ミカサのオナニーファイル

part1>>76


No.1

 849年。
 ミカサ・アッカーマンは、自室……といっても
他に何人も居る大部屋だが……の、ベッドの中で寝転がっていた。
 早いもので訓練兵としての期間も来年で終了だ。
 二年前から見れば、エレンも随分と成長した。体つきも、
身のこなしも、気迫も。
 危なっかしいのは変わらないけれど。
 私を大事にしてくれるのも、変わらないけれど。

 目を閉じて思い出すのは、今日の夕飯時のこと。

「おい、ちょっとそこどけよ」
「おう、悪い悪…っとぉ」
 テーブルとテーブルの間。余所見をしながら歩いていた誰かが、
向こうから歩いてきた誰かとすれ違おうとしてバランスを崩した。
 見えていたけど。
 分かっていたけど。
 通路の幅と体格差からしてかわせないタイミングだった。
 後ろにはエレンも居ることだし、とにかく食べ物だけ守って、
体でとめるしかないか……と思考を終えたとき。
 顔の横を、エレンの温かさとやさしい匂いが通り過ぎていった。
「あぶねーな、こんな所でこけるなよ」
 トレイを持ったままの私を助けるために、エレンが腕を伸ばして
私を助けてくれたのだ。
 私を、かっこよくもやさしく包み込むような愛情を原動力とした
反射神経でもって助けてくれたのだ。
「ありがとう…エレン」
「おぅ」
 本当はその腕にほお擦りでもしたかった。
 でもエレンも、こんな所でされても困るだろうから、我慢した。

 回想を終えると、私はため息をついた。
「ふぅ……」
 体が熱い。
 最近、エレンが格好よすぎて困る。
 なんだか私に熱い視線を向けてくることが多くなったし。



 ――エレンもミカサに勝ちたくて必死なんだよ。

 アルミンはそんなことを言うけれど、そんなはずない。
 確かに格闘術も空中機動もその他もろもろも私のほうが
成績はいいだろう。でも、戦ったらエレンが勝つ。
 多分、勝って死ぬ。死んで勝つ。
 私はただ、エレンを死なせたくないのであって……
エレンが何かと戦ったら、勝つのは当然なのだ。
「エレン…」
 誰にも聞かれないようにつぶやいて、私は衣擦れの音
を一切外部に漏らさないように寝巻きの下を下ろし、
同時に尻の下にタオルを敷く。
 まあ、要するにオナニーだ。
 ルームメイトたちはそれぞれ片思いだったり両思いだったり、
やれエッチしただのキスしただのとかしましいが、
話のオチの定番として
「ミカサはそういうことしなさそう…
 っていうか想像できないわ…」
 というのがあるが。
 私だって人並みに興味もある。
 ……実は経験だって、あるのだ。

 今日のよき日に、久しぶりに昂ぶってしまった体を
その思い出を振り返って鎮めるとしよう。


 あの思い出すのも忌まわしい巨人の進行があるまで、
私の人生は現時点ではそこが絶頂だったかもしれない。
 実の両親には申し訳ないが、取り立てて何の心配事もなく
エレンと、父さんと母さんと一つ屋根の下で暮らせたあの日を
取り戻せるならば、私はたいていのことはやってのけるだろう。
 当時、私は……今やったら興奮しすぎて一睡も出来ないと
思うが……エレンと一緒のベッドで寝ていた頃があった。
 あの頃はむしろ、エレンの暖かさを感じながら眠るのが
とてもうれしくて。
 寝つきのいい子だと、思われていた。
 寝るのが惜しかったから、実態は割りとそうでもなかった。
 あの日は、確か。
 エレンとアルミンが二人だけで遊んで、私は二人を……
優先順位的には申し訳ないがエレンを探しながら歩いていた。
 そして、見た。
 目を見開いて立ち尽くす、エレンとアルミンの二人を。
 その先に、妙齢の女性が顔を赤らめながら小走りに
立ち去っていく姿を。
「もう…
 いきなり突風があるなんて…
 あぁ、恥ずかしい」
 つぶやきもはっきりと聞こえた。

