量が多くて、男でも満足できる。そして安い。そんな料理の一つがこれだ。
用意するのは玉ねぎ、鶏ミンチ、パン粉、卵。まずは玉ねぎを縦と横にザクザクと、微塵切りにはせずにカット。
咲「京ちゃん…なんでそんなことするの…? ひどいよ…」ウルウル
いいから離れてろ。あと擦ると余計目が痛くなるぞ。
後はもう適当にボウルにぶち込んでしまえ。さっきの材料を目分量! 適当にドバっとぶち込め!
そんでー…手で混ぜる! 思いっきりな!
和「ああんっ! お肉がグチュグチュ音を立てちゃいますぅ…なんか私こういうのばっかじゃないですか? いいんですけど」
お前が率先して声出してんだろ…
まあ分かってるとは思うけど、ハンバーグだな。鶏の淡白な色のせいで肉々しい感じは薄い。
でもな…焼く前でもわかる、この鮮やかな照り。卵が絡んだおかげで黄金色の宝石みたいじゃねーか。
優希「タコスはまだかー? ひき肉ならタコスだろー」
知らんがな。タコスがいいなら普通に帰れ。
さあ焼くぜ! 整形なんて適当だ、丸くして平べったくしてフライパンにー、置く!
裏表に焼き目を付けるからな、少しだけ時間が掛かる。その間に用意するのはこれだ。
本つゆ、みりん、醤油、片栗粉。分量? 好きにしろ! 混ぜて、混ぜる。出来上がるのは黒い汁…いいねえこの匂い、日本人って匂いがプンプンしやがる。
久「片栗ってなんでクリの花の匂いがしないのかしら…白くて粘り気はあるのにねー」
食用失格だそんなもん。
おっと…ジュウウっと良い音がフライパンからするじゃんか。両面焼けて白い肌に黒いワンポイント。これこそハンバーグって色だよな。
さてと…次はどうするか。分かってるよな。ここにさっき作った黒い汁をザバッと投入すればいい!
おおう! くるぜ来るぜ! 醤油の焦げる匂い、本つゆのダシの香り。でも後で会おうな、一旦閉めとくぜ。
まこ「あー…涎が出るわ。こんだけ出ればわざわざ濡らさんでもええな」
…よし! ここだ! ムワッと襲い掛かる湯気は正に和風。日本の繊細な調味料を後先考えずに混ぜ込んだだけの味付けだが、淡白すぎるハンバーグには合うんだぜ?
ほら、盛り付けるだけで白い肉が焦げ茶色のトロミで覆われてく…あとはご飯でもあれば御の字ってもんだ。
京太郎「――ごちそうさまでした!」
――ああ、これがいいんだよ。男の一人飯なんて、適当にウマイもんができたらそれでいい。そうだろ?