初戦(千里山、釼谷、越谷女子)

『さあインターハイ二日目! 本日は左下ブロックの一回戦、12校が3校に絞られます!』

 

晴絵「みんな、準備はいい?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

晴絵「よし! それじゃあ新生阿知賀、全国初お披露目といこうか!」

 

『あと15分で試合開始となります。出場校の先鋒選手は対局室へお集まりください』

 

晴絵「出番だよ玄!」

 

穏乃「がんばってください!」

 

宥「わわ」

 

憧「全国デビュー!」

 

灼「気合で」

 

玄「おまかせあれ!」

 

ハラリ

 

玄「わわっ!? 処理してるのにー」

 

晴絵「こらこら、本番中にも毛落とすなよー」アハハ

 

憧「穿けえええええ!!」

 

 

 

『一回戦第6試合! 岡山代表は讃甘高校。先鋒は新免那岐!』

 

『あれだねえ、ひとーつ人の世の生き血をすすり、って感じじゃない? 知らんけど』

 

『福島代表は裏磐第高校の森合愛美! 特技はスキーとのことです』

 

『スキーはいいねえ。出会いも男もそこらへんにいるからね、知らんけど?』

 

『…奈良県代表、阿知賀女学院は松実玄!実家は旅館経営だそうです』

 

『旅館! いいねえいいねえ、二人旅行に布団は一つってかい?』

 

『……えー、富山代表は射水総合高校。先鋒は昨年個人戦15位、寺崎遊月!』

 

『富山っていうとダムがあるねぃ。そういや私もコーヒー飲み過ぎて決壊しそうなんだけどねぇ』

 

『さっさと行ってこいアホプロがっ!』

 

『手厳しーねー、そんじゃちょいと行ってこようか。すぐ戻るよ』

 

『帰ってくんな!』

 

 

憧「なんか実況も大変なのねー」

 

 

 

玄(全国大会…これが、みんなの最初の一打)トン

 

玄(ここまで長かったけど…ここまで来れた)トン

 

玄(みんなのために、がんばるよっ!)コトッ

 

遊月「ロン! 11600」

 

遊月(地区大会では稼ぎ頭だったみたいだけど、守りはうっすいねー)

 

玄「あ、あうぅ…」

 

 

憧「あちゃー、しょーがないけど守りが薄いわねー」

 

穏乃「憧! 何言ってんの!?」フシャー!

 

憧「な、なによいきなり…」

 

穏乃「玄さんはそんな尻軽じゃないよ! 赤土先生じゃないんだから!」

 

晴絵「おいおいキラーパスかよ…うん、玄は大丈夫じゃない?」

 

憧「ホントどうやって教師になったわけ?」

 

 

 

『阿知賀の松実選手、高め三色タンピンドラ3の3門張でテンパイ…は?』

 

 

えり「えっと…どういうことでしょうか三尋木プロ。聴牌すら取らないとは」

 

咏「わかんねー! すべてがわかんねー、目隠しプレイの相手くらいわかんねー」

 

えり「黙れアホプロ」

 

咏「ありゃりゃ厳しい…っと」

 

えり「阿知賀女子、松実選手、ドラを重ねて張りかえしました」

 

咏「うーわ、またドラ5とかマジっすか」

 

えり「また…?」

 

咏「前局もあの子はドラ5あったんよ。そんくらい見とけー、そんなんだから男ができないんだぞー」ケラケラ

 

えり「っさいわアホプロ!」イラッ!

 

 

憧「実況席、テンション高すぎじゃない?」

 

晴絵「そう? はやりんとかはもっとアレだよ? のよりんとか解説しないし」

 

憧「プロの世界って…」

 

 

 

えり「ったく…と、松実選手テンパイ! 片和了りのノベタンですが、ドラ6の大物手です」

 

えり「しかし、どうしてリーチを掛けないんでしょうか? 手がバレないように?」

 

咏「んー…かけたら二つ目の赤が来た時に困るからとか。知らんけど」

 

えり「はあ…しかし、和了り牌になっていた牌が次々と捨てられていきます。勿体ないような気が」

 

咏「いや知らんし。まあ周りの友達が童貞捨ててったら焦る気持ちはわかるけど?」

 

えり「だーから関係ないこと言うなって何度言わせるんだっての!」

 

 

愛美(よし、まずは…)

 

愛美「リーチ!」

 

玄「あ…それ、ロンです! 16300!」

 

愛美「うぐっ…山越しって、キツイなあ」

 

 

咏「おっ、あの選手面白い事言うねい」パタパタ

 

えり「は? ツモ切りに対して山越しで当たったら辛いと思いますけど…高打点ですし」

 

咏「いやいや。こう…二つの山を越えたところがキツイって上手い言い方だよねえ」アハハ

 

えり「今のマイク切ったんで、放送では聞こえてませんからね」

 

咏「さすがえりちゃんだねぃ」パタパタ

 

 

 

えり「松実選手、またドラが…」

 

咏「おーう」

 

 

玄「ツモ! 6000オールです」

 

愛美(またドラ6!? こいつ、最悪のドラ爆麻雀だ…!)

 

 

咏「ドラの由来はドラゴンなんだよねー」

 

えり「英語のドラゴンなら、竜ってことですね」

 

咏「そそ。だからドラが集まるってことは多くの竜に好かれてるってコト」

 

咏「言うなれば…彼女は阿知賀のドラゴンロード!」ドンッ!

