[1話]
ヒロイン「あ、いた……!おはよう、周くん!」
周 圭斗「おはよう、なんて挨拶してる暇あるわけ?時計見た?」
「時間ギリギリ。ちょっと早めに来るのがマナーでしょ。」
ヒロイン「ごめんね。でも、急な呼び出しだったから準備が……。」
「今朝、いきなり電話が来て、すごくびっくりしたよ。」
周 圭斗「なんで驚くわけ?……まあいいけど。さっさと行くよ。」
ヒロイン「?……どこに行くの?」
周 圭斗「…アンタ、脳味噌詰まってる?決まってるじゃん。」
「ボクは遊園地前で待ち合わせって言ったんだからーー」
「当然、行くのは遊園地だよ。ほら、チケットあげる。」
ヒロイン「ええっ!?そ、そんなの電話では一言も……!」
周 圭斗「アンタに1から10まで説明してあげる義理ないし。」
「てか、空気読めばフツーわかるでしょ。それともーー」
「……遊園地でデート、って言わないとわからないわけ?」
ヒロイン「……今日って、デートだったんだ……!」
周 圭斗「は、すごい間抜け面だね。……イイよ、そういうの。」
ヒロイン(……あ、あれ。周くん、うれしそうだな……)
周 圭斗「もっとよく見せてよ。なんで顔かくしてんの?○○?」
「恥ずかしいとか?やめてよね。ボクの楽しみが減る。」
「恥ずかしいなら恥ずかしそうな顔、さらけ出してよ。」
[2話]
ヒロイン(うう……。周くんの顔が、すぐ目の前に……!)
周 圭斗「……まあいいか。アンタで遊ぶのも悪くないけど……。」
「せっかくここに来て何もしないのも、もったいないし。」
ヒロイン「えーと……じゃあ、何のアトラクションから乗る?」
周 圭斗「何言ってるの?メリーゴーランドに決まってるでしょ?」
「ほら、早く行くよ。とろとろ歩いてたら許さないから。」
ヒロイン「ま、待って……歩くの早いよ、周くん……!?」
(わ……。周くん、表情は普段通りなのに、なんだか……)
(メリーゴーランドに乗ってると、いつもより幸せそう……)
周 圭斗「○○、なにボクの顔ジロジロ見てるわけ?」
「アンタにそんな権利、許してあげた覚えないんだけど。」
ヒロイン「あ……。ごめんね、周くん……。」
周 圭斗「だから、何?ボクに言いたいことがあるなら言えば?」
ヒロイン「言いたいことってわけじゃないんだけど、その……。」
「周くん、本当にメリーゴーランドが好きなんだなって。」
「普段は明るいところが苦手なのに……。」
周 圭斗「……アンタ、空気読めないとかよく言われない?」
「人の気分に水を差すようなこと、言わないでくれる?」
ヒロイン「ご、ごめんね……。でも、私もメリーゴーランドは好きだよ。」
周 圭斗「……ふーん。その趣味だけは認めてやらなくもないよ。」
[3話]
ヒロイン(周くん、ずっとメリーゴーランドに乗ってる……)
周 圭斗「ほら、さすがに飽きて来た?目、回ったんじゃない?」
「さっきからずっと同じアトラクションに乗り続けだし。」
「せっかく遊園地に来たのに、つまらないって思ったよね?」
ヒロイン「ふふ……。私なら大丈夫だよ。ちゃんと楽しんでる。」
「だから、周くんが満足するまで付き合うよ!」
周 圭斗「……………………。」
「なんでニヤニヤ笑っていられるわけ?意味わかんない。」
「別にアンタを喜ばせるためのデートじゃないんだけど。」
「……ボクが見たいのは、アンタの泣き顔なのに……。」
ヒロイン「?えーと……。周くん、何か言った?」
周 圭斗「なんにも。……やっぱ、メリーゴーランドじゃ駄目か。」
「○○、馬から降りて。他のアトラクション行くから。」
ヒロイン「え?でも、周くん、いいの……?」
周 圭斗「いいんだよ。大体ボクが満足するまで乗る気ならーー」
「遊園地にも最初から一人で来るに決まってるでしょ。」
「今日はアンタが一緒なんだし、違う遊び方しないと。」
ヒロイン「周くん、ありがとう。私のこと考えてくれてるんだね。」
周 圭斗「……お気楽だね、○○。……まあ、考えてはいるよ。」
「アンタが期待してるのとは真逆の方向に、だけどね。」
[4話]
周 圭斗「ここならボクも楽しめそうかな……。ほら、入るよ。」
ヒロイン「って、お化け屋敷なの……!?」
周 圭斗「なに、怖いの苦手?だとしたら期待通りなんだけど。」
「ボクは行くって決めたら行くから。嫌がっても遅いよ。」
ヒロイン「わ、わわ、周くん、引っ張らないで……!!」
「こ、怖かった……。」
周 圭斗「ふーん。」
ヒロイン「……周くんは、あんまり楽しくなかったの?」
周 圭斗「うん。見かけ倒しだったよね。ていうか演出過剰?」
「まあ、中が暗かったことだけは評価してもいいよ。」
「傍にはずっと、うるさいのもいたけどね……。」
ヒロイン「ご、ごめんなさい……。」
周 圭斗「は?なに謝ってんの?勝手に誤解しないでくれる?」
「『うるさくてつまらなかった』なんて言ってないし。」
