余裕綽々


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

さらりと流れる少女の髪。膝の上で川のように広がって、たおやかにほほ笑んでいて。

そんな親友の頭を撫でる一つの手。自らの膝に頭を預ける少女より更に長い髪を持つ、一人の女の子。

 

竜華「なあ怜…ウチな、京太郎のこと、好きやで」

 

怜「……知っとるよ。竜華は京太郎のこと目で追っとるもんな」

 

少女の手が、自分を見上げる親友の髪を梳く。

少女の手が、自分を見下ろす親友の髪を梳く。

 

竜華「でもな。京太郎は怜のこと、好きやから」

 

怜「……うん、気付いとる」

 

微笑みを崩さない膝の上。長い髪の少女の胸に、チロリチロリと炎が燃える。

表情を陰に隠す、その長い漆黒の髪のように。黒い、黒い炎となって。

 

竜華「怜がいなくなれば、京太郎はウチのこと見てくれるんかな」

 

逆光の中に沈む表情を窺い知ることはできず。それでもなお、少女は微笑んでいる。

 

怜「そんな未来は見えんけど…竜華がしたいなら、ええよ」

 

少女は微笑んでいる。髪を撫でる手が首を撫で、指を突き立てていようとも。

 

竜華「怜」

 

怜「っ、が…あ…かふっ!」

 

竜華「怜」

 

怜「……っぁ……ひゅ…」

 

長い長い髪の中。顔は隠れ、誰にも見ることは叶わない。

けれど、その顔は少女には確かに、笑っているように見えた。

 

竜華「なあ怜」

 

竜華「――このまま、死んでくれる?」

 

 

怜「――ぁ」

 

 

コクリと少女の顔が縦に揺れて、笑う。

それが長い髪の女の子には酷く気味が悪く見えて、酷く嫌になって。

 

竜華「っ! どいて!」

 

怜「ごほっ! げほ、が、ふっ…りゅ、か…」

 

竜華「…っ、なんや…ホンマ、ウザイわ!」

 

踵を返し、髪を靡かせて。その目には、敵意と恐怖を滲ませて。

蹲る少女は一人息をつく。曖昧な微笑みを絶やさずに、その目に優しさと傲慢の色を滲ませて。

 

怜「竜華になら殺されてもええって思ったけどな…ふ、ふふ」

 

怜「――アホやなぁ竜華」

 

怜「竜華なんかに、振り向くわけないやろ」

 

怜「例えうちを殺しても、京太郎は竜華なんか見ぃひんわ」

 

少女は笑う。首に残る死の感触を思い出しながら。