記>Do it right]]/○[[ZUN]]/&color(red){●}[[レベル男>Bump of Belgianeso]]
【オカルト】2/3
&color(red){●}[[寺生まれのTさん>寺生まれはスゴかった]]/○[[マウンテンバイク]]/○[[八尺様]]
&color(red){【週刊少年漫画】}0/2
●[[キユ>クエスチョン オブ オナー]]/&color(red){●}[[エルメェス>それでも人ですか?]]
【モテない男性】1/2
○[[電車男]]/&color(red){●}[[エルメス>( ^ω^)と嵐を呼ぶクマーのようです]]
&color(red){【ニュース速報】}0/2
&color(red){●}[[ぼっさん>Drop out]]/&color(red){●}[[ゆうすけ>Moral Hazard]]
【創作発表】2/2
○[[ハルトシュラー閣下]]/○[[日本鬼子]]
【ネトゲ実況】1/1
○[[ブロントさん]]
&color(red){【アニメサロン】}0/1
&color(red){●}[[モッピー>Bump of Belgianeso]]
【三国志・戦国】1/1
○[[孔明]]
【801】1/1
○[[801の姐さん]]
【既婚女性】1/1
○[[鬼女]]
【まちBBS】1/1
○[[グンマー]]
38/66
みせしめ
&color(red){●}[[S県月宮>>オープニング]]@ネットゲーム板
&color(red){●}[[荒巻スカルチノフ>>オープニング]]@AA
&color(red){●}[[室伏広治>>オープニング]]@ウエイトトレ板
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2016-10-06T22:26:04+09:00
1475760364
-
第二回放送までの死者
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/227.html
*&color(red){第二回放送までの死者}
|時間|名前|殺害者|死亡作品|死因|凶器|場所|
|朝|[[ダディクール]]|[[夜神月]]|80:[[絶望ダディ/壊れた救世主]]|脳死|牛刀、ブラックジャック|D-4|
|~|[[ノリさん]]|[[お断りします]]|82:[[Drop out]]|失血死|草刈り鎌|A-4|
|~|[[ぼっさん]]|~|~|~|~|~|
|~|[[A-10神]]|[[髪の子ファヌソ]]|86:[[神々の戦い]]|首輪爆発|磁石付きロープ|C-3|
|~|[[エルメェス]]|[[田代まさし]]|89:[[fate of the blood]]|頭部破壊|素手|E-2|
|~|[[田代まさし]]|[[クマー]]|~|頭部破壊|牙|~|
|~|[[夜神月]]|[[モララー]]|90:[[神は死んだ/俺が殺した]]|射殺|H&K G36|C-2|
|~|[[竹安佐和記]]|[[カーチャン]]|96:[[Do it right]]|失血死|ベレッタM92|D-3|
|~|[[キユ]]|[[タケシ]]|103:[[クエスチョン オブ オナー]]|射殺|イングラムM10|A-5|
|午前|[[モナー]]|[[クタタン]]|97:[[You are next]]|惨殺|ネメア|C-3|
|~|[[ミルコ・クロコップ]]|~|~|~|~|~|
|~|[[川越達也]]|[[グンマー]]|100:[[究極の味、究極の代償]]|射殺|サイガ12|D-3|
|~|[[サバンナ]]|[[チハ]]|102:[[孔明「あれがチハちゃんですか」]]|轢死|チハの車体|B-2|
|~|[[畜生マッマ]]|[[スターリン]]|~|射殺|UZI|~|
&color(red){以上、13名}
*&color(red){【残り38人】}
*おまけ
|名前|最期の言葉|
|ダディクール|「I'll be … back!」|
|ノリさん|「がっ、あ、が……!?」|
|ぼっさん|「……そうでちゅか」|
|A-10神|(この俺が……爆破だとぉ? ハッ、そんなこと出来るわきゃねえだろ!!)|
|エルメェス|「アハハハハハッ…………勝利ィ――――ッッ!!!!!!」|
|田代まさし|「……こんなはずじゃ、なかった……のになぁ……」|
|夜神月|(…………新世界の、神になる、はずだった、のに…………どう、して…………)|
|竹安佐和記|(そう考えて死ななきゃ……死んでも、死にきれないじゃないか――――)|
|モナー|『オマエモナー!!』|
|ミルコ・クロコップ|「間違ってもお前は助かっちゃいねぇぞ、次がお前の番だ!! それを理解しろよ!!!」|
|川越達也|「……だが、他の肉には無い旨味がある! これはぜひとも――――」|
|キユ|「お 前 ッ ……! こ の ……!」|
|サバンナ|ちょwwwwwwwまたスかwwwwwwwwwwwwwエンッ!!!|
|畜生マッマ|「J( 'ー`)し 保険掛けて無いから餓死したくなきゃ働けよ」|
殺害数
|順位|名前|人数|被害者|生存状況|スタンス|
|1位T|お断りします|4人|ショボーン、壁殴り代行、ノリさん、ぼっさん|生存|マーダー(お断り)|
|~|モララー|~|MSKK、レベル男、ゆうすけ、夜神月|生存|マーダー(優勝狙い)|
|~|クタタン|~|ドクオ、麦茶ばあちゃん、モナー、ミルコ・クロコップ|生存|マーダー(優勝狙い)|
|4位T|やきうのお兄ちゃん|3人|一等自営業、エルメェス、原住民|生存|生き残り優先(畜生)|
|~|クマー|~|エルメス、寺生まれのTさん、田代まさし|生存|バーサーカー|
|6位|カーチャン|2人|ウララー、竹安佐和記|生存|マーダーキラー(奉仕・タケシ)|
|7位T|川越達也|1人|オエー|生存|殺し合い反対(料理人)|
|~|一条三位|~|モッピー|生存|マーダー(優勝狙い)|
|~|夜神月|~|ダディクール|&color(red){死亡}|脱出派|
|~|髪の子ファヌソ|~|A-10神|生存|勝手気まま|
|~|田代まさし|~|エルメェス|&color(red){死亡}|吸血|
|~|グンマー|~|川越達也|生存|マーダー(優勝狙い)|
|~|タケシ|~|キユ|生存|???|
|~|スターリン|~|畜生マッマ|生存|危険対主催(ファシスト排除)|
|~|チハ|~|サバンナ|生存|対主催|
2016-10-06T22:23:41+09:00
1475760221
-
クエスチョン オブ オナー
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/254.html
殺し合う気はない。
人殺しなんて、怖くてできたもんじゃない。
#aa(){{{
|
| (ノA`;)
./ ̄ ( ヘヘ
}}}
とにかく、死なないように、生きるしかない。
でも。
#aa(){{{
..
..::('A`;):
━(ノ):
:<<::
}}}
ここに来た時点でこういう事になるだろうとは思っていた。
だけど、俺は覚悟はまだ出来上がってなかった。
◆
怖かった。
平穏に生きてきた子供にとって、大人とは常に優しい存在なのだ。
遊ぶ子供を見て、大人はニコニコとほほ笑み。
学ぼうとする子供たちに、大人は喜んで様々な事を教え。
悪いことをした子供は、大人は厳しく叱り付ける。
そう。怒るのではない、叱っているのだ。
子供同士不満をぶつけあう時のように、悪意を叩きつけているわけではない。
だから。
『黙れ! ――――そっちがその気なら……こっちから殺ってやる!!』
だから怖かった。
大人から受ける威圧が、怒号が、殺意が。
これまで味わった事の無い恐怖を湧き起こした。
ダン、ダン、ダン、床を響かせる足音。
ガラララ、ガチャリ、と扉が乱暴に開かれる。
「いないのか?」
男の声が耳にハッキリと響く。
拳銃を握るタケシの手は、小刻みに揺れていた。
引き金に触れる指先は汗に濡れ、滑りそうだった。
怖かった。
ヒュン、と風を切る音と同時に、近くにあった棚が……砕けた。
ガラガラと、ブロック塀の崩れる音が。
バキバキと、家屋の壊れる音が、響いてくる。
ドッジボールの球などとは当然わけが違う。
その一撃は、自動車が突っ込んでくるのと変わらない。
そんな凶器を自分へと目掛けて、平然と振りかざす大人が迫ってくる。
ハァ……
ハァッ…… ハァ……
ハァッ……!
ハッ…… ハァッ……
だから、殺らねばならない。
心臓がバクンバクンと跳ねあがり、肺が締め付けられ、喉元が痛くなった。
視覚には変哲もない、こげ茶色の木製の扉のみ。
その分研ぎ澄まされた聴覚が激しく警告を促す。
身体の内側からも、外側からも騒がしく。
「どこかに」 ガラララッ
ドクンッ
ドクンッ ドクンッ
「隠れて」 タ、タ、タ、タ
ドクンッ ドクンッ
ドクンッ
「居るのか?」 ガ タ ン、 ド サ ッ
ドクンッ! ドクンッ!
ドクンッ! ドクンッ!
ドクンッ! ドクンッ!
ドクンッ! ドクンッ!
来る。
あいつは俺たちを殺しに、来る。
冷え切った指先で、機関銃をグッと強く握った。
あの狂った男を殺さなければならない。
だって、そうでなくてはこちらが殺される。
鉄球で身体を撃ち抜かれ、骨と、内臓と、肉と、血液とが飛び出して殺される。
悲鳴をあげるゆっくり達もおそらく、生卵のようにグチャグチャに潰される。
嫌だ。それだけは絶対に嫌だ。
だから、あいつを殺さなくてはならない。
ガチャッ
ドアノブが回される。
軋んだ音を立てて扉が開く。
ためらってはいけない。
迷っていたらすぐに殺される。
もう後には引けない。
俺は覚悟を決め、引き金を引く。
全てはあっけなく終わる――
怖かった。
――指が、動かない。
だって人を殺すのが怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
殺すのが、失敗が、死体が、殺すのが、罪が、罰が、死が、殺すのが、殺すのが、怖い。怖い。怖い。
でも。
動け。動け。動け。動け。
だってここで止めたら……
動け。
動けよ!!!!!!!!!
