雨宿り

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雨宿り」(2014/08/09 (土) 18:56:18) の最新版変更点

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<p> </p> <p>空から一滴の雨粒が落ちる。その一粒が雨雲の堰を切ったように、水音はすぐに轟音になっていく。</p> <p> </p> <p>「…須賀君、どうする? 走って帰ってもいいけど」</p> <p>                          </p> <p>「そしたらもっと濡れちゃいませんか…風邪、引いちゃいますよ?」</p> <p> </p> <p>「今更って気もするけどね。髪の毛、もうグッショグショだもの」</p> <p> </p> <p>そう言って髪を撫でる部長の姿はどこか艶やかで。見れば見るほど冷えた体が熱を帯びそうで、そっと目を逸らした。</p> <p> </p> <p>「あーあ…須賀君、髪留めとかゴムとか持ってない? 髪が首や背中にかかるとすっごい気持ち悪いのよ」</p> <p> </p> <p>「んなこと言われても」</p> <p> </p> <p>言わんとすることは分かる。俺も水を吸った前髪が重くて、今すぐ切りたいくらいだけど…それを部長にいう訳にはいかないよなあ。</p> <p> </p> <p>「仕方ないわねえ…よっと」</p> <p> </p> <p>「もしかして、ずっと手で掻き上げとくつもりですか?」</p> <p> </p> <p>「だってこれしか無いじゃない? ねー、腕疲れるから、代わりに持っててくれない?」</p> <p> </p> <p>「女の子がそんな簡単に髪を触らせていいんすかね」</p> <p> </p> <p>ぽたぽたと落ちる滴が木陰を濡らす。重そうな髪は、その陰から白い首筋を覗かせて。</p> <p> </p> <p>今にも触れそうなくらい近くで、手にその熱を感じながら。</p> <p> </p> <p>「雨…止まないっすね」</p> <p> </p> <p>「そうね。もう少し時間掛かるかも…」</p> <p> </p> <p>髪の毛が重くて、手が少しだけ、肌に触れる。</p> <p> </p> <p>じっと俺を見つめる部長の瞳。無邪気に歪む口元から出る楽しげなハミングが、雨音の中で響いていた。</p>

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