病んでる

「病んでる」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

病んでる」(2014/08/08 (金) 23:11:32) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

<p>「京太郎」</p> <p>「優希か」</p> <p> </p> <p>近寄ってくる優希は一歩ずつ、軽やかな足取りで。</p> <p>ぴったり1メートルの間を置いて立ち止まって、クリクリと丸い瞳で見上げてくる。真っ暗な瞳のまま、無邪気に笑いながら。</p> <p> </p> <p>「のどちゃんも、咲ちゃんも、邪魔だったら言うんだじぇ?」</p> <p>「…ばーか、そんなわけねーだろ」</p> <p> </p> <p>手の平で優希の頭を撫でる。いつもみたいに、ゆっくりと。</p> <p>くすぐったそうに笑う優希はいつもの優希で。</p> <p> </p> <p>「くすぐったいじょー! もっと優しくしろ、犬!」</p> <p>「ほーれほれ、してほしかったらいつもみたいに言ってみな」</p> <p> </p> <p>……ああ、そんな目するようになったの、いつからだったっけな。</p> <p>指の隙間から見えるお前の目が、そんな風になっちまったのは。</p> <p> </p> <p>「……」</p> <p>「優希」</p> <p> </p> <p>手をそっと離す。ガクンと糸が切れたように優希の頭が垂れさがって、微動だにしなくなって。</p> <p>たっぷり数分…日に日にこの時間が長くなっていく。</p> <p> </p> <p>「……のどちゃんと咲ちゃんは、友達だじぇ」</p> <p> </p> <p>色のない声。腹の底から湧き上がる低い声は、まるで呪詛のようだった。</p> <p> </p> <p>「だから……」</p> <p>「優希!」</p> <p>「……………………何も、したりしません」</p> <p> </p> <p>それでいい。それでいいんだ。その言葉が口から出れば、今日の所はいつもの優希になれるから。</p> <p>そうすれば、顔を上げた優希の顔はいつもの無邪気で楽しげな笑みに戻るから。</p> <p> </p> <p>「優希、部活行くか?」</p> <p>「おう! さっさと行ってみんなと麻雀打つじょ!」</p> <p> </p> <p>いつまで、いつまでなら大丈夫なのか。この方法がいつまで通じるのかすら分からない。</p> <p>けど今の俺には何の考えも無くて。くすぶる焦りだけを腹に抱えたまま、優希と歩調を合わせるしかなかった。</p>

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: