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「世界と国家」(2014/07/05 (土) 11:23:45) の最新版変更点
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神々が天界に去った後、人類は人類自身の力のみで国を維持し、栄えさせることになりました。
しかしながら神により権力を引き継いだ者達の国の運営は、不完全なる人間の業ゆえか
平和な世界とは行かず、世界は戦乱の渦に巻き込まれていきます。
まずは、神々が去った後、世界がどのように秩序を維持しようとしたのか、から見て行きましょう。
**人類国家の誕生
それでは大まかな各神代六国の変遷を見て行きましょう。
ルミナスが去った後の光の国ルミナディアは、神より後継を任された祭儀神官達が役割を引き継ぎ
神の命令を受け作られた国=神命国家ルミナディアとして国体を維持します。
神も天使も存在しない世界で、文明は大きな混乱を余儀なくされますが、
祭儀神官達が合議制をもち、既存の秩序構造を保つことで社会はその働きを維持しました。
ジ・オルグなき後のソルス=ベイも、大祭司長が王と身分を改め、王国として生まれ変わります。
しかしながらそもそも自由な気風があるこのジオ文化圏においては、地方の有力な権力者達が
己の地位と支配権を主張し、ソルス=ベイはしばらくその平定と併合に四苦八苦することとなります。
分裂とまでは行きませんが、この時期のソルス=ベイはまとまったひとつの国というにはあまりにも
方針がまとまらず、地方支配が強く存在していました。
ベリスが去った後のエリシュオンの分裂は非常に顕著なものでした。
もともとがベリス神という指導者の下結束していた各都市は分裂し、エリシュオンという国体は消滅。
今後長らくベリス文化圏は複数の都市から最低1都市で形成される都市国家文化圏となっていきます。
都市をベリスの下で収めていた人間が王となり、それぞれの都市を治めたのです。
アスラディオの残したアシハラは、特に混乱がありませんでした。
というのもアスラディオは人間の間に直系の血筋の子孫を残しており
その子孫が王として国を引き継いだのです。
このアスラディオの子孫が、後に天帝と呼ばれる存在になります。
ディーバ・ダグダなき後のディーバ文化圏は、二つの勢力に分化しました。
元々の地中都市の住人であったドワーフ達と、後からディーバ文化圏の仲間となった獣人たちです。
元々生活圏を異にする彼らは、敵対するわけではないものの一つの国としてやっていくには違いすぎました。
ドワーフ達はアガルタを中心に、自ら達の中から立てた王を中心として王国を形成しました。
獣人たちはそれに対し、自らが崇める獣神ごとに部族を形成し、地にそれぞれのコミュニティを形成しました。
ダーナディアが世界樹と同化した後も、エルフ達は特に動揺することはなく
もっとも年長のものを長老とし、静かな生活を維持しました。
彼らにとって文化とは変えたり進化するものではなく、自然を維持するものだからです。
ただ、ダーナディア亡き後も、各地の森への入植は続けられました。
それぞれ問題は抱えていたものの、初期それぞれの国はおおまか平和を維持していました。
多少の争いはあったものの、まだまだこの時期は禍ツ神侵攻のダメージからの復興に必死だったのです。
**魔王軍侵攻
それは正に青天の霹靂でした。
最初の侵攻はルミナディアの北、白嵐の山脈の向こうからそれらは現れました。魔王軍の侵攻です。
ようやく人類が禍ツ神侵攻のダメージから回復し、繁栄を取り戻そうとしたタイミングで
それらの魔界の軍勢はルミナディアに攻め込んできました。
ルミナディアは他の世界に救援を求めましたが、それに応じたのはダーナディアのエルフと
アガルタのドワーフ達だけでした。何故なら、その他の国は内部の騒乱や分裂を警戒し
まだ積極的に動けるほどの安定を勝ち得ていなかったからです。
この時の救援の無視が、後々大きな傷となって人類の亀裂を生み出したともいえます。