あ
#aa(){{{
_,,,,,,,,,,,,,,,,,_
/;;;::::.... . . ...::;;;\
/;;::... . . . ....::;;\
l::::.... . . . .....:::l
i::.. . . . . ..::i
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. . .
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;:. . . . .:;
i::.. . . . . ..::i
l::::.... . . . .....:::l
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,,..-‐'''"" ヾ ,.-''"| /――――、/
、、_j_j_j_ ,. 、、_j_j_j_ ,.
、_>';三●;=}`メ._, 、_>';三●;=}`メ._,
く( ゞ'丕シ ヽ_, く( ゞ'丕シ ヽ_,
´ ニ=;ゞ、______,ム ム、、_______、,ニ`
´ ゙ ゙ ` ` ´ ゙ ゙ ` `
}}}
「お 前 ッ ……! こ の ……!」
――嫌だ、死にたくない。
天秤が傾く。
極限に達した怯えは、一線を越える躊躇を消失させた。
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壁にもたれるように、キユが倒れている。
胸と、顔と、額の三カ所から、ベッタリとした赤い体液を垂れ流している。
「……や、殺った……俺が……」
そうだ、確実に死に至らしめた。
連続して放たれた反動で、銃口が少しづつ上がっていったため、縦に三つの穴が並んでいた。
穴は壁と天井にも真っ直ぐに7つほど続き、うっすらと煙をあげている。
「……な、なぁ……。俺、大丈夫だよな……?
人殺しになっちまった……。で、でも、今のは仕方ないよな……? な、なぁ?」
「ゆゆっ……」
「俺、こんなヤバイ事したけども……。
お前らもこれは、仕方ない事だって言ってくれるよな……?」
生きている人間の意識を、永遠に闇へと沈めてしまった。
もう二度と戻らない、俺が殺したという事実は決して覆せない。
狼狽えるゆっくり霊夢の大きな瞳は、ガタガタと怯えるタケシの姿を映していた。
今のタケシは、危機を脱した安堵よりも、自分の手が穢れた事の方が恐ろしかったのだ。
「わ、わからないよ……」
「私たちにはわからない」
ゆっくり霊夢、そしてゆっくり魔理沙はそう答えた。
命を奪う事が、本当に仕方ない事だと言えるのか。
身の安全のためなら、本当に殺人を肯定してもいいものか、と。
それは、彼女たちも迷っていた。
別にタケシの行為に反対する事も、軽蔑する事も無い。
この殺し合いの場においては、正当防衛をしなくてはいけない事態があるのはわかっていたからだ。
ただ、バトルロワイアルそのものが常時『正当防衛が適用される』空間である。
その中でも殺人に賛同が出来ないからこそ、自分たちは今までゆっくり逃げ惑ってきたのではないか。
ゆえに、このような事態ならば殺人してもOKかと問われて、軽々しく首を縦に触れなかった。
建前などではない、本当の意見。そう、彼女たちはとても正直だった。
――裏切られた気分だ。
俺は強く舌打ちをし、そして。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
吐き出すように、叫んでいた。
そしてすぐそばの食器棚を思い切り蹴りを入れた。
壮絶な音を響かせて、台所の床に尖った破片が散らばる。
「……ああ、ああ、ああ、ああッ!!!
いいんだよコレで!! そうだろ、仕方ねぇだろうがよ!!
俺は死にたくなかったんだ、お前らも死にたくないだろ、そうだろ!?
あぁクソ、クソッタレがよぉ、何も文句言うんじゃねえぞ!! いいか!?」
ぜぇぜぇと大きく息を付かせながら、目を剥いて驚愕しているゆっくりに対して怒鳴った。
その声からは、震えを隠しきれていない。
それは自分でもわかっていて、それが一層腹立たしかった。
俺の心情を察したのか、ゆっくり達は何も言わなかった。
俺は間違ってなんかいない。絶対に間違ってなんかいない。
殺人鬼を倒したんだ、悪い事じゃない、許される事なんだ!
これは許される事、そうだろ!?
「全く、さっさと他の場所行くぞ!!
こんな死体現場にずっと居たら、頭がおかしくなる!」
「「ゆゆゆっ!?」」
そう言ってタケシは玄関へとさっさと歩く。
ゆっくり達はその後を追おうとする。
「……あ、その殺人鬼の道具拾ってけよ」
足を止め、振り向かずに命令した。
ガサゴソとした音が聞こえ、まもなく頭の上に鞄を乗っけたゆっくり魔理沙が視界へと入る。
それを確認した俺は、玄関の扉を開け、妙にまぶしい屋外へと出た。
地図も見ずに、道が続くままに脚を進めていく。
もう、どこへ辿り着いても構わなかった。
とにかくこの場から離れられるならば……。
&color(red){【キユ@週刊少年漫画 死亡】}
【A-5・民家/1日目・朝】
【タケシ@ニュー速VIP】
[状態]:精神不安定、疲労(小)、埃まみれ
[装備]:イングラムM10(22/32)@現実
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、麦茶(残り3/4)@ニュー速VIP、コンビーフ缶@現実、シュールストレミング@現実
[思考・状況]
基本:殺し合う気は無い。死にたくもない
1:俺は悪くない、悪くないんだ!
2:少しでも罪悪感を飛ばすために、どこかを目指す。
3:カーチャン……
※2chに関する記憶があるようですが、あまりはっきりしていないようです
【ゆっくりしていってね!!@AA】
[状態]:健康、ゆっくり、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、不明支給品×0~2、ガーレ@エルシャダイ、キユのデイパック(基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、靴墨@現実 )
[思考・状況]
共通:ゆっくりしていってね!!!
1:タケシについていく
2:内心、虐待画像を目の当たりにして気分が落ち込んでいる
※ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙、2体で1人扱いのようです
※片方が死亡したらどうなるかは、後続の書き手さんにお任せします
2016-10-06T22:18:57+09:00
1475759937
-
大神と3匹の子羊
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/255.html
「これはまずいことになりましね…」
深刻な表情を浮かべそう言うファヌソは焦っていた。
さきほどの青年が、お医者さんカバンを使用してくれたおかげで一命は取り留めた。
しかしファヌソは自身の体の異変を感じていた。
神通力で自身をスキャンして細部まで確認した結果、ファヌソは詳細を理解した。
外傷は癒えたが全身から神通力そのものが失われていっている。
急激にではないが、常温に置かれた氷の塊がじわじわと溶け出すように、少しずつ神通力は失われていった。
おそらく竹安の装備が大きく破損するか消滅するような事態が起きたのではないかとファヌソが推理する。
それが原因で神通力そのものの根底の部分に致命的な損傷を受けた。
そして、このまま放置すれば自分は消滅する。
神族である彼にとって、神通力の源泉は魂そのものであり、それが傷付くことは生命に関わる緊急事態だった。
この状況を打開する方法が一つだけあった。
神通力ではなく、肉と血の力で生命を維持する存在になる。
つまり神格を捨てて生身の人間になることだった。
ファヌソは手強いローグ型ダンジョンRPGをプレイしているときのように頭をフル回転させて考えを巡らせていた。あまり時間はない。
今のうちに何かできることはないのだろうかと。
どうせ消えてしまう神通力だ。これを使って今後の展開を有利にするには…
「名案が浮かびました!同僚の神々の力を借りればよいではありませんか!」
そもそも自分が本来持つ力を思うように使えないのは、この忌々しい首輪のせいだ。
ならば外部に助けを求めて彼らの力を借りれば良いだけの話だった。
本来であれば相手の都合などお構いなしに強制召喚して参戦させてやりたいのだが、神を召喚するには神通力が足りない。
そこで手紙を送ることにした。向こうからこちらに来る分には自分の神通力が不足していてもまったく問題はなかった。
神通力を使えば手紙の10通や20通、次元の壁を超えてでも発送可能だった。
「これでいよいよひろゆきもおしまいですね。このような名案を思い付くとは、さすが私」
自分の置かれた状況と救援を求むと旨をしたため、さっそく手紙を送る。
返事はすぐに帰ってきた。
他の神々曰く。
元祖神「新作ゲームプレイ中。だめだめ( `・ω・´)ノシ」
紙様「事務用品A4普通紙の生産が急ピッチ。行けそうにない。ごめん」
武田徹夜神「101回目のプロポーズ リメイク版の主演俳優になった。忙しいから無理」
をーでぃん「斬鉄剣とグングニル修理中。また今度」
「…はぁ」
ファヌソはため息をつきながら返信されてきた誠意のかけらもない手紙をまとめてビリビリと破り捨てた。
「自宅のゲーム機が全部煙を吐きながら爆発してしまいなさい」
憎しみを込めてファヌソが他の神々を呪った。
他に頼れる者がいないか、ファヌソが再び思案する。
「仕方ない子羊で我慢しますか」