 

えり「……」

 

咏「……」

 

えり「恥ずかしいんですか?」

 

咏「言うなよぅ…」

 

 

 

『阿知賀のドラゴンロード!』

 

淡「……」ボーッ

 

菫「む、淡が敵情視察とは珍しいな。気になる高校はあるか…淡?」

 

尭深「大丈夫…? 風邪? 発情した?」

 

誠子「お前や部長じゃないんだから…」

 

淡「か……」

 

菫「か? かもかも?」

 

淡「かっこいい…!!」キラキラ

 

淡「いいなー! 私も二つ名欲しいー!」

 

 

 

セーラ「うっはー、暑い暑い! やっぱホテルは涼しいなー」

 

泉「園城寺先輩、サボってないですかね」

 

浩子「見に行きましょうや」

 

 

竜華「おかえりー」

 

セーラ「なんやトッキー、また竜華の太もも枕か」

 

怜「んー…やっぱこれがええわー」

 

浩子「泉は自販機寄ってから戻るそうですわ」

 

セーラ「しっかしズボラやなー、パンツ丸見えやん」

 

怜「別にみんなしかおらんし…」ダルー

 

竜華「東京見物はどうやった?」

 

セーラ「それがあつーてあつーて、ファミレスで延々ダベっとったわ」

 

浩子「おばちゃんから伝言ですー、今日あった試合の動画と牌譜見とけって」

 

泉「すいません、遅れましたーって園城寺先輩なんですかその恰好!?」

 

怜「パンツ見えとるくらい大目に見てやー…」

 

泉「いや、パンツ裏表逆ですよ!」

 

怜「……」

 

 

怜「はよ言ってや!」ダダッ!

 

セーラ「ドジやなー」

 

 

 

竜華「おかえり。早速やけど動画見る?」

 

怜「そうするわ…」

 

セーラ「えー、汗かいてるし腹減ってるしー」

 

浩子「ウチらは戻ってきたばっかですからね」

 

竜華「あ、でも汗に蒸れた匂いってええんちゃう?」

 

セーラ「せやな」

 

浩子「このまま見ますか」

 

泉「ほな30分後にここに集まりましょう。食事はルームサービス、皆さんシャワー! はい解散でー」

 

浩子「仕切るねえ、さすがのツッコミ要員や」

 

セーラ「それじゃ一人15分シャワーかー? 短いなー」

 

竜華「一緒に入ればええやん」

 

セーラ「そしたらイロイロあって余計時間掛かってまうやんけー!」アッハッハ!

 

泉「だーっ! 集合は一時間後! はい解散!」

 

 

 

怜「最初はどの試合見るー?」

 

竜華「トーナメントで一番近い所でええんちゃう?」

 

浩子「それじゃ第6試合ですね。岡山、福島、奈良、富山です」

 

セーラ「ここで勝ったんは…」

 

竜華「あ! 言わんといてー。結果分からんほうが楽しく見れるし」

 

泉「でも次対戦する相手をマークした方がいいんと違います?」

 

怜「あ、あの子…」

 

 

『…奈良県代表、阿知賀女学院は松実玄!実家は旅館経営だそうです』

 

 

竜華「あああああああ! サービスエリアで会ったおもちフレンドや! いい感触のおもちの人!」

 

泉「はあ!? ちょ、何があったんです!?」

 

怜「簡単に言うとなー……」

 

怜「りゅーかがあの子の胸をいきなり揉みしだいたんや」

 

泉「何してんですかぁ!? 菓子折り! 後で菓子折り買ってこんと!」

 

 

 

竜華「決めた! 私この子を応援するでっ!」

 

竜華「頑張れー! くろちゃーファイト!」

 

セーラ「試合に勝ったら敵やっちゅーの…それもええな。展開的に」

 

 

『大将戦終了―! 阿知賀女学院、二回戦進出です!』

 

 

竜華「きたー! おめでとー! ばんざーい!」

 

怜「はしゃいどるとこ悪いけど、次はうちらがこの子らと戦うんやでー」

 

竜華「はっ…ど、どっちを応援すればええんや!?」オロオロ

 

浩子「また愉快な事言いますね」

 

竜華「うーん…」ムムム

 

セーラ「おお、悩んどる。どんだけ好感度高いんや」

 

竜華「決めた! 私この子を応援するで! おもちこそ正義やー!」

 

泉「ホンマに何言ってるんですか先輩」

 

 

 

――翌朝――

 

『インターハイ第二回戦第二試合、ここからシード校の千里山女子が姿を現します』

 

『インターハイ決勝常連校の牙城を崩すことができるのか―!』

 

玄「およ?」

 

怜「その節はどうも…ウチの竜華が申し訳ありませんでした」ペコリ

 

玄「りゅーかさん? ええと…」

 

怜「ほら、あのおもちの大きい、ウチと同じ学校の」

 

玄「ああ! 黒い長髪のおもちさん!」

 

怜「今更やけど、突然あんなことされてびっくりしたやろ」

 

玄「はあ…」

 

 

泉「清水谷先輩、試合が終わったら謝り行きますからね」

 

竜華「はーい」

 

 

玄「でもりゅーかさんのおもちも、とても良かったのです!」

 

玄「こう…揉み解す感触が相当素敵で…」エヘヘ

 

 

泉「やっぱ行かんでええです」

 

竜華「えー、また会いたいー! 揉みあうんやー!」

 

 

 

ギバ子「試合始まっちゃった!?」

 

ひな「まだ前口上だよ」

 

綾「解説はまた三尋木プロかー。小鍛治プロがいいんだけどなー」

 

凛「そお? 三尋木プロとえりちゃん面白いよ」

 

 

『二回戦第二試合は埼玉の越谷女子、兵庫の釼谷高校』

 

 

綾「そろそろかー」

 

凛「…きたっ!」

 

 

『奈良の阿知賀女学院は10年ぶり、二度目の出場です』

 

『なんてーか、制服にリボンっていいよねぃ。肌蹴た時とか特に』

 

『ええい、無駄口挟むなアホプロめ!』

 

『次は千里山女子! シードのため二回戦からの登場です!』

 

『他の子達は一回ヤってるからねえ、場の空気に上手く溶け込めるかがミソじゃない? 知らんけど』

 

『言い方! 真面目にやらんかっ!』

 

 

凛「あはは、やっぱりこの二人の漫才好きだなー」

 

 

 

えり「二回戦からは上位二校の勝ち抜きになります」

 

