セルフクラフトワールドについて

■セルフクラフトワールド (セルフクラフトワールド2より抜粋)

日本唯一の国営ゲーム。かつて民間が開発、運営する、割とどうでもよいゲームの1つだった。
少なくとも、サービス開始直後に、このゲームを国が買い取る未来を予測できたものはいなかった。
株価がそれを証明している。

ゲームの内容は、お世辞にも独創的とは言えない。どこかで見たようなゲームシステムの寄せ集め。
ゲームの開発費が高くなってから、実績のない独創的なゲームデザインは採用されることがなくなっていたし
絵は当時から綺麗だったが、それとて一番ではなかった。

プレイヤーは、ゲーム世界の住人になり、自分達で物を作る。 装備に道具、家に乗り物なんでも自分で作れる。
だから セルフ・クラフト

サービス開始から数年が経ち、ユーザー数の落ち込み対策で、開発陣が思い切ったことをした。
自動生成の導入。ゲーム自身が生き物を、ゲーム内の人物を作り上げ動かす。
自己改良で進化もする。

進化すれば楽しいのかとか、進化の結果、遊べないほどバランスが悪くなるとか色々な懸念を抱えたまま
それならサービス終了になってしまうだけだからとそのシステムは導入される。 導入された結果、爆発した。
爆発したのは生命だった。
食べ物を食べて、尻から排泄物を出す単純な管状の生き物。 ワーム、日本名では、チクワ
から、多種多様の生命が、砂漠に発生し、独自の進化を遂げ、ついには人間の想像や想像力を超えて
大発展を開始した。
人間にも思いもつかない、それでいて合理的な構造を持つ生き物たちに魅了されて学術的な
研究の対象になるに従い、一般の人気と関心を集め、ついには、リリースから六年目でトップシェアを得た。

この成功に触発されて多くの国内外の企業が似たようなゲームを作ったがことごとくうまくいかず、
そのうち産学協同の研究グループがセルフクラフトの生き物から産業を塗り替えるような特許を得てしまった。
具体的に空飛ぶ管であるアローバードという種類の研究から現実に役に立つ特許が取れてしまった。
より効率よく管の中身を移送するポンプを兼ねたホース これがすぐ柔らかい小型エンジンに転用され、
乗り物の革命になった。 海外の注目が集まり始めた。
人工血管にチクワ類の構造が使われた。動脈硬化になりにくい、細い人工血管は人類の寿命を
一気に伸ばし始め、予防的に一部の血管をチクワにする者も増えた。
続いてシュウノウトンボという種類の研究からその独特の折りたたみ構造が評価されてあらゆるものが
折り畳まれるようになった。 瞬間的に広がる上に高い強度を持つ構造は、人工衛星の太陽電池パネルや
小型車に使われ、建築の世界に影響を与えた。

分裂中国の内乱と、ロシアの衰亡に巻き込まれる形でヒドイことになっていた日本の人口減少は
ここに活路を見出した。
海外資本に買収されそうになっている セルフ・クラフトの運営会社を国で買い上げ、ゲームから得られる
知見を独占した。 それは国内に100万人の天才技術者が生まれるようなものだった。

同時にそれは、各国から非難と恫喝をもって技術や セルフクラフトの開放を迫られる事をも意味していた。
以後、日本は、セルフクラフトワールドを守りながら生きている。 毎日世界中の民間政府を問わずの
勢力から数千億回以上のサイバー攻撃を受けはじめ、国の興亡はこれで決まると、
外国からのアクセスを禁じる一方、四海(しかい)と呼ぶ日本版金盾(ジンドゥン)、すなわち
高度な情報検閲システムを作って対抗した。 人間からの情報漏えいも防ぐのである。
セルフクラフト由来の技術は海外移転が禁止され、官民学を通じて、セルフクラフトの研究に
関わるものは国籍条項が厳しく適用された。 

反対する左派は非国民と罵られ、国益に仇なすと愛国者たちによって糾弾された。
政府は手を汚さずに左派を崩壊させることができた。 
周辺国全部が敵のように振る舞いだした時、国際平和を訴える政治家に明日はなかった。
何度も義士による襲撃が行われ、それが圧力となって言論を抑制した。一致団結以外じゃ許されようもなくなった。
続いて国会議員のルーツ探しが流行し、他国の血筋を持つ人間が次々落選した。国連は反対決議をしたが
日本は当然のように無視した。 これだけやってもセルフクラフトから得られる技術的知見は魅力的で
多くの国が非難と裏からの攻撃をしながら、日本製品を買い続けた。 それから10年他国での
セルフクラフト様の人工生命研究は失敗を続けている。工学的な進歩では他国はまったく追いつけないレベルにあり
1つ日本が燦然と頂点で輝き続けていた。

(P39ーP42)

 

○分裂中国の内乱
紅い皇帝と呼ばれた国家主席の死後、反動と民主化と地方自治から湧き起こった分裂中国では
内乱が起こっているらしい。 (P41)

○ロシアの衰亡
内容は不明。 この衰亡に巻き込まれ。日本は、人口減少が著しくなった (P41)

最終更新:2016年04月28日 00:54