ファヌソは神通力で召喚の印を結び、魔法陣を空中に描く。
すると空間に亀裂が入りそこから子羊たちが1匹、2匹、3匹と召喚される。
眠いときに眺めて数えたりしたら、そのまま眠ってしまいそうな光景だった。
「ん?ここはどこ?さっきまで自宅でテレビゲームをしていたのに」
「僕、徹夜でレベル上げしてて、ちょうど寝てたのに…誰こんな朝早くから?」
「来ましたね、子羊たちよ」
ファヌソが声をかけると、彼の存在に気が付いた3匹の子羊たちがファヌソに挨拶をする。
「あ、髪様!お疲れ様です!」
「あの~僕たち今日は何で羊の姿なのでしょうか~?」
「神通力節約のためです」
「はぁ」
ファヌソが神通力をケチって負荷の少ない方法で子羊を召喚したため、彼らは本当に雲のような羊毛に覆われた羊の姿だった。
だが人間だった頃の名残りが、全員二足歩行をしている。
彼らはファヌソが在中しているスレで、懺悔する側の子羊たちだった。
子羊たちが懺悔し神々が裁くというのが、懺悔するスレの基本的な流れだ。
「では早速懺悔しますね。ええと海外の暴力ゲームで…」
「いえ、せっかくですが、今日は懺悔と裁きはお休みです。実は、今私は面倒なことに巻き込まれていましてね。そこで貴方たちの助力を得るために貴方たちを召喚したわけです」
「面倒なことって何ですか?」
「実はかくかくしかじかの事情で…」
ファヌソはかいつまんで、殺し合いに巻き込まれてしまい戦力増強のため子羊たちを召喚したことを彼らに簡単に説明した。
「そんなことになっていたのですか。ひろゆきって野郎、許せませんね」
「ひろゆきに髪様の裁きを下しましょう」
「それがいいと思います。殺っちゃいましょう、髪様」
「話が早くて助かります。私もそうしようと考えていたのですよ」
そしてファヌソは召喚した子羊に命令を行う。
「では、ひろゆきを地獄へ落とすために私に貴方たちの力を貸しなさい。いいですね?」
ファヌソがそう言うと、子羊たちは足をそろえビシッ!と敬礼し次々に返事を返す。
「わかりました!僕たち全身全霊、粉骨砕身の覚悟で髪様を支援いたします!」
「僕たち、いつも髪様にお世話になっている身です。今度は僕たちが髪様をお助けしてみせます!」
「僕たちを髪様の目標達成のための尖兵として使役してください!」
実はファヌソは見た目弱そうな彼らを見て内心あまり当てにはできないだろうと感じていたが、なけなしの神通力を消耗してまで召喚した子羊をタダで返すのも惜しいという思惑と、それにこれから危険な戦いが待っている、多少弱くても仲間は不可欠だと考えた。
言葉には出さないが、そういった打算もあった。
「よしよし、良い心がけです。頼りにしていますよ」
「「「はっ!おまかせください!」」」
3匹の子羊の声がはもる。
いつも面倒を見てあげた子羊たちが、ファヌソの援助要請を快く受け入れる。
まさに子羊の恩返しだ。
私の人望(神望?)をもってすればこんなものである、私の人徳(神徳?)による彼らとの絆はとても深いのだとファヌソは内心自己陶酔していた。
「さて、とりあえず仲間の頭数はそろいましたか…次に準備するのは…」
ファヌソの計画は神通力を失う前に、可能なかぎり次の戦いの準備をすることだった。
ゲーマーとしての経験がファヌソに告げる。今のうちに仲間、装備、消耗品をなるべく充実させておくべきだと。
どうせあと数十分で失ってしまう神通力だ。今ここで惜しまずにガンガン使ってしまうべきだと。
「武器や防具に始まり、薬草、毒消し草、聖水、あとMP回復アイテムと状態異常回復アイテムも…」
綿密な計画を立てるファヌソに対し子羊たちは呑気に雑談を始める。
「そうは言ったものの、僕たちって何をすればいいんだろう?」
「何もしなくても大丈夫なんじゃね?髪様の後ろに黙ってついて行くだけで良いよね?」
「そうそう、だって髪様がジゴスパークやアルテマ、メテオ連打して、無双すれば全部問題解決じゃん」
「もしくは核ミサイルを1ダースくらい召喚して、ひろゆきごと消し炭にして一掃っていうのもありだよね?」
「じゃあ次の回で最終回だよね?僕たちすぐお家に帰れるよね?」
小声のヒソヒソ話ではあったが、神の聴力を持つファヌソには丸聞こえだった。
普通の人間には聞き取れないような小さな音でも聞き逃すことはない。
「ああ、そうそう。いま私はそういった大掛かりな力は使うことができないので、期待しないでくださいね」
「え?どういうことですか?」
理不尽な殺し合いに巻き込まれたことは話したが、自分の能力の事を話し忘れたファヌソは子羊に大まかに説明することにする。
「この首輪のせいで不本意ながらフルパワーで力を使えません。しかも神通力の使い方を間違えて、神格を捨てて、さらに力をセーブする必要があるのです。これから先は強さ的には普通の人間と大して変わらなくなってしまいます。まったく参りましたよ」
「じゃあ、髪様って相当弱体化しているのですか?」
「残念ですがそうなりますね。ですから生き残るには貴方たちの力を借りなければなりません。頼みますよ」
その言葉を聞いた子羊達は互いにアイコンタクトを交わして、最後にコクリと頷くとファヌソに向かってニコリとほほ笑んで言葉を放つ。
「ざ…」
「ザ?」
”ザ”から始まる言葉でゲーム脳のファヌソの頭に真っ先に浮かんだのはジオン軍の最下級モビルスーツだったりしていた。
だが子羊らから帰った答えは
「「「ざまあああああああっ!」」」
「!」
ざまあみろと言う意味の言葉である。
もちろん誠意もクソもあったものではない。
続けざまに、子羊たちが歓喜しながらファヌソを愚弄する。
「日頃の行いが悪いから、こんな目に合っているんだ!自業自得だ!ざまあ見ろ!」
「なんで僕たちが命がけで、こんなヤバいゲームに付き合わなくちゃいけないんだ!冗談じゃない!」
「お前がどうなろうが僕たちには一切関係ないね!死ぬならお前一人で死ね!」
次々と口から暴言を吐きまくる子羊たち。
さっきまであんなに忠実だったのに何故こんなことに?
ファヌソは子羊たちのパラメータを確認してみる。
もしかしたら原因がわかるかもしれない。
何らかのステータス異常ってことも考えられる。
さっそく神通力を行使し子羊たちをスキャンする。
RPGや地域制圧型シミュレーションで敵味方を問わずキャラの能力を確認するのはゲーマーの基本行動の一つだ。
すると…
HP 9
MP 1
物理攻撃力 2
魔法攻撃力 1
(-中略-)
物理防御力 3
魔法防御力 3
忠誠度 0
状態異常 なし
「…」
ファヌソはステータスのある1点を凝視する。
子羊達が突然手のひらを返した理由が、そこにすべて書かれている。
忠誠度 0
「忠誠度0って…」
多少の事では動じないファヌソであったが流石にこれには言葉が出ず、目が点にった状態で、呆けたように、ただ茫然と立ち尽くす。
私と子羊たちの絆だの、人望だの人徳だのと言っていた自分が滑稽な道化のようだった。
「いつもいつも僕たちに遠まわしに死ねと言ったり無理難題を押し付けやがって!こっちこそ許さないぞ!」
「僕たちが自分でお金を出して買ったゲームソフトだぞ!そのゲーム内で僕たちが、どんな酷い事をしたってお前にとやかく言われる筋合いはない!」
「そうだ!そうだ!エロゲーは地雷が多いんだぞ!金返せ、この馬鹿野郎!」
中にはファヌソに責任が無いような事まで因縁をつけ、さらに子羊たちは追い打ちをかけるように暴言を吐きまくる。
「小さなメダルを集めるために、土足で民家に勝手に上がり込んで住人の目の前でタンスの中身を物色しようが、壺を壊そうが文句は言わせない!何が悪いんだ!」
「盗んだ車で歩行者達を次々と轢き殺して死体から財布を奪おうが、鉄砲で武装して銀行強盗しようが怒られるいわれは無い!」
「小さい女の子を拉致監禁してレイプしようが調教しようが何をしようが僕たちの自由だ!やらせろ!」
ギャアギャア騒ぎながら子羊たちは、氷属性の剣を殺して奪ったこと、女性キャラにリョナを強要したこと、視点操作を悪用し女の子のスカートの中を覗いたこと、などなどベラベラと犯した悪事を自慢するように話し始める。
当然その姿からは反省している様子などはまったく見られない。
そして一しきり言いたいことを言い尽くした子羊たちは、ファヌソに背中をむけて反対方向に歩きはじめる。
「んじゃ僕たちテレビゲームの続きやるから帰るわ。僕たち参加者じゃないから、好きにここから退場できるしね。バイバ~イ」
「せいぜい殺し合い賛成派の危険人物にチェーンソーとかでバラバラにされないように気をつけることだな。じゃあな~」
「死んだら骨は拾ってやるからな。ま、骨が残ってたらの話だけどね(笑)あばよ~」
歩きながら首だけ後ろを向けて小馬鹿にしたように手を振りながらファヌソに別れの挨拶を告げる。
そんな彼らを黙って見送るファヌソではない。
表情は穏やかだが、殺意を込めてファヌソは右手に神通力を集めていく。
「地獄へ落ちなさい」
「うわーーーーっ!」
突然1匹の子羊の足元に直径2mほどの底が見えないほど深い穴が発生し、その場所に立っていた子羊は叫び声を上げながら奈落の底へと落ちていく。
「え?」
「うそ!」
仲間の一人が穴の中へ消えて行く様を見せられて子羊たちはびっくりして飛び上がる。
「あ…あの~髪様って神通力を失ったのでは…」
先ほどまでの威勢の良さが消え、オドオドと尋ねる。
「ええ、この首輪のせいで神通力の大半が封じられています。大規模な力は行使できませんが、それでも1人でドラゴンやキメラを軽く捻るくらいの強さは十分ありますよ」
「で、でも人間と大した変わらなくなるって…」
「ああ、それはこれからなる、と言ったのです。でも今はまだ神通力はたっぷり残っていますよ。そう、貴方たち全員を地獄へ送るくらいはね」
子羊は汗だくになりながら土下座して謝りはじめる。