咏「二校ってなーんかエロスが足りなくねー?」

 

えり「高校生に訳の分からないことを求めないでください」

 

咏「あはは、まあトーナメント自体は普通に半分が敗退ってわけ? わっかんねーけど」

 

えり「そうですね…ランダム性の高い競技ですから、波乱も十分にあり得ます。本人達には相当な狭き門と感じられるのではないでしょうか」

 

咏「あっはっは! そりゃー高校生ならまだ狭い門だろー! 知らんけどー!」バンバン

 

えり「言うまでもないですけど、もうマイク切ってるんで…はい、再開します」

 

えり「先鋒戦、試合スタートです!」

 

 

憧「なんかたまーに音飛ばない? この実況」

 

晴絵「んー…まあ、うたたんだし。放送禁止用語言ってんじゃない?」

 

憧「キャストミスが分かってるならさっさと替えなさいよ!」

 

 

 

玄(よし、がんばるよ!)フンス!

 

怜(阿知賀のおもちさん…ホンマにドラゴンロードなら、それだけ手が透けて見えるってことやんな)

 

怜(しかも一回戦の打ち方から見ると、おもちさんはドラを捨てられん)

 

玄「……」トン

 

怜「ロン。1300」

 

玄「はい」ジャラ

 

怜(…やっぱり。竜華達ならこんな時、どう言うんやろな)

 

 

竜華「くあー! くろちゃーの手がスッケスケや! 私はどっちを応援したらええんやー!」ヌヌヌ!

 

浩子「楽しそうですね先輩」

 

セーラ「まー、阿知賀を応援するんはええんちゃうかー。ウチともう一校は次行けるわけやろー」

 

泉「江口先輩余裕ですねー」

 

竜華「あー…でもええなー、カメラで見てもいい形のおもちや」ハフゥ…

 

 

怜(まあアホなこと言っとるんやろなー)

 

 

 

えり「二回戦最初の和了りは千里山ですが…奇妙な和了りでしたね」

 

咏「どの辺が?」

 

えり「阿知賀はドラ切りでテンパイなのに切らず、千里山は3門張を捨てて安いカンチャンにしてきました」

 

咏「そうだねぃ…阿知賀がドラを切りたがらないのは一回戦から。千里山が奇妙なのも地区大会と同じだね」

 

 

憧「玄…」

 

 

憧『ドラが切れない? 誰かのリーチの後とか?』

 

玄『ううん、そーいうのじゃなくて…ドラを一つでも捨てるとね、そのあと何ゲームかドラが来なくなっちゃうの』

 

和『……はぁ』

 

玄『うちのおかーさんがね、もう少しドラを大事にしなさいって言ってたの』

 

玄『何回も言うから、ドラが来るたびに思い出しちゃって…それでドラを大事にしたら、たくさん来てくれるようになったの』

 

憧『…のどかー、いつものアレ言わないの?』

 

和『現象はともかく、気持ちは否定したくありませんので』

 

 

「うーむ」

 

「あらアナタ。玄の様子はどう?」

 

「ハッハッハ、ドラは大事にしているみたいだけどなあ」

 

「あらあら…大事にしなさいって言ったのは、ポイントの高い相手はとっ捕まえておきなさいってことだったのだけど」

 

「え」

 

「あらあら、まあまあ」ニコニコ

 

 

 

玄(ドラ…こっちを捨てたら…でも…)トン

 

怜「ロン。2600」

 

玄(また、直前に変な待ちになってる…)

 

 

えり「また変な待ち方をしましたね」

 

咏「面白いねぇ、変な待ちに変えるとだいたい和了るし、不可解な鳴きの場合は大抵誰かのツモ和了をずらしてる」

 

えり「未来予知……ですか?」

 

咏「さすがにそれはないなー、二巡先に裏目ってるのとかあるし。でも一巡先に裏目を引くことはないんだよね」

 

えり「一巡分だけの直感、ですか」

 

咏「羨ましいよねぇ」

 

えり「まあ…そんなものがあるなら、確かに羨ましい話かもしれませんね。雀士にとってはさぞ――」

 

咏「避妊に役立つねぇ」パタパタ

 

えり「麻雀さっぱり関係ないじゃないですか」

 

 

 

怜「リーチ」トッ

 

美幸(園城寺のリーチ…!)

 

玄(この人のリーチ、なんでリー棒勃てるんだろ?)

 

怜(……今日こそは)ソー…

 

カラン

 

怜(またリー棒が立たんかったかぁ)ガックシ

 

 

セーラ「お、出たなトッキーの願掛けリーチ」

 

泉「いやいや無理でしょう…リー棒って縦に突っ立つ形じゃないですよ」

 

浩子「そもそも何の願掛けやら、清水谷先輩は知ってます?」

 

竜華「知らんなー。でもリーチの度にちょこちょこ変わるらしいでー」

 

 

怜(落とした財布、戻ってこんかー…もう4個目やで…)

 

 

 

咏「しかし関西最強の名門、千里山。それがいきなり先鋒に据えた無名のエース」

 

えり「確かに園城寺選手は…突然現れましたね。その後は破竹とも言える勢いですが」

 

 

怜「リーチヅモ一発」

 

玄「ほあー…早いねぇ」

 

 

えり「まさか本当に一発ツモとは」

 

咏「まー偶然かもしれんけど、一巡先が分かるってんなら聴牌速度も早そうだねぃ」

 

 

怜「リーチ」ドッ…パタッ

 

ソフィア(二連続だとぉ!?)

 

美幸(やだこれもー!)

