特訓合宿~県予選決勝前夜

和「部長」

 

久「あらお帰り。そのまま帰ってくれて良かったのに、須賀君も戻ってきちゃったの?」

 

京太郎「いやまあ、さすがにこの時間に女の子二人は…」

 

和「部長、強化合宿をやりましょう!」

 

久「あらあら、急にまた…予選まで日数もないわよ?」

 

咲「でも、やらないよりはやった方がいいと思うんです」

 

久「あらそう…ま、こんなこともあろうかと」

 

久「合宿プランは考えといたわ!」バアン!

 

和「え…私たちの考えが分かってたんですか?」

 

久「ま、ね。私も本気だから」

 

久「今週、金曜の放課後から日曜まで行くわよ。いいわね?」

 

和&咲「はいっ!」

 

京太郎「……」ウズウズ

 

久「それで合宿場所だけど、国道沿いのお城の形をしたホテルだから」

 

京太郎「そんなとこに麻雀卓ないでしょーが!」

 

 

 

合宿所

 

京太郎「凄いとこですねこれ、遠いだけはあるなあ」

 

久「でしょ。温泉もあるわよー」

 

優希「おおお、温泉スパニッシュだじょー!」

 

和「ゆーき、これは麻雀合宿なんですから…」

 

まこ「ま、ええじゃろ。せっかくあるんじゃし入ってきたらええ」

 

優希「来た! のどちゃん、咲ちゃん、しっぽりぬっぽり温泉気分だー!」

 

和「仕方ありませんね。貸切みたいですし壺洗いでもしましょうか」

 

京太郎「借りた施設で公共良俗に反しちゃいけませんっ」

 

 

 

和「いいお湯でした…」

 

優希「なんだーのどちゃん、温泉で浴衣を着ないとかそれでも人間かー!」

 

和「着るなら着るでちゃんと着て、ちゃんと恥じらいを持ってください」

 

咲「え、私?」

 

優希「おお咲ちゃん、扇風機式乾燥か」

 

咲「うん、こうしてると外で露出してる気分になって気持ちいいんだ」ハアハア

 

優希「おいおい咲ちゃん、そのままじゃまた濡れちゃうじょ?」

 

和「もう…この人たちは。もうちょっとしっかりして欲しいです」

 

和「あ、そういえば下着忘れましたね…」

 

和「…そういえば、そもそも持ってきてませんでした」ポン

 

 

京太郎「くそ、雀卓が重い…それにしてもなんかこう、さっきからウズウズするのはなんなんだ…?」

 

 

 

和「部長、染谷先輩。戻りました」

 

久「お帰り。あら和、浴衣は着てないの」

 

和「浴衣だと外に出たりロビーに出たりできませんよ…すぐ脱ぎたくなってしまいますから」

 

久「ふーん…優希、やんなさい」パチン

 

優希「ぐえっへっへ、先輩命令は絶対だじぇ!」

 

和「ちょ、ゆーき、やめてください!」ハアハア

 

優希「そう言いながら脱ぎやすいように体をくねらせてるのはどっちだー!」

 

和「あ、あああん!」

 

優希「ふー…いい仕事したじぇ」

 

まこ「着れとらんがのう。前全開でこれじゃ事後みたいなもんじゃ」

 

久「しかし綺麗なもんねえ。ツルツルだわ」

 

咲「羨ましいなぁ…」

 

優希「あけっぴろげー。エロチックだじぇ」

 

 

 

和「……ふえ、っくしゅ」

 

久「そろそろ前閉じておきなさい。風邪引くわよ」

 

和「ええ、そうですね…」モゾモゾ

 

優希「今日のおもちは店じまいかー。残念無念!」

 

咲「そういえば京ちゃんは?」

 

久「もう戻ってもいい頃だけどね」

 

京太郎「た、ただいま戻りました…あれ? なんかあったのか?」

 

まこ「わりゃあ、ホンマにスケベ運がないのう」

 

久「アンラッキースケベねえ」

 

和「もう一度脱ぎましょうか?」

 

京太郎「なんかよく分からないけど風邪引くから…」

 

 

 

久「まず個人個人の問題点を明確にしましょう」

 

久「まずは和。ネットでは冷静なのに、リアルではその場の雰囲気に流されたりするのが多いわ」

 

久「もしかしたらリアルの情報に惑わされてるのかもしれないわ」

 

和「リアルな情報…?」

 

まこ「相手の匂いとか、振られたネタで発情したりとかな」

 

久「そうねえ…リアルにしかない動作の練習はどうかしら?」

 

久「ひたすらツモ切りの手の動きを練習して、リアルの情報に惑わされないようにするの」

 

久「無意識に滑らかな動きができるようになるまでね」

 

優希「のどちゃんなら楽勝だじぇ。いっつも脱衣動作の滑らかさは半端ないんだじょ」

 

和「それは…露出プレイをする時くらいの感じでいいんでしょうか」

 

京太郎「そんなことで強くなるかは知らんが場所だけはわきまえような」

 

 

 

京太郎「じゃあ咲は?」

 

久「逆に咲はネット麻雀で不特定多数と打ってみるのがいいかもね。リアルにないデジタル麻雀相手に特訓するの」

 