「ごめんなさい!許してください!さっきのは嘘です!髪様に忠誠を誓います!」
「いいえ、許しません」
ファヌソは冷たく言い放つ。
あそこまで言われて、こいつらを生かして返すつもりはなかった。
すると子羊の1匹が自分の能力について説明をはじめる。
「僕は僧侶で回復魔法が得意なんです!きっと髪様のお役に立てます!許してください!」
「ほう、本当に回復魔法が使えるのですか?」
「はい!」
ファヌソは半信半疑だったが、もし本当に回復魔法の使い手だというのならば、手放すのは惜しい。
今後の戦闘で大いに役立つだろうと考え、子羊の魔法を確認することにする。
「論より証拠です。回復魔法を使ってみなさい」
「は、はい!」
子羊は小さなチューブを取り出した。
「これはどんな傷にも効果がある、魔法の薬なのです!」
しかし、よく見ると、ただのオロナイン軟膏だった。
「それで?」
「それだけです」
「…」
「だめ?」
ファヌソは、もう呆れて自称僧侶との交渉を強引に打ち切った。
「そんな物ここでは何の役に立ちません。地獄へ落ちなさい」
「うわーーーーっ!」
2匹目の子羊も、大きな穴に落ち、地獄へ消えていった。
銃火器や刃物を使用して、殺し合いをしているのに、オロナインって…しかも使いかけときている。
これはもう最後の子羊も、とっとと地獄へ落として武具やアイテムの準備にとりかかった方が、よほど有意義だとファヌソは判断した。
「では、貴方も地獄へ…」
「ま、待ってください!実は僕魔法使いで、攻撃魔法が使えるんです!」
ファヌソの言葉を遮り、懸命に助かる方法を模索する子羊。
「やれやれ、またですか…」
「実は僕、30歳まで童貞でした!だから魔法使いになれているはずなんです!」
「え?そうなのですか?」
そんなことで魔法が使えるなら苦労はしないのでは…?と疑問を持った。どう考えてもおかしい。
「いやいや。それってネラーどもが、おふざけで言っているだけなのでは…?」
「そんなことありません!僕ベギラマやファイラ並のそこそこ役に立つ魔法が使えます!」
「ふむ、火属性魔法ですか。では、実際に魔法を使うところを見せてください」
たぶん僧侶の子羊のときと同じ結果になる予感がしつつもファヌソは一応子羊にチャンスを与えた。
「はい!わかりました!」
子羊は懐から透明な液体の入った瓶を取り出し、入口に布きれを詰めていく。
火炎瓶だった。
-やっぱりですか。もういいです。だいたいわかりました。
「貴方のやろうとしていることは、放火魔と一緒です。地獄へ落ちなさい」
「うわーーーーっ!」
健闘虚しく3匹目の子羊も地獄へ落ち、子羊たちは全滅した。
そして騒々しい連中が一掃されたため、あたりに静寂が戻る。
「やれやれ、子羊どものせいで余計な力を使う羽目になりました」
そして穴の近くに落ちている自称魔法使いたちの秘密道具に目をやる。
「ふう、オロナインに火炎瓶ね…」
呆れつつも、一応子羊が残していったアイテムは回収しておいた。
何かの役に立つこともあるかもしれない。
そして、ファヌソは計画通り神通力を惜しまず使い、武具やアイテムの作成に乗り出す。
まずファヌソは武器の作成を優先した。
攻撃は最大の防御である。
これからの戦い、しっかりとした武器がないと始まらない。
ファヌソが作成した武器は裁きの杖というアイテムだった。
実はこの裁きの杖は、鈍器としての性能は低いが、道具として使用することで小さな真空攻撃ができるメリットがあった。しかも武器本体が破壊されない限り何度でも使用できる。
呪文の詠唱を必要とせず、近距離、中距離両方で活躍できる万能性をファヌソは評価した。
-それに武器名も私にぴったりではありませんか。
もっと殺傷能力が高いロケットランチャーのような武器も考えたが銃火器は弾薬がなくなると戦力が0になるのであえて使用回数に制限がない武器をチョイスした。
本当は上位の天罰の杖が欲しかったが神通力不足で、作れそうになかった。まあ仕方がない。
「やれやれ、子羊召喚なんて後回しにして、先にもっと強力な武器を作成すればよかったですよ。まったく子羊どもめ」
子羊に頼ろうとした自分が馬鹿だったと毒づきながら、次に防御力の強化をすることにした。法衣に永久持続する補助魔法をかける。ほんの少しだが法衣の強度が増した。
そしてファヌソは残りの神通力を行使し、役に立つであろう消耗アイテムを適当に作成する。
道具袋の中にはファヌソがゲーマーの知識で今後色々な局面で役立つであろうと考えるアイテムが、詰めこまれていった。
「不思議のダンジョンだって、道具のおかげで何度も生還しているし、やっぱ道具は必要でしょう」
そして、アイテムをいくつか作るうちにファヌソの神格は完全に消滅したのであった。
人として生まれ変わったファヌソはまず作成した杖の性能を確かめることにする。
自分が所有している道具や武具がどの程度の性能を有しているかを知ることの大切さをゲーマーのファヌソは理解していた。
未知のアイテムが使えるか否か事前に入念にチェックする。
彼を知り己を知れば百戦殆からずと言うが、まさにそれだ。
裁きの杖を少し離れた位置にある樹木に向かって振りかざす。
すると小さな風の刃が発生し、それらは杖を離れビュンと唸りながら太い幹を浅く傷つけ、細い枝をいくつか地面に落とす。
けっして強力ではないものの神通力をまったく行使しなくても、杖に込められた力だけで、まずまずの結果が出せたことに満足するファヌソ。
「よし、ここからが本当の戦いです」
杖を握りしめ、決意を新たにする。
そして口では参ったと言いながらも、ファヌソは口元に笑みを浮かべていた。
今までは、神通力が制限されていたとはいえ、ファヌソの能力は他の参加者に比べてかなり高く、向かうところ敵無しの状態だったが、弱体化したことによって、もう生身でA-10神のような強敵を倒すことはできなくなった。
しかし、これで本当に歯ごたえのあるゲーム難易度になった事でファヌソは心のどこかで高揚している自分がいることに気が付いた。
「我ながら救いようがないオタゲーマーってことですか…フフッ」
こんな状況下にありながら、ファヌソは根っからのゲーマーだった。
「まずは仲間を増やす必要がありますね。今度はまともな人材希望です」
いきなり裏切った子羊たちが欠員となったことで、それは最も優先する課題だった。
【B3/1日目・午前】
【髪の子ファヌソ@ゲームサロン】
[状態]:健康(体調は完全回復しましたが神格を失いました)
[装備]:裁きの杖@ドラゴンクエスト9、白い法衣+1
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=01】)、お医者さんカバン(3/5)@ドラえもん、ヘリコプター@現実
12.7mm弾×25、25mm弾×5、オロナイン(使いかけ)×1、火炎瓶×1、道具袋(中にファヌソが用意したアイテムがいくつか入っています)
[思考・状況]
基本:気まぐれに行動する
1:神としての高い能力は失ったがゲーム関連の知識をフル活用し生存してみせる
2:ひろゆきをゆくゆくは地獄に落とす
3:手に入れた弾薬は、相応しい参加者に与える
4:『裏ワザ』(死体やヘリをデイパックに収納できること)を誰かにひけらかしたい
5:青年(内藤ホライゾン)にはちょっと感謝
6:仲間を見つけなくては
7:くそ……子羊どもめ
※神格を失い神通力が激減しました。ホイミやメラ程度の軽い力を数回だけは使える模様。そのほかどれくらいの力が残っているかは次以降の書き手の方にお任せします。
※ファヌソが立ち寄った小さな公園の中に、弾薬箱とわさび@オラサイトが放置されています。
ファヌソが入手した物以外にも弾薬はあるようですが、種類と量は不明です。
※デイパックに参加者の亡骸を入れて持ち運べることを知りました。生者にそれが適応するかは次の書き手の方にお任せします
※なんだかんだ言っても子羊らと仲が良い。
※B3エリアの道路のど真ん中に直径2mほどの底が見えないほど深い穴が3つ空きました。落ちたら即死します。道具や死体を投げ入れた場合、回収不可になります。
ブロンドさんは近鉄百貨店から、西に向かって歩いていた。
拡声器での呼びかけが無駄に終わったので、別の場所で仲間を募る計画だった。
「なぜ誰からもテルがこないおかしいだろこれもきたないひろゆきの陰謀なのかテル機能を妨害しているんだろ俺がさらに強くなることを奥歯をガクガク言わせながら恐れているな、きたないひろゆきめ」
幸か不幸か、ここまで誰とも会わないことに苛立ちを覚える。過疎が進んでいるネトゲでも、ここまで人がいないことなどなかった。
メンテナンス中に自分だけログインしてしまったのか?そんな錯覚さえ覚える。
「もうこの際だから忍者でも…いやダメだな俺の誇り高きナイトのハートがそれだけはやめろと叫んでいる」
こんな状況下であっても毛嫌いしている忍者など、絶対に仲間にはしたくなかった。それだけ忍者を嫌っていた。
「を?あれは?」
交差点をまがった100mほど先に人影を見つける。
少し遠いが何をしているのかもはっきり見てとることができる。
おれ視力検査で2.0とか普通に出すし。
白い法衣を纏った男が手にしている少し変わった形の杖を少し離れた位置にある樹木に向かって振りかざす。
すると小さな風の刃が発生し、それらは杖を離れビュンと唸りながら太い幹を浅く傷つけ、細い枝をいくつか地面に落とす。
ブロンドさんが見つけた男はファヌソだった。
ネットゲーマーのブロンドさんにとって、男が何らかの魔法のようなものを行使したことをすぐに見切る。
「きた!後衛っぽいキャラきた!これでひろゆきに勝つる!」
能力的にも自分の補助要員として申し分なし。そして杖装備法衣装備で、いかにも「私、後衛が得意です」と言わんばかりのいでたち!
