無題:part1 > 768(オールキャラ) 5

「ん……」
 俺とサシャはベッドに寝転がったまま、しばらくの間お互いの唇を求め合った。目を閉じると、つい先程まで巨人と戦っていた時の
光景が鮮明に思い出される。俺はあの巨人を倒し、サシャを助けた。あの時、もし俺が死んでいたら……、もし俺たちが着くのが数分
遅れていたら、俺達がここでこうして抱き合っていることも無かっただろう。
「サシャ……」
 俺はサシャから唇を離し、彼女に呼びかける。
「ん、何ですか……?」
 サシャは微かに恥じらいを含んだ表情で、俺の顔を見る。
「俺さ、今すごく生きてるってことに感謝してるんだ。こんな気持ち、生まれて初めてかもしれない」
 彼女は黙って俺の話を聞いている。
「リヴァイ兵士長から、君の危機を知らされた時、俺は無我夢中で助けに走った。自分の命に変えても君を助けたいと思った。その時、
俺は気付いたんだ。君のことが好きなんだって」
「……」
「でもこれはライクであって、ラブじゃない。君のことを好きだけど、愛してるわけじゃない……、と思うんだ」
 俺がそう言い終えると、彼女は穏やかな表情で静かに口を開いた。
「愛してもいない人のために命を張れるんですね……。面白い人……」
「君だってそうじゃないか。女で、その若さで……。調査兵団はかなり危険な所だと聞いたぜ?」
「まあ……、そうですけど……」
 サシャはそう言うと、身体を起こし、ベッドの上で三角座りをした。
「でも、それを言ったらユウジさんもそうですよね?」
 うっ……、実はそれには深い理由が……。俺は、しかし痛いところを突かれた気持ちになった。
「ま……まあな」
 と、ともかく、この話はもう終わりだ。そういえば、さっきサシャは俺のことを階級名ではなく名前で呼んだな。彼女なりの親近感の表現なん
だろうか。
「そ……そうだ、サシャ」
「ユウジさん」
 サシャは俺の言葉に、言葉を被せてきた。
「愛していない人のために命を張れるのに、愛していない人とセックスすることは出来ないんですか?」
 彼女はちょっと上目遣いになって、俺の心理を伺うような様子で聞いてきた。
「い……、いや、そんなことは……。ただ……」
「……」
 彼女は黙って俺の言葉を待っている。
「ただ……、こんな気持ちでするのは……、サシャに悪いかな……と思って」
「……」
「……」
「……」

「あの……」
「ユウジさん」
 俺が声を発しようとすると、サシャは再び俺の言葉を遮った。
「ユウジさんは私の命の恩人ですし、私もユウジさんになら何をされてもいいと思ってます。
悪いと思うことなんて、何も無いんですよ」
 ごくっ。サシャにそう言われて、俺は生唾を飲み込んだ。
「だ……、だけど……」
「それに……、さっき助けに来てくれたユウジさん……。すごく、カッコ良かったです……」
 サシャは、そう言って目を伏せた。

 ドキッ!

(うっ、なんてセクシーな……)
 俺はもう我慢できず、再びごくりと生唾を飲み込んだ。
「ほ……、本当にいいの?」
「はい……」
 サシャは小さく頷いた。
「そ……、それじゃ失礼して……」
 と変なことを言いながら、俺はサシャに擦り寄って抱きついた。サシャは俺に抱きつかれても、嫌がりもせずじっとしていた。そして、
俺はサシャのふんわりとまとめられた髪の毛に顔を埋めると、す~っと深呼吸をした。女の子の芳しい匂いが鼻腔一杯に拡がる。
「あんっ……、ユウジさん……」
 こんなことをされて恥ずかしかったのか、気持ち良かったのか、俺にしっかりと抱きついて甘えた声を出すサシャ。
「サシャ……、いい匂いだ……」
「そんなこと……」
 サシャは恥ずかしそうに否定するが、俺には良い匂いにしか思えない。香水やシャンプーのような人工的な匂いではないが、早春の森林
のような爽やかな自然の匂いがする。誰のでもない、サシャの匂いだ。
 俺は、そのまま何度も何度も深呼吸をして、サシャの匂いを心ゆくまで堪能し、興奮してきた俺は、再びサシャと熱い口づけを交わした。
「んっ……」
 サシャの口からか細い声が漏れる。いつしか、サシャの頬は紅潮しているようだった。
 俺はサシャとキスをしたまま、無言でサシャのパジャマの上着のボタンを外しにかかる。左手でサシャを抱きながら、右手だけでゆっくりと
ボタンを外していくが、サシャは全く抵抗しようとしない。ボタンはすぐに全て外され、サシャのスレンダーな体の中心線が、首筋から胸の谷間、
へその下の辺りまで、露わになった。そのままサシャの身体を持って左右に揺さぶるか、シャツの開き部分をつまんで横にずらしてやるだけで、
今は薄い布で隠れている乳輪や乳首すらも見えてしまうだろう。
 俺はすぐにでもそれらを見たい気持ちに駆られたが、まずはパジャマのシャツの内側に右手を滑りこませ、触感でサシャの身体を楽しむことにした。
 サシャの衣服の内側で、蛇のように蠢く俺の手。サシャの、体型の割にふくよかな胸、無防備な脇、細いウエストを、衣服の下から無遠慮にまさぐる
俺の右手。