まこ「顔も見えん、牌も触れん、声も気配もありゃあせん」

 

優希「ほっほう…つまり目隠しして別の部屋からカメラで見られてる状態か!」

 

和「やっぱりネット麻雀はいいですね。相手が分からない感覚…堪りません」ハアハア

 

咲「え…な、なんだか怖い…」

 

京太郎「全然関係ない話だから無視しといていいよ」

 

咲「でも…なんだか気持ちよさそう」ハアハア

 

京太郎「お前もそっちだって分かってたけどさあ!」

 

 

 

久「優希はこれね。はい算数ドリル」

 

優希「じぇじぇじぇっ!?」

 

京太郎「へー、丁度いいんじゃねーか? 良かったなあ、うりうり」

 

優希「ぬぐぐぐ…なんでこんなのを」

 

まこ「わりゃあ得点計算がヘタクソじゃからのう、覚えると覚えんとでは全然違うわ」

 

和「ゆーきには大事だと思います」

 

優希「あうぅ…頭が破裂しそうだじょ…」

 

咲「が、頑張ってね」

 

久「きちんと計算ができないと、得点も安全日もあやふやになっちゃうわよ?」

 

和「いつの間にか来なくなって、あれこれ理由を考えてふと気付く…ホラーですね」

 

優希「べ、勉強するじょ…」

 

京太郎「お、おう」

                                                                                              

京太郎(男の俺にこの話題はツッコミにくい…すまん優希)

 

 

カポーン…夜、温泉にて

 

優希「うぐぅあー…疲れたじょ…」

 

和「お疲れ様でした。そろそろ温泉出ましょうか?」

 

咲「私はもう少し入ってるね」

 

咲「ふー…」

 

咲「あ、流れ星…」

 

咲「……みんなで全国に行けますように」

 

咲「それと、毛がもう少し処理しなくてもよくなりますように」

 

京太郎「流れ星もびっくりだっ、つーの!」←男子風呂

 

 

 

久「そろそろ寝ましょうか。明日も早いわよー」

 

咲「はい…それじゃ、私はこっちの布団で」

 

まこ「んじゃこっちの布団にしようかの」

 

優希「それじゃーこれにするじょ!」

 

和「じゃあ私が寝るのはこの布団ですね…」

 

久「そしたら須賀君はこっちの布団ね」

 

京太郎「あからさまに俺の布団を囲んだ配置…つーか俺隣の部屋で寝ますんで」

 

 

 

県予選初日――

 

京太郎「うわー、人多いなー」

 

久「年々増えてるからね…それより、来たわよ」

 

ザワ…ザワ…

 

久「総部員80人の強豪、風越女子。去年は県2位でそれまでは連続全国出場校」

 

まこ「あっちは龍門渕じゃの。去年の優勝校…一人足らんか?」

 

靖子「天江がいないな」

 

久「あら靖子、来てたの?」

 

靖子「解説に呼ばれてね…そっちの二人、久しぶりだけど少しは強くなったか?」

 

久「ま、見ててちょうだい。カメラ越しでも見て貰えばわかるから」

 

靖子「ふん…それじゃあ楽しみにしてるよ。ああそれとそっちの男子」

 

京太郎「はい? 俺っすか」

 

靖子「そうそう。小鍛治さんから伝言だ…『個人戦には伺います、頑張って下さい。色々と』だそうだ」

 

京太郎「色々の部分の比率が多そうなんですけど…」

 

 

 

一「あーあ、ボク目立つの苦手なんだけどなあ」

 

透華「なにをおっしゃいますの!?」

 

透華「目立ってなんぼ! 目立ってなんぼですわ!」

 

透華「さあスマイルでダブルピース! 両手でやりますわよ!」

 

智紀「アヘ顔…こう…?」

 

純「それより可愛い子多いな。ヤル気出てきたぜ」

 

一「も、もう…ボクは目立つんじゃなくて深夜の公園とかでひっそりするスるが好きなのに…」

 

京太郎「あっちも大概だよ!」

 

 

 

ハギヨシ「衣様、開会式へは?」

 

衣「行っても虚空が如し…意味ないよ」

 

ハギヨシ「そんなことはありませんよ。透華様も他の皆様も、衣様をお待ちです」

 

衣「…それは、大将として?」

 

衣「衣は孤独だ…ここで戯れるだけで事足りる」

 

ハギヨシ「しかし衣様」

 

ハギヨシ「今頃皆様は、好き放題しているかもしれませんよ」

 

衣「…やっぱり衣がいないとダメ?」

 

ハギヨシ「既にカメラの前でやらかしてしまっているようです」

 

衣「…行くぞハギヨシ。案内しろ」

 

衣「何故あの四人は呆けてばかりなのか…うぅ、誰か援軍はいないのか…」

 

 

 

京太郎「……ん?」

 

和「どうしました?」

 

京太郎「いや、なんか呼ばれたような。気のせいかな」

 

優希「それより咲ちゃんだじぇ。早速姿が見えんのだ」

 

京太郎「あいつ、また迷子かよ…」

 

和「どうしましょう。探しに行った方がいいのかもしれません」

 

久「ま、しばらく時間はあるし、いざとなったら須賀君を女装させて出すわ」

 

京太郎「無茶苦茶言ってますね部長…」

 

まこ「撮影用のメイド服ならあるが」

 

和「化粧道具は持ってきてます」

 

久「女の子の挙動も教えこむとして」

 

優希「下着はいらん!」

 

京太郎「ねえ、ジョークだよね?」

 

 

 

咲「うぅ…迷っちゃったよ…」

 

 

純「衣おせーなあ。自家発電か?」

 

透華「まさかどこかの不審者に連れて行かれて、あんなことやこんなことが…」

 

一「ハギヨシさんがついてるんだから大丈夫でしょ……っ!?」

 

ゾゾゾゾゾッ!!