できれば後衛ジョブの黒魔や白魔は可愛い女の子の方が良かった。
そうすれば超カッコ良く前衛的に皆を守るナイトの俺は、ほぼ間違いなく100%モテモテになるのは確定的に明らかだ。
だが、もうこの際贅沢を言ってはいられない。
ブロンドさんは相手が危険人物か否かの確認などもせず、問答無用で白い法衣の男にカカッと猛ダッシュをかけ、脳内で男にマウスカーソルを合わせてオンラインゲーマー的操作を行う。
情報を見る
tellする
トレードを申し込む
→ パーティ申請をする
フレンド申請をする
ギルドに招待する
メールを送信する
遮断リストに加える
不正行為を運営に通報する
立て続けに白チャットで大声でどなる。
「おい!そこのお前!最強に強くて謙虚な俺の仲間に加えてやる!嬉しさのあまり沸騰してしまうくらい猛烈に感謝汁!」
謙虚な人間は自分を強いなどと言わないし、しかも日本語がおかしいし、パーティ申請のマナーもクソもあったものではない。
なぜか道にできている大きな穴3つを軽やかなステッポで回避し、男の下へときょうきょ駆けつける。
「!」
突然背後から大声で意味不明なことを言いながらマッハな全力疾走で接近してくるブロンドさんを見て驚いたファヌソは、慌てて裁きの杖を構え先端をブロンドさんに向ける。
ステージやダンジョンなど危険な場所で猛スピードで自分に接近して来る物体は基本敵と考えるゲーマーの習性からか体が勝手に動いた。
普通に考えれば、お互いが敵かもしれないという状況下において、初対面の相手にいきなり猛ダッシュをかけるような行為は相手に不用意な警戒心を抱かせると考えるものだが、ブロンドさんの頭の中は違っていた。
俺が駆けつけたなら誰しもが大歓喜し俺を英雄扱いし歓迎するのが当然であると考える。
【B3/1日目・午前】
【ブロントさん@ネトゲ実況】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:そんな装備@エルシャダイ
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、拡声器@現実、手裏剣@AA(20/20)、肉まん×3、あんまん×3
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、ひろゆきを倒す
1:白い法衣の男を仲間に加えて、さらにあと4人募集する。リーダーは俺(後衛優先)
2:さきほどの募集に対するテルを待つ
3:汚いなひろゆきさすがきたない
※B-4の周囲のエリアにメンバー募集が掛かりました。
※パーティ上限が6人と限られていない事に気付いていません。
※近鉄百貨店内にいる他の参加者には気付いてません。
※まず、Lvが存在しない事に気付いていません。
※Tellが存在しない事にも気付いていません。
※軽率な行動のせいでブロンドさんを危険人物だと誤解したファヌソに攻撃されるかもしれません。
場所は変わって、ここは地獄の1丁目。
夕焼けよりも、さらに赤みがかった色の空の下、子羊たちは貸し切り状態の温泉に浸かりながら疲れを癒している最中だった。
暇さえ見つけては、ゲームをしたりゲームをしたりゲームをしている彼らは、いつも疲労との戦いだった。
ゲーマーと言う名の戦士にも休息は必要だ。
神々の裁きにより何度も地獄に来ている…もとい落とされている子羊たちは、地獄の観光組合にとっては大のお得意様だった。
現金の持ち合わせが無くてもツケがきく。もう顔パスだ。
さきほども、すれ違った赤鬼や青鬼に挨拶をされた。
「ありゃ~、あんたたち、また来たオニか~。まあゆっくりしていくオニ」
と、こんな感じだ。
「ちくしょうめ!ひどい目にあったぞ!」
「ファヌソめ!許さないぞ!」
「すぐに蘇って仕返ししてやる!奴が弱体化している今がチャンスだ!」
湯けむりが立ち込める地獄谷温泉の上空に向かって子羊たちが吠えた。
【子羊@ゲームサロン-ゲーム内でした悪行を懺悔するスレ】
[状態]:ゲスト、健康
[思考・状況]
基本:生き返ってファヌソに仕返ししてやる!
※アイテム扱いです。倒しても忍法帳のレベルは上がりません
※ファヌソの神通力不足で本当に羊の姿で召喚された
※攻撃力は乏しく、参加者にとってはさほど脅威にならない程度
※反面、何度神々に裁かれ地獄へ落とされても、すぐに復活できるほどしぶとい。何度でも湧いてくる
※普段は真面目だが、ゲーム内では極悪人でも目を覆いたくなるような悪行三昧を繰り返している
子羊1:自称戦士。勝手に民家に上がり込んでタンスを勝手に開けたり、壺を壊すなど基本に忠実なゲーマー
子羊2:自称僧侶。聖職者のくせに暴力系残虐ゲームを好む。破戒僧。
子羊3:自称魔法使い。エロゲーを好む子羊。本人曰く30歳まで童貞だったため魔法使いになったとの事。8歳の頃から親に隠れてエロゲーをやっていた大物。
子羊が再登場するかどうかは、次以降の書き手の方にお任せします。
2015-07-28T19:38:26+09:00
1438079906
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第二回放送までの本編SS
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/219.html
**【朝】
|No.|題名|作者|位置|登場人物|
|75|[[アクシデントは突然に]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|D-2|いわっち、しぃ、やきうのお兄ちゃん、やる夫、畜生マッマ、チハ、グンマー|
|76|[[さー、新展開。]]|[[◆m8iVFhkTec]]|B-2|ミルコ・クロコップ、ウラー、モナー、クタタン|
|77|[[emotion]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|E-3|電車男、イズン様|
|78|[[存在があまりに大き過ぎた]]|[[◆m8iVFhkTec]]|B-4|ブロントさん|
|79|[[涙の中にかすかな灯りがともったら]]|[[◆shCEdpbZWw]]|B-4|一条三位、鬼女、クラウドさん、日本鬼子|
|80|[[絶望ダディ/壊れた救世主]]|[[◆m8iVFhkTec]]|D-4|夜神月、ダディクール|
|81|[[迷える心]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|B-3|ZUN、やらない夫、加賀、ギコ猫|
|82|[[Drop out]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|A-4|ノリさん、ぼっさん、ハルトシュラー閣下、お断りします|
|83|[[――の前の静けさ]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|D-3|竹安佐和記、カーチャン、マウンテンバイク、キバヤシ|
|84|[[それを食べるだけで力が得られるとしたらお前らどうするの?]]|[[◆m8iVFhkTec]]|D-2|内藤ホライゾン、八尺様|
|85|[[茶鬼]]|[[◆XG.R2oT3cE]]|E-2|しぃ、いわっち、クマー、田代まさし|
|86|[[神々の戦い]]|[[◆shCEdpbZWw]]|C-3|A-10神、髪の子ファヌソ|
|87|[[試される……]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|A-1|サバンナ、孔明、スターリン|
|88|[[ひと時のマターリ]]|[[◆m8iVFhkTec]]|C-3|八頭身、モララー|
|89|[[どうしてこうなった]]&br()[[fate of the blood]]|[[◆m8iVFhkTec]]|E-2|いわっち、しぃ、クマー、田代まさし、ポルナレフ、やきうのお兄ちゃん|
|90|[[神は死んだ/俺が殺した]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|C-2|モララー、夜神月|
|91|[[ハルトシュラーのパーフェクト説得教室]]|[[◆XG.R2oT3cE]]|A-4|ハルトシュラー閣下、キユ|
|92|[[答えのない自問自答]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|C-3|やる夫、畜生マッマ、チハ|
|93|[[マザー・オブ・ラブでつきぬけろ!]]|[[◆m8iVFhkTec]]|A-5|タケシ、ゆっくりしていってね!!、キユ、ハルトシュラー閣下|
|94|[[おしょくじのじかん]]|[[◆XG.R2oT3cE]]|D-3|川越達也|
|96|[[Do it right]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|D-3|竹安佐和記、カーチャン、マウンテンバイク、キバヤシ|
|99|[[Thank you for...]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|C-2|髪の子ファヌソ、八尺様、内藤ホライゾン|
|103|[[クエスチョン オブ オナー]]|[[◆m8iVFhkTec]]|A-5|タケシ、ゆっくりしていってね!!、キユ|
**【午前】
|95|[[鬼子「どうしましたのクラウドさん、いきなり私を押し倒すなんて……」]]|[[◆m8iVFhkTec]]|B-4|一条三位、鬼女、クラウドさん、日本鬼子、お断りします|
|97|[[You are next]]|[[◆m8iVFhkTec]]|C-3|ミルコ・クロコップ、モナー、ウラー、クタタン、やる夫、チハ、畜生マッマ|
|98|[[天才あらわる]]|[[◆m8iVFhkTec]]|B-4|モララー、ブロント|
|100|[[究極の味、究極の代償]]|[[◆i7XcZU0oTM]]|D-3|T-72神、照英、801の姐さん、グンマー、川越達也|
|101|[[悲しみの弔鐘はもう――]]|[[◆m8iVFhkTec]]|E-3|電車男、イズン様、クマー|
|102|[[孔明「これがチハちゃんですか」]]|[[◆m8iVFhkTec]]|B-2|孔明、スターリン、サバンナ、やる夫、畜生マッマ、チハ|
|104|[[大神と3匹の子羊]]|[[◇fZIJrTGM01]]|B-3|髪の子ファヌソ、ブロンドさん|
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2015-07-28T19:35:21+09:00
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You are next
https://w.atwiki.jp/2chroyal/pages/247.html
*You are next ◆m8iVFhkTec
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「ここで大人しくしてるんだ、いいな」
「ええ、もちろんです。6時間後、キチンとお話致しますので……」
「どうだか……アンタの言うことは信じれるようなモンじゃない。
そう言うなら今すぐにでも情報を提供したらどうだ?
