一年と一か月後の誕生日。

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<p>なんだって、いつだって唐突だ。</p> <p>すなわち万物の事象はすべからく唐突かつ必然であって、記憶と言う奴は全てを残すことなどできはしないのである。まる。</p> <p> </p> <p>「あ、あの…すまんっ! 本当に俺が悪かった!」</p> <p>「別に、いいわよ。忙しかったんでしょ」</p> <p> </p> <p>いいわよ、という言葉は許してくれる感じではないらしい。</p> <p>ムスッとした顔は一切緩まず、思い切り目を逸らされてしまう。</p> <p>正直気まず過ぎて声も出やしない、その癖汗は出るんだから世の中困ったもんだ。</p> <p>そして彼女の口からはため息が一つ。</p> <p> </p> <p>「もういいってば。こんなことで辛気臭くなるのも嫌だし、みんなの所行くわよ。ほらシャキッとする!」</p> <p>「うす…あこちゃーさん」</p> <p>「その呼び方やめんか!」</p> <p> </p> <p>シャキッと言われてもな。</p> <p>知り合って一年と一か月、季節のイベントも通りいっぺん終わらせた頃。</p> <p>プレゼントどころか誕生日のことを、今朝穏乃に呼ばれるまで忘れていて。</p> <p>笑顔で前を歩く彼女を見るたび、後悔や色んな念が押し寄せてくるわけで。どうにか鞄なんかを漁ってみるわけで。</p> <p> </p> <p>「お……あこちゃー」</p> <p>「だからその呼び方やめいっ!……って、なにそのお辞儀」</p> <p>「さっせんしたっ! なにとぞ、なにとぞお納め下さい!」</p> <p> </p> <p>詫びのお辞儀は90度。差し出したるはお気に入りのウナギパイ。</p> <p>10秒たっぷりの沈黙にやっちまったかと冷や汗が出るが、大きなため息の後に指先が軽くなる。</p> <p> </p> <p>「なんでウナギパイなんて持ち歩いてんのよ…」</p> <p> </p> <p>う、美味いじゃないですか……</p> <p> </p> <p>「はいはい…ま、一応ありがとね。来年は期待してるから」</p> <p> </p> <p>苦笑と一緒にひらひら揺れる彼女の手。</p> <p>パキリと折れたウナギパイの半分ずつが、俺と彼女の口に収まったのである。まる。</p>

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