 

純「っんだよ、今の奴!」

 

智紀「清澄高校の制服――」

 

一「衣に似た空気を感じたよ…」

 

透華「…ふ、ふふ」

 

透華「原村和ではない。でも、これは、楽しみですわ…!」

 

一「透華、涎出てるよ」

 

智紀「…下の口からも、涎が垂れてる」

 

透華「あら? まあすぐ乾きますわ!」

 

 

 

咲「み、みんなー! 捜したよー」

 

京太郎「探したのはこっちだっての」

 

久「心配したわよー。もうあと少しで須賀君を女装させるところだったわ」

 

京太郎「どっちの心配してんだよ…」

 

和「ちょっと残念ですね」

 

優希「惜しかったじぇ」

 

咲「えーと…」

 

咲「もう一回迷ってきたら京ちゃんの女装見れる?」

 

京太郎「逃がさねー!」

 

 

 

咲「でも、凄いよ…強そうな人たちがたくさんいて、わくわくする――!」

 

和「わくわくするかは分かりませんが…私もやる気は十分ですよ」

 

優希「じぇー、黄金伝説開幕だじょ!」

 

まこ「ま、何はともあれメンツも揃ったことっちゅうで」

 

京太郎「団体戦は俺もサポートに徹しますよ」

 

久「あらいい気迫…みんな。これが全国制覇に向けての最初の試合です」

 

久「負ければ終わり、練習とは比べ物にならないけど」

 

久「――行くわよ。全国!」

 

久「それじゃ…ケツの穴締めて頑張ろー!」

 

京太郎「第一に締めるところはそこじゃねー!」

 

 

 

久「対局室にはカメラが設置されてて携帯の使用も持ち込みも不可」

 

久「対局はこっちの観戦室で見る。残念だけど声援なんかとは無縁ね」

 

和「集中できそうな環境ですね…はふぅ」

 

優希「カメラはナイスだじぇ! えっろえろな痴態が生放送だ!」

 

咲「録画はしてるんでしょうか」

 

まこ「全国と違ってテレビ放送されちょらんのは残念じゃがのう」

 

久「ふふ、残念だけど放送禁止な場合は中継遮断されるらしいわよ?」

 

京太郎「それを聞いてモノっそい安心しました」

 

 

 

久「では登録されたオーダーを発表します」

 

久「先鋒優希、次鋒まこ、中堅私」

 

優希「やったるじょー!」

 

まこ「まかしとき、振られた仕事くらいこなしたるけえ」

 

久「あらいい気迫。それで副将は和、大将は咲、種馬は須賀君よ」

 

和「はい…できる限り頑張ります」

 

咲「わ、私が最後ですか?」

 

京太郎「はいわかりました、とでも言うと思ったか!」

 

 

 

久「今日の一回戦で全58校が16校に。午後の二回戦で4校に決まるわけ」

 

久「で、明日決勝戦。今日のところは半荘を一人一局、計五局打つのよ」

 

咲「あんまり多くは打てないんですね…」

 

和「その分一打一打で全力を尽くしましょう」

 

優希「うむ! 一打ごとの指使いが大事だじょ!」

 

まこ「こう、クイっとな」

 

久「あ、ちなみにこれがクリ摘まむときの動きね。須賀君」

 

京太郎「今日聞いた中で一番いらない情報ですねそれ」

 

 

 

久「それじゃお願いね優希。先鋒、頑張って」

 

優希「まっかせるじょ! 余裕よゆーだー!」

 

 

優希(って言った手前、緊張ばっかしてるわけにもいかないじょ…)

 

優希(…部長も、先輩も、のどちゃんも咲ちゃんも)

 

優希(京太郎も見てるんだ)

 

優希「…テンション高めで行くからなー!」

 

『3、2、1。第一回戦開始――!』

 

優希「よぉーし、っ……」ピクン

 

優希「…気分高めすぎたじょー」テレテレ

 

 

京太郎「なあ、こっちの声って届かないんだっけ?」ウズウズ

 

 

 

優希「ロン!」

 

優希「ツモ!」

 

優希「ロンだじぇ!」

 

 

京太郎「優希のやつ、攻めますね」

 

まこ「東場じゃけ、勢いには乗りに乗っといたほうがええ」

 

久「いい感じね。南場は集中切れるでしょうから、その前に稼いでもらわないと」

 

和「妙なオカルトは参考になりませんが…優希は始めが集中できるのは確かですね」

 