 

玄(凄いよ…これが全国なんだ)

 

怜(手鏡も戻ってこんかなー…お気に入りやったのに…)

 

 

 

宥「玄ちゃん…」

 

晴絵「さすがの千里山、か」

 

 

『先鋒戦終了ー!』

 

 

玄「あ…ありがとうございました…」ガクガク

 

美幸「おつかれっしたーもー…」

 

怜「お疲れ様でした」ペコリ

 

 

憧「あたし迎えに行ってくる!」

 

穏乃「あ、私も!」

 

宥「待って…私が行ってくるから…まかせて」

 

晴絵「一人で大丈夫?」

 

宥「はい…私、玄ちゃんのおねーちゃんですから…」

 

 

宥「玄ちゃん」

 

玄「おねーちゃん…」

 

宥「よく、我慢できたね…まだ我慢できる?」

 

玄「……も」

 

玄「漏れそう、かも…」ガクガク

 

宥「そっかぁ…ペットボトル、いる?」

 

玄「ま、まだわたしにはその道は早いので…ト、トイレッ」カクカク

 

 

穏乃「トイレ大丈夫かなあ、玄さん。心配だなー」

 

憧「そっちで震えとったんかい!」

 

 

 

――女子トイレ――

 

玄「ふう…ごめんねおねえちゃん、点棒いっぱい取られちゃった…」ズーン

 

宥「大丈夫だよ…先鋒はエースポジションだから荒れるって、赤土さんも言ってたじゃない」

 

玄「うう、でも私もそのポジションなのに…責められてもしょうがないよ…」

 

宥「みんな、玄ちゃんを責めたりしないよ?」

 

玄「ううん…これは責められても仕方ないよ。むちとかろーそくとか」ハアハア

 

宥「…えいっ」ペチン

 

玄「ひゃっ!? も、もー! 不意打ちは卑怯だよー!」

 

玄「もー…食い込みがズレちゃったのです」ポッ

 

宥「うん…いつもの玄ちゃんだね。安心した…」

 

 

 

怜「帰ったでー」フラフラ

 

竜華「お帰りー、玄ちゃー負けてもーた…」

 

怜「何のあてつけや。ちょっと休むわー」ポフッ

 

セーラ「ん? 体の調子悪いんか?」

 

怜「……お腹空いた…」グルル…

 

浩子「そういえば何も食べずに行きましたね」

 

怜「何か食うもんないん?」

 

泉「そうは言っても、昼はまだ先ですし」

 

セーラ「チョコならあるでー」

 

怜「それでええよ…ちょーだい」

 

セーラ「おう! 元気出るでー、このチョコ」

 

泉「私の独断でダメです」

 

 

 

泉「ほな私、行ってきますけど…」

 

竜華「頑張れいずみー!」シャキーン

 

セーラ「お、竜華は復活したな。泉も頑張りやー」

 

怜「行ってらっせー…」フリフリ

 

浩子「こっちで見とくからな、下手打ったら仕置きや」

 

泉「いやまあ…ご心配おかけしませんので、ゆっくり休んでください」

 

泉「あと私がおらんうちにボケ倒さんように…ホンマ頼みますよ!」

 

 

泉『お手柔らかにー』

 

宥『よ、よろしくお願いします』

 

 

竜華「見えたッ! この玄ちゃーのお姉さんも相当なおもちや! 頑張れ宥ちゃー!」

 

セーラ「わっかりやすいなー竜華は。ま、泉は平たいもんなー」

 

浩子「まあウチじゃ一番小さいですからね…とはいえデータも古いし、今度剥きましょうか」

 

セーラ「おっ、ええなー。そんじゃヒモを巻いて下着代わりに」

 

怜「お腹すいたわー…」グター

 

 

泉「なんか嫌な予感がする…」

 

 

 

宥「ん…」トン

 

泉(一打目に三索て、船久保先輩のゆうたとおりか)

 

 

怜「ツモの偏り…」

 

浩子「あの妹あれば姉も然り…そう思ったわけですよ」

 

セーラ「でもプレイング見ててもヘンなとこ無かったでー」

 

竜華「いや…なんかウチに似とる気がするんや」

 

怜「そかー? ウチとも似てるわ」

 

セーラ「ほー、どんな風に?」

 

怜「なんか来る牌がわかってるみたいな打ち方する時あるんや…」

 

浩子「私が思ったのもそこですわ…けど清水谷先輩との共通点は知りませんでした」

 

怜「せやな。竜華はどんなとこが似てる思ったん?」

 

竜華「ん、あの宥ちゃーの姿勢見て?」

 

竜華「胸の重さがダルくて、同じ姿勢を取りがちなんや…ウチとおんなじや!」

 

怜「そかー…」

 

 

 

浩子「まあそれは置いといて、ですよ。今朝、彼女の牌譜からツモの分布を調べてみたんです」

 

竜華「んー…そら何万回ツモれば平たくなるやろーけど。セーラのおもちみたいにぺったんこやで」

 

セーラ「なんじゃそら…けど公式戦の牌譜くらいなら誰でも偏るくらいあるやろー?」

 

浩子「そうなんですけど、それを加味しても特異的な傾向が出たんですよ」

 

怜「どんなん…?」

 

セーラ「ちょっと見せえ…これは、泉は知ってんのかよ?」

 

浩子「そらもちろん、朝一番にメモで渡しました」

 

竜華「ふーん」

 

 

泉(でも船久保先輩…『マン○と中で溢れとる』ってイマイチ分かりにくいですって…)

 

泉(とゆーかそれで分かるってどうなんやっちゅー話で!)

 

宥(なんだか凄く悩んでる…?)

 

 

 

宥(玄ちゃんが取られちゃった点棒…おねーちゃんが絶対取り返すから…!)

 

宥「リーチ…!」

 

 

『なんでコイツ冬でもないのにマフラーしてんの?』

 

『剥いて確かめよーぜ!』

 

宥『うぅー…』

 

玄『やめるのですボクたち! とうっ!』

 

宥『くろちゃん…』

 

玄『剥くのなら! まずはビデオとカメラを用意すべきです!』クワッ!

