ノスゴスの歴史 第二部:歴史改変

本ページでは、SR2(ソウルリーバー2)の物語を簡単に追いつつ、主人公達が起こした歴史改変の内実を明らかにする。ただ最初に、物語を追うだけでは分かりにくいケインの目的ソウルリーバーの歴史を確認しておく。その後、タイムトラベル(30 BC→100 AC→500 BC)に沿って、年表2~4の各時代における主人公達の活躍を見ていこう。


目次


序:ケインの目的

 

  SR2の出来事は、基本的にノスゴスの過去と未来を知るケインの計画の元で(モビウスらの妨害はあれど)進行していく。ラジエルは彼の狙いが掴みきれぬまま、新たに得られた過去の知識に翻弄されつつ、気付いたら歴史を改変していた、というのが実態である。従って、これ以後の物語を理解するためには、首謀者であるケインの目的を最初に把握しておくのが簡便であろう。

  ケインの最終目的は、調和の子孫としての運命を取り戻し、ノスゴスに調和と秩序をもたらすことである。しかし彼自身は、生まれた時から腐敗の影響を受け、結果、ノスゴスを崩壊させる選択肢を選んでしまった。かといって、もう一つの選択肢(自己犠牲)も、モビウスの策略によりヴァンパイアの消滅につながっていた。当時のケインはその意味を知らなかったが、今考えれば、この2つの選択肢を突きつけられた時点で既に詰んでいたのである。この勝負をひっくり返すためには、第三の選択肢を用意する必要がある。しかし、それがいかなるものであるにせよ、まずは歴史を変えなければならない。そして、ケインが腐敗から免れた時、初めて彼は調和の子孫としての真の運命を取り戻し、果たすべき役割が明らかになるだろう。ケインはそう推測したのである。

  そして、歴史を改変するためには、2つのソウルリーバーが出会う必要がある。このことは、自分がウィリアム王を殺害した時の状況とそれによって歴史改変が生じた事実から推察される。2つのソウルリーバーが出会う時、歴史を改変するほどに強力なパラドクスが生じうる。

  さらにもう一つ、自分が予言通り「調和の子孫」であるなら、舞台には役者が欠けている。「ヴァンパイアの闘士」である。ケインはラジエルこそ予言されし英雄であると信じていた。ラジエルは一度ケインに破壊され、再創造されたことによって自由意志を持っている。それゆえ、歴史を改変するための重要な協力者となるはずである。

  ところが、ケインの知る限りでも、現状(年表2)の未来(タイムトラベル先の過去で起こる出来事)には既に2つの問題があった。

 

  1. 30 BCにおいて、ラジエルは物体のソウルリーバーを使い、ケインを殺害する
  2. 500 BCにおいて、ラジエルは物体のリーバーに魂を吸収され剣の虜囚となる。結果、ソウルリーバーが完成する

 

もちろん両方とも大問題であるが、特に根が深いのは2の方である。未来からやってきたケインの生死は、それ自体ではそれまでの歴史といささかの関係もない。しかし、長年(0 B/AC以降)ケインが愛用してきたソウルリーバーは、もちろん事実として存在していた。しかしその誕生には未来からやってきたラジエルの消滅が不可欠だったのである。ソウルリーバーが既に存在していた以上、ラジエルはこの時点で消滅しなければならない。

  それではここで一端ソウルリーバーの歴史を辿り、ラジエルとソウルリーバーの関係を明らかにしておこう。

 

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ソウルリーバーの歴史

  通史で確認したように、救世の剣は最初からソウルリーバーだったわけではない。最初は吸血剣リーバーとして鍛造されたのである。そしてリーバーは、500 BCへやってきた未来のラジエルの魂を吸収し、彼の「魂を奪う者(ソウルリーバー)」としての本性を我がものとすることで初めて魂を奪う剣ソウルリーバーとして完成する。それが後にウィリアム王やケインの手に渡ったのである。

※ここで注意しておきたいのは、「だとしたら、“本当に最初の” 歴史においては、ソウルリーバーは存在しなかったのでは?だって未来のラジエルがやってくるまではブラッドリーバーでしかなかったんだから」と考える必要はないということ。概論で確認したように、ノスゴスにおける時の流れは、一歩一歩先へ進んでいくものではなく、最初から全体がごろんと存在するものである。未来のラジエルが過去に戻ってくる定めであったなら、その過去のある時点に未来のラジエルが存在することは常に必然であり、最初も次もない。