京太郎「初っ端で一発ぶっこんでくタイプだもんなあ」

 

咲「…くすっ」

 

咲「京ちゃん、初めは濡らさないとだめだよ?」

 

京太郎「今の発言でそんな言葉返すのはお前くらいだぞ…」

 

久「須賀君鬼畜ねー」

 

まこ「前戯くらいせんかい、まったく」

 

和「私は一向に構いません」

 

京太郎「あ、悪い咲。撤回するわ」

 

 

 

まこ「次はわしの出番かの」

 

久「守らなくていいわよ。突き放しちゃって」

 

まこ「そのつもりじゃ!」

 

 

咲「あ、先輩が眼鏡外したよ?」

 

和「本気ということでしょうか…それとも別の意図があるのかもしれません」

 

京太郎「別の意図? それって運を引き込むとか」

 

和「そんなオカルトありえません。そうではなく」

 

和「須賀君の持ってる眼鏡モノではなぜかぶっかけの時に眼鏡を外すことはありませんか?」

 

和「私にはあれがまったく意味不明です」

 

京太郎「人の所有物をねつ造しないでくれる?」

 

咲「じー…」

 

久「あらー」

 

京太郎「ほらなんかこっち見てるし…」

 

 

 

久「さて、中堅戦行ってくるかなー」

 

京太郎「頑張って下さいね、常識の範囲内で」

 

久「うむ…ん? まあいいけど」

 

久「咲と和、須賀君も2階の喫茶店で何か食べてきたら?」

 

咲「え…なんで」

 

久「バナナと乳製品を同時にとると脳が活性化するんですって」

 

京太郎「またテレビの雑学番組ですか?」

 

咲「太いバナナと」

 

和「白い乳製品…」

 

咲「ねえ、京ちゃん」

 

和「2階のトイレまで道案内してもらえませんか?」

 

京太郎「いやーっ!」

 

 

 

純「透華のやつ、どこほっつき歩いてんだ?」

 

一「さあ。あ、清澄の人」

 

智紀「さっきの…」

 

純「衣みたいなやつ、か。あれが原村和か?」

 

智紀「違う…」

 

智紀「原村和は…もっとコラされやすそうな…」

 

 

咲「なんか嫌な気配がするんだけど」

 

和「そうですか? 私は何故か興奮気味ですが」

 

京太郎「いつものことじゃん…」

 

 

 

純「ちょっといいか」

 

咲「え? あ、あの」

 

純「なあ…お前なんなんだ?」

 

咲「え、え。あのっ、きょ、京ちゃん…」

 

京太郎「あーっと何か用ですか? すみませんコイツ人見知りっていうか」

 

純「あ? なんだよお前、ソイツの彼氏か」

 

京太郎「ただの幼馴染ですよ。それよりあんたも誰ですか?」

 

純「誰って…悪い、なんか喧嘩腰になっちまったな」

 

純「オレは井上純。龍門渕高校の先鋒だ」

 

京太郎「龍門渕?」

 

純「おう、ちなみに女だ。生徒手帳見るか? あ、触ってもいいけど責任とれよ」

 

京太郎「いらねっつの。つーかやっぱりここもこんなんかよ!」

 

 

 

純「原村和はそっちか」

 

一「透華が言ってたでしょ。原村和はその…おもちが、って」

 

純「そういやそうだったな。しかしでけえなあ、なあ須賀」

 

京太郎「い、いきなりフランクっすね…まあその、なんというか…」

 

和「くす、そう良い物じゃありませんよ? 走ると痛いし、寝るとき疲れますし」

 

和「女の子には女の子の悩みがあるんですから」

 

純「おー、嫌味か?」スラーン

 

一「全然わかんないんだけど」ペターン

 

咲「あはははは、のどかちゃんは面白こと言うね」ストーン

 

和「あらら?」

 

 

智紀「…」コクコク

 

 

 

純「しかし透華はなんでこんなのを意識してるんだか…」

 

一「こんなのって言っちゃだめだよ」

 

純「胸か? 透華の奴まな板だからな」

 

一「言っちゃダメだってば!」

 

ハギヨシ「皆様、こちらにいらっしゃいましたか」シュパッ

 

衣「ご苦労ハギヨシ…こらー! 他校に絡むなって言っただろー!」

 

純「おー衣、交流だよ交流」ヨシヨシ

 

一「そうそう、絡むならベッドの上だよ」

 

衣「その戯言が風聞を汚すんだー!」

 

 

 

咲「えっと…子供?」

 

衣「む! 子供じゃなくて衣! いいかとくと聞け、衣は高校二年生だ!」

 

京太郎「え、マジで」

 

衣「しかも龍門渕の大将で父君も母君も科学者!」

 

衣「漢字検定1級でプロも倒す超雀力! どーだ、参ったか!」

 

純「でも夜9時には眠くなる」

 

一「ファミレス行くとお子様ランチを食べたがる」

 

京太郎「子供だ」ホッ

 

衣「うがー! このー!」ポカポカ

 

 

 

衣「ふんっ。眼球暗曇、加えて麻雀の弱い男に興味無し」

 

京太郎「? まあ麻雀は弱いけどさ」

 

