依存

「須賀君」

「和」

 

部室に独り、同級生が座っていた。

いつものことだけどな…誰よりも早く部室に来て、俺を待ってる。

 

「飯は食べたか? 飲み物は?」

「何も。いつも通り手は付けましたけど、全部戻しちゃいました」

 

浮かべる笑顔はいつもの綺麗な笑顔。同級生の男子一同が見惚れてる、原村和の笑顔なんだ。

 

「水、飲んどけ。あとこれも食べとけよ」

「はい」

 

言いながら手も伸ばさないのはいつものことだ。にこにこと笑みだけを浮かべて、何もしない。

 

「…口、開けろよ」

「はい」

 

まるで鳥の雛みたい…今更だな。これだって毎日繰り返してることじゃないか。

俺が食べさせないと、飲ませないと水分すら取ろうとしない。

こうやって部活の前に飲みこませて、終わるまで監視しないと後で戻すかもしれない。

 

「須賀君。いいんですよ…もう、私の事なんて気にしなくても」

 

咀嚼と嚥下。生きるのに必要なそれは和にとって、俺に言われたからしてることなんだ。

いつからだったかなんて覚えてないけど、毎日毎日言わないと、きっと和は何もしない。

ただ座ったまま、目が覚めているようで眠っているようで、何だってせずに終えていく。

 

「和」

「はい」

「いつもみたいに生活して、明日も学校に来いよ」

「はい」

 

和は笑っている。穏やかに、幸せそうに。

俺に自分の命を押し付けて、本当に幸せそうに笑っていた。

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最終更新:2014年08月08日 23:12