 

『え、でも俺達別に…』

 

玄『それに剥き方がなってないのです! ただ引っ張るのは全然ダメです!』

 

『マ、マフラーだけ取って、でもその後謝ればって思って…』

 

玄『おねーちゃん、剥くから準備しましょう!』

 

宥『う、うん…がんばるっ…』グッ

 

玄『さあボクたち! まずは練習から…あれ? どこいっちゃったのかな?』

 

 

宥(うんっ…頑張るよ…!)

 

泉(あー、なんか先輩達みたいな面倒くさい気配がするな、この人…)

 

 

 

泉(ま…それはともかく容赦は無しってことで。ボケ相手なら心情的にもやりやすいわ)

 

 

竜華「ふんふむ、宥ちゃーはえらい萬子と中が寄ってきとるなー」

 

怜「偶然っちゅーのは…?」

 

浩子「プレイングから見てもそれは無さそうです。白は切っても中は切らんかったり、浮いても萬子は抱えたり」

 

セーラ「なるほどなー。自分のツモの偏りがわかっとるからそういう打ち方になる、か」

 

怜「でも一部が突出するんは、バレやすくて厳しいなー…」

 

竜華「そか? ええ事もあるやん」

 

浩子「まあ手が進みやすい、染めなら点も上がりやすいとかありますが」

 

竜華「いやいや」

 

竜華「大きくて長いほど、男として誇りになるやん?」ニコッ

 

怜「みんな女の子やでー…」

 

 

 

宥(あったかい色の牌、来て…)

 

宥(蝋燭…お灸…ホットパック…対面座位…)ポワーン

 

宥(あったかそう…)モジモジ

 

泉(アカン、これアホなこと考えとる! ツッコまんと…いや対局中やし…でもツッコミとして!)グググ

 

 

穏乃「なんか千里山の人、震えてるねー」

 

玄「おトイレを我慢してるのかなあ」

 

晴絵「え? そんなに濡れてるのかね」

 

憧「なんでトイレって単語を聞いたあとの発言がそっちになるわけ?」

 

灼「でも我慢してるのは間違いなさそ…」

 

憧「んん…なーんか、あの人親近感というか」

 

憧(敵だけど、なんか応援したくなるわねー)

 

 

 

泉(アカン、集中や…せめて対局中は牌に集中せんと)トン

 

泉「ポン!」

 

宥「あ…」

 

宥(あったかくない牌…でも、この点差だもの、切らないと…!)

 

泉「ロン! 3900!」

 

宥(索子と筒子の食いタン…これ、私の打ち方バレてる…)

 

宥(あったかくない…あったかくないのに…きちゃうよぅ…)ハフゥ…

 

泉(これが部活ならっ! ツッコんどるのにぃ!)

 

 

竜華「なんか泉、辛そうやな」

 

セーラ「公式戦で本格的なボケは初めてやからなー、本場のツッコミの血が騒ぐんやろ」

 

浩子「やったらアカン言われると、余計にやりたくなるますからね」

 

怜「大変やなあ泉、頑張りやー…全部任せるわ」

 

 

 

宥(でもそれなら…いつもみんなと打ってる時の打ち方で…)トン

 

泉(なんや、索子と筒子は万遍なく捨てて中も切っとる…メンチンか?)

 

泉(ここはオリか…ひとまずスジで、っ!)

 

宥「ロン。タンヤオ三色ドラ1、12000です」

 

泉(染まっとらん…? これって)

 

 

竜華「どゆことー?」

 

浩子「あっれー…これって、もしかして…赤い牌か!」

 

セーラ「プロファイリング間違っとったんか。メンタリストの名折れやなあ」

 

浩子「なった覚えはないですが、しかしこれはすぐには対策できんですわ」

 

竜華「そんなぁ…宥ちゃー、赤ならなんでもええお尻の軽い子やったんか…」シクシク

 

怜「りゅーかはおもちなら何でもええ、おもちマニアやろ…よっぽど向こうのが健全や」

 

竜華「それは違うで怜! おもちは手を出さんのが礼儀! オモチストの流儀や!」

 

怜「サービスエリアで手から出しとったアホは何処のどいつやねん」

 

 

 

『次鋒戦終了ー!』

 

『点数はちょびっと変わったけど、順位は同じだねぇ。とゆーか…なんか暑くねぇ?』

 

『まあ…若干季節にそぐわない気はしますが、個人的な体質もありますからね。それを言ったら三尋木プロも着物じゃないですか』

 

『そうなんだけどねぃ…ほら、私は着物だから下穿いて』ブチッ

 

『続いて中堅戦は15分後に開始となります。各校の選手の方は容易をお願いします』

 

 

宥「ただいまー…」

 

憧「お帰り宥姉」

 

玄「おねーちゃん、ごめんね…ありがとう」

 

宥「ううん…ちょっとしか取り返せなかったよ…」

 

玄「そんなことないよ、次鋒でトップだもん! 私が弄ばれちゃったから悪いんだよ!」

 

憧「それはそうだよね」

 

玄「あうぅ…」ガーン

 

穏乃「そのせいで漏れ「でも玄の相手は全国常連校のエース」

 

晴絵「点棒が入るんじゃな「これくらい元々織り込み済み!」

 

灼「代わりに棒「あとはあたしらが取り返せばいいだけ!」

 

憧「私に任せなさい!」

 

憧(こんだけ潰しておけばしばらく大人しくしてるかな?)

 

 

 

セーラ「んじゃ行ってくらー」

 

浩子「その恰好で行く気かいな。さっさと着替え」

 

セーラ「うぐぐ…なんで試合だけスカート穿かなあかんねん」

 

竜華「毎度やなあセーラ、あと二時間我慢しいやー」

 

セーラ「マジで嫌やわ、このヒラヒラ…なんでこんな…」

 

浩子「言うて強制されるんも嫌やないやろ」

 

セーラ「まーな…あーくそ、スースーする…」

 

泉「ただいま戻りました! 江口先輩、ちょおっと待ったぁ!」

 

セーラ「行ってくる…!」ダダッ

 

泉「待たんか江口先輩! 穿いてかんかぁ!」

 

怜「お、間に合ったなー」

 

泉「園城寺先輩も手伝ってくださいよ!」

 

 

 

憧「よろしくお願いします」

 

梢「よろしくお願い申し上げます」

 

史織「よろしくぅ。あと一人ぃ?」

 

セーラ「いやースマンスマン! とうっ!」ザッシャー!