  では、かくしてソウルリーバーの虜囚となったラジエル(以下、虜囚ラジエル)はどうなるのか。彼が剣から解放されるのは、遙か未来、2000 ACのことである。第一部で見たように、ケインがラジエルに物体のソウルリーバーを振り下ろし、砕け散った瞬間だ。なぜ砕けたかと言えば、ここでソウルリーバーがラジエルの魂を吸収するということは、虜囚ラジエルがラジエルの魂を、つまり、自分の魂を食らうことを意味するからである。さらに、ラジエルがケインと共に過去へ行くこともなくなり、それはすなわち、ソウルリーバーが誕生しなくなるということを意味する。剣の自己保存なのか、剣の虜囚ラジエルの意志なのか、はたまた同一性を保とうとする歴史の力なのかは分からない。いずれにせよ、ソウルリーバーは自らの魂の消滅を拒み、砕け散ったのである。そして剣の虜囚ラジエルは霊体の剣として解放され、同じ魂を持つラジエルと共生関係に入る。

  (ここからはSR2の内容なので、詳しくは本ページ最後を参照)そしてラジエルは、タイムトラベルを繰り返し、500 BCにおいてサラファンだった人間ラジエルを殺害する。死んだ人間ラジエルは、第一部で見たように、やがてケインによってヴァンパイアとして甦り、破壊され、エルダーゴッドによって「魂を食らう者」として再び甦ることになる。それゆえ人間ラジエルが死んだ時点で、ソウルリーバー完成の前提は既に整えられ、未来からきたラジエルの役割は終わった。そこで、ラジエルに取り憑いていた霊体のソウルリーバー(虜囚ラジエル)は、物体のリーバーへと流れ込み、操り、ラジエルを襲わせる(吸血剣リーバーには魂を食らう能力などないから、この協力は必須)。かくしてラジエルはリーバーに取り込まれ、ソウルリーバーは完成する。

  つまり、「ソウルリーバーが存在する」という既成事実は、この長い歴史のループの上に成り立っているのである。そして、そのループを繰り返すことが、ラジエルの呪われた運命だったのだ。

※ちなみにソウルリーバーが完成した後、前任の虜囚ラジエル(霊体のソウルリーバー)はどうなったのか?通説では、任務も居場所も無くなり、精神界へと消えたということらしい。なお歴史改変後のDefianceでは別の答えが用意されている。詳細は第三部。

 

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  話をケインの狙いに戻そう。未来を知るケインは、こうしたラジエルとソウルリーバーの関係についても知っている。しかし、ラジエルが剣に閉じ込められてしまったのでは、もはや彼が自由意志を行使し、ケインの協力者となることもできなくなる。それゆえ、ケインは500 BCにおいて是が非でもラジエルを救出しなければならない(2の防止)。しかしそのためには、まず自分が30 BCにおいてラジエルに殺されるのを回避しなくてはならない(1の防止)。従って、この2つこそ、SR2におけるケインの最重要目標なのである。

  もちろんケインはこうした歴史の改変が容易だとは思っていない。1に関しては、ラジエルをなんとか説得し、自由意志を発揮させ、ケインを殺すのを押しとどめなければならない。2に関しては、ケイン自身の意志は最初からラジエルを助けることだからよいのだが、成功するか失敗するかは時の運である。いずれも、針の穴を通すような成功率しかない。そして、歴史は繰り返されている以上、無限に失敗してきたことは間違いない。ゲーム中では、全てが成功したケースを描いているに過ぎないのだ。ケインは「幾度も投げ続けていれば、いつかコインが地面に立つやもしれぬ」と表現している。もちろん、本当に「コインが立った」と言えるのは、ノスゴスに秩序が戻った時であるし、この改変が世界にどのような変化をもたらすのかケインにも全く予想できていないのだが。

  では以上を踏まえて、物語を簡単に追っていこう。年代を記しておくので、その当時の歴史が知りたい場合は第一部や年表を参照のこと。


SR2:30 BC(年表2→3)