(こ……、この状況は改めて冷静になって考えると……)
 すごい状況だ。
 一度食事を共にしただけの、ほとんど初対面と言ってもいいような可愛い女の子の衣服の下に俺の手がもぐり込んで好き勝手をやっているんだぞ……。
性的なことをだぞ……。それにしてもきめ細やかな肌だ、触ってるだけでも気持ちがいいぜ。こことか、すごく柔らかくってぷにぷにしてるしな……。
「っ……!」
 その瞬間、サシャの身体が緊張で硬直する。俺の右手の指先が、サシャのバストの先端の突起に触れたのだ。
「サシャ……?」
 夢中になってサシャの身体を触っていた俺は、そのことでふと我に返ってサシャに声をかけた。
「ううん……。なんでもないんです。ちょっと驚いただけ。続けて……触って下さい」
「う……、うん」
 サシャがそう言ったので、俺は再び手を動かし、サシャの身体を、主に触覚と嗅覚で味わう。サシャの髪の毛を、身体の匂いを、首筋と耳の裏の匂いを
思う存分嗅いでいるだけでイってしまいそうになるのに、手はサシャの絹のようなきめ細やかな肌に吸い付いて離れようとしないし、まだ俺の視覚、聴覚
味覚はかなりの部分温存されているというのだがら、気が遠くなるセックスだ。地球一周を踏破するよりも先が長いようにすら錯覚してしまう。
「サシャ、脱がすよ」
 俺はそう言って、サシャに考えさせる隙も与えず、素早く彼女のパジャマのズボンを剥ぎとった。
「きゃ……!」
 顔を赤くして、小さく悲鳴を上げるサシャ。この仕草が堪らなく可愛らしい。
「そ……、そんないきなり……」
 そう言って、ぼそぼそと俺に抗議するサシャ。しかし、俺はそんなこと意にも介さない。
「サシャ、もっとよく見せてくれ」
 そう言って、俺はサシャの両足を両手でつかみ、そのままサシャの脚を大きく開かせる。彼女は抵抗して脚を閉じようとはしなかったが、両手で真っ赤に
なった顔を覆うぐらいには恥ずかしがっていた。
「サシャ……」
 そして俺は広げられたサシャの股間をじっと見る。ずっと気になっていたことに答えが出た。サシャはパジャマのズボンの下にパンツを履いていた。しかも
純白の綿のパンツだ。
「あの……」
 サシャは両手で顔を覆った姿勢のまま、指の隙間からこちらを覗き込みながら話かけてきた。
「すみません……。遠征の訓練で来てたので、色気の無いもので……」
 そして何かと思えばこんな可愛らしい言い訳をする。
「ううん、全く、全然、そんなことないよ!」
 俺は心からサシャの言葉を否定する。女には解らないかもしれないが、この純白の綿パンこそ男にとって至高の萌えアイテム。最強の中の最強。ザ・キング・
オブ・パンツなのだ。無意味にヒラヒラが付いたフリルパンツとか、赤とか黒とかのスケスケのイカニモといった形の勝負パンツなど邪道だ。海◯雄山に見せたら
女体ごとひっくり返してわめきちらすに違いない。おっと話がズレた。閑話休題。ともかく、海◯雄山も俺の意見に賛同するに違いないという話だ。
 さて。
「それでは、サシャちゃん、覚悟は出来ているかな?」
 俺はあまりの嬉しさにキャラが変わっている。
「えっ? えっ?」
 俺のあまりの豹変ぶりに、サシャが驚いて目を丸くしている。
「サシャちゃん! サシャちゃーん!!」

ばふっ!

