いつからだろう。
幼馴染が、同級生が、先輩が。こんな風になってしまったのは。
「京ちゃん!」
思わず漏れたため息が聞こえなければいいんだけどな。
「おう、咲。どうした?」
「えへへ…はいこれ、お弁当!」
知ってるよ。毎日だもんな、きっと今日も昨日や一昨日とは違うメニューなんだろ。
それも俺が好きな物や、苦手でも食べられるように工夫がしてあるんだ。
「ありがとな。一緒に行くか?」
「い、いいよぉ…私なんかが一緒に行ったら、付き合ってると思われたら嫌でしょ?」
ほんと高校生になってからは髪型を気にしてさ、知ってるんだぜ? 身だしなみに時間も掛けてるの。
「私なんか、全然だよ。和ちゃんみたいに、胸も大きくないし、優希ちゃんみたいな元気さもないし、全然、全然」
「ごめんね、頑張ってるのに京ちゃんの隣も歩いたらダメなままで、ダメだよね」
「あ、ごめんね! 気持ち悪いよね…もっと頑張るから。もっと頑張るから…」
頭掻きむしるの止めたんだな。
その方がいいよ…例えその理由が髪が傷むとか、俺まで悪くみられるからとかでも、全然いいよ。
だからきっと、一人になってから何かするんだろ。外から見えない場所に、自分で罰だって言いながら。
「それじゃあ京ちゃん…私、ちょっと寄る所があるから」
「ダメだ。一緒に登校しよう」
だから、咲の両手を握ってやるんだ。
「わ、わ…」
目を潤ませて自分の両手…というより俺の手を見る咲は、今日の間は自分の手を汚さない。
俺を汚したくないから自分の手を汚さない。知ってるんだよ咲、お前の事は。