 

  • モビウスとの出会い(サラファン砦)

(画像:SR2より)

  ラジエルはケインを追って過去にやってきたはずだが、目の前にいるのは時の守護者モビウス。タイムトラベル中のラジエルをかっさらい、空間的に移動させ、サラファン砦へと連れてきたのだ。その目的は、ラジエルにかつてサラファンだった「栄光」を直視させ、ヴァンパイアへと「堕落」させたケインへの憎悪を強めさせることである。モビウスにとって、ラジエルは予定通りケインを殺さねばならない。ただ彼の自由意志が気掛かりなので、こういう涙ぐましい努力をしているわけである。

  それから「モビウスの杖」が初登場。この杖はヴァンパイアを無力化する力を持っている。さらにラジエルの霊体ソウルリーバーも無効化されることが確認された。その理由も、杖の出所も全シリーズ通して不明であるが、要所で役立てられている(最初は先史時代における古代ヴァンパイアへの反乱時。第一部参照)。

※ほとんど嘘八百を並べ立てるモビウスだが、ラジエルが「(ノスゴスの)救い主(redeemer)にして破壊者(destroyer)」だというのは真実である。この言葉は、Defianceで明らかになるラジエルの本性を正確に表している。
 

  • 折れたソウルリーバーの修復(礼拝堂)

(画像:SR2より)

  ラジエルは砦の中で、故ウィリアム王の礼拝堂に辿り着く。彼はそこで時の歪みを感じつつ、折れたソウルリーバーを発見する。これはこの時点から20年前(50 BC)、ウィリアム王とケインが戦った結果である(BO1。第一部参照)。ラジエルが折れた剣に近付くと、共生関係にあった霊体ソウルリーバーが剣へと流れ込み、ラジエルの魂エネルギーを使って剣を修復する。そしてこの時点で、霊体ソウルリーバーは、ラジエルにとって「共生関係にある武器」ではなく「意識を持つ寄生物」となる。物体ソウルリーバーと出会ったことが原因なのは確かだが、そのメカニズムは判然としない。いずれにせよ、意識を持った霊体ソウルリーバーの目的が「ラジエルを犠牲にして物体ソウルリーバーを完成させること」「それまではラジエルと共闘すること」であるのは間違いない。

※この修復も歴史上の必然である。もし剣が折れたままだったとしたら、30年後(0 B/AC)にケインがソウルリーバーを入手して振り回すことなどできないからだ。そしてケインはその剣を持って過去へ戻り、ウィリアム王を殺して彼のソウルリーバーを折ることになる。ラジエルの介在と修復がなければ、こんな事は起こりえない。

  また、ラジエルは剣修復後に現れたモビウスを殺すと脅しており、モビウスも怯えている。もちろん現状の歴史では、ラジエルはモビウスを殺さない(だからケインはBO1において彼に翻弄される)。しかし、ラジエルとソウルリーバーが同じ場所に存在するこの状況であれば、自由意志を持つラジエルは歴史を変えてモビウスを殺すこともできるのだ。もし本当に殺していれば、未知の歴史改変が生じていたことだろう。モビウスはラジエルを説得するため、自分もエルダーゴッドに仕えていると告げ、ラジエルは彼らの繋がりを初めて認識する。
 

  • ケインとの再会/柱の腐敗(ノスゴスの柱)

  砦を脱出したラジエルは、モビウスの言葉に従い柱の地へ向かい、ようやくケインと再会する。二人は柱が腐敗する瞬間を目撃。ケインは、闇の勢力(dark forces)による柱の腐敗、自分の歪められた運命、ラジエルの存在と第三の選択肢の可能性について語る。そして、ラジエルに自分の運命を見つけ出せと助言する。ラジエルはケインへの復讐を先延ばしにし、過去の真実を知るために旅立つ。

※闇の勢力というのはもちろんヒルデンのことである(第一部参照)。

 

  • 古代の壁画/エルダーゴッドとの再会(柱の地下)

(画像:SR2より)

  ラジエルは、柱の地下にて、古代に関する知識の一端に触れる。古代の青き翼の一族(古代ヴァンパイア)と救世の剣リーバーを描いた壁画を発見し、一体何を意味しているのかと頭を悩ませる。