 そう言って俺はサシャの股間に顔をうずめて、パンツに頬ずりをする。すごく良い肌触りだ!
「えっ!? ええっ……!?」
 サシャは慌てて目を白黒させている。
「う~ん、良いよ。すごく良いよ、サシャちゃ~ん!」
 そんなことを言いながら、俺はサシャのパンツ越しに、股間の匂いを嗅いだり、口で咥えたり、顔を押し付けたりする。
「あ、あの~、ユウジさん……?」
「サシャちゃ~ん! サシャちゃ~ん!」
 俺はサシャの呼びかけにも構わず、トランス状態でサシャのパンツに顔を擦り付ける。
「ユウジさん!」
 サシャはついに大声を出して俺を呼んだ。
「はっ……!」
 その声でやっと正気に戻った俺。
「あの……。ユウジさん、どうしたんですか……?」
「ご、ごめん……、あまりにも嬉しくてつい……」
 それを聞いてサシャは呆れたような顔で笑った。
「もう……。普通にやりましょう? ね?」
「あ……、ああ。そうだね。で、でも言い訳をさせてもらうと、海◯雄山だって俺と同じことをやるに違いないんだぜ?」
「何を言っているのかわかりません」
 サシャはピシャリとそう言うと、無言で俺のズボンを脱がせてきた。
「わあ、すっごい大きくなってる」
 張り裂けんばかりに膨張した俺の超硬質ブレードを見て嬉しそうに呟くサシャ。そして彼女はあろうことか、それを口に含み
食べてしまおうとする。いや、違う。これは……。吸って……、舐めて……、楽しんだら後で吐き出す気だな……。くっ、この
巨人め……。気持いいじゃねぇか……。これは……、やばいな。早く立体起動装置のアンカーを射出して退治しないと……。
 なんてふざけたことを考えていたら、本気で気持ち良くなってきた。
「さ……サシャ、やばい……イきそう……」
 サシャはかまわず俺の愛の如意棒を刺激し続ける。
「うっ……!」
 そして、俺はサシャの口の中で果てた。

ごっくん……

 サシャはあろうことか、俺の精子を一滴残らず嚥下してしまった。
「お、おい……」
「う~ん、これは思ったより濃厚……ですね」
 そう言って俺の顔を見て笑う彼女の笑顔が愛おしくて、俺は射精直後にも関わらず瞬間湯沸かし器的に発情した。
「サ、サシャ~~~!!」
 そして俺は彼女に覆いかぶさって、今度は俺から彼女をベッドに押し倒した。

 セックスとは生命の喜びであると思う。生きていることを二人で喜び合う行為。それは最初、自分が生きていることへの
喜びであったものを、相手が生きていることへの喜びへと変える。それこそが愛であり、愛とはセックスから生まれるのだと思う。