 

セーラ「場決め終わってる?」

 

憧「どぞ」

 

セーラ「んじゃ捲らせて貰うわ…とうっ!」バサッ!

 

憧「……」

 

セーラ「おっ、可愛らしいパンツやないか。なかなかええ仕事やな!」ニカッ

 

憧「……せい!」ズビシッ

 

セーラ「あだっ! しょ、初対面の相手にチョップするか普通ぅ」

 

憧「初対面の相手のスカートを捲る奴が普通論を語るんじゃないわよ!」

 

 

 

憧「ったくー…」

 

セーラ「へへっ、お手柔らかにな」

 

憧「はいはい、よろしく」

 

憧(…こんなんだけど去年のインハイはエースをつとめてたのよね。なにはともかく、ひとつ和了る!)

 

 

憧「チー!」

 

憧「ポン!」

 

憧「ロン! 7700!」

 

史織「はやーい」

 

梢「はい…」

 

 

『中堅戦、最初の和了りは阿知賀女子! 最下位脱出です!』

 

『阿知賀はこの子が一番うまいねぇ。上級生がアレだから埋もれちゃってるけど』

 

『アレというとやはり…少々特殊であることですか?』

 

『そうさねぃ。やっぱり目立つってなるとそっちでしょ。知らんけど』

 

『まあ…そうですね。いわゆる一般的から逸脱したものは印象に残りやすいですから』

 

『そそ、だから普通を上手く仕上げてるのは良くも悪くも目立ちにくいわけ。そういうのは運が悪いとヘコんじゃうからねぇ』

 

『なるほど……』

 

『そろそろボケてもいーい?』

 

『お昼ご飯抜きますよ』

 

『世知辛いねぃ…』

 

 

 

竜華「あの子が千里山に転校して来たら、うちの一年生でトップテンは入れそうやな」

 

怜「上から目線やな…」

 

泉「副露センスが光りますね、鳴きからの加速が小気味いいです」

 

泉「それに…」

 

 

憧「ツモ!」

 

憧「ロン」

 

セーラ「はっ、上手いこと鳴くもんやなあ」

 

憧「…どーも」

 

セーラ「これなら相手を萎えさせんやろーなー…羨ましいわ」

 

憧「本気で羨ましそうなのが腹立つわね!」

 

 

泉「あのツッコミは部内でもトップレベルですよ…」ゴクリ

 

怜「そこに着目するんか…宿命やなー…悲劇なんやな…」

 

 

 

『次の親番は阿知賀の新子選手になります』

 

セーラ(はしってんなあ…けど、団体戦は最終的な収支や)

 

セーラ「リーチ!」

 

セーラ(ウチは3900を三回刻むより、12000を和了るほうが好きやねん)

 

セーラ「ツモ、3000・6000…やっぱ大きい方が気持ちええな」

 

憧(やっぱそう上手くはいかないか…)

 

セーラ・憧(より多く奪う!)

 

 

竜華「ほー…セーラもおもち流入門者やったか。まあ手始めは大きさからでえーよ」

 

怜「なんやその上から目線…」

 

 

えり「中堅戦終了です。千里山と阿知賀のたたき合いとなりましたね」

 

咏「相互スパンキングってエロくねぇ?」

 

えり「晩御飯抜きです。阿知賀は見事順位を二位へ上げました。千里山は変わらずトップですが、更に他校を突き放しています」

 

咏「ありゃ、スルーされちった…ところで晩って打ち合わせだよねぇ? お弁当でるよね?」

 

えり「晩ご飯抜きです」

 

咏「ちょっ」

 

えり「続いては副将戦になります。各校の代表選手は入室してください」

 

 

灼「二位浮上、やったね」ブイッ

 

憧「でも稼ぎ負けた…あとよろしくっ」

 

灼「努力する」ブイッ

 

憧「…それ、いつまでやってんの?」

 

灼「対局が始まるまで?」

 

憧「なんで疑問形…ってゆーかなんでよ」

 

灼「忘れないために…」ブイッ

 

憧「何を?」

 

灼「はるちゃんのブイライン」ブイッ

 

憧「せいっ」ベチッ

 

 

 

竜華「あの子はなんであんなグローブしとるんやろ」

 

怜「あー…ボウリングのグローブらしいわ…なんでか知らんけど」

 

セーラ「ただいまー。なんでも叔母さんの家がボウリング経営しとるからやってー」

 

泉「おかえりなさい。そういえばインタビューで言ってましたね」

 

竜華「てことは実家の宣伝かあ、孝行やなー。うちはてっきり…」

 

怜「てっきり?」

 

 

竜華「ほら、中指と薬指だけ出てるやん? てっきり日本指で慰めとるとき他の指が濡れんよーにかと」

 

セーラ「うひゃー暑かったわー。いっそ全裸がええなーやっぱ」

 

泉「両側からボケの挟み撃ちかい! せめて順番に来て下さいよ!」

 

 

 

友香「よろっ」

 

玉子「よきに」

 

浩子「ほな、よろしくです」

 

灼「よろしくお願いします…」

 

灼(まだ二回戦…負けてなんかいられない…)

 

浩子(釼谷と阿知賀は実績が少なくてイマイチ分析できとらん)

 

 

セーラ「分からんなー、クセっちゅうクセもないし」

 

泉「牌のバラつきも誤差レベル。牌譜の数も少ないですね」

 

セーラ「お手上げやなあ」

 

竜華「でも大丈夫かな浩子…」

 

怜「どないしたん…?」

 

竜華「あの子、こういうとき相手を見ようとするっていうか…」

 

