7話案

7.
迅鷹発生、主人公以外出撃した部隊は全滅するが、満身創痍ながらも勝利
半ば英雄のように迎え入れられるが、パートナーはやはり不安が隠せない(ここから徐々に仲が険悪気味に)
仇との遭遇、「もう少し育てば……」という言葉を置いて去る

翌日。
無言電話再び。電話を切るとすぐに掛かってくる。
反省を活かし落ち着いて出ると、女の子の声。公園に鬼が出たとの報告。市民が直接この事務所に電話をかけてくるはずがないと警戒。
依頼が来て小さな公園へ。女の子が一人、ブランコをこいでいるだけの閑散とした場所。
その女の子が朱璃の姿を認めて走ってくる。
話を聞いてみれば、電話で依頼したのは彼女らしい。名前は寺園紗姫(てらぞのさき)。十一歳。児童養護施設で暮らしているらしい。
鬼の発生から、受け入れが困難な状況が続いていて普通はたらい回し。どうしようもないからぎゅうぎゅう詰めの暮らしを強いられている。内情は酷いものらしい。
もしかしてと聞いてみると、咲姫が無言電話の犯人。理由を聞くと、訥々と説明をはじめる。困らせようと思った、あとお願いを聞いて欲しかった。その様子に怒る気が無くなる。
正式に告げられた依頼内容は、『青い鳥を呼んで欲しい』。謝礼は弾むという。

裕福だが厳しい家庭で、習い事の日程で遊ぶ時間もない。マナーを外せば虐待はあたりまえ。家庭教師には体罰を受ける。姉からは見下され、兄からは視界にも入れてもらえない。娯楽は管理されていて、用意された本などは触れたくもなかった。
部屋の窓から空を見上げていると、苦しい呼吸が少しだけ楽になるようだった。
ある日、習い事が始まる前、空を見上げていると、突然に青い鳥が降りてきたという。
嫌いだった家をめちゃくちゃに壊して、嫌いだった人たちを消してくれて。気を失って目を覚ましてみれば、あの息苦しい世界から開放されていた。
だから今度も、空を見ていた。けれどやってこない。だからあの青い鳥をもう一度連れてきて、自由にして欲しい。
その鳥が鬼だとわかっていたからこそ、事務所に依頼をした。朱璃のような話しやすい若い女の人を目当てに。
それが鬼だとわかっているのかと問うと、その青い鳥は違う、きっと空のように自由な場所へ連れて行ってくれる。
馬鹿馬鹿しいと一笑に付して、踵を返す。その鬼も既に討伐されているだろう。
恨み言を無視して、事務所へ帰る。

直ぐに電話が来る。帰ってみれば、青い鳥の姿をした鬼が養護施設を襲っていたという。
好きだった先生が居たらしく、助けてほしいと。
小山の麓にある養護施設へ急ぐ。森の中で既に部隊が交戦しているが、硬質な羽と想像を絶する敏捷さに手も足も出ない様子だった。
朱璃も加わるが、戦況は変わらず。部隊員は全滅。
空からの襲撃を防ぎ続けることはどうにか可能。そこに突破口を見出す。鬼の力を引き出し、徐々にヤスリでダメージを与えてゆく。

紗姫が現れ、ごめんなさい、ごめんなさい、先生を返して下さいと鬼に向かって泣きながら叫ぶ。
朱璃はヤスリをふるいながら紗姫に言葉を投げる。あなたは可哀想な子だけど、珍しくなんてない。特別なんかじゃない。だから、都合よく誰かがあなたを救ってはくれるなんてことはない。
だから、ここまで来たのは褒めてあげる。方法は子供だけど、自分の手で、自分の意志で現実を否定しようとしているのだから。 ここまで
だから自分もくすぶっていられない。かたきを討って、前に進まなければいけない。
翼の根に傷をつけることに成功。動きが鈍ったところに追撃。迅鷹撃破。

へたり込んで泣きじゃくる紗姫に近づいて

1,紗姫を優しく慰める(+1)
2,紗姫を叱咤激励する(+0)

1の場合
「全て解決したかと思っても、またどこかから苦しいことが現れてきて。
辛くて逃げ出したくて、どうしようもなかったんだよね。分かるよ」
もう紗姫も分かっただろう。目をそらさず自分から立ち向かおうとしない限り、不幸は幾重にも積み重なっていくことを。悲劇のヒロインになったって、前を向かない限り誰も助けてはくれないことも。
これは言わなくていい。現実の醜さを突きつけるような真似は、自分だってされたくない。これから、少しだけある心の余裕を使って、自分の出来るペースで向き合っていくことだ。

2の場合
謝ったって鬼は止まらない。自分のしたことは覆らない。それが現実で、受け入れなければいけない。
でも、鬼が現れたのはあなたのせいじゃない。だから、次から気をつければいい。
悲劇のヒロインでいても現実は辛いまま。もっと前を向いて、現実に向き合って行けばいい。


そのまま文哉視点へ
あの青い鳥の姿をした鬼は、以前にも発生した。しかし、此度の鬼と較べて数段弱かった。という独白情報。
(同じような負の感情から生まれた鬼だから、似通っている。自由を求める子どもの怨嗟。養護施設は規模が大きいので比べ物にならない強さだった)

大人二人と子供数人が朱璃の元へ駆け寄ってくる。大人が涙を流しながらしきりに頭を下げて、子どもたちは無邪気に英雄扱い。
部隊は全滅、養護施設で逃げ切れたのはごくわずか。公立中学校の体育館が避難所となっている。そこでは、動揺のあまり話すことも困難な子どもたちが、生き残った大人と中学校の教職員の世話を受けている。この場面で子どもが無邪気でいられるのは、どこか心が壊れているからだろう。そして、その無邪気さを抵抗もなく受け止めている朱璃も、本人は気付いてこそいないが歪だ。
このまま戦わせ続けていいのか。復讐へ向かわせ続けていいのか、不安になる。

そう考えていると、朱璃がこちらへ歩いてくる。
依頼を受けるならきちんと連絡しろ、と軽く叱責するも、流される。
戦わせるならせめて目の届く範囲でして欲しいという思いから、無断行動に関して釘を刺す。
そうしている間に、鬼に好き放題させる。そんなのは許せない。と強い反発。
ここには子どもたちがいる。ここで言い合いをして醜態を晒したくない。そう考えて、朱璃はそれ以上何も言わず、歩き出す。


朱璃視点

無断で鬼の討伐に出るのは今まで強く言われてきたことじゃない。
それに、したことは間違っていないはずだ。鬼が出たということは全てが一刻を争う。すぐにでも殺さなきゃいけない。
文哉に電話したところで変わらない。

内心文句を垂れながら歩いていると、仇の鬼。その威圧感に緊張が走り、背筋が凍る。
一瞬遅れて、朱璃がヤスリを振るう。軽くいなされ、ヤスリを手から飛ばされる。
まだ足りないなという言葉と、後始末はしておいた、という言葉を残して消える。


最終更新:2014年01月02日 12:14