西園寺先輩と大福
[user]: 西園寺先輩、あの……。大丈夫ですか?
西園寺 蓮: [苗]さん。大丈夫、とはどういう意味でしょう?
[user]: ……気のせいか、あまり顔色が良くないような……。
西園寺 蓮: ……平静を装っていたつもりですが、わかりますか?
西園寺 蓮: このところ、学校行事が連続していたものですから。
西園寺 蓮: 生徒会が忙しく、あまり眠る時間が取れなくて……。
[user]: 大変……!
西園寺 蓮: でも、もう大丈夫ですよ。仕事の山は越えました。
[user]: ゆっくり休んでくださいね……。
西園寺 蓮: ありがとうございます、[苗]さん。けれど――
西園寺 蓮: 体調不良を見透かされるなんて、私も未熟ですね。
西園寺 蓮: 「……気づいてくれたのが、あなたで良かった。」
[user]: え? それって……?
西園寺 蓮: フフ……。こちらの話ですよ。お気になさらず。
[user]: (西園寺先輩、ちょっとうれしそう、かな……?)
[user]: 本当にいつもお疲れ様です、西園寺先輩……。
[user]: よく寝て、よく食べて、体力を回復してくださいね。
西園寺 蓮: 実は……働きすぎたせいか、あまり食欲がないのです。
西園寺 蓮: 私も、何か食べたほうが良いとは思うのですが……。
[user]: あ、そんなときは甘いものが一番だと思います!
西園寺 蓮: なるほど。確かに甘味なら食べられる気がしますね。
[user]: チョコレートとかキャンディとか、でしょうか?
西園寺 蓮: そうですね。こんなときのために、普段から――
西園寺 蓮: 何かお菓子を持ち歩いていればよかったのですが。
[user]: じゃあ、えーと、もしよろしければ、ですけど……。
[user]: ……さっき購買で買った大福、いかがですか?
西園寺 蓮: 大福ですか……。
[user]: さ、西園寺先輩に大福なんて、変、でしょうか……?
西園寺 蓮: 「……いえ、いただきますよ。お気遣いに感謝します。」
[user]: (あ……、良かった。受け取ってくれた……)
西園寺 蓮: 学校の購買には、大福なども置いてあるのですね……。
[user]: はい。最近はコンビニとかにも結構置いてありますよ。
西園寺 蓮: フフ……。[苗]さんはお菓子に詳しいのですね。
[user]: さ、最近はコンビニスイーツとかも、流行りですから。
西園寺 蓮: ああ、その単語でしたら、私も聞き覚えがありますよ。
西園寺 蓮: では、この大福。ありがたくいただきますね。
[user]: はい、どうぞ。西園寺先輩にこそ必要でしょうから。
西園寺 蓮: ふむ……。これは……、なかなか美味しいですね……。
[user]: わ、西園寺先輩のお口に合ってよかった……!
西園寺 蓮: ええ。今度、機会があれば私も買ってみましょうか。
西園寺先輩は甘いもの、お好きなんですか?
西園寺 蓮: ええ、好きですね。特に大福が。
[user]: (……それはちょっと意外かも……!)
西園寺 蓮: 「だから、今の出来事には運命を感じてしまいますよ。」
西園寺 蓮: あなたがちょうど、大福を持っていたなんて……ね。
西園寺 蓮: 和菓子を食べる機会は、意外とよくあるのですよ。
[user]: そうなんですか? ご家族の方がお好き、とか……?
西園寺 蓮: 私は幼い頃から、茶道もかじっているものですから。
[user]: そういえば、茶道には和菓子がつきものですよね。
西園寺 蓮: ええ、仰るとおりです。
西園寺 蓮: ただ……、私が大福を好んでいると明かすと――
西園寺 蓮: 周囲の人たちは大抵、不思議そうな顔をするのですよ。
西園寺 蓮: ですから、あえて『好き』と喧伝してもいないのです。
西園寺 蓮: フフ……。それなのにまさか、大福をもらえるなんて。
[user]: すごい偶然ですね……!
[user]: 私、今日はなんとなく大福が食べたかったんです。
西園寺 蓮: フフ……。『偶然』と片付けるのは簡単ですが――
西園寺 蓮: 「これは、私とあなたの『必然』かもしれませんよ?」
[user]: え……?
西園寺 蓮: ところで、[苗]さんは大福のどこがお好きですか?
[user]: 大福の何が好きか聞かれると、少し悩みますけど……。
[user]: やっぱり……、まずは甘いところでしょうか?
