唐揚げのお礼に……
桃越 ハル: あ、[名]ちゃん。弁当食べに来たんでしょ?
桃越 ハル: こっちおいで。せっかくだから、一緒に食べよう。
[user]: はい、お邪魔します。先輩のお昼はパンですか?
桃越 ハル: そそ。昼休み直前に購買行って、仕入れてきた。
[user]: 昼休み直前……? 授業はどうしたんですか……?
桃越 ハル: ところで[名]ちゃん、それ、自分で作ってきた弁当?
[user]: は、はい、そうですけど……。
桃越 ハル: いいね。料理のできる子、素敵だよ。オレは好き。
桃越 ハル: それ、唐揚げ? 美味しいよな、オレの大好物。
桃越 ハル: まあ、今日は焼きそばパンにしてみたんだけど……。
[user]: 先輩はお弁当、持って来ないんですか?
桃越 ハル: 父親にそこまで期待するのも悪いし、自作は無理だし。
桃越 ハル: まあ、母親がいてくれたら違ったんだろうけど……。
[user]: (あ……。先輩、父子家庭だって聞いたことが……)
[user]: あ、あの、桃越先輩! 唐揚げ、少しいかがですか!?
桃越 ハル: え? ……ありがと、[名]ちゃん。キミ、優しいね。
桃越 ハル: ……うん、[名]ちゃんの唐揚げ、すごい美味しい。
桃越 ハル: キミ、将来いいお嫁さんになりそう。俺が保証するよ。
[user]: そ、そんな、大袈裟です……!
桃越 ハル: いや、唐揚げ博士のオレが言うんだから間違いない!
[user]: (唐揚げ博士ってなんだろう……?)
桃越 ハル: ……むしろ、オレが今すぐ嫁にもらいたいくらいかも。
[user]: え……? 桃越先輩、何か言いました?
桃越 ハル: え、何も言ってないよ? 気のせいじゃないかな?
桃越 ハル: それで、お礼は何がいい? 欲しいものある?
[user]: え? 何のことですか……?
桃越 ハル: え? だから、唐揚げのお礼。すごく美味しかったよ。
[user]: そ、そんな、ただのおかずですから……!
桃越 ハル: 遠慮しないで。……じゃあ、デートしよ? 奢るよ?
[user]: いえ、私は別にお礼が欲しかったわけじゃ……。
桃越 ハル: キミ、ほんとに天使みたいな子だね。裏、ないんだ?
桃越 ハル: ……オレ、ますますデートしたくなっちゃうかも。
桃越 ハル: じゃあ、今度お礼とか関係なしで、普通のデートしよ?
桃越 ハル: お洒落なカフェとか、キミを連れてってあげたい。
桃越 ハル: 雰囲気良くて、軽食も美味しいとこ、知ってるよ。
桃越 ハル: ……まあ、味の面では、キミの唐揚げのほうが上かな?
[user]: そ、そんなことないと思いますけど……!
桃越 ハル: いや、恋のスパイスは重要だよ? 見くびっちゃ駄目。
桃越 ハル: とにかく約束。……覚えてて。今度絶対、デートしよ。
[user]: (あ、あれ、いつの間に約束したことに……!?)
如月 斗真: [名]、ここにいたのか。午後、移動教室になったぞ。
[user]: 本当? 教えてくれてありが――きゃっ!?
[user]: (え!? い、いきなり先輩に抱きつかれた……!?)
桃越 ハル: 唐揚げ、まだ残ってる? あーんして食べさせて。
[user]: え、ええっ!?
如月 斗真: ……くそっ……[名]! そんな先輩に関わんなよ!
[user]: あ、斗真……!? 行っちゃった……。
桃越 ハル: 彼が幼馴染だっけ? ……ごめん、つい嫉妬して。
桃越 ハル: 唐揚げ、ほんとにありがと。[名]ちゃん、最高。
桃越 ハル: 弟たちにも食べさせてやりたいくらい、だけど……。
桃越 ハル: 誰にもらったか聞かれたとき、なんて答えればいい?
桃越 ハル: きっと弟は『カノジョにもらった?』、て聞いてくる。
桃越 ハル: オレは……そのとき、肯定してもいいのかな?
[user]: え、あ、あの……!
[user]: (先輩の顔が近い……! ど、どうしよう……!?)
桃越 ハル: ――なんて。ちょっと今のは、気が早かったかも。
桃越 ハル: 胃袋を掴まれると男は弱い、か。……ほんとかも。
[user]: そうなんですか……?
桃越 ハル: うん。キミも、キミの唐揚げも世界で1番、最高。
桃越 ハル: だから、ほんとは……独り占めしちゃいたくなるよ。
[user]: え……?
桃越 ハル: 「毎日オレだけに料理作ってくれたら、幸せかな。」
桃越 ハル: ……顔、赤いよ? あ、返事はしなくていいから。
桃越 ハル: オレは――時間かけて、キミのこと落としに行くから。
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