  そんな折、エルダーゴッドが姿を現し、「まやかしだ、騙されるな」と忠告する。そして相変わらずケインの殺害を主張する。しかし、ラジエルはエルダーゴッドへの不信を示し、ケインを殺すかどうかは自分自身で決めると強調して立ち去る。

※エルダーゴッドは時間を超越しているので、ラジエルのことを覚えている。

 

☆「闇の炉(Dark Forge)」を解放。炉を解放すると、ラジエルはその炉の属性を霊体のソウルリーバーに付与することができるようになる。属性が付与されたソウルリーバーは、特定の扉を開ける鍵となる。

 

  • ヴォラドールとの出会い(沼)

(画像:SR2より)

  ラジエルはヴァンパイア・ヴォラドールと初めて出会う。彼はラジエルの正体や柱の腐敗との関係に興味を抱いており、また、ラジエルが「古代(ヴァンパイア)の遺跡」の謎を次々に解き明かしていったことに驚いている。しかし、ラジエルがヴァンパイアの救世主だとしても、来るのが遅すぎたと言う。なぜなら、救世主の到来を待ち続けていた、古代ヴァンパイア最後の生き残りにしてリーバーの守護者ヤーノス・オードレンは、約500年前(正確には470年前の500 BC)にサラファンの餌食となったからだ。

  ラジエルは率直なヴォラドールに信頼感を覚え、ヤーノスに興味を持つ。モビウスの時間転移装置を利用してさらに過去へと旅するため、再びサラファン砦に戻る。
 

☆「光の炉(Light Forge)」を解放。

 

  • ケインの助命(礼拝堂) ※第二のパラドクスと歴史改変

(画像:SR2より)

  ラジエルはウィリアム王の礼拝堂にて、再びケインと出会う。ケインは常に同一であろうとする歴史の力について語り、歴史を改変するためには、2つのソウルリーバーが出会った時に生じる強力なパラドクス、時の歪みが必要だと指摘する。そして、ソウルリーバーをラジエルに渡す。

  ラジエルは物体のソウルリーバーでケインをおどかすが、同時に、剣がケインの方へと引っ張られるのを感じる。ケインは「それこそ歴史の力だ」と言う。ラジエルはいつもここでケインを殺害してきた。だから今度も、ラジエルはケインを殺さねばならない。

  しかし今回、ラジエルは自由意志を発揮して歴史に立ち向かい、かろうじてその矛先を逸らす。すると突然、二人は時空の震動を感じる。ラジエルの行動は定められた歴史とは異なる結果を生んだ。このままではパラドクスになる。それゆえ、歴史は「ラジエルがケインを殺さなかった」という事実を受け入れた上で、それが以降の出来事と矛盾を来さぬよう、歴史の流れを修正したのである(※ここで年表は2から3へ移る)。

  ラジエルは、ケインが期待したとおり、自由意志を発揮して彼を救ったのだ。これで第一の目的は果たされたことになる。次はケインがこの機会を生かし、ラジエルを救わなければならない。

 

  • タイムトラベルとモビウスの妨害(サラファン砦)

  ラジエルはヤーノスと出会うため、モビウスを脅迫し、もっと過去に行かせろと要求する。モビウスは不承不承と言った風情で指示に従う。ただし、こっそりと行き先を未来に指定する。ラジエルは期待に反し、現時点から130年後(100 AC)のノスゴスへと旅立つことになる。


SR2:100 AC(年表3)

 

  • 荒廃した世界とモビウスの幻影(サラファン砦)

  モビウスの狙いは明白である。柱崩壊後の荒廃した世界を見せつけ、ケインを生かしたままにすることがいかに危険かをラジエルに示すためだ。そして幻影として現れ、ラジエルがケインを助命したことをなじる。しかし、ラジエルはその論理の欠陥を指摘する。元々世界が荒廃したのは過去のケインが犠牲を拒否したからであり、未来のケインを殺そうが殺すまいが関係ないだろうと。全くその通り。まあ一応、過去改変が悪い具合に進めば世界が一層荒廃する可能性はあるが。

  ただし、後に明らかになるように、モビウスにはもう一つ隠れた狙いがある。そしてそのことにラジエルは全く気付かない。

 