 俺がサシャをベッドに押し倒すと、彼女は俺をがっしりと抱きしめて、逆に俺をベッドの上に横倒しにし、二人できつく抱き合った。
そうしてサシャと俺は至近距離から見つめ合い、サシャは俺に笑いかけてきた。俺は実のところすごく緊張していたが、彼女が笑いかけてきたから、
思わず照れ笑いを返した。
「サシャ……」
「ユウジさん……」
 そして俺達はキスをする。長い長い、優しいキス。呼吸が止まりそうになる。
 そしてやっと唇が離れた。一瞬の深呼吸。そして……。
「ユウジさん……、好きです……」
 それは、サシャからの愛の告白だった。
「サシャ……」
 俺は彼女の目をしっかりと見つめながら、思いを巡らせた。
 サシャ……。彼女は田舎で生まれ、苦しい生活を狩りをして暮らしてきた。調査兵団に入ったのは「お腹いっぱい食べるため」だという。
こんな健気な子が、あんな恐ろしい目にあって、それでもまた、あの強大な敵、巨人に立ち向かって行かなければいけない。こんなことを
していたら、いつか……、そう遠くない未来に彼女は死んでしまうんじゃないか……。
 これは悲観論じゃない。現実を直視すれば当然の推測だ。言うまでもなく俺は、彼女を助けたい。……死んでほしくない。
 これは、「愛」なんだろうか? わからない。
 「愛」であって、そうじゃない気もする。じゃあ、愛って何だ?
 俺は、親から矛盾することを教わってきた。男が愛することが出来る女性は一人だけだと。だが、今の俺の気持ちはどうだ? 俺は……彼女、
クリスタちゃんに死んで欲しくないと思ってる。どんなことをしてでも彼女を守りたい。彼女が生きていることが俺の幸せだ。だが、サシャも
死んで欲しくない。どんなことをしてもサシャを守りたい。サシャが生きていることが俺の幸せだ。
 ……。もしかすると……。
 もしかすると……、ミカサも……。
 俺は……、浮気者なのかな……。
「サシャ……。愛してる……、と、思う……」
 俺の口から、自然と言葉が流れでた。
 それを聞いて、サシャが泣きそうな顔で笑った。
「はい……。なんだか変な言い方でしたけど、そう聞くと……、嬉しいものですね……」
 これでサシャと俺は恋人同士なんだろうか? 俺はそんな疑問を抱きながら、サシャと再び熱い抱擁を交わした。
 そしてキス……。
「サシャ……」
「はい……」
 二人はもうこれだけで全てが通じ合う。
 俺はサシャの服を脱がし、裸にした。そして、俺も服を脱ぎ裸になった。二人は、もう生まれたままの姿だ……。
「サシャ……」
「はい……」
 再び同じやり取りをする。だが、さっきと違う感覚。そう……、このやり取りをするごとに、二人の愛は深まっていくのだ。
「こうしてるとさ、すごく落ち着くよね。なんか、さっきの巨人との戦いとか、嘘みたいだよ」
「ふふふ、私もです」
 サシャが楽しそうに答えた。

 その様子を見て、俺もほっとした。もともと、サシャが「怖くて震えが止まらない」と言って、真っ青な顔で俺の部屋を訪ねてきたんだけど、
今の様子を見れば大丈夫だ。すごくリラックスしてる。こうしてやって、良かったなあと、心から思える。
「サシャ、好きだよ」
 俺はサシャのおでこにキスをする。
「きゃ」
 サシャは不意を付かれて驚いた声を出す。それを見て俺はニッコリと笑う。
 いいんだよな……、これで……。
 そして俺は、一つの想いを打ち消した。それは……、クリスタちゃんのこと。
(彼女は守る……。だが、サシャが一番だ……)
 ……。
「ユウジ……さん?」
 サシャに呼びかけられて、俺は自分がひどく真剣な表情をしていたことに気付いた。
「え……?」
「どうか、したんですか? 怖い顔をしていました……」
 俺は頭を振って、思考を元に戻す。
「いや、なんでもないんだ……。愛してる、サシャ」
「もう……」
 俺の言い方はなんだか白々しかったが、サシャはまんざらでもない様子だ。
「サシャ……」
「はい……」
 いったい何度このやり取りを繰り返すのだろう。将来、何万回、何億回と、出来たら良い。それをするごとに、愛が深まっていくとすれば、
どれだけ素晴らしいだろう。
「挿れて……、いいのかな……?」
 俺は、ちょっとしおれてきたが、依然として硬さと太さを保っている男性自身をサシャに見せながらそう尋ねる。
 サシャは、それを見て愛おしそうに微笑んでから、言った。
「もちろんです」
 そして俺は、もう一つの大事な質問をする。
「子供……、作っていいかな……?」
 この質問には、サシャもさすがに驚いた顔をした。そして、一寸考えてから、
「それは駄目です」
と冷静に答えた。
「だよね。やっぱり」
 でもなあ、困ったぞ。もちろん俺はコンドームなんて持ってない。