衣「…其の心が惰弱の祖となるんだ。向上心のない奴は馬鹿だ」

 

衣「去ね。牌を摘むに足る心を持つまで、顔を見せるな」スタスタ

 

咲「きょ、京ちゃん…」

 

京太郎「なんかよく分かんないけど、えーと」

 

純「わりい、あいつの言葉分かりにくいだろ」

 

一「別に君が嫌いで言ったんじゃなくて、一応叱咤激励みたいな感じなんだよ。分かりにくいけど」

 

純「ま、隠語みたいなもんだ。早漏を嘆くんじゃなくて治すよう前向きに努力しろって言ってんのさ」

 

京太郎「意味合いは分かったけど例えが最悪すぎるだろぉ!」

 

衣「……」ピクッ

 

智紀「衣…?」

 

衣「な、なんでもないっ!」

 

 

 

『E卓中堅戦、終了です』

 

京太郎「そろそろ和の番か」

 

和「そうですね、すみませんが私たちはこれで失礼します」

 

純「あー、引き留めて悪かったな。また機会があれば会おうぜ」

 

一「…行っちゃったね、見に行く?」

 

純「いや、牌譜は見たし。透華が言ってた『のどっち』って感じでもないしな」

 

一「のどっちみたいな高校生がいたら手ごわいよね…原村和も別の意味で手ごわそうだけど」

 

純「まあ、うちら5人に負けは…」スラーン

 

一「集まっても勝てなさそうだよね…」フニフニ

 

 

 

久「ただいまー、次は和ね」

 

和「早かったですね…」

 

まこ「安い手ばっか速攻で上がりよったわ。相手も可哀想じゃのう」

 

久「あら、戦略よ戦略。申し訳ないとは思うけどね…和、私より早く終わらせてきなさい」

 

京太郎「部長より早くって、相当難しいんじゃないですか?」

 

久「そうでもないわ。和の徹底したデジタル打ちなら私より早く切り上げられるでしょ」

 

久「それに須賀君だってできるでしょ?」

 

咲「一擦り1秒としても5秒もかからないんだ…最速だね、京ちゃん」

 

京太郎「ホントのこと言うとそこまで早くないんだよね俺」

 

 

 

咲「頑張ってね和ちゃん」

 

和「はい…」

 

まこ「点差もあるし、あんまり気張らんと楽しんでな」

 

和「ありがとうございます」

 

京太郎「和、えーと…頑張れ!」

 

和「ふふ、頑張りますね。行ってきます…!」

 

和「……」

 

和「あの、行ってきますと言ってもイってくるわけではないので…」アセアセ

 

京太郎「遅れちゃうから振り返らないの」

 

 

 

原村和がヤるってよー。どこー?

 

透華(あらかじめ席をとっておいて正解でしたわね)

 

透華(それにしてもこの人気…許せませんわっ!)

 

ハギヨシ「透華お嬢様、紅茶を用意致しました」

 

透華「あら、ありがとう」

 

京太郎(なんか隣の人がすげえお嬢様っぽいんだけど)

 

ハギヨシ「シフォンケーキにカスタード、スコーンとクロテッドクリームもございますが」

 

透華「それは後で衣と一緒に食べますわ」

 

京太郎(なんか一人お茶会が開かれてる…)

 

透華「それよりもかっぷらあめんとやらを食べてみたいですわね…」

 

京太郎(お菓子の範疇を飛び越えてるから!)

 

 

 

久「くくっ、やっぱりペンギン持ち込みはウケてるわねー」

 

まこ「ほうか? やらかしとる雰囲気もあるがの…」

 

久「ま、和自身が動揺してないから問題なしでしょ」

 

優希「それにしても目立つじょ」

 

咲「観客の人も多いし、こんなにたくさんの人に見られてるって知られたら和ちゃん…」

 

京太郎「ああ…」

 

咲「興奮しちゃうね」

 

京太郎「うん、そうだね」

 

 

 

和「…失礼します」

 

久「のどっちは最初に少しだけ悩むのよねえ」

 

久「けど二順目以降は相手が打ってる間に、何が来たらどうするか、その考慮が済んでる」

 

京太郎「俺達も何が来たらどうしようかとは考えますけど」

 

久「そうね。けど和の考慮は漠然とした役の形だけじゃなくて、牌効率、期待値を計算してるの」

 

京太郎「はあ…ええと、つまり…」

 

久「分かりやすく言うとAVで先の展開を推測するだけじゃなくて、ヌキ所まで計算してるってこと」

 

京太郎「なんとなく分かっちゃう自分が悔しいです!」

 

 

※なお例えは適当の模様

 

 

 

和「ありがとうございました」

 

透華(和了率と点数を見て最高効率の打牌…間違いないですわ)

 

実況『藤田プロ、試合をご覧になっていかがですか』

 

靖子『正直驚いた。以前とは次元が違うな』

 

実況『そのきっかけはなんでしょう』

 

靖子『そうだなあ…膜でもなくなったか』

 

京太郎「もっと目につく違いがあるだろぉ!」

 

透華(あら…違うんですの?)