何はともあれエルフやドワーフとの強力で魔王軍との宣戦を維持し、押し返せる見込みが立ったルミナディア
でしたが、そこでまた思わぬ事態が進行します。
それは魔王軍がティル・ナ・ノグの西とアガルタの西、それぞれに出現したということです。
まるで救援の隙を狙ったかのようなこの動きにエルフやドワーフ達は大いに動揺します。
当然ながら祖国を失うわけに行かず、エルフとドワーフは戦線を維持できず、急いで国へ戻ることとなります。
一気に勝利をつかみ取れるかと思われたルミナディアの戦線は一気に膠着します。
そして同時にまたもや死の砂漠から新たな魔王軍が現れ、ベリス都市国家群、ソルス=ベイ王国
そして東国アシハラに対して侵攻を開始したのです。
この侵攻に対する迎撃は熾烈を極めました。
魔王率いる魔界の軍勢は強く、神をなくした人類に対抗する力はあまりにも少なすぎたのです。
復興を遂げた国々は再度大きな被害を受け、多くの人類が死に、都市が焼かれました。
人々は滅亡を恐れ、神に祈りました。どうか見捨てず救って欲しいと。
神々はそれに応えました。それが現在神官達が行使している“奇跡”という力です。
信仰心の厚い神官、信徒達が奇跡という強い力を元に、魔王の軍勢への対抗を始めました。
そして同時に、事態に対応すべく魔術師達が重い腰を上げました。
魔術師は、神々から引き継いたその強大な魔術の力故に、その力を無闇に使わなかったのだとも言われます。
また別の説では単に身の危険を避け、その力を狙う輩から身を隠してきたのだという説もあります。
どちらにしろ人類は“奇跡”と“魔術”という二つの力を元に人類は魔王の勢力を押し返し始めます。
奇跡は多くの傷ついた人を癒しましたし、魔術は魔界の軍勢の一部を使役する事さえやってのけたのです。
そして最終的にこの侵攻はとある英雄達が、今回の侵攻の旗手であった魔王を倒します。
この討伐成功により人類は勢いづき、魔界の軍勢は総崩れを起こし、魔王侵攻は失敗します。
**人類同士の争い
戦争が終わり、人類は再びつかの間の平穏を取り戻します。
一時の戦争は共同体の結束を強めた為、多くの国が一時的に友好的な状態となりました。
しかしその平和な時代は長く続きません。
そのほころびの始まりは北の王国から始まりました。
内海の北に存在する神命王国は非常時に対応する為、一時的に強力な権限を持つ皇帝をたてていました。
戦後、その体制はもとの祭儀神官たちの合議制に戻ることはなく、続行されます。
多くの北の土地を荒らされ、農民を失った帝国は、復興を行うとともに、そのもてあました戦力の使い道を
肥沃な土地の拡大という方向に使うことを皇帝により決定されます。
その矛先となったのは先の大戦にて最初に救援要請を無視した二文化圏
特に国家単位としてはまとまりを欠く都市国家群でした。
神命帝国はその兵力を集中運用し、いくつかの都市国家を立て続けに落としていきます。
そして肥沃な土地と多くの奴隷を手に入れるのです。
これに対し当然ながら危機感を高まらせた都市国家群は警戒を強め、結束を図ります。
魔王侵攻の際に結ばれた都市国家同盟を再度結び、帝国へと対抗します。
しかしながら、整然としたまとまりを持ち、奇跡の担い手を要する帝国と
同盟を結べどもまとまりを持たず、かつ侵攻時に魔術師達を戦力としていた都市国家群では
到底同等な勝負など望むべくもありませんでした。
魔術師達は人と人の争いに自分達を利用されることを嫌いました。
しかしそれに対し社会秩序維持を優先するルミナス神官は戦争への参加を拒否しなかったのです。
都市国家群はソルス=ベイ王国に対し支援を求め、ソルス=ベイはルミナディアに対し
停戦の調整を行おうとしました。しかし、皇帝はその申し出を受けれませんでした。
これに対しソルス=ベイは割れます。わざわざ火事場に首を突っ込むべきではないという非戦派から
そもそも未来の脅威を見据えれば放って置くべきではないという主戦派、各自がそれぞれの見解で
参戦の是非を主張し、最終的には過激な主戦派が戦端を開き、否応なしに
ソルス=ベイも戦乱の最中に巻き込まれていきます。
この3国を巻き込んだ人類最初の大戦争が、歴史に記される“内海戦争”です。
