プロローグ

和「けど、阿知賀の制服はかわいいですね」

 

穏乃「玄さんから借りてみれば?」

 

和「いえ…制服として着たいなあと」

 

穏乃「あー、乱れた時にも画が映えそうだよね」

 

和「きっちり上まで締めるので私には関係ないですね」

 

 

 

憧「じゃあ…和は来年阿知賀に行くの?」

 

和「そうですね。そうしたいです」

 

穏乃「私も阿知賀かなー。ここの部室好きだしー」

 

憧「あたしは…阿太中かな…麻雀がしたいから」

 

穏乃「…中学だとこの辺は阿太中が一番強いからね。高校なら晩成かな」

 

穏乃「でも…たまには遊ぼうな!」

 

憧「もちろん!」

 

穏乃(貝合わせとか)ポワーン

 

憧「おっ? 煩悩を感じるぞー」

 

 

 

穏乃「実業団…」

 

晴絵「ん…前から誘いが掛かっててね。色々あって、やってみようと思うんだ」

 

穏乃「そっか…よし! 壮行会やろうよ! 今から!」

 

憧「さんせー」

 

晴絵「れじぇじぇ…よーし、お金は私が出すから好きなお菓子買ってこーい!」

 

和「それじゃあ中央駅のプーシキンで売ってるルノワールスペシャルを」

 

憧「あの3万円くらいするやつかー」

 

晴絵「おいおいここで唐突なお嬢様モードはやめてください」

 

 

 

玄「赤土せんせー、おめでとうございます!」

 

憧「頑張ってね!」

 

和「短い間でしたが…楽しかったです。本当に」

 

穏乃「……赤土せんせいっ!」

 

「「「「「ありがとうございましたっ!」」」」」ペコリッ

 

和(穏乃はまた下着も穿かずにお辞儀なんて…)

 

晴絵「…ううん、それはこっちのセリフだよ」

 

晴絵「なんだかんだ言って、みんなと麻雀出来て本当に楽しかったんだ」

 

晴絵「だから…ありがとう、ございましたっ!」ポロポロ

 

和(でも…今ツッコんだら、泣き声しか出ないですから)グズッ

 

和(今だけは許してあげます)ポロポロ

 

 

 

――阿知賀女学院中等部――

 

穏乃「お、和!」

 

和「穏乃…なんだか久しぶりな気がしますね」

 

穏乃「だねえ。クラスも違うし…憧とは結局放課後も遊ばなくなったし、赤土さんとも会ってないし」

 

和「……私も、来年の春にはここには居ないと思います」

 

穏乃「え、えええええええええ!? ナンデ!?」

 

和「母の仕事が2、3年で転勤になるんです。それが来年の春頃で」

 

穏乃「……そっかあ」

 

穏乃「それじゃあこれからは、私はさしずめ現地妻ってとこかな」ハハ

 

和「早くも倦怠期が訪れちゃいますよ」

 

 

 

穏乃「ま、なにかあったら連絡してよ」

 

和「……ええ」

 

 

和「拝啓 高鴨穏乃様、お元気ですか…どうにも違う気がしますね」

 

和「こっちでは憧のような友達と、面白い先輩がいます…これはなかなか」

 

和「今までとは真逆の立ち位置ですが、新鮮で楽しく過ごしています…どうでしょう」

 

和「えっと…結びはなんて書くんでしたっけ…そうそう、確かこうですね」

 

「のどちゃーん、遊ぼうじぇー!」

 

「今日は原村さんをモデルに激写ですからね! 卓上の雌豹でいきましょう!」

 

和「くす…今行きます」

 

 

『拝啓

 高鴨穏乃様。お元気ですか? 長野は随分と過ごしやすく、食べ物もおいしい物がたくさんあります。

 こっちでは憧のような友達と、面白い先輩がいます。少し強引で、けれど一緒にいるととても楽しくて、奈良での日々を思い出すこともあります。

 そうそう、私は今麻雀部に在籍しています。今までとは真逆の立ち位置ですが、新鮮で毎日を楽しく過ごしていますよ。

 短いですが、風邪など引かないよう気を付けて。

                                おめこ』

穏乃「――憧! おはよう!」

 