 

 

 

京太郎「これで一回戦は突破できそうですね」

 

久「まだ終わった訳じゃないけどね」

 

まこ「しっかし観客も現金なもんじゃのー…」

 

優希「のどちゃんが終わったらみーんな居なくなったじぇ」

 

久「ま、仕方ないでしょ。それより咲、あとは頼んだわよ」

 

咲「は、はいっ!」

 

まこ「なんじゃ、緊張するような点差でもなかろーに」

 

優希「咲ちゃんりらーっくすりらーくす」

 

京太郎「ほら、深呼吸深呼吸」

 

咲「は、はひ…ひっひっふー、ひっひっふー…」

 

久「あら? 須賀君との子かしら」

 

京太郎「またえらく典型的なボケで来たな」

 

 

 

透華「みなさん、みなさーん! いっちだいじですわ!」

 

純「透華てめーどこ行ってたんだよ!」

 

衣「ハギヨシ、トーカが他校に迷惑を掛けなかったか?」

 

ハギヨシ「目立ってはおられましたが、概ねつつがなく」

 

透華「あら衣。珍しいですわね、一回戦から居るなんて」

 

衣「トーカ達を止めるにハギヨシでは非力極まりない…」

 

衣「且つ且つ今日明日はトーカ達の傍にいることにした」

 

透華「つまり…私と寄り添いたいということですの?」

 

衣「何故」

 

透華「そ、添い遂げたいということですの!?」

 

衣「何故」

 

透華「いけませんわ、わたくし結婚相手の要求は厳格で…残念ながら衣は満たしていませんもの」

 

一「ちなみにその要求って?」

 

透華「ええ、それは…」

 

透華「私より背が高いことですわっ」

 

衣「尋常でなく幅広い条件!」

 

 

 

純「で、一大事って?」

 

透華「はっ! そう、原村和はやはり『のどっち』でしたわ!」

 

透華「あの打ち筋は99%間違いなし…このままでは、わたくしが圧勝できませんわっ!」

 

一「ああ、透華は副将だから原村和と当たるんだね」

 

透華「どちらが真のアイドルたるか、はっきりさせましてよ!」

 

智紀「……」カチカチ

 

衣「智紀、さっきから何をしているんだ?」

 

智紀「ネット投票…どっちが人気あるか…」

 

衣「む? 管理者頁だぞ?」

 

智紀「運営だから…」カチカチ

 

智紀「今は…こんな感じ…」

 

衣「……トーカには見せないでおこう」

 

智紀「おもちの差…」カチカチ

 

 

 

おい清澄見たか? 5人目、メチャヤベーヨ!

 

一「っ、それって」

 

純「5人目だと…?」

 

透華「原村和の次ですの? 誰だったかしら」

 

衣「…大将か。愉快な打ち手か、あるいは衣の贄となるか」

 

智紀「…あった。見てた人のレス…」

 

純「どれだ?」

 

智紀「これ…『なんかラマーズ法してた』」

 

透華「妊婦さんですの!?」

 

一「まさか、そんなわけないと思うけど」

 

衣「……」

 

衣(呆け者の方か…)ハア

 

 

 

純「なあ、そろそろ昼飯行かないか?」

 

一「控室が一室押さえてあるんだっけ」

 

透華「ではそちらへ参りましょう。さあ、行きますわよ!」

 

衣「全員衣から離れないように! 単独行動は禁止だ!」

 

一「はいはい」テクテク

 

透華「あら、衣が先頭ですの?」トコトコ

 

智紀「……」カチカチ

 

純「こらこら、パソコンやりながらはあぶねーぞ」

 

衣「……」

 

衣「自然と背の順になるなー!」

 

 

 

久「えー、それじゃ一回戦突破を祝して」

 

久「かんぱーい!」コチン

 

まこ「おつかれー」カチン

 

優希「おっぱ」京太郎「かんぱーい!」チン

 

咲「うぅ~、緊張して喉がカラカラだよ…」

 

久「あ、咲。ちょっと待って」

 

咲「え? な、なんですか?」

 

久「グラスをちょっと二回鳴らしてみてくれる?」

 

咲「はあ…」

 

チンッチンッ

 

久「ね?」ドヤァ

 

咲「今のために私の喉は後回しにされたんですか?」

 

 

 

咲「でも――いっぱい緊張したけど、ホント楽しいよ」

 

咲「もっと、もっと強い人と打ちたい――あは」

 

久「あらら…」

 

まこ「こりゃ、相手は残念じゃの」

 

和「…はふぅ」ゾクゾク

 

優希「咲ちゃんがドSの顔してるじぇ…」

 

京太郎「そっちのタイプへのツッコミはどうすりゃいいかな…」

 

 

京太郎「俺、今なんて言った?」

 

 

 

靖子「二回戦進出おめでとう」

 

咲「親子丼さん…」

 

久「あら、有名人がこんな無名校相手に時間つぶしていいの?」

 

靖子「無名で終わるのか?」

 

久「さあねえ…」

 

靖子「は。まあいいさ。ところでそっちの二人、どんな魔法を使ったんだ? この間とは大違いだ」

 

久「どこぞのプロにヘコまされたのが効いたんじゃない?」

 