  • アリエルの亡霊(崩壊したノスゴスの柱)

  この時代でも相変わらずケインの選択と自分の身の上を嘆いている。しかしラジエルは既に、柱の腐敗が守護者自身の招いた闇の勢力によるものであり、それが波及してケインの最終選択へと繋がったことを知っている。また、ケインが自分を犠牲にしていたら、荒廃は一層ひどくなっていた可能性があることも。それらの点についてアリエルを論難し、立ち去る。

 

  • エルダーゴッドへの反抗(柱の地下)

  柱の地下で再びエルダーゴッドと出会う。しかし、世界の荒廃にもかかわらず、エルダーゴッドは130年前よりも成長していた。ラジエルは不信感をこの上なく募らせ、ついに「世界の奥底に潜む寄生虫」だと断じる。

※ところで、エルダーゴッドが成長していた理由は判然としない。世界の荒廃によって死んだ多くの魂を貪り食った結果かもしれないが、世界の人口が減れば、運命の車輪に従って生と死を繰り返す魂も減るはずである。従って、もしエルダーゴッドが本当に運命の車輪の中心であるなら、荒廃したノスゴスで生き生きとしているのはおかしい。それゆえ、エルダーゴッドは運命の車輪に寄生し、生と死を繰り返す魂を横からかっさらっている、という寄生説はかなり信憑性が高い。だいたい、「魂を貪り食う」ということがどういうことなのかよく分からない。エルダーゴッドに言わせれば、生によって付着した汚れを取り去っている、ということなのだろうが。この点は未解決なままである。

 

  • ケインとの再会(ヤーノスの隠所の外)

  やはりラジエルを追ってきたケイン。彼は「ヤーノスは確かにお前の運命の鍵を握っている」「我々は、悪しき勢力(malevolent forces)にとっても、歴史にとっても、苛立ちの種(irritants)だ。気をつけろ」と告げて立ち去る。

  ここでケインの言う「悪しき勢力」とは、ヒルデンのことでもあり、エルダーゴッドのことでもあるようだ。そしてモビウスはその傀儡であると。ケインはエルダーゴッドの実態を知らないので、おそらく混同がある。事実としては、エルダーゴッドとヒルデンはむしろ敵対関係にあり、モビウスはエルダーゴッドの従僕である。

  そして、この時代にラジエルを襲ってくる敵は悪魔である。つまり、ヒルデンが悪魔界から送り込んできていることになる。こんなことが可能なのは、柱が崩壊しており、次元の亀裂があちこちに出来ているからである(もちろんその程度の亀裂ではヒルデン種族自身は通れない)。

※ちなみに、なぜケインは正確にラジエルを追跡できるのだろうか。一番有りそうなのは、やはり歴史を知っているからだろう。しかしケインに知り得たのは年表2の歴史だけである。そうするとラジエルは、ケインを殺した歴史改変を起こさなかった場合でも、やはりこの時代へやってきたことになる。送ったのはモビウス以外にありえない。しかし、その場合ケインは死んでいるのだから、憎悪をかき立てさせる必要はない。ではモビウスの動機は何か?おそらくここで「空気の炉」を解放させるためである。そうしないと、ラジエルは過去に遡った時、ヤーノスの元へと辿り着くことが出来ない。そこには空気の属性を帯びたソウルリーバーでしか開けない扉が存在するからだ。そしてモビウスは是が非でもラジエルをヤーノスの元へ向かわせなければならない(詳しい理由は後述)。この点は歴史改変後でも変わらない。ラジエルを未来に送るもう一つの理由はここある。

 

☆「空気の炉(Air Forge)」を解放。

 

  • タイムトラベル(沼)

  ラジエルはようやく時間転移装置を発見する。しかし操作方法が分からないため、既存の設定のまま転移せざるをえない。ヤーノスがまだ生きている過去へと到達することを願いつつ、装置を起動する。


SR2:500 BC(年表3→4)

 

  • ヤーノス・オードレンとの出会い(ヤーノスの隠所)

(画像:SR2より)