内海を挟んだこれら3国の戦いは、この後度々の休戦を含みながら長く尾を引くことになります。
この中でいくつかの都市国家が滅び、誕生し、そしてソルス=ベイはついにその国体を崩壊させ分裂します。
また同時に東国アシハラでは、力をもった地方豪族達が実質上の権力を握り、事実上の内戦が始まります。
全体的にこの頃、世界は戦乱の嵐が吹き荒れていたと言っても過言ではないでしょう。
こうして小康状態と戦争を繰り返しながら、人はそれでも徐々に人口を増やしていきました。
新たな国が作られ、古き国が滅び、その繰り返しを経ながら、歴史を重ねました。
この後の歴史の契機は、帝国の崩壊でした。
一時期、その領土をベリス文化圏、ジオ文化圏の大半まで広げたルミナディア神命帝国ですが
巨大な帝国が現実の史実でその身を持ち崩したのと同様、分裂の憂き目を見ます。
それに合わせ、ジオ文化圏内ではソルス=ベイの正当な後継国を主張する戦争が勃発。
またベリス文化圏でも、帝国支配のようなことが起こらぬよう都市国家の統一を主張する機運が高まります。
大きな戦乱は今度は各地の小さな紛争へと変わっていきました。
その世界の状況を見ていたのか、あるいは見ていたわけではないのか、
機をつくように、三度世界に危機が訪れます。
**第二次魔王侵攻
それは再び死の砂漠よりやってきました。
しかもその規模は、もはや人が忘れかけた創世記の禍ツ神侵攻時の規模だったのではないか
とも言われており、観測者達の「魔物、砂漠を覆う濁流の如し」という台詞がその規模を物語っています。
死の砂漠に接する複数の国家はあっという間に飲み込まれ、ジオ文化圏の多くの国も滅亡の憂き目を見ました。
そしてすでに国内統一を終え、内地(大陸側)へと進出していたアシハラの領土圏や
ほぼ同時期に小大陸から大坑道を掘りぬいたアガルタのその坑道内へ、侵攻を開始します。
そうしてドワーフやアスラ文化圏の人類を巻き込み、戦争は激化します。
そもそもの原始文化圏であれば戦地と接していなかったルミナス文化圏ですが
魔王軍の侵攻と共に、そして未だ支配地として存在するベリスやジオ文化圏の国々に手が伸びれば
そうそう無関係をつらぬくことはできなくなります。ましてやルミナスの民は社会秩序に混乱をもたらし
人類の存続に警鐘を鳴らす魔王軍の存在を放って置くはずがありませんでした。
直ちに北の地より南征軍を結成し、魔王軍の動きに迎撃の動きをとっていきます。
しかしながらこの度の魔王軍の戦力は圧倒的であり、戦況は良くて拮抗・膠着
悲観的な見方をすれば非常にゆっくりとした人類側の消耗をもいえる状況となっていきました。
この長く辛い戦いの時代を人々は先の見えない暗闇の時代、“暗黒時代”と称します。
人類の反撃の機会が訪れたのは、やはり英雄の力によるものでした。
今度の英雄は直接魔王を討伐に向かったものではありません。
かの“結ぶ者”ズィンクは、当時歴史上の経緯からもはや犬猿の仲といっても良かったルミナディアの国々と
都市国家郡とジオ文化圏の国家のみならず、エルフ、ドワーフたち、東国人、そして獣人達をも
結びつけ、空前の大連合を成し遂げたのです。
しかもズィンクは伝説の存在であったジ・オルグの盟約の六竜のうちの二竜とも協力を取り付けたといいます。
人類はこの連合により、戦力を集中し、相手の懐へと切り込むことに成功しました。
そしてついに死の砂漠のその中心地に居を構えるという魔王の一人を討伐するにいたったのです。
人類の勝利は目前であり、このまま魔王の軍勢は駆逐されるかと思われました。
しかし運命の皮肉か、それは英雄ズィンクの死をきっかけに実現の可能性を失っていきます。
英雄の死は決してわかりやすい戦死などではなく、謎の多いものだったと言われています。
暗殺、謀殺、そういった噂も流れました。
というのもその後、各勢力の首脳部による戦後処理の話し合いが異様に難航を極めたからです。
この大連合が危ういバランスを保っていたのは、信頼を勝ち得ていたズィンクの存在によるところがありました。
だからこそこのズィンクの死とその後の混乱も何者かの企みではないかと囁かれました。