憧「にゅ…おはよ、バスまで何分?」

 

穏乃「あと三分! いーち、にーい!」

 

憧「えー、180まで数える気?」

 

穏乃「108まで数えろって言われた!」

 

憧「そうした方がいいよ」

 

 

 

穏乃「あ! 転校生さん」

 

憧「や、おはよ。今日もフリフリだねー、東京じゃ流行ってんの?」

 

「……いえ、これは私の趣味です。それもマイノリティな」

 

憧「ほほう」

 

「それといい加減、転校生とかフリフリとか呼ぶのやめてもらえませんか」

 

穏乃「へえ、じゃあなんて?」

 

「私は和……」

 

和「原村和です!」

 

穏乃「――へえ、なんかいいね。じゃあさ」

 

 

穏乃「セフレになろうよ和!」

 

和「そういうジョークは嫌いです」

 

 

 

穏乃「ほらほら和も早く!」

 

憧「ふだん運動してないんでしょ! ダッシュダッシュ!」

 

和「はひっ、はひる必要の、ない、ばひょれ……」ゼエゼエ

 

和「なんで…走るん…ですか…」バタッ

 

穏乃「なんで走るのかってそりゃあそこに道があるからだよ」

 

穏乃「和だってマッサージ器があったらとりあえず当てるでしょ?」

 

憧「今唐突に話のニュアンスが変わったよね」

 

 

 

穏乃「和ってなんか得意な事ないの? 勉強以外で」

 

和「そうですね…しいて言えば麻雀でしょうか」

 

穏乃&憧「麻雀!」

 

和「…? なんですか?」

 

穏乃「えへへー」

 

憧「いひひっ」

 

和「な、なんですか? 気持ち悪いですよ」

 

憧「いやいや…麻雀ならぜひ一緒に行きたい場所があるんだなあ」

 

穏乃「そうそう、和のスタイルなら脱衣も楽しく」ドカッ

 

憧「このアホのいう事は気にしなくていいから」アハハ

 

穏乃「 」チーン

 

和「そうですね」サラッ

 

穏乃「しどい……」

 

 

 

和「こんな所に女子高があったんですね」

 

憧「まあね。田舎だから人は少ないけど、結構なお嬢様校だよ?」

 

穏乃「ほら行こうよ和! 私等は顔パスだからー」

 

和「は、はい…」

 

 

和「麻雀部?」

 

穏乃「今はもうないけどね。失礼しまーす」キィ…

 

 

晴絵「はー、いつか高校教師になったら、阿知賀が共学化しないかなあ」

 

晴絵「そしたら年下食い放題じゃん」ジュルリ

 

 

和「失礼しました」パタン

 

 

 

穏乃「紹介するよ、これが麻雀教室の先生」

 

晴絵「おいおいコレ扱いか? ところでその子は?」

 

穏乃「有望な新人!」

 

晴絵「ほー…」マジマジ

 

晴絵「これは確かに将来有望そうなおもち…」ゴクリ

 

和「どこ見て言ってるんですか!?」

 

晴絵「いやいや…私は赤土晴絵、大学生で麻雀を教えてる。君は?」

 

和「原村和…小学六年生です」

 

晴絵「…ちなみに、サイズは?」

 

和「ええと…」ヒソヒソ

 

晴絵「なるほどねー」フフッ

 

 

晴絵「すみません何を食べたらそうなるのか教えてください」

 

和「土下座!?」

 

 

 

和「ツモ。2000、4000です」

 

晴絵「やるねー、こりゃ相当強そうだ」

 

和「いえ…半荘一回では強い弱いは測れませんし」

 

晴絵「ははーん、君はいわゆるデジタル派ってやつだね」

 

和「…そう、ですね。まだ未熟ですけど」

 

穏乃「でじたる?」

 

憧「なんて言うのかな、パソコンとかインターネットとかー」

 

穏乃「ああ!」ポンッ

 

穏乃「和は本よりも画像サイト派なんだね!」

 