  ラジエルは目的通り、ノスゴスの過去サラファンの時代へと到着する。偶然の一致を訝しみつつも、ヤーノスを探すことになる。道中、サラファンのヴァンパイアに対する暴虐を目にし、彼の中でサラファンの神聖性は音を立てて崩れ落ちる。そして、数々の仕掛けを解き明かしつつ、ついに隠所に潜み住むヤーノスと出会う。

  ヤーノスは、一目でラジエルこそヴァンパイアの救世主であると認めた。そして、ノスゴスの柱がかつてはヴァンパイアに守護されていたこと、自分が「リーバー」に仕える10番目の守護者であることを教える。また、人間の専横と迫害に嘆息し、彼らはヴァンパイアを追い詰めることで自分の首を絞めているのだと語る。さらに、柱の力による「戒め」の重要性を強調する。

  最後に、ヤーノスはこれまで守り抜いてきた吸血剣リーバーを「救世主」ラジエルに渡そうとする。しかしラジエルはいつもの時の歪みを感じず、しかも名状しがたい嫌悪感を覚えた。ラジエルがリーバーの受け取りを拒絶した時、二人は兵士が近付く音を聞く。ラジエルはサラファンの武装審問官に尾行されていたのである。ヤーノスはラジエルを守るため、彼を別の場所へと転送させた。

※ヤーノスは、ヒルデン種族のことを一切説明していない。まあ「戒め」さえ維持すれば、ヒルデンが現実の問題になることはないのだから、今すぐ全部話す必要はないと思ったのかもしれない。500 BCの時点では柱の危機が迫っているわけではない。それに結果的にヤーノスには全てを説明する時間がなかった。

※ラジエルが吸血剣リーバーに嫌悪感を抱いたのはさもありなんである。彼の運命は、まさにこの剣に魂を吸い尽くされることだからだ。

※モビウスがラジエルをヤーノスの元へ向かわせなければならない理由も今や明らかだ。ヤーノスの隠所はこれまで人間に発見されていなかった(それこそ何千年も)。ラジエルはその草分け、先導者となる存在だったのだ。もちろん、ラジエルが未来の時間転送装置で偶然この時代に来たことも仕組まれていた。全ては、モビウス配下のサラファンがヤーノスを見つけ出すために。狡猾な時の番人の面目躍如である。
 

☆「火の炉(Fire Forge)」を解放。

 

  • ヤーノスの死(ヤーノスの隠所)

(画像:SR2より)

  ラジエルがようやく戻った時、ヤーノスは武装審問官が持つモビウスの杖によって無力化されていた。次の瞬間、リーダー格の人間が、ヤーノスの心臓をえぐり出した。それでもその「暗黒の心臓」は脈動を続けていた。そこでラジエルは、ヤーノスを殺害した人間がまさに生前の自分であることを認識する。武装審問官たちはリーバーも回収し、砦へと戻った。

  ヤーノスは死にかけていた。自分の甘さを悔やむラジエルだったが、ヤーノスは「君をここで助けることこそが私の運命だったのだ」と慰める。そしてラジエルに、運命を受け入れ、リーバーを取り戻すよう告げて息を引き取る。心から信頼出来る存在だったヤーノスを失い、ラジエルはサラファンへの復讐とリーバーの奪還を誓う。そしてまた、心臓を取り戻し、必ずやヤーノスを甦らせると決意する。
 

  • サラファンへの復讐(サラファン砦)

(画像:SR2より)

  ラジエルは、未来から追跡してきた悪魔の妨害をかいくぐり、サラファン砦に到着。すぐにリーバーを発見するが、嫌悪感は相変わらずだった。そこにモビウスとマレック(戦いの守護者にしてサラファンの長)が登場。ラジエルは霊体ソウルリーバーを呼び出そうとするが、モビウスの杖に阻まれる。モビウスは悪意に満ちた態度に豹変しており、ラジエルの怒りを煽る。突然、遠くでヴォラドールの声がする(「犬を呼ぶがいい。貴様らの骸を喰わせてやるぞ!」)。モビウスは救援に行こうとするマレックを押しとどめる。ラジエルは怒りにまかせ物体のリーバーを手に取り、二人に立ち向かう。しかし、そこでモビウスは後退して扉を閉める。

