3話案

■第3話プロット:心の声■

※話数は通しプロットに従って表記
※ネタ備忘録として会話を書いているが、口調は変更可能

▼この話の目的

  • 朱璃が鬼と戦う心情に、復讐以外の解釈の余地を与える
  • 鬼化第一例を描写
  • 和服少女との語らい

▼詳細

  • 文化祭開催決定
直近数週間の学校周辺での鬼の出現が少なかったため、学校側が「開催できるうちに」と文化祭の開催日程を一週間後に決定する。
準備は忙しいものになるが、鬼の出現が相次いで開催できないままで終わることもあることから、生徒たちは文化祭を執り行えることそのものに大喜びする。
朱璃のクラスでは出し物として演劇をすることになり、主役である女騎士として朱璃が選出される。
具体的な演技指導や脚本の詳細を決める役割に同級生男子が手を挙げ、練習時間の確保のために各教科の教員と積極的に交渉する等、とても熱心な様子を見せる。

「演劇なんて無理。他の人を主役にした方がいい」
「朱璃ちゃんじゃないとダメなのよ。騎士物語である以上、殺陣があるでしょう。文化祭までの一週間で殺陣をこなせるのは、常日頃戦っている朱璃ちゃんしかいないわ」
「ん……納得させられた」

「志藤に何でも言わせて何でもやらせることができるわけだからな! 気合い入れるしかないぜ!」
「な、何でもできるとは限らない。演劇なんて始めてだし」
「うんうん。まずは、『何でも言うことを聞きます、ご主人様』……このセリフからだな」
「言えなくはないけれど、それは騎士じゃないと思う」

  • 生徒たちの祈り
脚本の大筋は、悪魔による侵略を受けている王国の女騎士が、英雄として国を救うというもの。
高校内の生徒たちには朱璃の普段見られない姿が見られることを、郊外から来る人たちには激しい殺陣が見られることを、それぞれ売りにしようと演劇の練習が始まる。
クラスメイト達は朱璃に様々なセリフを言わせたがり、ただ一つのセリフを言わせたいがために役柄を追加するまでに盛りあがる。
年上女子生徒はそれが、皆の不安や不満を表しているのではと思い至る。

「また台詞が増えた。女騎士の父親役と母親役を増やしてまで、私に言わせたいらしい」
「あらあら。どんな台詞なのかしら」
「えーと、『どうして平和な世の中にしてから産んでくれなかったのか』とか」
「そう……。文化祭にはみんなのお父さんやお母さんも来るでしょうし、朱璃ちゃん、思い切り演じてあげてね。朱璃ちゃんが頑張ることで、みんな少し考えて、幸せに近付くこともあるかもしれない」

文化祭が近付き、どうにかまっとうな演劇らしくなったが、朱璃はどうしてもクライマックスの台詞が言えずにいる。
悪魔との戦争が終わる間際、自分たちの地位が低下することを恐れた王国軍が、女騎士の暗殺に動くという展開。
多勢の暗殺者との殺陣の中で、女騎士がこれからは生涯ただの女として生きることを誓い、物語は終わりへと向かう。

「これからは、し、淑やかに……えっと、殿方を愛し、愛され、女としての幸せを……ううっ」
「また詰まったな」
「うん。ここの台詞、言えない」
「言ってもらわないと困るぜ。この台詞は演技指導責任者たる俺が考えた、イチオシの台詞だからな。いいか、可愛らしく儚げにするんだぞ」

  • 鬼化
文化祭当日の朝、学校近くに複数の鬼が出現し、朱璃と別部隊が同時に討伐に出る。
演劇を完成させ、文化祭本番を楽しみにしていたクラスメイトたちの言葉を思い出しながら、朱璃はいつにもまして鮮やかに鬼を葬り去っていく。
鬼が全て討伐された直後、別働隊の隊長が叫び声をあげ、半ば人であり半ば鬼であるといった異様な姿に変貌を遂げる。
別働隊隊員たちは隊長を生きたまま捕らえて撤退しようとするが上手くいかず、隊長は建物を壊し続け、遂には包囲を突破して人々のいる方向へ駆けようとする。
隊長を殺さないでくれと頼む隊員たちを振り切り、朱璃は隊長を葬り去る。

  • 文化祭本番
討伐から戻ってすぐに朱璃は衣装に着替え、演劇に臨む。
客席は満席で、立ち見が出るほど。
迫力ある殺陣や、朱璃の女らしい振る舞い、大人たちに向けた訴えかけの台詞に、観客たちは大いに盛り上がる。
クライマックスの暗殺者の登場シーンで、暗殺者役の男子生徒たちよりも明らかに体格の大きな、覆面の男たちが現れる。
朱璃と同級生男子はすぐに異常に気付くが、観客は演劇の一部だとしか思わず、同級生たちも台詞や演じる人物が変わったのだろうとしか思わずに、舞台は進行する。
「貴様の活躍の陰で犠牲になった者の怨みを思い知れ!」
「人の心をわからぬ化け物め!!」
覆面の男たちは別働隊の隊員たちで、隊長を問答無用で殺されたことを怨んで、朱璃を殺そうとする。
実力では朱璃に敵わないことはわかっているので、演劇の舞台という場を借りて、朱璃が実力を発揮できぬままに殺すことを企てた形。
朱璃は皆で頑張って作り上げた演劇を台無しにしないよう、あくまで殺陣という演技の中で、男数人を相手に戦い抜く。
戦いながら、男たちの罵声に対して、朱璃は無我夢中で応じる。

「化け物め! 人を殺すのも鬼を殺すのも一緒か!」
「そんな風に思っていない! これ以上人が死ぬのが嫌だっただけ!」
「殺せば殺すだけ褒めてもらえる! 貴様のような奴は、鬼がいる世で良かったと思っているんだろう!」
「違う! 私だって普通の女の子になりたかった! ずっとずっと憧れてるんだ!」
「ならば武器を捨てろ! 二度と戦わないと誓え! そうすればこの場の全員の命は助けてやる!」
「それは……できない……」
「なんだと?」
「父さんと母さんのために、私は奴らを殺し続けないといけないんだ! それに……今守りたい人たちもいる! その人たちに手を出すと言うなら、あなたたちも許さない!!」

舞台脇のクラスメイトを人質に取ろうとした男たちを、朱璃は人間離れした動きで叩き伏せる。
同級生男子が「こうして女騎士は救国の英雄となったのでした」と言葉を入れて、舞台の幕が下りる。

「ごめんなさい。台詞、全然違っちゃった」
「仕方ないだろ。相手が練習と違ったんだから」
「無我夢中で……何を言ったかあまり覚えていないんだけど、変じゃなかった?」
「ああ。俺が考えた台詞なんかより、ずっと良かった。最高だったよ」

  • 和服少女
朱璃が鬼化した隊長を葬り去ったことを、和服少女はことのほか喜ぶ。
自分が万が一人間に危害を加える存在になったら、自分も同様の処分を受ける覚悟はしていると、朱璃は和服少女に告げる。
最終更新:2013年12月27日 21:22