どうせ、もうそこから動けないことが確定しているんだ。
さっさと殺し合いを脱出出来たほうがアンタも下手に殺されるリスクが減るぞ」
「いいえ、そういうわけには参りません。情報を話せばそのまま殺されるかもしれませんから」
「俺はアンタをお情けで生かしてやってんだぞ? それに応えようと思わないのか?」
「私は慎重なものでして。本当に私の命が保証されたと確信したらすぐにでもお話します」
「面倒くさいやつだな……」
クタタンは得体の知れない愛想笑いを浮かべる。
ミルコ・クロコップはそれを憎たらしげに睨みつけた。
ここは病院1階にあるロッカールーム。
ベンチが2台ほど並べられ、壁にずらりとロッカーが固定されている。
それ以外には何もない、窓すらもない単純な構造の部屋。
クタタンはそこに両手をロープで縛られた状態で閉じ込められた。
抉られた右腕は止血され、包帯を巻いて応急処置を施されている。
「ところでこの赤と白の球、説明書はどこにやった?」
「それがですね、付属されてなかったんですよ。不備なものですよね。
……あぁ、それは爆弾です。かなりの威力を持ったとなっております。
知らずにそのボタンを押したところカウントダウンが始まったので、慌てて投げ捨てたのですが、建物が一つ壊れてしまいました」
「既に一つ使ったということは、そんなシロモノがいくつも入ってたってことか?」
「二つです。それが最後の一個となっております」
「どっちにしろ、こんなものを取っておくにはリスクが大きすぎる。後で破棄するぞ」
「フン、勿体無いですね……」
「もう一つ、この白い棒が何なのか答えろ」
「それはアーチという武器です。端を引っ張ると物体を浄化させるエネルギーが放出されます。
私を襲ってきた老婆と男性一人には、それを使って対応したんですよ」
「そうか。もうこれ以上聞くことは無い。寝ていろ」
病院に到着した時に、まずその惨状に驚愕したものだ。
表側のほうはそれほど目立った状況ではないが、駐車場側が破壊され尽くしているのだ。
黒く焼け焦げた中規模のクレーターがあり、焦げている何かの残骸が散らばり、さらにはアスファルトがひっくり返された跡も見受けられる。
ここに向かう途中、大きな爆発の音を聞いていたが、ここが発信源だったのだろう。
窓ガラスは爆風や破片によってほとんどが粉々に砕かれ、壁には銃痕が残されており、さらには低階層の壁の一部が崩落している。
ここで大規模な闘争が行われていたのには違いない。
一つ不思議なことといえば、駐車場側以外が全くと言っていいほど被害を受けていないところだろうか。
とりあえずミルコは、ウラーとモナーに病院内の探索を頼んでおいた。
構造の把握が必要なことと、そして闘争の生き残りが中にいる可能性があったからだ。
その間にミルコが、一人でクタタンの見張りを行う。
#aa(){{{
∧_∧
( ´∀`)
ミ ( つつ
) ) )
(__)__)
「ただいまモナ」
A_A
( ´Д⊂ヽ
⊂ ノ
人 Y
し (_)
}}}
「一通り把握してきたウラ……」
しばらくして、モナーとウラーが戻ってくる。
話を聞く限り、誰かが隠れている様子はなかったそうだ。
「血が凄い箇所があったウラ……でも誰もいなかったウラ……」
「あと、ボロボロに壊されていたのは駐車場側だけだったモナ。
そっち側でなにか起きたに違いないモナ」
「調査、ご苦労様。しばらくはそこの病室で休息を取ってくれ」
「了解しましたモナー」
殺し合いの開始から既に7時間が経過している。
目覚めてから現在まで、3人とも一睡もしていない。
ミルコはそれでも全く問題がない、しかし一般人である猫二人はそうはいかない。
今のところ身体的な疲労は少なくとも、後々響かないように休んでもらったほうがいいだろう。
安全を考慮して、なるべく近くの部屋に指定した。
なるべく自分の目の届く範囲に集まってもらったほうが安全だからだ。
そうして、1時間程経過しただろうか。
外から奇妙な音が響いてきた。
キュラキュラキュラキュラ……
車椅子を漕ぐような車輪の音が、徐々に大きくなってくる。
キュラキュラキュラキュラ……
ロビーの窓から外を覗き込む。
そしてその音の正体には、流石に驚きを隠せなかった。
「戦車……!? あんなものが支給されてるのか……」
病院の前の道を、一台の戦車と一人の男が歩いていた。
明らかに重厚な車体にそぐわないほど軽快な音を共にキャタピラが回る。
ミルコはすぐさまモナーとウラーを起こした。
「起きろ、今すぐそこに得体の知れない奴らが来ている」
「まさか……襲撃モナ……!?」
「わからないが、相手は戦車を所有している。仮に敵意があった場合、この建物も容易に破壊出来るだろう。
俺が奴らの様子を見てくるからその間、ここでクタタンの見張りを頼んだ。
あと、もし何かあった時は荷物を持って、自分たちだけでもすぐさま逃げるんだ」
「わ、わかったモナ。気をつけるモナ……」
護身用としてアーチのみを持ち、表側の方へと向かう。
防具といえるものが無い以上、身軽な方が都合がいいからだ。
◆
(……さん……お姉さん……)
チハの呼ぶ声が少し遠くに聞こえた。
(お姉さん、そろそろ起きてよー)
「……ついウトウトしてしまったわね。今どの辺にいるのかしら」
(もう病院の近くだよ)
「……あのさ、少し離れた場所って言わなかったっけ?」
目覚め早々、マッマの機嫌が悪くなる。
というのも、彼女はもっと慎重に行動したいと考えていたのだ。
マッマとやる夫、そしてチハは地図に書かれていた『病院』に足を運んでいた。
病院、それは先ほどの爆発が起こった場所。危険人物がいる可能性が高く、出来れば近づきたくないと考えていた場所。
しかし、爆発音を聞いてわかることはあくまで"方向"だけである。
どの程度の距離なのか、といった細かい位置情報は、高地から見ない限り特定するのは難しい。
だから爆心地である可能性を考慮し、ある程度離れた位置でこっそりと様子を伺ってから行く、という話だった。
(え、てっきり入口付近かと……。僕は中に入れないし……)
「もし中に危険な奴がいたら狙われるかもしれないじゃない! それくらいわかるでしょ!?」
(ご、ごめんなさい……)
「あーもう、私は疲れやすいトシだっていうのに、誰かさんがわがまま行って私を歩かせるから……」
「なんでやる夫に八つ当たりするお……」
度々こちらに飛び火してくるのに、やる夫はげんなりする。
完全にストレスのはけ口として扱われている気がする。正直嫌である。
でも文句は言えない。ここからあのやきう兄みたいに一人で出て行く勇気がないから。
少なくとも頭の働くマッマと、安全な戦車と行動すれば安心を得られるのだから。
「まったく、仕方ないわ……見た感じ病院に壊されてる様子とか無さそうだし、こっそりと忍び込もうか。
本当だったらもう少し慎重に行きたかったんですけどね? はぁ……」
(面目ない……。気をつけてね)
マッマはチハの蓋を開け、外に出る。
と、その時、すぐそばから駆け寄る足音。
反応も間に合わず、突如ガタイのいい男にやる夫の体は押さえつけられる。
#aa(){{{
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ←ミルコ
| ( ●)(●)
. | (__人__)____
| `-/ ─' 'ー\
. | / ( ○) (○)\
. ヽ / ⌒(__人__)⌒ | ガシッ
ヽ |、 ` ⌒´ /
/ `ーー/⌒^)(⌒^ ー )
| 、 _ __,,/ヽ / \
}}}
「ウワアアァァァ!!」
「あんたら、殺し合いには乗っているか?」
パニック寸前のやる夫に対し、男は厳かな声で問いかけてきた。
◆
「……とりあえず、荷物を整理しておくウラ……」
「そうモナね。いらない物は捨てるモナ」
ミルコが持っていったアーチ以外の物を取り出す。
ロープ、普通の縄だ。クタタンを縛るのにも使用している。便利。
工具セット、知識が無い自分たちには使えないが、おそらく分解や組立に役立つだろう。。
バスタードソード、自分でも正直持て余してるが、一撃ぶつければノックダウン出来るはずだ。
赤いシューズ、キック力を増強させるというがサイズが合わない。
というのも、自分たちの足のサイズは異様にデカイ。
#aa(){{{
A_A
( ´∀`)
( )
| | |
(__)_)←このように太ももよりも足のサイズが大きい。
}}}
ツボを刺激して脚力を向上させる仕組みらしいので、改造すれば自分らに役立つ物となるかもしれない。
ちくわ大明神、小腹が空いた時に食べることで満足を得られる。
オレオ、小腹が空いた時に食べることで満足を得られる。
ポイントカード、お餅の絵が描かれている。該当する店で使えばお得だろう。
結局、何も捨てなかった。
そして、クタタンの持ち物である、赤と白の球体が目に入る。
「おっさん、これは一体なんだウラ?」
ウラーはロッカールームの扉越しにクタタンに尋ねた。
「そのカプセルですか。フフ、それこそがですね、この殺し合いからの脱出に必要な道具なのですよ」
「モナ!? 今それを話すって、どういう風の吹き回しモナ!?」
平然と答えるクタタンに思わず驚愕の声をあげた。
本来の約束であれば、6時間後に教えてくれるという話だったはずだ。
今それを教えてしまうのは明らかに怪しい。
「ミルコさんには既に話しましたが、それは所謂、収納箱なんですよ」
「収納? こんな小さなボールに入るわけないウラ! いい加減にしろウラ!」
「これは特別なカプセルなんです。大きさとか形状とか、"普通のカプセル"というくくりでは考えてほしくないんです。
もちろん、その中に入っている道具の使い道や、具体的にどうすればいいかの情報は黙秘させてもらいますが」
「ふむ……そういうことかモナ……」
つまり、脱出のためのヒントがこの中に収められているということだ。
クタタンがやけに落ち着いた様子だが、その道具を見ただけで方法がわかるものではない、という自信があるのかもしれない。
「それにしても、ミルコさんが帰ってくるのがちょっと遅いモナ……。
もしかしてホントに何かあったとか……いや、ミルコさんがそんな簡単に何かあるはずが……」
「やめろウラ! 不安を煽るなウラ」
「いやぁ、私もヒヤヒヤしますよ。彼に何かあったらマズイですね……。
一応お二人は荷物確認を済ませて、用意をしたほうがいいと思いますよ」
「そうやって媚を売っても、簡単に心を許したりはしないモナよ。
私はなるべくミルコさんの指示に従うつもりですからモナね」
「媚を売るだなんてそんな。身の安全を確保したいだけですよ。
それに、後々あなたがたに脱出策を教えるんですから、媚を売る必要はないでしょう?」
ぐぬぬ、とモナーは口篭った。
ウラーはそれを横目に見て、そして赤と白のカプセルを手にした。
「まぁ、ちょっと中身は気になるからなウラ。見せてもらうウラ」
「ええ、どうぞどうぞ」
「ウラーさん、あんま勝手なことをしないで欲しいモナ!」
◆
病院の玄関で、ミルコとマッマたちは情報交換を行う。
ミルコが掲げる目標――脱出のために首輪を外す、そしてそのために技術力のある者を探す。
それにはマッマはおおむね賛同し、さらにその目的に対する問題点を指摘した。
少なくとも首輪の構造を把握するために、実験用の首輪が必要だと言うこと。
「流石に人の首に着いてる物を、ぶっつけ本番でいじるわけにはいかないでしょ?