結局、真相は不明ではありますが、この後会議は物別れとなり、各国は各地に残る魔王の軍勢に対し
個別の対応を迫られることなり、かつそれぞれの領地紛争を残したままとなりました。
**新王の時代、東方大帝国
第二次魔王侵攻がうやむやのまま終息を向かえ、人々は再び復興の時代を迎えます。
とはいえ、その実大陸内部や僻地にまだ魔王領とでも呼ぶべき魔王の軍勢の拠点を残し
領地問題で火の粉を各国間に残したままの綱渡り的な平和ではありました。
その中で戦争による結束を利用し、ルミナス文化圏はそれぞれの諸国が連合を組むという形で
ルミナディア神聖連合国という体を成します。
同様にベリス文化圏も有事に備えるべく、都市国家の連邦制の道を模索し始めます。
対してジオ文化圏は諸王国が現在の形での統治を継続することで一致し、諸王国安定という平和を得ます。
もっとも顕著な動きがあったのは東国アシハラでしょう。
というのも、大陸内地までその支配を及ぼしていたアシハラですが、その内地が独立を試みたのです。
この独立には様々な動きが関わっていますが、主に原因とされるのは本国の指導者達が
第二次魔王侵攻の際に保身に走り、内地の人々に戦争を委ねた(言い換えれば押し付けた)
からだといわれています。
その証左かこの内地の国は当時最高の将軍といわれたハグン将軍が帝国の皇帝となっています。
この独立した帝国ヤマは、強力な軍事力を持つ国の一つでした。
そして新参の帝国らしくヤマ帝国は急速な拡大を目指し、戦争を開始します。
彼らは非常に高い機動力を持っており、その制圧はその当時の戦略の常識を塗り替え
次々と国を落とし、あるいは帰順させ、その勢力範囲を広げていきます。
ヤマ帝国はまるで多くの国を通過するように勢力圏の拡大を進めていきました。
その進路上にあった国は、ジオ文化圏、ベリス文化圏、そして果てはルミナス文化圏にまで到達しました。
帝国の勢力範囲は、史上最大のものに達し、歴史家達はこの帝国を東方大帝国と呼びます。
しかし、この東方大帝国ヤマの支配はそう長く続くことはありませんでした。
初代皇帝ハグンが戦地にて死没した後、帝国は分裂の憂き目を見ます。
後継者達はその覇を求めて争い、それに乗じた支配地の反乱もあり、急速な衰退を見せます。
**現代国家事情
帝国ヤマ解体の後、それぞれの地域は再び地域安定の方向へ向かいます。
ルミナディア神聖連合国は一部ヤマにより領地を奪われましたが、その崩壊後領地を取り戻し
現在宗教上の最高神官位である法王を中心としたルミナディア王国の再興の機運が高まっています。
その為なのか各国内に様々な思惑と動きが交錯しているような状況のようです。
ベリス文化圏では都市国家郡とヤマ帝国の遺物であるリシュウ朝ヤマとの間で緊張が高まっています。
都市国家郡は連邦化を進めていますが、そもそも生来のまとまらなさから難しい状況です。
近いうちにリシュウ朝ヤマとの間で戦争が起こるのではないか、というのがもっぱらの見解です。
ジオ文化圏においては諸王国が安定成立し、それぞれ領域不可侵を不文律としている状況です。
ただ、西南部にはやはり火種ともいえるグライ朝ヤマ、そして南部にはヤマ帝国があり緊張状態です。
さらにいえば東南部には魔王軍残党の拠点領域を抱えており、火種は尽きません。
アスラ文化圏では衰退したヤマ帝国に対し、アシハラが再統一を掲げた戦端を開きました。
ただ二国とも力のある国であることや、海を挟んでいること、また元々同国家ともいえる両者故に
戦いは長期化が予想されています。なにより未だヤマには天帝に対しての畏怖があり
攻め切れない部分を抱えているといわれます。
ディーバ文化圏において、アガルタのドワーフ達は第二次魔王侵攻時、苦慮の末封鎖した大坑道から
魔界の勢力を駆逐する為に未だ戦い続けています。その健闘むなしく大坑道はまだ危険な道筋です。
獣人達は第二次侵攻以後、それぞれの居住地域にて生活を守っています。
ダーナディアのエルフ達は相変わらずの静かな生活を送っています。
ただし、いくつかの森においては開墾する人間と森を守るエルフ達の軋轢が起こっているようです。
