さらりと流れる少女の髪。膝の上で川のように広がって、たおやかにほほ笑んでいて。
そんな親友の頭を撫でる一つの手。自らの膝に頭を預ける少女より更に長い髪を持つ、一人の女の子。
竜華「なあ怜…ウチな、京太郎のこと、好きやで」
怜「……知っとるよ。竜華は京太郎のこと目で追っとるもんな」
少女の手が、自分を見上げる親友の髪を梳く。
少女の手が、自分を見下ろす親友の髪を梳く。
竜華「でもな。京太郎は怜のこと、好きやから」
怜「……うん、気付いとる」
微笑みを崩さない膝の上。長い髪の少女の胸に、チロリチロリと炎が燃える。
表情を陰に隠す、その長い漆黒の髪のように。黒い、黒い炎となって。
竜華「怜がいなくなれば、京太郎はウチのこと見てくれるんかな」
逆光の中に沈む表情を窺い知ることはできず。それでもなお、少女は微笑んでいる。
怜「そんな未来は見えんけど…竜華がしたいなら、ええよ」
少女は微笑んでいる。髪を撫でる手が首を撫で、指を突き立てていようとも。
竜華「怜」
怜「っ、が…あ…かふっ!」
怜「……っぁ……ひゅ…」
長い長い髪の中。顔は隠れ、誰にも見ることは叶わない。
けれど、その顔は少女には確かに、笑っているように見えた。
竜華「なあ怜」
竜華「――このまま、死んでくれる?」
怜「――ぁ」
コクリと少女の顔が縦に揺れて、笑う。
それが長い髪の女の子には酷く気味が悪く見えて、酷く嫌になって。
竜華「っ! どいて!」
怜「ごほっ! げほ、が、ふっ…りゅ、か…」
竜華「…っ、なんや…ホンマ、ウザイわ!」
踵を返し、髪を靡かせて。その目には、敵意と恐怖を滲ませて。
蹲る少女は一人息をつく。曖昧な微笑みを絶やさずに、その目に優しさと傲慢の色を滲ませて。
怜「竜華になら殺されてもええって思ったけどな…ふ、ふふ」
怜「――アホやなぁ竜華」
怜「竜華なんかに、振り向くわけないやろ」
怜「例えうちを殺しても、京太郎は竜華なんか見ぃひんわ」
少女は笑う。首に残る死の感触を思い出しながら。
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