竜華「相手をモノみたいに見るっていうか…その視線もええんやけどな? わりと」

 

怜「Mちゃうしその気持ち分からんなー…」

 

 

 

友香「リーチでー」

 

灼(四巡目で親リー…)

 

浩子(ベタオリ以外ないな)

 

玉子「チー、一発消しである!」

 

友香「ふっふーん、オリでくるならツモるだけでー」

 

友香「8000オールでー!」

 

友香「んー…やっぱ和了ると気持ちいいわけでー!」ブルッ

 

 

憧(顔が赤い…ボケ? でも言葉自体は普通にありそうよね…)

 

穏乃「ねえ玄さん、憧がなんかすごい真剣な顔してる…」ヒソヒソ

 

玄「うん、やっぱり憧ちゃんも全国に向けて真剣なんだね」ヒソヒソ

 

 

泉(しかし今の言葉が蛇足というのは確かやし…それとも目立ちたがり? 分からんなぁ…)

 

竜華「泉、なんか釼谷の子に注目しとるな」ヒソヒソ

 

セーラ「まー開幕親倍はこえーけどな」ヒソヒソ

 

 

 

灼(また三位転落…抜き返さないと!)

 

 

『副将戦終了ー!』

 

『千里山は圧倒的リードのまま、釼谷が二位に躍り出ました! そのすぐ後ろを阿知賀が追い、越谷女子は厳しい状況です』

 

 

玉子「ノオォォである~…」

 

友香「いっし! お疲れした!」

 

浩子「お疲れ様ですー」

 

灼「お疲れ様でした…」

 

灼(届かなかった…)

 

灼(そういえばみんな女子だから、ヌキ返すなんてできないんだった…)

 

 

晴絵「さすがにヌキ返すのは難しいね」

 

玄「灼ちゃん…」

 

晴絵「女子ばっかだからヌキ返すのは至難の業、か…」

 

憧「真面目な顔してそんな頭悪いこと考えられるの晴絵くらいよ」

 

 

 

『勝負は大将戦に突入します!』

 

 

憧「しず! 頼んだからね!」

 

玄「頑張って!」

 

宥「あったかーいの…お願い…」

 

晴絵「穏乃、行ってきな! イキまくってこい!」

 

憧「その言葉の勢いは認めるけど、内容は若干不認可ね」

 

穏乃「うん! まかせとけ!」

 

穏乃「こんなとこで負けていられるか! 私は準決勝に行くぞ!」

 

憧「そーゆーワザとらしいセリフはNG!」

 

 

 

穏乃「…あばばばば」ズガーン

 

 

『阿知賀女子高鴨穏乃、ダマッパネに放銃! 後半南三局でこれは痛い!』

 

『最後の親番でツッパりたい気持ちは分かるけどねぃ、迂闊だったねぇ』

 

『そうですね…さあ、いよいよ後半戦オーラス、最後の一局です!』

 

 

穏乃(うわうわ…ヤバイヤバイ!)

 

穏乃(配牌もヤバイ…ついでに尿意もヤバイ!…でもっ)

 

穏乃(あきらめるわけがない!!)

 

 

えり「親の千里山は二位と約9万点差、連荘はありません」

 

えり「その中で釼谷が二位確定へ一歩リードしています。阿知賀は難しい局面に立っていますね」

 

咏「ははぁ…なるほどなるほど。逆転手は作れなくもないねぇ」パタパタ

 

えり「そう…ですね。端に近い牌が多い印象です。ドラも端牌ですからチャンタ系でしょうか」

 

咏「はてさて。わっかんねーけど、私もいきなりド真ん中より端っこからジワジワされる方が好きだねぃ」パタパタ

 

えり「ご飯抜きです」

 

咏「もう晩御飯はダイエットついでに抜いとくよ」パタパタ

 

えり「朝です」

 

咏「へっ? 朝はモーニングビュッフェ…えりちゃん? マジで?」

 

 

 

穏乃(できたっ…逆転手! 高めダマハネ!)

 

竜華(テンパイか…玄ちゃーや宥ちゃーには悪いけど、出るか引いたら和了らせてもらうで?)

 

莉子(平和テンパイ…なんでもいいから、早く和了らないと!)

 

景子(こっちは大物手イーシャンテン、か。ラス確だけど…全国の舞台で、和了りたい)

 

 

穏乃(ほかの人たちも早そうだ…参っちゃうなぁ、和了られたら終わっちゃうんだ…)

 

穏乃(和了られるわけには、いかないんだ…)スゥ…

 

穏乃(絶対に)

 

 

竜華「っ、ひっ!?」ゾクゾクッ

 

莉子「こ、れっ…!?」ゾクッ

 

竜華(な、なんやこれ…ウチは別にMと違うのに、この感覚、アカンて)ハアハア

 

 

晴絵「ありゃ、想像よりずっと早く来ちゃった…生理じゃないよん?」

 

玄「阿知賀のドM製造機!」

 

灼「能力もツモも、性癖も封じる…代わりに、縛り付けて支配する…」

 

憧「みんなMだとツッコミが一種類でいいから楽よね…とでも言うと思ったかアホどもー!」

 

 

 

穏乃(安目だとリーチでも裏が乗らないとダメ。ダマで高目を待つ!)

 

竜華(ちょい悩んでの赤5…釼谷あたりに当たりそうやけど、そうでもないんか?)トン

 

穏乃(安目…)

 

莉子(三面張なのに全然来ない…それならとにかく、振り込まなければ…)トン

 

穏乃(同巡で高目処理…!)

 

 

えり「これはさすがに、千里山と釼谷で決まりでしょうか」

 

咏「おいおい、終わらないうちにそういうコト口に出すなよえりちゃん」

 

えり「そう、ですね。失言でした」

 

咏「それにあいつのツラ見てみなよ」

 

咏「むしろなんか、始まってるぜぇ」

 

えり「ええ…高鴨選手の顔は今だ気迫に満ちています。最後まで勝負の行方は」

 

咏「始まってるっつっても生理じゃないけどねぇ。いや知らんけど」

 

えり「無理やりオチ作らなくていいので」

 

 

 

穏乃(よしっ!)