逆に他の人類にとってエルフ達が入植した領地は森の開墾が行えなくなるので困っているというわけですね。
世界には未だ争いの種と魔界の影、そして様々な危険が存在しているようです。
神々が天界に去った後、人類は人類自身の力のみで国を維持し、栄えさせることになりました。
しかしながら神により権力を引き継いだ者達の国の運営は、不完全なる人間の業ゆえか
平和な世界とは行かず、世界は戦乱の渦に巻き込まれていきます。
まずは、神々が去った後、世界がどのように秩序を維持しようとしたのか、から見て行きましょう。
**人類国家の誕生
それでは大まかな各神代六国の変遷を見て行きましょう。
ルミナスが去った後の光の国ルミナディアは、神より後継を任された祭儀神官達が役割を引き継ぎ
神の命令を受け作られた国=神命国家ルミナディアとして国体を維持します。
神も天使も存在しない世界で、文明は大きな混乱を余儀なくされますが、
祭儀神官達が合議制をもち、既存の秩序構造を保つことで社会はその働きを維持しました。
ジ・オルグなき後のソルス=ベイも、大祭司長が王と身分を改め、王国として生まれ変わります。
しかしながらそもそも自由な気風があるこのジオ文化圏においては、地方の有力な権力者達が
己の地位と支配権を主張し、ソルス=ベイはしばらくその平定と併合に四苦八苦することとなります。
分裂とまでは行きませんが、この時期のソルス=ベイはまとまったひとつの国というにはあまりにも
方針がまとまらず、地方支配が強く存在していました。
ベリスが去った後のエリシュオンの分裂は非常に顕著なものでした。
もともとがベリス神という指導者の下結束していた各都市は分裂し、エリシュオンという国体は消滅。
今後長らくベリス文化圏は複数の都市から最低1都市で形成される都市国家文化圏となっていきます。
都市をベリスの下で収めていた人間が王となり、それぞれの都市を治めたのです。
アスラディオの残したアシハラは、特に混乱がありませんでした。
というのもアスラディオは人間の間に直系の血筋の子孫を残しており
その子孫が王として国を引き継いだのです。
このアスラディオの子孫が、後に天帝と呼ばれる存在になります。
ディーバ・ダグダなき後のディーバ文化圏は、二つの勢力に分化しました。
元々の地中都市の住人であったドワーフ達と、後からディーバ文化圏の仲間となった獣人たちです。
元々生活圏を異にする彼らは、敵対するわけではないものの一つの国としてやっていくには違いすぎました。
ドワーフ達はアガルタを中心に、自ら達の中から立てた王を中心として王国を形成しました。
獣人たちはそれに対し、自らが崇める獣神ごとに部族を形成し、地にそれぞれのコミュニティを形成しました。
ダーナディアが世界樹と同化した後も、エルフ達は特に動揺することはなく
もっとも年長のものを長老とし、静かな生活を維持しました。
彼らにとって文化とは変えたり進化するものではなく、自然を維持するものだからです。
ただ、ダーナディア亡き後も、各地の森への入植は続けられました。
それぞれ問題は抱えていたものの、初期それぞれの国はおおまか平和を維持していました。
多少の争いはあったものの、まだまだこの時期は禍ツ神侵攻のダメージからの復興に必死だったのです。
**魔王軍侵攻
それは正に青天の霹靂でした。
最初の侵攻はルミナディアの北、白嵐の山脈の向こうからそれらは現れました。魔王軍の侵攻です。
ようやく人類が禍ツ神侵攻のダメージから回復し、繁栄を取り戻そうとしたタイミングで
それらの魔界の軍勢はルミナディアに攻め込んできました。
ルミナディアは他の世界に救援を求めましたが、それに応じたのはダーナディアのエルフと
アガルタのドワーフ達だけでした。何故なら、その他の国は内部の騒乱や分裂を警戒し
まだ積極的に動けるほどの安定を勝ち得ていなかったからです。
この時の救援の無視が、後々大きな傷となって人類の亀裂を生み出したともいえます。
何はともあれエルフやドワーフとの強力で魔王軍との宣戦を維持し、押し返せる見込みが立ったルミナディア
でしたが、そこでまた思わぬ事態が進行します。
それは魔王軍がティル・ナ・ノグの西とアガルタの西、それぞれに出現したということです。