和「変な派閥を作らないでください」

 

 

 

憧「呼んだ?」

 

穏乃「もち!」

 

和「?」

 

憧「和ぁ、私たちを倒したくらいでいい気になったらいけないよ?」

 

穏乃「今から来るのはここのナンバーワンだよ!」

 

 

玄「こんにちはー、松実玄、ただいま参りました!」

 

玄「おろ、新しい方ですね! 初めまして!」

 

玄「これは実にすばらしいおもちがおもちで…」

 

和「そもそもそれはおもちじゃないですっ!」

 

玄「えっ」

 

和「えっ」

 

玄「おもちはおもちでないとするとこのおもちは一体…」

 

和「そもそもおもちと呼称する意味が分かりません」

 

玄「えっ」

 

和「えっ」

 

 

 

玄「ええと、私は松実玄。阿知賀女子の中一です」

 

玄「以後お見知りおきを!」

 

和「あ、はい…お願いします」

 

晴絵「うんうん。それじゃあ早速打ってみようか!」

 

 

和(これでオーラス…)

 

和「あの、これって赤ドラ抜いてあるんでしょうか?」

 

憧「そんなこと言ったら和の手に赤が無いのばれちゃうよー…でもでも、行くわけないんだけど」

 

和「え?」

 

憧「ドラが今まで見えてないのは、玄が一度も手を開いてないから」

 

憧「すべてのドラは、玄に集まるんだから!」

 

和「そ……そんなオカルトありえません!」

 

晴絵「へっへっへ、お嬢さんオカルトかどうか確かめてみようか。玄、広げて見せて」

 

玄「あ、はい」ヌギヌギ

 

和「今すぐ閉じて穿き直してください!」

 

憧「いやー、和がいると楽でいいね」

 

 

 

玄「えっと…」パララッ

 

和「っ、この半荘で初めてみる赤…四枚も…それにドラ8!?」

 

晴絵「不思議なことがあったもんだねえ」

 

和「いえそんな、違います偶然ですっ!」

 

玄「えっとね…偶然でもないんだよ?」

 

和「え?」

 

玄「ほら私って今日アノ日だから、赤が集まってきちゃうのです」ニコニコ

 

憧「そりゃ年中大変だなー、玄の体は」

 

 

 

穏乃「やー久々に眠くなるまで打ったねー。しかし和が麻雀出来てよかったよ」

 

憧「この辺は子供少ないし、麻雀出来るってなるともっと少ないからさあ」

 

和「そう、ですね…」

 

穏乃「だから和があそこに通うようになってくれると、打つ機会も増えて楽しいんだけど」

 

和「…お邪魔でなければ、行かせていただきます」

 

憧「あはは! 邪魔だなんてあり得ないって!」

 

穏乃「そーそー、今日の見てても邪魔どころか…」ハッ

 

穏乃「なるほど、和はつまり私たちの糸を引くような粘っこい関係に気を使ってるんだね?」ビシッ

 

憧「今すぐ断ち切ってあげよーか」

 

 

 

穏乃「おっはなーみお花見嬉しいなーっと!」

 

憧「テンションたっかいなー、ほら飲み物」

 

玄「これ、うちの旅館で作ったお弁当です。食べてみてね」

 

和「ありがとうございます…ん、美味しいです…!」

 

玄「えへへ、そうかな。お姉ちゃんが一緒に作ってくれたんだよ」

 

穏乃「和! 見てみて、桜がジュースに入ってきた!」

 

和「桜吹雪ですからね…ピンク色で、とても綺麗です…」ポーッ

 

玄「ええっ!? どどど、どうして今日の下着の色が分かったの!?」

 

和「知ったことじゃありません」

 

晴絵「…はっ、いやー! よく私のぽっちの色がわかったね! まだ全然ピンクだし!」

 

憧「なんか痛々しいからやめなよ」

 

 

 

穏乃「先生、誕生日おめでとー!」

 

憧「おめでとー!」

 

和「おめでとうございます」

 

玄「おめでたー」

 