和「いつか倒しま」プチッ

 

和「…すみません、ホックが千切れたみたいで。直してきます」

 

靖子「ヘコむどころか膨らんでるみたいだぞ?」

 

京太郎「そんなマンガみたいな…っていうか付けてたのか、今日」

 

 

 

『まもなく二回戦を開始します。各校の先鋒の方は――』

 

優希「むっ! 出番だじぇ!」

 

久「それじゃ、行こうか。じゃあね靖子」

 

靖子「その呼び方はやめろって…しかし、あの娘――」

 

靖子「大将戦で壊れるか、それとも……」

 

 

 

京太郎「うわ、うちの試合ガラガラっすね」

 

久「そりゃね。みんな風越と龍門渕のほうに行ってるわよ」

 

まこ「実況も二つの学校に忙しいけえ。ま、こっちとしちゃ気楽なもんじゃ」

 

和「見られるのもいいですが…見られていないのも、それはそれで」

 

咲「あんまり緊張しなくてすむかも…」

 

京太郎「緊張か…人の字を書いて飲むのはどうだ?」

 

咲「えと、人…誰でもいいのかな?」

 

京太郎「人の名前書いてどうすんだよ。まあ、落ち着くならいいか」

 

咲「えと…『京…』」ゴクン

 

咲「……な、なんだか熱くなってきたっ」

 

京太郎「?」

 

 

 

『圧勝! 風越女子ー!』

 

スゲースゲー バンジャクテッパン

 

池田「らっくしょー!」

 

美穂子「お疲れ様。これ、おしぼり良かったら」

 

池田「ありがとうございますっ」

 

美穂子「それとこれ、スポーツドリンクも用意したの」

 

池田「ありがとうございますキャプテン!」

 

美穂子「それにクーラーで冷えたでしょ? もんぺと湯たんぽもあるから」

 

池田「ありがとうございますっ」

 

未春(そろそろ止めないと…)

 

 

 

パァン!

 

貴子「なんださっきの試合は!」

 

貴子「キャプテンのお前が生ぬるいから下があんな打ち方になるんだろうが!」

 

パァン!

 

貴子「池田ァ!」

 

池田「は、はいっ」

 

パァン!

 

貴子「使わないからその鞭はしまえ」

 

池田「えー…」

 

 

 

美穂子「コーチ、あまり彼女を叱らないであげてください」

 

美穂子「彼女は一年間自分を責めてきたはず」

 

美穂子「私はこの子を誇りに思います」

 

池田「う、う…」ヴィイイイ…

 

池田「……」

 

池田「あ、責め道具の電池切れたし」

 

貴子「おい、こいつホントに反省してんのか?」

 

美穂子「?」

 

 

 

未春「あの…お二人とも、お茶でも…」

 

貴子「チッ…おい、いつものだろうな?」

 

未春「はい、コーチにはレディグレイ」

 

貴子「ん」

 

未春「キャプテンには梅こぶ茶です」

 

美穂子「ありがとう。ごめんなさい、わざわざやらせてしまって」

 

未春「いえ…コーチ、ロールケーキです」

 

貴子「ああ。悪いな」

 

未春「キャプテンは金つばで良かったですか?」

 

美穂子「ええ。大好きよ」

 

貴子「お前、私より年下だよな?」

 

美穂子「? はい」

 

純代(相変わらず、渋い…)

 

 

 

美穂子「それで、他の三校は決まった?」

 

星夏(文堂)「あ、はい。龍門渕と敦賀学園、それと清澄高校っていう所です」

 

美穂子「そう。龍門渕は上がってきたのね? 良かった」

 

純代「良かった、ですか?」

 

美穂子「ええ…龍門渕が上がってきてくれないと、直接リベンジできないでしょう?」

 

貴子「は…言うじゃねーか」

 

美穂子「見ていてくださいコーチ。私たちが、最強だということを――」

 

美穂子「でも、こういうのは夕焼けの川原で殴り合った方がいいのかしら?」

 

池田「それは喧嘩の方法では」

 

未春「ベタというか、ちょっと古いですね…」

 

 

 

ガタンゴトン…

 

京太郎「優希も咲も、和も寝ちゃってますね」

 

久「朝が早かったし、頑張ってくれたからね。須賀君も寝ていいわよ?」

 

京太郎「俺は雑用くらいしかしてませんし」

 

まこ「しっかし寝相が危なっかしいのう。揺れたら、っと」

 

久「あらら。やっぱり姿勢崩れちゃったわね」クスクス

 

京太郎「ははは、なんで斜め向かいに座ってた咲までこっちに倒れてるんですかね」

 

久「そりゃあ、ねえ? ダメよ、女の子を泣かしたら」

 

京太郎「普通の女の子は人の下腹部に向かって頭を下ろしまーせんっ!」

 

 

 

 

久「今日は私のおごりだから、好きなだけ食べてちょうだい。明日も頑張ってもらわなきゃいけないからね」

 

優希「美味しそうだじぇ! 和風とんこつが! わふうとんこつが!」

 

京太郎「いや味噌だろ…くー、これがいいよなあ」

 

まこ「無難に醤油っちゅうのもええがのう」

 