まるで救援の隙を狙ったかのようなこの動きにエルフやドワーフ達は大いに動揺します。
当然ながら祖国を失うわけに行かず、エルフとドワーフは戦線を維持できず、急いで国へ戻ることとなります。
一気に勝利をつかみ取れるかと思われたルミナディアの戦線は一気に膠着します。
そして同時にまたもや死の砂漠から新たな魔王軍が現れ、ベリス都市国家群、ソルス=ベイ王国
そして東国アシハラに対して侵攻を開始したのです。
この侵攻に対する迎撃は熾烈を極めました。
魔王率いる魔界の軍勢は強く、神をなくした人類に対抗する力はあまりにも少なすぎたのです。
復興を遂げた国々は再度大きな被害を受け、多くの人類が死に、都市が焼かれました。
人々は滅亡を恐れ、神に祈りました。どうか見捨てず救って欲しいと。
神々はそれに応えました。それが現在神官達が行使している“奇跡”という力です。
信仰心の厚い神官、信徒達が奇跡という強い力を元に、魔王の軍勢への対抗を始めました。
そして同時に、事態に対応すべく魔術師達が重い腰を上げました。
魔術師は、神々から引き継いたその強大な魔術の力故に、その力を無闇に使わなかったのだとも言われます。
また別の説では単に身の危険を避け、その力を狙う輩から身を隠してきたのだという説もあります。
どちらにしろ人類は“奇跡”と“魔術”という二つの力を元に人類は魔王の勢力を押し返し始めます。
奇跡は多くの傷ついた人を癒しましたし、魔術は魔界の軍勢の一部を使役する事さえやってのけたのです。
そして最終的にこの侵攻はとある英雄達が、今回の侵攻の旗手であった魔王を倒します。
この討伐成功により人類は勢いづき、魔界の軍勢は総崩れを起こし、魔王侵攻は失敗します。
**人類同士の争い
戦争が終わり、人類は再びつかの間の平穏を取り戻します。
一時の戦争は共同体の結束を強めた為、多くの国が一時的に友好的な状態となりました。
しかしその平和な時代は長く続きません。
そのほころびの始まりは北の王国から始まりました。
内海の北に存在する神命王国は非常時に対応する為、一時的に強力な権限を持つ皇帝をたてていました。
戦後、その体制はもとの祭儀神官たちの合議制に戻ることはなく、続行されます。
多くの北の土地を荒らされ、農民を失った帝国は、復興を行うとともに、そのもてあました戦力の使い道を
肥沃な土地の拡大という方向に使うことを皇帝により決定されます。
その矛先となったのは先の大戦にて最初に救援要請を無視した二文化圏
特に国家単位としてはまとまりを欠く都市国家群でした。
神命帝国はその兵力を集中運用し、いくつかの都市国家を立て続けに落としていきます。
そして肥沃な土地と多くの奴隷を手に入れるのです。
これに対し当然ながら危機感を高まらせた都市国家群は警戒を強め、結束を図ります。
魔王侵攻の際に結ばれた都市国家同盟を再度結び、帝国へと対抗します。
しかしながら、整然としたまとまりを持ち、奇跡の担い手を要する帝国と
同盟を結べどもまとまりを持たず、かつ侵攻時に魔術師達を戦力としていた都市国家群では
到底同等な勝負など望むべくもありませんでした。
魔術師達は人と人の争いに自分達を利用されることを嫌いました。
しかしそれに対し社会秩序維持を優先するルミナス神官は戦争への参加を拒否しなかったのです。
都市国家群はソルス=ベイ王国に対し支援を求め、ソルス=ベイはルミナディアに対し
停戦の調整を行おうとしました。しかし、皇帝はその申し出を受けれませんでした。
これに対しソルス=ベイは割れます。わざわざ火事場に首を突っ込むべきではないという非戦派から
そもそも未来の脅威を見据えれば放って置くべきではないという主戦派、各自がそれぞれの見解で
参戦の是非を主張し、最終的には過激な主戦派が戦端を開き、否応なしに
ソルス=ベイも戦乱の最中に巻き込まれていきます。
この3国を巻き込んだ人類最初の大戦争が、歴史に記される“内海戦争”です。
内海を挟んだこれら3国の戦いは、この後度々の休戦を含みながら長く尾を引くことになります。
この中でいくつかの都市国家が滅び、誕生し、そしてソルス=ベイはついにその国体を崩壊させ分裂します。