 

 

灼「三暗刻…」

 

憧「その変化も考えてたけど…残りが少なすぎ、って言ってる傍から」

 

 

穏乃(ツモり三暗の目はなくなったか…なら!)トッ

 

 

玄「七対子…!」

 

灼「これなら釼谷に直撃で逆転…」

 

 

穏乃(他家からの出和了はスルー!)トン

 

竜華(なんやこの子…さっきから手がコロコロかわっとる。ウチらはさっぱり和了れんのに)

 

莉子(……)ピタッ

 

莉子(1筒…上家は4筒だけど、少し怖い…)チラッ

 

穏乃「…」ゴッ

 

莉子「ひっ、う」トン

 

穏乃「ロォン! 6400!」

 

 

 

竜華(ウチの和了り牌が抱えられとる…多分、他家のも)

 

 

『こ、これは…』

 

『キッチリだったな。案外計算できる女じゃないか』

 

 

晴絵「ふふん、うたたんの目も節穴だねぇ…うちに計算の浅い尻軽なんて居ないっての」

 

玄「え?」ジッ

 

宥「はぅ…」ジー

 

灼「はるちゃんジョークもお上手…」ジィッ

 

晴絵「ありゃりゃー?」

 

憧「いまさらだけどさー、びっくりするほど緊張感無いわよね」

 

 

 

『試合終了ー! 準決勝進出は千里山女子と阿知賀女子学院に決まりました!』

 

穏乃「いやったあああ!」

 

莉子「あ…う」

 

竜華「ありがとうございましたー」

 

竜華(諦めが悪いっちゅーか、大した子やね…)

 

竜華「準決勝戦、よろしくなー」

 

穏乃「あ、はいっ!」

 

竜華(おめでとうは無しやけど…玄ちゃーとまた会えるんわ嬉しいもんやな)

 

竜華(揉みしだきたいわー…っと、それよりも…)タタッ

 

 

竜華「ただいまー、替えのパンツあるー?」

 

泉「戻ってきてからの第一声がワケわかりませんけど!」

 

 

 

浩子「準決も阿知賀女子と再戦が決まりましたか」

 

セーラ「なんや嬉しそうやなー、そんなボーリングの子が気にいったん?」

 

浩子「……」

 

セーラ「ふふん」

 

浩子「まあひん剥いて隅々研究したい感じはありますね」クイッ

 

 

怜「りゅーかは嬉しそうやな…」

 

竜華「んー? 玄ちゃーのおもちは中々やからなー、同卓できる怜が羨ましいわー」

 

怜「あー…竜華、ドラローさんなー…」ゴニョゴニョ

 

竜華「なにー!? 写真! 写真は無いん!? 次撮ってきてー!」

 

怜「カメラ持ち込んだら失格やろ…」

 

 

泉「はー…阿知賀の新子さん、ちょい挨拶してこようかな…」

 

 

 

「「「「「「かんぱーい!」」」」」」

 

穏乃「ベストエイトおめでとー!」

 

憧「んぐっ…ん、ぐっ…ぷはー! オトナの味だねー!」

 

灼「お茶だけどね」

 

穏乃「ちょっと苦味があるのが格別!」

 

玄「少し濃い方がおいしいもんね」

 

宥「私は…あったかいと、もっといいなぁ…」

 

 

晴絵「全員の話を総合するとアバ茶がいいという判決になるかな?」

 

憧「即刻控訴するからそんな判決破棄してしまえ…宥姉もそわそわしない!」

 

 

 

晴絵「でも、浮かれるのもほどほどにしとかないと、明後日がきついよ」

 

憧(いったいどの口が…)

 

晴絵「今日は千里山に何点差つけられた?」

 

灼「9万点…」

 

晴絵「そう。明後日の準決勝にはその千里山より強い高校が出てくる」

 

穏乃「白糸台…!」

 

晴絵「そう、今日お前たちに圧勝した千里山よりも強いと言われる白糸台」

 

晴絵「それに福岡の強豪新道寺。三校相手に二位以上じゃないと決勝には行けない」

 

憧「わかっちゃいたけど…改めて聞くとしんどいわねー…」

 

晴絵「マスコミから見ればうちらの決勝進出はよく言えば――」

 

 

晴絵「自家発電中に鍵を掛けてなくてお母さんが遠慮なく階段を上がってきたような」

 

憧「絶望的ってことなら短くまとめなさいよ」

 

晴絵「悪く言えばバレッバレのパッドで巨乳アピールするみたいな」

 

憧「何がいいたいのか頭で纏めてから口に出しなさい」

 

 

 

パシャパシャ!

 

記者「まずは準決勝進出おめでとうございます! 史上初の三連覇に向けて、何か一言!」

 

菫「おい照…」

 

照「ん…」ガタッ

 

 

照「三連覇は私たちの一大目標です! そのためには明後日の決勝戦は負けられません!」ニコッ

 

照「今年も手ごわいチームが多くて試合がとても楽しみです!」

 

照「一生懸命頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!」ペコッ

 

 

記者「ありがとうございます! ところで宮永選手、長野の清澄高校という高校はご存じですか?」

 

照「…はい! 同じ全国の舞台で戦う相手として、注目しています!」ダラダラ

 

照「そそそれではしつれいをばっ!?」ドテッ

 

記者「み、宮永選手? 大丈夫ですか?」

 

照「は、はい! むむむ、武者震いが止まりませんので! 失礼します!」カタカタ

 

 

菫「危なかったな照…照?」

 

照「 」

 

菫「歩きながら意識飛んじゃうと危ないぞ…いや、プレイには悪くないか?」ムムム

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最終更新:2014年06月22日 21:21