申し訳ないことだけど、既に死んだ人のから調達する必要はあると思うわ」
「あぁ、おそらくそれもやむを得ないだろう。外をある程度探索すればすぐに見つかるかもしれないな」
「いやだ、不謹慎ねぇ」
「そういう世界だろ、ここは」
もはや見知らぬ者の死に対する気遣いが出来るような精神状態ではない。
生きている者を救うためには、既に死んだ者の首輪を取ることもやむを得ないのだ。
死者の首を切り落とす、普通なら残酷極まりない行為だが仕方のないこと。
二人は既にそれを理解していた
ふと壁にかけられた時計を見て、10分くらい話し込んでいたことに気付いた。
「……おっと、連れを待たせてしまっていた。一旦奥へ来て欲しい」
「あなたの他にも誰かいるのね」
「モナーとウラーだ。見た目はちょっと妙だが驚かないで欲しい」
「大丈夫よ、変なヤツには慣れてるわ」
「それなら安心だ」
「待って、変な奴って誰のことだお」
蚊帳の外にいたやる夫がここでようやく会話に入った。
……と、その時。
「ひぃぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
悲鳴、とても長い悲鳴が病院内に響き渡っていた。
続けて男の声。何かを語りかけるような声。
ミルコ・クロコップはすぐさま駆け出した。
あの悲鳴はウラーのものだった。そして男の声の主は、クタタン。
ここで少し気を緩めて話し込んでいたために、クタタンに付け入る隙を与えてしまったに違いない。
早々に止めに行かなくては……!
奥へと走り去るミルコの姿を見て、
「何!? 何なの!? あっちで誰か襲われているの……!?」
あまりに突然の出来事に、マッマは大きく戸惑った。
ミルコの"連れ"が何者かに襲われたのは間違いないだろう。
だとすれば、自分たちも助けに向かうべきか。
しかし、今自分たちには銃器などに応戦出来るほどの武器を持っていない。
ここで感情に任せてミルコの後を追ったところで、何が出来るというのだろうか。
相手がとんでもなくヤバイ奴だった場合、きっと自分の命も危機に晒されるだろう。
果たして、出会って数分の者のために、危険を冒してまで助けに出るべきか。
短い時間だが、マッマは悩んだ。そしてその口から言葉がつぶやかれる。
「……ごめんなさい。私たちが行ったところで何も出来ないわ……」
出てきたのは謝罪の言葉。
不用意にリスクのある行動を取りたくなかった。
例え、助けたいという気持ちが本物であっても、無駄に死ぬ可能性がある選択は選べなかった。
「やる夫、逃げるわよ」
「わ、わかったお……」
やる夫もまた、その意見に反対しようとはしない。
これは薄情な行為かもしれない。
しかし今は、自分の命のほうが、長く行動した者の命のほうが大切だった。
二人は黙ったまま、外へと走り出した。
(あれ、お姉さんたちどうしたの?)
事情を簡単に説明し、すぐにチハに乗り込んでその場を離れた。
後でまた必ずここを訪れる。
どうか男が無事でいられることを祈らずには居られなかった。
◆
廊下を全力で駆け抜け、奥のロッカールームの方へと進むんだ。
そこに広がる光景は、想像しうる中で最悪のものだった。
赤、赤、赤。
生き物という容器に目一杯詰められた、血液という液体。
その大量の液体が溢れ出て、廊下に大きな池を作っている。
ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃり。
肉を貪る黒い怪物の姿あった。
内臓を引きちぎり、牙でさらに滅茶苦茶に咀嚼されていく。
怪物が食しているのは、ミルコが知っている顔。
タレ目を少しだけ引きつらせた驚愕の表情を携えたまま、ピクリとも動かない。
「ネメア、アイアンヘッド」
クタタンの声に反応し、化物はすぐさま食事を中止する。
赤く――文字通り血のように赤く、ナイフのように尖った鋭い角が、ミルコの方に向けられる。
そして突撃。
ミルコはその動きを捕捉する。そしてギリギリまで引き寄せ、左側へと抜ける。
真横の位置から、強烈なキックを叩き込む。確かな手応え、怪物の体が僅かに軋む。
急停止をした怪物はこちらへ居直ろうとする、そこへもう一撃蹴りを叩き込む。
「てっぺき!」
クタタンの指示、刹那、ネメアの体が水銀のような光を放つ。
鉄壁――それは、肉体を鋼の如く硬化させるポケモンの技。
ミルコのハイキックが炸裂した時、金属的な音を響かせる。
「―――ッ!?」
予測していた硬さを遥かに凌駕していた。ゆえに足の方が甚大な損傷を受けてしまう。
内部から奇妙な音が立ち、異様に鈍い痛みが走る。
これはひびが入ったに違いない。襲い来る苦痛に、ミルコはおもわず顔を歪ませた。
ネメアはそのままミルコに覆いかぶさり、マウントポジションを取る。
そして迫り来る牙……咄嗟に手に持っていたアーチをネメアの口に押し付ける。
ガンッ
不意だった。頭を思い切り鉄の塊で殴られた。
視界が大きくブレる。意識の集中が途切れたことにより、アーチをひったくられてしまう。
虚ろな目を無理やり開かせた先には、バスタードソードを構えたウラーの姿があった。
その顔は恐怖に満ち溢れ、たった今自分が行なった行為にも焦りをあらわにしていた。
「ウラー、一体何を……」
「悪くない、俺は悪くない、悪くないんだ、殺さなきゃ俺が殺される、だから悪くないんだ。
これは正当防衛なんだ、悪いことじゃないんだ、仕方ないんだ、自分の命を優先していいんだ」
「お前は、何を言っているんだ」
「あんな殺され方はしたくない、だから仕方ないんだ。俺が生きるためだから、悪くない。
きんきゅ、緊急き、ひ、避難法、緊急避難法が、ついて、ついてるんだ、俺には」
もはや気が動転して、言っていることが正しい文を成していなかい。
だが大まかな意味は伝わる。少なくとも、クタタンに恐怖を刷り込まれているのだろう。
モナーが殺される様を間近で見せられ、「自分もこうなりたくなければミルコ・クロコップに襲いかかれ」と。
そう言われたに違いない。
「メタルクロー!」
鋭く尖った爪が、ミルコの胸を思い切り貫く。
激痛、喉の奥から血がこみ上げ吐血する。
ほとんど致命傷に近い一撃だった。
「フフフフ、いいお姿ですねぇ。自分が虐げた人物に逆襲される気分はどうですか?」
「クソ……何なんだこのモンスターは……」
「先ほど赤と白の爆弾、正しくはモンスターボールっていうカプセルなんですけどね。
そこに入ってたんですよ、私の従順な下僕としてね。
ついでに言えば、このネメアを出してくれたのはウラーさんですよ、感謝しなくてはいけませんねぇ」
「やはりお前は……すぐに殺しておく、べきだった……」
「今更そんなこと言っても遅いですよ。甘かった自分をせいぜい恨みなさい」
そう嘲り、そして笑った。
あぁ、この憎らしいクソッタレに今から制裁を下せる。
散々侮辱しやがった罰を与えられる。
考えるほどに愉快な気持ちが湧き上がってくる。
「ネメア、そいつをしっかりと押さえておきなさい」
ネメアの前足が乱暴に顔面を押さえつける。
動けない様を見て、クタタンはその傍へと近寄り、思い切り蹴りつけた。
何度も、何度も、まるでサッカーボールを蹴るように放っていく。
叩かれた痛み、プライドを傷つけられた怒り、それら全てを足に込める。
頭部の形が徐々に変わっていく様を見るうちに、愉悦が溢れ出していく。
「ははは、はははは、ははははははっ!! どうだ? 何も出来ずに一方的にやられるのは?