また同時に東国アシハラでは、力をもった地方豪族達が実質上の権力を握り、事実上の内戦が始まります。
全体的にこの頃、世界は戦乱の嵐が吹き荒れていたと言っても過言ではないでしょう。
こうして小康状態と戦争を繰り返しながら、人はそれでも徐々に人口を増やしていきました。
新たな国が作られ、古き国が滅び、その繰り返しを経ながら、歴史を重ねました。
この後の歴史の契機は、帝国の崩壊でした。
一時期、その領土をベリス文化圏、ジオ文化圏の大半まで広げたルミナディア神命帝国ですが
巨大な帝国が現実の史実でその身を持ち崩したのと同様、分裂の憂き目を見ます。
それに合わせ、ジオ文化圏内ではソルス=ベイの正当な後継国を主張する戦争が勃発。
またベリス文化圏でも、帝国支配のようなことが起こらぬよう都市国家の統一を主張する機運が高まります。
大きな戦乱は今度は各地の小さな紛争へと変わっていきました。
その世界の状況を見ていたのか、あるいは見ていたわけではないのか、
機をつくように、三度世界に危機が訪れます。
**第二次魔王侵攻
それは再び死の砂漠よりやってきました。
しかもその規模は、もはや人が忘れかけた創世記の禍ツ神侵攻時の規模だったのではないか
とも言われており、観測者達の「魔物、砂漠を覆う濁流の如し」という台詞がその規模を物語っています。
死の砂漠に接する複数の国家はあっという間に飲み込まれ、ジオ文化圏の多くの国も滅亡の憂き目を見ました。
そしてすでに国内統一を終え、内地(大陸側)へと進出していたアシハラの領土圏や
ほぼ同時期に小大陸から大坑道を掘りぬいたアガルタのその坑道内へ、侵攻を開始します。
そうしてドワーフやアスラ文化圏の人類を巻き込み、戦争は激化します。
そもそもの原始文化圏であれば戦地と接していなかったルミナス文化圏ですが
魔王軍の侵攻と共に、そして未だ支配地として存在するベリスやジオ文化圏の国々に手が伸びれば
そうそう無関係をつらぬくことはできなくなります。ましてやルミナスの民は社会秩序に混乱をもたらし
人類の存続に警鐘を鳴らす魔王軍の存在を放って置くはずがありませんでした。
直ちに北の地より南征軍を結成し、魔王軍の動きに迎撃の動きをとっていきます。
しかしながらこの度の魔王軍の戦力は圧倒的であり、戦況は良くて拮抗・膠着
悲観的な見方をすれば非常にゆっくりとした人類側の消耗戦ともいえる状況となっていきました。
この長く辛い戦いの時代を人々は先の見えない暗闇の時代、“暗黒時代”と称します。
人類の反撃の機会が訪れたのは、やはり英雄の力によるものでした。
今度の英雄は直接魔王を討伐に向かったものではありません。
かの“結ぶ者”ズィンクは、当時歴史上の経緯からもはや犬猿の仲といっても良かったルミナディアの国々と
都市国家郡とジオ文化圏の国家のみならず、エルフ、ドワーフたち、東国人、そして獣人達をも
結びつけ、空前の大連合を成し遂げたのです。
しかもズィンクは伝説の存在であったジ・オルグの盟約の六竜のうちの二竜とも協力を取り付けたといいます。
人類はこの連合により、戦力を集中し、相手の懐へと切り込むことに成功しました。
そしてついに死の砂漠のその中心地に居を構えるという魔王の一人を討伐するにいたったのです。
人類の勝利は目前であり、このまま魔王の軍勢は駆逐されるかと思われました。
しかし運命の皮肉か、それは英雄ズィンクの死をきっかけに実現の可能性を失っていきます。
英雄の死は決してわかりやすい戦死などではなく、謎の多いものだったと言われています。
暗殺、謀殺、そういった噂も流れました。
というのもその後、各勢力の首脳部による戦後処理の話し合いが異様に難航を極めたからです。
この大連合が危ういバランスを保っていたのは、信頼を勝ち得ていたズィンクの存在によるところがありました。
だからこそこのズィンクの死とその後の混乱も何者かの企みではないかと囁かれました。
結局、真相は不明ではありますが、この後会議は物別れとなり、各国は各地に残る魔王の軍勢に対し
個別の対応を迫られることなり、かつそれぞれの領地紛争を残したままとなりました。