「う~ん……」
 俺が腕を組んで考え込んでいたら、サシャが意見を述べた。
「外で出せばいいんじゃないですか?」
「ん……」
 俺はそれを聞いて、控えめな返事をした。というのも、それでは完璧な避妊にはならないことを知っていたからだ。性交の最中、射精に至る前に
出るカウパー液(俗に我慢汁と言われる)、にも微量の精子が含まれており、低確率ながら妊娠の可能性はある。
 しかしながら、今はそれしか方法が無いのも確かだ。こうなりゃ、子供が出来たら出来たで、やっちまうのも手か。サシャはそれでいいって言ってるし。
「よし、わかった」
「どうします?」
「外で出す」
「それじゃ、そういうことで」
 この問題に結論が出たところで、サシャがそう言って、俺にまたがってきた。
「んっ……」
 そして、自ら俺の性器をつまんで、自分の膣にあてがう。そして、そのまま挿入する。
「はぁ……」
 挿入し終えて、一度深呼吸をするサシャ。
 その後、自分で体を上下に動かし、俺の肉棒を上手に一定間隔で刺激する。
「うん……、サシャ……、すごくいい。上手だよ」
 俺はサシャを褒める。サシャは褒められてちょっと戸惑っていたようだったが、俺は特に気にしない。
 彼女は、初めてじゃなかった。けど、それがどうしたっていうんだ。俺と出会う前にサシャが何をしていようが、関係ない。それに、俺だって初めて
じゃないしな。
「サシャ……、気持ちいい」
 愛しているからこそ、信頼しているからこそ、素直にこんな感想が言える。
「私も……、気持ちいいです……」
 サシャも俺の上で動きながら、そう言う。なんだか照れくさいやり取りだ。
「ん……、サシャ……、俺もう、イキそう……」
 俺がそう言うと、サシャは速やかに、俺の肉棒を膣から抜き、手で擦り始めた。いわゆる手コキだ。
「くっ……」
 サシャの手コキは力加減が絶妙で、本当に気持ちよかった。男の気持ちいいツボも心得ていて、指を上手にカリに引っ掛けて刺激する。スピードも
丁度いい……。
「ああああっ」
 そして、サシャの手の中で俺は絶頂に達した。

「はぁ……、はぁ……」
 全身の力が抜けて、ベッドに横たわり、深呼吸をする。サシャは俺の身体についた精液を舐めてきれいにしてくれている。
「……あっ!」
 サシャの舌がイッた直後の敏感になっているペニスの先端に触れて、思わず声が出た。
「大丈夫ですか?」
「うん」
 後処理が済むと、俺の隣でベッドに横になって、添い寝するサシャ。
「ん……、サシャ……」
 俺はまだぼーっとする頭で、サシャの名前を呼ぶ。
「はい」
 サシャは優しく返事を返す。
「サシャ……、好きだよ……」
 そして、それを言った後、俺の意識は飛んだ。

 気付くと、朝になっていた。横にはサシャが寝ていた。
「ん……」
 俺は上体をむくりと起こして、両腕を上にあげて背伸びをする。そしてサシャを起こさないように、静かに起き上がると、カーテンに隙間を開けて、
窓から外を覗きこんだ。
(時間は……、分からないが陽の高さからして、結構眠っちまったみたいだな)
 それにしても……。
 今思うと、何かすごく大変なことをやっちまったみたいだぜ……。
 そう思いながら、サシャの寝顔を見る。
(ふふ、気持ちよさそうに眠っていやがる)
 それを見て、俺は「この娘が俺の彼女で良かった」と素直に思った。
(サシャ……、これから毎日、朝昼晩、俺の食事を分けてやるからな)
 そんなことを思いながら、吹き出しそうになる。
(はは……、なんかペットみたいだな)
「ん……、もう食べられません……」
 ん? 起きたのかな? 俺はサシャの顔を覗きこんだ。……、起きてない。どうやら寝言だったようだ。
(そういえば、リヴァイはどうしたのかな?)
 結構遅くまで寝ちまったから、絶対もう起きてるはずだけど。
 ま、俺に気を遣って静かにしてくれているんだろうが、サシャは後で怒られそうだな。ん~、でも今回のことで一番大変だったのはサシャだし、
そんなことはないか。
 俺は考えをまとめ終わると、椅子に座って、サシャが起きるまでサシャの寝顔を眺めていることにした。