 その夜。
「なあ、ミカサ…
 寝たか?」
 私は答えなかった。
 予感がしたから。
「さすがに、寝たよな…
 ゴクッ…」
 ベッドに入って目を閉じてから、ずっと。
 私の顔に、首筋に、胸元に。
 エレンの熱い視線を感じていた。
 眠れるわけがなかった。
「ち、近くで見ると、やっぱ綺麗だよなコイツ」
 たとえそのとき巨人が襲撃していたとしても、私は
歓喜の涙を流しながらエレンを守って死んだだろう。
 顔と顔をぎりぎりまで近づけて、エレンが見つめている。
体温と息遣いを感じて、よっぽど唇を重ねたいと言う衝動に
駆られたが……今はそのときではないはずだと、抑えた。
 これもエレンからもらった力だ。
 しばらくエレンは私の顔を……特に唇辺りを見つめていたが、
そこに手を出してくるのはやめたようで、ごそごそと布団にもぐっていく。
 キス位、いくらでもすれば良いのに。舌くらい……いや、
むしろ舌で私の唇を舐ってくれればいいのに。
 まあ、これくらいは前菜のはずだ。
 次にエレンは、私の襟元からおずおずと手を差し入れてきた。
夜の外気に触れ、ほんの少しひんやりしたエレンの手に触れられた瞬間、
頭の中に電撃が奔る。
 抗いがたい甘い官能に、反射的に股間の潤いが増すのを知覚し、
その反応を必死に遮断する。
 ぎこちない手つきでエレンの指が私の服の中にもぐりこむたび、
とろけるような甘い火花が脳裏ではじける。
 その感触を味わいながらも、私はただ眠ってる体を貫き続けた。
だが、一番敏感な箇所……乳首を、おっかなびっくりながらも
無造作に強くはじかれたとき、火花どころか爆発が起こった。
内腿と股間の痙攣を、ゼロに出来ない。
 人生初の、性的絶頂を、エレンの手で迎えた瞬間だった。
 エレンは乳首の存在に気づいたのか、しばらく指の腹で
やさしく転がしていたが……
 満足したように、するりと腕を抜いた。
 すんすん、と指の匂いをかいでいる気配がして、
さっきとは別種の、ゾクゾクとした陶酔が沸き起こってくる。
「なんでミカサは、こんな良いにおいがすんだろうな…」
 その言葉をそっくり返したい。エレンのマフラーも、
うっとりするほどいいにおいだったから。


 幸いにしてエレンはこれで終るつもりはないらしく、
次はついに私の腰、衣服の上下から手を差し入れるつもりのようだった。
 先ほどの絶頂の後だから、タヌキ寝入りがばれないか心配だが。
まあばれないだろう。エレンが人生初めて触る女性の生殖器は
私のものなのだから。
 ああ、こんなことなら、いい子ぶってないでパジャマのすそを
入れたりしなければよかった。そうしたらエレンの手を煩わせずにすんだのに。
 後悔先に立たず。
 次からはエレンと寝るときは胸元を開けて、すそは出すことにする。
 エレンは慎重にも、強引にすそごと進入したりはせず、
ずらすように少しずつすそを出してから手を差し入れようと
しているようだった。
 協力してあげたいのは山々だが、寝言や寝返りを少しでも
見せれば、エレンの行為を中断させてしまうかも、と思うと
動くに動けない。
 仕方がないので期待して待つと、ほどなく私のパジャマの
すそは前面が出て、おなかがひんやりとした空気に触れる。
 すそがあった空間には、まさに手のひらの厚みくらいの
間隙ができ、まるで私の心を代弁するかのようにエレンを
誘っている。
 エレンの荒い息遣いを耳元に感じる。
 エレンが硬くつばを飲んだ気配がする。

 エレンの手が、パジャマの下、さらに下着の下を、
する、する、と這い進む。
 さすがに、鼓動の高鳴りを禁じえない。
 やがて、一際やわらかい肉に行き当たり。
 急激なカーブを描いて、その指が私の肉の間に進み……

 ぬるり。

 エレンならフリーパスで通してあげたい粘膜で、ついに
エレンの指を迎え入れたとき。またしても震えを止められなかった。
「!!!」
 鋭く息を呑む音とともに、エレンの手が、私になるべく
衝撃を感じさせない滑らかさで素早く引き抜かれた。
 そのままエレンは私に背を向けて、小刻みに震えながら
ふー、ふー、と荒い息を整えつつ横目に私のほうを伺っていたが……
 反応がないことを十分に確認すると、

 ちゅ、と指先を口に含んだ。

 三度、とめられない震えを経験した。



「ふぅ…」
 回想を終えると、タオルで股間をぬぐって着衣を正し
タオルを引き抜くというまでを無音でこなした。
 あの日々は、もう戻ってこないけれど。
 私をはじめて絶頂に導いたのも。
 「私」にはじめて触れたのも。
 私の味をはじめて知ったのも。
 エレンであるという事実は揺るがない。
 まだまだエレンには、色々とはじめてを捧げてきたが……
今日はもう眠ろう。
 明日も、エレンと共にすごせますように。

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最終更新:2012年08月17日 11:59
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