[user]: 大福が欲しいときは甘いものを食べたいときですから。
西園寺 蓮: なるほど……。フフ、それは一理あるかもしれません。
西園寺 蓮: 控えめな、けれど深い甘さのバランスが良いですね。
西園寺先輩は、大福のどこがお好きですか?
西園寺 蓮: 私はまず、大福の柔らかさが好きですね……。
西園寺 蓮: 白い粉を纏った、まあるい姿も、また美しい……。
[user]: あ、わかります。ころんとして、可愛らしくって。
西園寺 蓮: 中に潜んでいる、餡とのバランスも絶妙です……。
西園寺 蓮: 「柔肌に触れて中身を暴くだなんて扇情的でしょう?」
西園寺 蓮: まるで、美しい女性に触れているかのようです……。
西園寺 蓮: ……フフ、[苗]さんもそう思いませんか?
[user]: そ、それは……、ちょっと私には難しいですけど……。
[user]: (西園寺先輩の感性って、なんだかすごいかも……!)
西園寺 蓮: 今や大福は様々な進化を遂げていますね。私も昔は――
西園寺 蓮: 正統派こそ優れている、と思っていた時期があります。
西園寺 蓮: ですが、最近では亜種の良さにも心惹かれるのですよ。
西園寺 蓮: たとえば、春は苺大福、秋は栗大福と――
西園寺 蓮: 季節によって姿を変える大福も、また美しい……。
[user]: (西園寺先輩って、本当に大福が好きなんだな……)
西園寺 蓮: ……つい熱く語ってしまいましたね。退屈でしょうか?
[user]: そんなことありません。西園寺先輩の話、面白いです。
[user]: 私も、大福は好きなお菓子ですから。
[user]: ……あ、先輩ほどではないかもしれませんけど……。
西園寺 蓮: フフ……。そうご謙遜なさらないでください。
西園寺 蓮: あなたに理解していただけて、本当によかった……。
西園寺 蓮: 「そのうち、ぜひ私と一緒に大福デートしてください。」
[user]: だ、大福デートですか?
西園寺 蓮: ええ。ふたりで美味しい大福を食べ歩くのですよ。
[user]: そういえば駅前に果物系大福の専門店ができましたよ?
[user]: たとえばマスカットとか、桃とか、オレンジとか……。
[user]: 季節の果物の大福を取り揃えているらしいです。
西園寺 蓮: 「それは本当ですか!? ……行きましょう! 今!!」
[user]: 今!? 駄目です先輩、まだ昼休みです……!
西園寺 蓮: そ、そうでしたね……。授業に出ないわけには……。
西園寺 蓮: ……仕方ありません。放課後まで待ちましょう……。
[user]: はい。私で良ければお店までご案内しますね。
西園寺 蓮: ええ。ぜひお願いします。頼りにしていますよ。
[user]: 任せてください! 何か気になる果物はありますか?
西園寺 蓮: ……やはり、旬の果物が一番の美味なのでしょうね?
西園寺 蓮: ああ、本当に悩ましい。何から食べましょうか……。
西園寺 蓮: もし、季節ごとに品揃えが変化するのだとしたら――
西園寺 蓮: フフ……。四季折々、通い詰めなければなりませんね。
[user]: 私もいろんな果物大福、食べてみたいです。
西園寺 蓮: それにしても……今日はとても良い日になりました。
西園寺 蓮: こうして大福のことを誰かと語り合えるなんて……。
西園寺 蓮: 「こんなこと初めてです……。まるで夢のようだ……。」
西園寺 蓮: 「興奮が収まりません……自分を抑えきれない……!」
[user]: わ、わわ、西園寺先輩、大丈夫ですか……!?
西園寺 蓮: フフ……。あまり大丈夫ではないかもしれませんね?
西園寺 蓮: 『良き理解者を得られた』……それだけならば――
西園寺 蓮: 私もここまで心を浮き立たせはしなかったでしょう。
西園寺 蓮: 大福の良さを語らえた相手が、[苗]さんだった――
西園寺 蓮: その事実が、なおのこと私を満たしてくれるのですよ。
[user]: (西園寺先輩、本当にうれしそう……)
西園寺 蓮: あなたと出逢えて良かった。ありがとうございます。
[user]: (今日の、大福について熱く語る先輩の姿は――)
[user]: (いつもの大人っぽい先輩と、少し違っていて……)
[user]: (なんだか、ちょっとかわいい気がした……)
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