「ん……、ユウジ……さん……?」
 数十分は経っただろうか。サシャが目を覚ました。
「サシャ、起きたかい?」
 サシャはまだぼーっとした頭で、眠たげな目で俺の顔を見ている。
「あ……」
 寝惚けているのか、言葉にならない。俺は、そんなサシャの頭を撫でてやる。やがて、彼女の意識もはっきりとしてきたのか、
言葉をしゃべり始める。
「ユウジさん……、何してるんですか?」
「君が起きるのを待ってたんだ」
「すみません……、寝坊しちゃったみたいですね……」
「いや、いいんだ。俺も起きたばっかりだし、それに可愛い寝顔も見れたしね」
「……」
 それを聞いて、サシャは無言だったが、微かに頬を赤く染めたのが見てとれた。
「ユウジさん……、ちょっと……あっち向いててもらえますか?」
「あ、ああ、いいよ」
 そう言って俺は後ろを振り返り、ドアの方を向く。なぜならサシャはまだ服を着ていない。裸のままだ。昨日はあんなムード
だったし、部屋も薄暗かったから良かったが、日中明るい中で裸を見られるのはやっぱり恥ずかしいんだろう。
「もういいですよ。こっちを向いてください」
 俺が振り返ると、サシャはもうパジャマに着替えていた。
「えへへ、やっぱりなんか恥ずかしいですね」
 サシャは大きな枕を抱きかかえながら、照れる仕草をした。
「うん、可愛いよ。サシャ」
 俺はパジャマの姿のサシャを見て、改めてそう感じた。
「えへへ」
 サシャは再び照れ笑いをした。こうして見ると、本当に普通の少女って感じだ。こんな娘が軍服を着て、武装してあんな
でかい敵に立ち向かっていかなきゃならないんだから、俺のいた世界じゃ考えられないぜ。本当に、この世界は狂気の沙汰だ。
(俺も早く元の世界に帰った方がいいかも知れないな……)
 そんな思考が一瞬、頭をよぎる。だが、それを真剣に考えるのは、巨人、特にあのデカブツ……、超大型巨人を倒してからだ。
リヴァイやミカサの話によれば、こいつさえ倒せばこの世界の人間は平和に生きられるはずだ。幸い俺には88式地対艦誘導弾
(SSM-1シーバスター)という切り札がある。こいつを命中させさえすれば、あのデカブツでも間違いなく倒せる。そのためには
奴の位置を正確に把握するか、目視する必要があるが。
(しかし……)
 俺が元の世界に帰るってことは、サシャやクリスタちゃんのことはどうなるんだろうな。やっぱり、もう会えなくなるんだろうか。
(それも辛いな……)
 とにかく、俺が今考えるべきことは、超大型巨人の撃退のみだ。こいつさえやっつければ、みんな幸せになるんだからな。
「ユウジさん」
「ん? どうした?」
「私、お腹すきました……」

ぐうぅぅぅ

「……」
 言っておくが俺の腹の虫じゃないぞ。サシャのだ。
「えへへ……」
 サシャがそう言って左手でお腹を押さえて右手で頭を掻きながら照れくさそうに笑う。
「ん、そうだな。確かに腹がへった。飯にしよう」
 なんせサシャは昨日の晩飯もまともに食べてないはずだもんな。そりゃ腹も減るはずだ。
「それじゃ私、部屋に戻って着替えてきますね。ちょっと待っててください」
「うん」
 そう言ってサシャは部屋を出て行った。しばらく後、ノックがされて、サシャが戻ってきた。
「お待たせしました」
 サシャはロングスカートにブラウスとベストというような、民芸調の服装に着替えてきた。
「その服、よく似合ってるね」
 俺がそう言うと、サシャは嬉しそうに笑った。
「そうですか? 頑張って持って来てて良かったです」

ガチャ ギイッ

 ドアを開け、二人で廊下に出た。
「さて、部屋の外に出てきたのはいいけど、どこに行けば飯にありつけるのかな?」
 独り言のようにそう言いながら、カントリー調の、安っぽい木造の廊下をぐるりと眺め回す。
「わかりませんね。とりあえず、兵長のところに行きましょうか。朝の挨拶もまだですし」
 そういえばそうだな。俺はあんまり気にしてなかったが、サシャのような新兵は上官の機嫌が気になるはずだ。
「そうだな。分かった。そうしよう」