久「あら、魚介もいいわよ?」

 

和「らあめん…面妖ですが、これは美味しいですね…咲さんは何味がお好きなんです?」

 

咲「私? 私は潮味かなあ…」

 

京太郎「ほへは、あづっ! げほっ、ごほっ!」

 

優希「飲みこむときに喋るとは愚の骨頂だじぇ…南無なむ」

 

久「脊髄反射なのねえ…」

 

 

 

優希「親父! おかわり!」

 

久「やれやれ、口に合って良かったわ。この時間じゃ、ここくらいしか開いてないし」

 

まこ「田舎じゃけえのう…」

 

優希「オヤジ! タコスラーメン作れ!」

 

京太郎「ねーよ、そんなもん…」

 

優希「むう、じゃあ京太郎作れ!」

 

京太郎「んー…それも美味そうだよなあ。今度やってみるか?」

 

優希「おおおー! いいぞ犬、約束された勝利のタコスだ!」

 

久「ふうん…じゃあ私は、イカスラーメンでも作ってもらおうかしら」

 

久「……」

 

久「あ、あのね。イカスっていうのはとっても良いとか、そういう…それとタコスをかけて…」

 

京太郎「もう見てられないからやめて!」

 

まこ「自分でボケの解説とは拷問じゃのぅ…」

 

 

 

京太郎「よく三杯も食ったなあ」

 

優希「我が胃袋は奢り無限! お、終電だじょ」

 

久「ごめんねー、ここ会場から遠いから」

 

咲「いえ全然! 大丈夫ですよ」

 

まこ「わしは早起きが辛ろーて辛ろーて…まるで二日目じゃ」

 

優希「だだ重だじょー」

 

まこ「ホンマしんどいわ…京太郎ー、代わりに持ってくれー」

 

京太郎「俺に代わりに出ろってことですか?」

 

まこ「いや、二日目の方。肩代わりできんか?」

 

京太郎「俺にどうしろと…」

 

 

 

和:風呂場

 

チャプ…

 

和「明日は県大会決勝…」

 

和「勝てば全国、負ければ…」

 

和「緊張は、取れませんね」

 

和「……須賀君」

 

和「申し訳ないですけど、明日もジョークに付き合って下さいね?」

 

和「私たちがリラックスできるのは、須賀君のおかげなんですから…」

 

 

和「あ、でもリラックスしすぎて本番で柔らかくなったら大変ですね」

 

 

 

久:自室

 

久「んー…明日の準備もこれでOK」

 

久「あとは寝るだけ、なんだけど」

 

久「……」

 

久「やっぱダメね。嬉しくて、嬉しくて――」

 

久「よっし、3時間寝たら龍門渕と風越の牌譜でも見ましょうか」

 

久「1時間半ごとに起きれば十分らしいし」

 

久「……私ができること、できるだけやらないとね」

 

久「夏が終われば須賀君の指導に打ち込めるし…あら、楽しみはまだまだありそう」

 

 

久「未経験の私が言うのもなんだけど…食べごろって、いつかしら」

 

 

 

まこ:雀荘

 

まこ「やれやれ、まさか決勝とはのう」

 

まこ「予選だけでも出れれて御の字じゃっちゅうに」

 

まこ「少しずつ牌が重くなる気がする…」

 

まこ「牌を切るくらいの、大したことない動作で緊張するんはなあ」トン

 

まこ「……あー、もうええ。寝よ、ちゃっちゃと休まんと、遅れたら京太郎に呆れられるわ」

 

 

まこ「いや、別にあっちは遅れとらんけどな。真っ最中じゃけえ」

 

 

 

優希:屋根

 

優希「お、流れ星だじょー」

 

優希「むむむ。早すぎて願い事が言えないとは」

 

優希「流れ星もきょーたろーくらい私について来て欲しいもんだじぇ」

 

優希「仕方ない…こっちから教え込んでやる!」

 

優希「優勝だ! 優勝優勝優勝だー!」

 

優希「流れ星! 別に叶えなくてもいいじぇ! 私たちが勝手に叶えるからな!」

 

 

優希「流れ星は捕まえられんから、きょーたろに首輪でもつけとくかー?」

 

 

 

咲:居間

 

咲「おやすみ、おとーさん」

 

咲「…疲れたなあ」

 

咲(でも、楽しかったな…強い人と打てて)

 

咲「明日はもっと強い人と打つんだ…」

 

咲「…ありがとね、京ちゃん。あのとき誘ってくれなかったら、こんなに楽しくなかったよ…」

 

咲「何かお礼したいなぁ…メールしてみようかな」

 

 

咲「きょ、京ちゃんおもち好きだったし…恥ずかしいけど」カシャ

 

 

 

京太郎「はー、団体戦決勝か。みんなすげえよなあ」

 

京太郎「俺が出来るのは雑用くらいだけど…明日は全力でサポートだな」

 

京太郎「ええと、買い出しと応援だろ? それに」

 

京太郎「ん…咲からか。あいつ写メなんて使えたのか…」

 

京太郎「……」

 

京太郎「あからさまに二の腕の谷間じゃねーか」ホロリ

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最終更新:2014年04月21日 05:53