晴絵「ははは、ありがとう。誰か相手紹介してくんない?」

 

和「中学生に何頼んでるんですか…」

 

穏乃「えっとー、ローソク何本?」

 

憧「えっと…20本以上だよね」

 

玄「凄いです! 20本なんて見たことないよ!」

 

穏乃「年寄りだ!」

 

晴絵「おいおいそれはマジでやめとくれ」

 

 

 

穏乃「川だー!」

 

晴絵「河水浴だー」

 

憧「泳げー!」

 

和「みんな元気ですね…」

 

玄「うん。和ちゃんは泳がないの?」ジーッ

 

和「セクハラ目線がなくなったら泳ぎます」

 

穏乃「おほーっ! 脱ぐぞー!」スッポン

 

憧「ちょっ、何水着脱いでんの!?」

 

穏乃「憧ー! こっち来なよ、冷たい水がスライムに異種姦されてるみたいで気持ちいいよー」

 

憧「和、水切りしよ」

 

和「いいですね」

 

玄「おもちー…」ガックシ

 

 

 

和「そういえば、赤土さんはなぜ時間を作ってまで麻雀教室を?」

 

穏乃「あー、赤土さんはね。この辺の麻雀知ってる人ならだれでも知ってるから」

 

憧「晩成高校っていうのがこの辺じゃ一番強いんだけど、それをぶち倒して阿知賀が全国行ったことあるんだ」

 

穏乃「その時のエースが当時の高1、赤土晴絵! 阿知賀のレジェンドだよ」

 

和「れじぇ…そんな人ならなおさら、子供たちの相手よりもインカレとかプロとか…」

 

穏乃「そうなんだけどね…阿知賀は準決勝までは怒涛の快進撃だったんだ」

 

憧「でも準決勝で、晴絵が大量失点して負けちゃったんだよ」

 

和「……そう、なんですか」

 

穏乃「それからしばらくは赤土さん、自分を慰めることもできなかったって」

 

和「そうなんですね…」

 

 

穏乃「あ、性的な意味でだよ?」

 

和「分かっててスルーしたので蒸し返さないでください」

 

穏乃「次の日からは元気に麻雀してたらしいし」

 

憧「メンタルちょーつよいよね」

 

 

 

和「でもそれなら、なおのこと子供教室をしている理由が…」

 

晴絵「聞きたい?」ヌッ

 

穏乃「赤土さん! 聞いてたの?」

 

晴絵「聞こえるっての…ま、いくつか理由はあるんだけどさ」

 

晴絵「教育学部だから子供と触れ合いたい、母校に愛着がある」

 

和「……」

 

晴絵「でもってそれ以上に…」フッ

 

憧「格好つけてるけど、準決勝で意気投合した三人が発言ヤバすぎて三人とも翌年参加できなかったんだよ」

 

晴絵「おいおいバラすなよー」プクー

 

穏乃「ちなみに当時三人相手にツッコミまくった人のボロ勝ちだったんだー」

 

和「……それで、それ以上になんですか?」

 

晴絵「おっ、そうそう。それ以上にさあ」

 

晴絵「子供教室なら男の子が来て、ツバつけとけるかなーって」エヘッ

 

和「すみません、さっき何学部だって言いました?」

 

 

 

『小鍛治プロリーチ! 史上最年少の八冠保持者、九冠に向けて入魂のリーチです!』

 

晴絵「おっ、すこやんリーチか。こりゃ行けそうかな」

 

デンワー、デンワダヨー

 

晴絵「はいはい…はやりんか。久しぶり」

 

晴絵「もちろん見てるよ。相変わらず突っ込んでばっかだねえ」

 

晴絵「うんうん、また打とうよ。プロ? んー…ちょい迷うトコ」

 

晴絵「子供教室ね。これが結構やりがいっていうか…向いてるかも」

 

晴絵「のよりん居るの? おー久しぶり、相変わらず口下手だね」

 

晴絵「はいはい。それじゃまたね、ばいばいありがとーさようなら、っと」

 

晴絵「……プロ…実業団、か」

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最終更新:2014年06月02日 19:14