 俺とサシャは廊下を歩いてリヴァイの部屋へ向かった。と言ってもすぐそこなのだが。

コンコンコン

 ドアをノックする。
 ……。
 ……。
 ……。
 いないな。

 ここにいなけりゃ大方ロビーだろう。俺たちはロビーに向かった。

 ロビーに着くと、リヴァイの縁者だという大柄の男--この宿のオーナーだ--が、俺たちを待っていた。
「よう、ようやくお目覚めか?」
 男は俺たちを見るにつけそう言った。
「まあね」
 俺はそう挨拶して、リヴァイの居所を聞こうとする。
「分かってるよ。リヴァイの居所だろ? あいつなら朝から馬に乗って調査兵団本部に向かったぜ。どうやらエルヴィンに
会いに行ったみたいだな」
 そうだったのか……。
「それと食事の準備が出来てるからな。腹いっぱい好きなだけ食べてくれ。お前ら調査兵団にはいつも世話になってるから
奮発させてもらったぜ」
 それを聞いて、サシャの目が輝いた。
「ええっ、早く食べましょうよ! ユウジさん!」
「おいおい……」
 俺はそう言って焦るサシャを静止した。
「そうそう、それとリヴァイからお前らに伝言を預かってるぜ『今日はオフだ。恋人同士好きに過ごせ』だとよ。
相変わらず粋な奴だな。ガハハ」
 大柄なオーナーはそう言って豪快に笑った。俺たちはそれを聞いて二人で真っ赤になった。

 食事を終え、二人で部屋に戻ってきた。サシャは美味しい料理をお腹いっぱい食べて、満足した様子だ。
「それで、これからどうしますか?」
 サシャが俺に問う。
「うーん、たまにはゆっくりしたいな」
「それじゃ、散歩にでも行きませんか?」
(ゆっくりしたいって言ったんだけどなあ……)
 まあ、でも、行ってみるか。

 俺たちは宿の外に出た。周囲を見回すと、昨夜は暗くて何も見えなかったが、なかなか自然が豊かで美しい集落だ。
お店……、のようなものは特に無いが、民家はそれなりに並んでいる。それと、多くの畑……。
 これは……、とうもろこしかな? 小麦かな? こういうことに疎い俺には残念ながらよく分からない。だが、どうやら
ここは農耕で生計を立てている集落のようだ。
「私の……、故郷もこんな感じです」
「ん……?」
 ああ、そうか、サシャは狩猟の村で育ったんだったな。
「ユウジさんの故郷は……、どんな所だったんですか?」
「えっ!? 俺の故郷?」
 俺は思わず大声を出した。
「どうかしたんですか?」
 サシャが不思議そうに俺の顔を見る。
「い……、いや、何でもないんだ。そうだな……、俺の故郷か……」
「……」
「なんというか……、機械が沢山あって……、ここと全然違う所だよ。何でも機械でやるんだ。機械が生きてるのか
人間が生きてるのか、分からないぐらいだぜ」
 俺はしどろもどろになりながらこんな説明をしたが、幸いなことに彼女は何も疑問を持たなかった。
「へえ、世の中には面白いところもあるんですね。私は狭い世界で何も知らずに育ちましたから……」
「ああ。まあ、俺も今それを実感しているところだがな」
 実際この世界はすごいぜ。滅茶苦茶不安定なのに軍事力はそれほど発達していない。それに比べて、俺達の世界は一見平和で
安定しているのに、軍事力は異常に発達している。取替えっこしてやりたい気分だな。

「そろそろ……、戻ろうか」
 特に何をするでもなく、ぶらぶらと歩きまわった後、俺がサシャに尋ねた。。
「そうですね」
 サシャも同意してくれた。
「お休みも久しぶりでしたし、こんな楽しい一日も久しぶりでした。ありがとうございます」
 サシャはそう俺に礼を言った。
「ああ、俺もだよ」
 俺もそう返した。
「いつか、ユウジさんの故郷にも行ってみたいですね……」
「……」
 俺は、俺のいた日本にサシャがいる姿を想像した。そして、その夢のような光景を思いながら呟いた。
「そうだな……」
「……」
「行けたら……、いいな……」
「……?」
 サシャは不思議そうな顔をした。
(まさかな……)