  別の道を探すラジエルは、例の武装審問官たちと遭遇する。ヴァンパイアとしての兄弟であったゼフォン、メルカイア、デュマ、ラハブ、トゥレル、そして生前の自分ラジエルである。ラジエルは物体のリーバーを使い、彼らを皆殺しにする。

※ヴォラドールは一体何をしているのか?これはちょうどBO1のオープニングシーンである。つまり、9人の輪の内6人が殺害された事件、輪の虐殺の場面だ。実はあの裏で、ラジエルも同じように復讐をしていたわけである。これで、マレックが救援に遅れた理由も、モビウスがその場にいなかった理由も判明した。ただし、モータニアスがどこにいたのかは不明である。
 

  • ラジエル救出(サラファン砦) ※第三のパラドクスと歴史改変

(以下画像3点:SR2より)

  ラジエルが前世の自分を倒すと、モビウスに封じられていた霊体のソウルリーバーが次第にその力を取り戻し始める。そして、宿主であるラジエルの体から手を離し、物体のリーバーへと流れ込む。次の瞬間、霊体ソウルリーバーに包まれた物体のリーバーは、ラジエルへと牙を向ける。ここでラジエルは全てを悟る。なぜヤーノスのリーバーと出会った時、時の歪みを感じなかったのか。その理由は、それがまだソウルリーバーではなかったからだ。ヤーノスが言っていた通り、リーバーは吸血剣であり、魂を奪う剣として鍛造されたわけではなかった。ではいつリーバーはソウルリーバーとなったのか?それは、魂を奪うことを本性とする者、すなわちラジエル自身の魂をリーバーが取り込んだ瞬間・・・つまり今だ。ソウルリーバーは、ラジエル自身だった。だから未来において、ソウルリーバーはラジエルを破壊することを拒絶し、砕け散ったのだ。永遠に続くループこそ自らの運命だった。

  そしてラジエルはリーバーに貫かれる。その時、ケインが姿を現す。ケインはすぐに手を出さず、何かを待っていた。そして、ラジエルの魂がほとんど吸い尽くされそうになった時、それは起きた。時の歪みである。今やリーバーの内と外に、双子のラジエルの魂が留まっていた。内には、今まさに剣に取り込まれつつあるラジエルの魂があり、外には、霊体ソウルリーバーとしての以前のラジエルの魂がある。つまり、2つのソウルリーバーが出会ったに等しい、パラドクス的瞬間だった。今こそ歴史を改変できる。ついにケインが動き、ラジエルの胸からリーバーを力強く引き抜く。まさに間一髪だった。コインが地面に立ったのである。自分の運命を取り戻せ。ケインはラジエルにそう告げる。

  しかし同時に、この甚大なパラドクス(ソウルリーバーがここで完成しない)を修正するため、歴史は前回と比較にならぬ改変を遂行した(※ここで年表は3から4へ移る)。その結果、ケインの脳裏には書き換えられた新たな歴史の記憶が去来する。ケインはつぶやく。「ヒルデン・・・我々は奴らの罠にかかったのか・・・」。そしてラジエルに警告する。「ヤーノスを甦らせてはならん!」。しかしその声はもはやラジエルには聞こえていなかった。力尽きたラジエルは、精神界へと墜ちたのである。そしてそこには、いつもと同じようにラジエルを待っているものがいた。霊体のソウルリーバーである。ラジエルは自分の運命がやはり変わっていないこと、それは単に延期されただけであることに絶望する。

※もし改変後の歴史において、本当にラジエルが自由になった(=リーバーにとりこまれない)とすれば、物体のソウルリーバーは完成しない。従って、2000 ACに物体のソウルリーバーから解放される霊体のソウルリーバーも存在するはずがないのである。しかしそれは目の前に存在していた。ゆえに、依然として、改変後のこの歴史においても、いずれラジエルはリーバーに取り込まれる運命なのである。

※ケインのつぶやき「ヒルデンの罠」「ヤーノスに関する警告」については、Defiance と BO2 において明らかにされる。
 

以上がSR2全体の流れである。次は、ソウルリーバーの完成が先送りにされた世界(年表4)で、ケインとラジエルがどう運命に立ち向かうかを描いた物語 Defiance へと進む。

 

第三部につづく)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終更新:2012年10月07日 08:24