**新王の時代、東方大帝国
第二次魔王侵攻がうやむやのまま終息を向かえ、人々は再び復興の時代を迎えます。
とはいえ、その実大陸内部や僻地にまだ魔王領とでも呼ぶべき魔王の軍勢の拠点を残し
領地問題で火の粉を各国間に残したままの綱渡り的な平和ではありました。
その中で戦争による結束を利用し、ルミナス文化圏はそれぞれの諸国が連合を組むという形で
ルミナディア神聖連合国という体を成します。
同様にベリス文化圏も有事に備えるべく、都市国家の連邦制の道を模索し始めます。
対してジオ文化圏は諸王国が現在の形での統治を継続することで一致し、諸王国安定という平和を得ます。
もっとも顕著な動きがあったのは東国アシハラでしょう。
というのも、大陸内地までその支配を及ぼしていたアシハラですが、その内地が独立を試みたのです。
この独立には様々な動きが関わっていますが、主に原因とされるのは本国の指導者達が
第二次魔王侵攻の際に保身に走り、内地の人々に戦争を委ねた(言い換えれば押し付けた)
からだといわれています。
その証左かこの内地の国は当時最高の将軍といわれたハグン将軍が帝国の皇帝となっています。
この独立した帝国ヤマは、強力な軍事力を持つ国の一つでした。
そして新参の帝国らしくヤマ帝国は急速な拡大を目指し、戦争を開始します。
彼らは非常に高い機動力を持っており、その制圧はその当時の戦略の常識を塗り替え
次々と国を落とし、あるいは帰順させ、その勢力範囲を広げていきます。
ヤマ帝国はまるで多くの国を通過するように勢力圏の拡大を進めていきました。
その進路上にあった国は、ジオ文化圏、ベリス文化圏、そして果てはルミナス文化圏にまで到達しました。
帝国の勢力範囲は、史上最大のものに達し、歴史家達はこの帝国を東方大帝国と呼びます。
しかし、この東方大帝国ヤマの支配はそう長く続くことはありませんでした。
初代皇帝ハグンが戦地にて死没した後、帝国は分裂の憂き目を見ます。
後継者達はその覇を求めて争い、それに乗じた支配地の反乱もあり、急速な衰退を見せます。
**現代国家事情
帝国ヤマ解体の後、それぞれの地域は再び地域安定の方向へ向かいます。
ルミナディア神聖連合国は一部ヤマにより領地を奪われましたが、その崩壊後領地を取り戻し
現在宗教上の最高神官位である法王を中心としたルミナディア王国の再興の機運が高まっています。
その為なのか各国内に様々な思惑と動きが交錯しているような状況のようです。
ベリス文化圏では都市国家郡とヤマ帝国の遺物であるリシュウ朝ヤマとの間で緊張が高まっています。
都市国家郡は連邦化を進めていますが、そもそも生来のまとまらなさから難しい状況です。
近いうちにリシュウ朝ヤマとの間で戦争が起こるのではないか、というのがもっぱらの見解です。
ジオ文化圏においては諸王国が安定成立し、それぞれ領域不可侵を不文律としている状況です。
ただ、西南部にはやはり火種ともいえるグライ朝ヤマ、そして南部にはヤマ帝国があり緊張状態です。
さらにいえば東南部には魔王軍残党の拠点領域を抱えており、火種は尽きません。
アスラ文化圏では衰退したヤマ帝国に対し、アシハラが再統一を掲げた戦端を開きました。
ただ二国とも力のある国であることや、海を挟んでいること、また元々同国家ともいえる両者故に
戦いは長期化が予想されています。なにより未だヤマには天帝に対しての畏怖があり
攻め切れない部分を抱えているといわれます。
ディーバ文化圏において、アガルタのドワーフ達は第二次魔王侵攻時、苦慮の末封鎖した大坑道から
魔界の勢力を駆逐する為に未だ戦い続けています。その健闘むなしく大坑道はまだ危険な道筋です。
獣人達は第二次侵攻以後、それぞれの居住地域にて生活を守っています。
ダーナディアのエルフ達は相変わらずの静かな生活を送っています。
ただし、いくつかの森においては開墾する人間と森を守るエルフ達の軋轢が起こっているようです。
逆に他の人類にとってエルフ達が入植した領地は森の開墾が行えなくなるので困っているというわけですね。
世界には未だ争いの種と魔界の影、そして様々な危険が存在しているようです。