 宿に戻ると、既にリヴァイが戻って来ていた。
「戻ったか、では帰還するぞ」
 俺達は支度を済ませ、調査兵団本部に帰還した。
 その途中、こんなやりとりがあった。

「おい、お前本当に馬に乗れないのか?」
 リヴァイが普段絶対見せないような、悲壮感漂う表情でそう言った。
「本当に乗れない」
「し……、信じられん……」
 リヴァイは全身を震わせながら頭を抱えた。
「バイクなら乗れるぞ」
「また訳のわからん機械の話か。頭が痛くなるぜ。……、仕方ない、サシャ・ブラウス、一緒に乗ってやれ」
「はい」
 サシャは大歓迎といった様子で承諾した。
「帰ったらちゃんと乗馬の訓練をしろよ」
「分かってるって」
 俺とリヴァイもこの世界に来てかなり打ち解けたみたいだ。

 本部への帰還後、エルヴィン団長への報告を済ませ、俺達が調査兵団宿舎に着いた時には、もう夕方になっていた。
「ふぅ、くたくただぜ」
「ふふふ」
 そんな俺の様子を見て、サシャがクスクスと笑っている。
「大変でしたね」
「全くだ」
 馬の背中に乗ってると強烈に酔うってことが分かったぜ。自分で馬を駆ってればまだマシなんだろうけどな。
「あっ、ユウジ、帰ってきてたの?」
 廊下を歩いていたら、後ろから呼び止められた。これは……、聞き覚えのある声。
 俺はゆっくりと後ろを振り返る。
「ク……、クリスタちゃん」
(うっ、なんだか後ろめたい気持ちが……)

「ねえ、どうしてたの? 今日のお昼からはユウジの班に所属して訓練って聞いてたから、探したんだけど、どこにもいないし」
「あ……、ああ、それは、その……、なんだ……?」
 俺は混乱して訳の分からない手振りをした。
「あっ、サシャもいる! どうして!?」
「く……、クリスタ……これは……」
 サシャもなぜか、たじたじとなっている。

「ふーん、言えないんだ? いいよ、ユウジに聞くから」
 うっ……。
「ねえ、今日見てたら私だけじゃなくて、サシャにもユウジの班に配置換えの辞令が下ってたけど、どうして?」
「えええっ!」
(な……、なんだと!?)
「ねえユウジ、どうして?」
 い、いや、確かにサシャの班はサシャだけを残して全滅したわけで、サシャが俺の所に来るのは望むところなんだけど。
「……」
「ふん、いいよ。ユウジの浮気者……」
「ク……、クリスタちゃん……、君はそういうキャラじゃ……」
「私だって怒る時は怒るよ」
 クリスタちゃんは、そう言って行ってしまった。俺は彼女の後ろ姿を目で追いながら思った。
(まずったかなあ……)

「ふう……」
 俺は食堂でパンを頬張りながらため息を吐いた。
「クリスタのことですか?」
「え? ああ……」
「ユウジさんは、クリスタのことが好きでしたもんね」
 サシャがスープを口に運びながら、さらりと言う。
 って……。
「おい、サシャ、何で知ってるんだ?」
 サシャは呆れたような顔をして言った。
「誰でも分かりますよ。ユウジさんがクリスタと話す時の表情、普段と全然違いますもん」
 俺はそれを聞いて急に恥ずかしくなった。
「じゃ……、じゃあ、なんであんな……」
 サシャは涼しげな顔でこう答えた。
「しょうがないじゃないですか。好きになっちゃったんですから」

 俺は部屋に戻って、明日のことを考えた。
(明日はサシャとクリスタちゃんと、三人で乗馬の訓練だ)
 それにしても……。
 当初はクリスタちゃんと二人で楽しく訓練のはずだったんだけどなあ。ややこしいことになっちまった。いや、完全に
自業自得なんだけど。
 ま、とにかく、悩んでてもしょうがないぜ。こうなったら、なんとか三人で楽しくやることを考えないとな。
(おやすみー)
 そして俺は、ランプの灯を消して、眠りに着いた。


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最終更新:2012年11月25日 15:11
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