痛いか? 悔しいか? 私が憎いか? ははははははははははははは!!! ざまを見ろ!!」
なんと清々しい感覚だろうか。なんと爽快なのだろうか。
一撃ごとに心に渦巻いていたストレスが発散されていく。
曇天の空に大砲をぶち込んで、風穴を開けて青空を拝むような、そんな感覚だ。
「あはははははははははは!!!」
人間の中にある残虐性、それを解き放つことはこれほど素晴らしいことなのか。
罪悪感や背徳感、報復に対する恐怖が無ければ、こんな面白いものはないだろう。
笑いが止まらない。
その時、クタタンの足の動きが止まる。
彼の足首を、ミルコの手ががっしりと掴んでいた。
そして。
「放しなさ……ぐがああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
「図に……乗るな……!」
人間離れした握力によって、足を砕かんと強く握られる。
骨がミシミシと悲鳴を上げる。血液がみるみる鬱血していく。
痛みに顔を歪めながら、クタタンはすぐさま指示を下す。
「ネメア、こいつの腕を切り落とせ!!」
メタルクロー。
ミルコの丸太のように太い腕が容易く引きちぎられる。
噴水のように、大量の血が吹き出して、床をベッタリと染める。
「ひぃぃ……ッ!」
離れて見ていたウラーは耐え切れず悲鳴を上げる。
白い壁や床を赤黒い液体が染め上げ、鉄臭い空間が出来上がっていた。
スプラッタ映画そのもののような光景が、眼前に広がっているのだ。
「ウラー……聞け……」
名指しで呼ばれ、ウラーは飛び上がった。
ミルコは息も絶え絶えな様子だった。
死は目前に迫っている。その中で、自分はどんな怒りの言葉をぶつけられるのか。
それが怖くて、ウラーはガタガタと震えだす。
「――いいか、聞けよ!!!?」
「ひ、はいィッ!!」
突然、病院に響き渡るような力強い怒号が放たれる。
「間違ってもお前は助かっちゃいねぇぞ、次がお前の番だ!! それを理解しろよ!!!」
「五月蝿いですねぇ。病院では静かにするものですよ」
クタタンは足首を掴んでいた手を引き剥がし、思い切りミルコへと投げつける。
そして平坦な声で指示を下す。
「ネメア、殺しなさい」
「グオオオオォォォォン!!」
咆哮を上げ、ミルコを首筋から噛み千切った。
◆
『ウラーさん、あんま勝手なことをしないで欲しいモナ!』
モナーの制止も聞かず、ウラーは何の気なしにカプセルのボタンを押した。
ポン、と小気味の良い音と共にカプセルは開かれ、中から現れたのは。
『グオオオォォォォン!!!』
漆黒の毛並みを持つ、禍々しい怪物の姿があった。
獅子のようで魔物のようで、死者のような呻き声を上げつつ、全身から強い血の臭いを放っていた。
俺もモナーもその場で腰を抜かして、ただ震えていた。
その怪物が俺たちを獲物として見ている、このまま殺されてしまうと思った。
と、その時クタタンはドア越しに囁いた。
『ウラーさん、そのカプセルを私に渡してください。
その最強の生物を使役出来るのは私だけなのですから。
この生物、ネメアを使ってあなたを殺し合いから守り抜きます、どうですか?』
それは悪魔の囁きだった。
そして俺は、それに応じてしまった。
『最強の生物が俺を守ってくれる』というのに期待を抱いたのもあるかもしれない。
しかし、このままでは怪物に食われるかもしれない、という恐怖が俺の背中を押したんだ。
『ウ、ウラーが裏切ったモナ……』
『すまないウラ。でも俺はどうしても死にたくないウラ……。
生き残らせてもらいたいウラ……本当に許して欲しいウラ……!』
『……どっちにしろ、同じモナよ! この次に死ぬのはきっと……』
『さぁネメアさん、アイアンヘッドです』
『オマエモナー!!』
鋭い角で突き上げられ、モナーの臓器が破壊される。
そこからは描写するに値しない。ただただ、食事が行われていた。
『俺は……俺は……』
モナーの言葉が耳に張りついていた。
そうだ、選択を間違えてしまった。きっと用済みな自分は、このまま殺されるんだ。
ネメアの爪によって拘束を解いたクタタンが、笑みを浮かべながらこちらに近づく。
殺される。すぐに殺される。
『ひぃぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』
『落ち着いてください、私は約束を守ります!! あなたを殺す気はない!!』
俺は悲鳴を止め、クタタンの次の言葉を待った。
『我々が生き残るために、邪魔をするであろうミルコ・クロコップも排除します。
チャンスを見て、思い切りミルコ・クロコップに攻撃をしなさい。
彼を倒せば、あなたの行いを攻める者は誰もいない。それに、最強の味方を得ることが出来るんです』
クタタンの命令を断る勇気は、俺の中にはなかった。
そして、その通りに実行した。かつての仲間が死ぬ様をただ見ていた。
◆
抗えない嘔吐感。
ウラーはその場で胃の中の物を吐き出した。
目の前の惨状が、仲間を裏切った罪悪感が、俺の中で蠢いていた。
「俺は、俺は、うわああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
ボロボロと涙がこぼれ落ちる。。
この殺し合いから生きて返してくれると行ったミルコが、もう動かない。
まるで兄弟のように容姿が似ていたモナーが、もう動かない。
自分がどれほど取り返しのつかない行いをしたのか、それを痛感した。
「ウラーさん、あなたの判断は正しかった。
あなたは生きるために何かを犠牲にする決断をしたのです。
それを恥じる必要がどこにあるのでしょうか」
クタタンはそう言って俺の背中をさすった。
先ほど、ミルコを蹴りつけていた時とは全く違う、とても優しげな口調だった。
「アンタが……アンタさえ居なければ俺はこんな……」
「選択したのはあなたでしょう。安心してください、私の頭脳とネメアの力があれば、あなた一人くらい背負うのは容易ですよ。
生き残りたいんでしょう? 生き残るのがあなたの願いですよね?」
「あぁ……」
「なら、死んだ彼らのことは忘れてしまいなさい。自分の命だけを考えればいいのです」
「…………」
「そうそう、あなたにご褒美を与えましょう。
私たちが生き残るのに、最高に有利になるものです。
ちょっとPDAを使わせていただきますよ」
クタタンは自身のPDAと、ウラーのPDAを同時にいじる。
何かしらの通信を行い、そしてウラーにPDAを操作していた。
これでOKです、と言って、その画面をこちらに見せる。
「私の殺害レベルをそちらに移し、忍法帖プログラムの"専用ブラウザ"をインストール致しました。
周辺にどのくらいの参加者がいるのかを、完璧に把握出来る画期的なアプリです。
これで不意打ちを受けることも無くなります、死のリスクがグッと減らすことが出来るのです」
「……俺はホントに、これで良かったウラか……。
ホントにあんたは俺を助けてくれるんだろなウラ……?」
「もちろんです。私の下に付いたからには、相応の待遇を与えますとも。
殺し合いを終わらせるためのあなたの手伝い、期待させていただきますよ」
その優しげな顔の裏で、何を考えているのだろうか。
最初からわかっていた。クタタンを絶対に信用出来るはずが無いと。
モナーの最後の言葉が、ミルコの最後の言葉が脳内にこだまする。
きっと良いように利用された上で、必要とあらばすぐに俺を殺すつもりだろう。
そう、自分が殺される番を後回しにしただけなのだ。
でも、もう後には戻れない。
クタタンと共に行動する以外に、自分が少しでも生きる道は残されていないのだから。
&color(red){【モナー@AA 死亡】}
&color(red){【ミルコ・クロコップ@AA 死亡】}
【C-3/病院内/一日目・午前】
【クタタン@ゲームハード】
[状態]:健康、右腕に治療済の切り傷
[装備]:ネメア@ポケットモンスターアルタイル・シリウス、PDA(忍法帖【Lv=02】、ちくわ大明神@コピペ、アーチ@エルシャダイ
[道具]:PDA(忍法帖【Lv=00】、ちくわ大明神@コピペ、アーチ@エルシャダイ、
[思考・状況]
基本:優勝し、世界を美しいモノへ創り上げる
1:相手を見極め、出来るならば他の参加者に「協力」を呼びかける
2:ウラーは手駒として利用するつもり
3:いわっちには自分の思想を理解してもらいたい
【ネメア@ポケットモンスターアルタイル・シリウス】
[状態]:支給品、健康
[思考・状況]
基本:クタタンの指示に従う
※使える技は、アイアンヘッド、悪の波動、メタルクロー、鉄壁です。
【ウラー@AA】
[状態]:死に対する恐怖、悲しみ、罪悪感
[装備]:バスタードソード@FF&ドラクエ(FF7)
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】"専用ブラウザ"をインストール済)、オレオ@イタチコラ画像、ポイントカード@当店のポイントカードはお餅ですか
[思考・状況]
基本:生存最優先
1:クタタンに着いていく
2:とにかく死にたくない……
3:化け猫(お断りします)とライオン(サバンナ)を警戒
※忍法帖プログラム"専用ブラウザ"をインストールしたため、周囲の参加者の位置がわかるようになりました。
【C-3/病院付近/一日目・午前】
【やる夫@ニュー速VIP】
[状態]:負傷(中程度)、血が付着、テンションsage、擬似賢者モード
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2(確認済み)、しょうゆ一㍑(1/4消費)@現実
[思考・状況]
基本:性欲喪失。とりあえず今は生き延びる
1:病院から離れる、ミルコたちに罪悪感
2:アイツ(やきうのお兄ちゃん)は怖いけど……でもマッマの言う通りにする
3:チハからは離れたくないけど、畜生マッマから離れたい。今のとこ出来そうにないけど
4:やらない夫がちょっと心配。でもやっぱりおにゃのこには会いたい
※擬似賢者モードによりテンションが下がり、冷静になってます。性欲が回復すれば再び暴走するかもしれません。
【畜生マッマ@なんでも実況J】
[状態]:健康
[装備]:ぬるぽハンマー@AA
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~1(治療に使えそうなものは無いようです)、ハイヒール一足@現実
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める
1:病院から逃げる、ミルコたちに罪悪感
2:あのバカを追いかける。
3:とりあえず、やる夫を戦闘要員兼弾除けにする。グンマーはどうしようか……
4:やる夫の友達のやらない夫に親近感
※ミルコ・クロコップと情報を交換しました。
※爆心地が病院だと言うことを知りました。
【チハ@軍事】
[状態]:損傷無し、燃料残り77%、内部が少し醤油臭い
[装備]:一式四十七耗戦車砲(残弾無し)、九七式車載重機関銃(7.7mm口径)×2(0/20)
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品1~3(治療に使えそうなものは無いようです)
[思考・状況]
基本:死にたくない
1:マッマの言う通りにする
2:殺し合いに乗った人には会いたくない
3:やきう兄に強い警戒。グンマーは……
※チハは大戦中に改良が施された、所謂「新砲塔チハ」での参戦です。
※チハは自分の武器の弾薬が無い事にまだ気づいていません。
《支給品紹介》
【オレオ@イタチコラ画像】
『NARUTO -ナルト-』の登場人物、うちはイタチのコラ画像において、
「サスケェ!お前の前のたなの オレオ とって オレオ!」というセリフから、
オレオを支給。白いクリームを黒いクッキーでサンドイッチした美味しいお菓子。
【ポイントカード@当店のポイントカードはお餅ですか】
どこかの店のポイントカード。無料で作ってもらえて、使うたびにポイントが貯まる。
正直、ハズレ支給品と思われる。
|No.96:[[Do it right]]|[[時系列順>第二回放送までの本編SS]]|No.98:[[天才あらわる]]|
|No.96:[[Do it right]]|[[投下順>51~100]]|No.98:[[天才あらわる]]|
|No.76:[[さー、新展開。]]|ウラー|No.:[[]]|
|~|ミルコ・クロコップ|&color(red){死亡}|
|~|モナー|&color(red){死亡}|
|~|クタタン|No.:[[]]|
|No.92:[[答えのない自問自答]]|やる夫|No.102:[[孔明「これがチハちゃんですか」]]|
|~|畜生マッマ|~|
|~|チハ|~|
2014-08-20T10:42:34+09:00
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