ヒロイン「え?じゃあ……。」
周 圭斗「涙目になってるアンタ、まあ悪くなかったよ。」
「きゃーきゃー甲高い声で叫んでるのも許せるくらいに。」
ヒロイン(は、はずかしい……)
周 圭斗「あ、○○。今朝言ったこと、もう忘れてるわけ……?」
「恥ずかしいときは、顔、よく見せろって言ったよね?」
[5話]
ヒロイン「も、もう!びっくりしたよ、周くん。どうしてーー」
「ジェットコースターに乗りたいなんて言ったの……!?」
周 圭斗「理由はもちろんアンタの反応が見たかったからだけど。」
「ていうか、アンタが『やめよう』ってしつこいから。」
「こっちも絶対乗ってやろうっていう気になったし?」
ヒロイン「もう……。本当に、どうしようかと思ったんだよ?」
「周くんが笑顔のままで気絶してたから……!」
周 圭斗「アンタの悲鳴をたくさん聞けたのは良かったんだけど。」
「アレ、ぐるぐる回るから、だんだん貧血っぽくなって。」
「あ。……もしかして、ボクが寝てる間に泣いてたわけ?」
ヒロイン「泣いてるどころじゃなかったよ……。」
周 圭斗「……ふーん。ボクが寝てるのに泣かなかったんだ。」
「……まあ、ボクが見てないときに泣かれても、だけど。」
「心配して泣いてくれてもバチは当たらないんじゃない?」
ヒロイン「心配しすぎて、パニックになってたの……!」
周 圭斗「……あのさ、そういうの迷惑だからやめてくれない?」
「叱られるのは全然好きじゃないんだよね。正直ウザい。」
ヒロイン「え?叱るとか、そんなつもりじゃ……。」
周 圭斗「ボクがどんなことしようがボクの勝手でしょ。違うの?」
「アンタにボクの行動を制限する権利、あるとでも思う?」
[6話]
周 圭斗「大体、最初からおかしかったんだよ。」
「明るい時間から遊園地に来るってのがまずありえない。」
「しかも週末だから人多いし。寒いし。意味わかんない。」
ヒロイン「そ、そんな……。周くんから誘ってきたのに……。」
周 圭斗「……………………………。」
ヒロイン「な、なに?」
周 圭斗「確かに今日のボクは最初からおかしかったのかも。」
「いつもなら休みの日だって、部屋から出たくないのに。」
「遊園地へ来るにしても誰かを誘うなんてありえないし。」
「ボクのペースでボクの好きなように遊びたいのに。」
ヒロイン「じゃあ、どうして私に電話してくれたの……?」
周 圭斗「……別に?誘っても誘わなくてもどっちでも良かった。」
「だけど、アンタがボクのために泣いてくれるならーー」
「人混みも、冬の陽射しもまあ許せるかと思っただけ。」
ヒロイン「え……?」
周 圭斗「……ていうか、そのために誘ったんだし。わざわざ。」
ヒロイン「じゃあ私、泣かないと意味ないの……?な、なんで?」
周 圭斗「なんでって。理由なんて別にどうでもいいでしょ。」
「とにかく泣いてほしいんだから、泣いてよ。今すぐ。」
ヒロイン「え、えええっ……!?」
[7話]
ヒロイン「泣いてって言われても、いきなりは泣けないよ……。」
周 圭斗「だからボクが泣きやすいようにしてあげたのに。」
「アンタにはボクのお膳立てが全然伝わってないよね。」
「ホントはもっとボクに感謝すべきなんじゃない?」
「『私のためにありがとう』とか言ってさ。」
ヒロイン「そ、そんなこと言われても……!」
周 圭斗「まあ、今日のボクは、かなりおかしいんだろうね。」
「普段のボクならここまでしてあげることなんてないし。」
「その辺はボクだってある程度自覚してるつもりだけど。」
「もっとおかしいのは泣かない○○のほうだと思うよ。」
ヒロイン「そ、そうなのかなあ……。」
周 圭斗「ボクがこんなに骨を折ってあげてるっていうのにさ。」
ヒロイン「うーん……。」
(でも、思わず涙が出るような展開はなかったし……)
周 圭斗「……じゃあ、アンタはどんなときに泣くの。教えてよ。」
ヒロイン「それは……悲しいときかな。後はうれしすぎたり、とか。」
「とにかく感情が高ぶったときには泣いちゃうと思う。」
周 圭斗「感情が高ぶったとき……。」
「ふーん……。じゃあ、こういうのはどう?」
「ていうか、なんで泣かないの。神経ないんじゃない?」
[8話]
ヒロイン「えーー……!?」
(こ、これって、これってまさか、キ……!?)
周 圭斗「……。暴れるかと思ったけど意外に素直だったね。」
「ボクとしては、血の味がしても良かったんだけど……。」
「もしかしてアンタ、直前に甘いものでも食べてた?」
ヒロイン「…………。」
周 圭斗「で、どう?泣く?」
ヒロイン「……………………。」
周 圭斗「……○○?ねえ、ちょっと。聞いてんの?」
ヒロイン「………………………………。」
周 圭斗「……あーあ、がっかり。いくらなんでも反応鈍すぎ。」
「まあ、ボクと話が合う時点でおかしいのも当然か……。」
「キスくらいじゃアンタの泣き顔、見られないならーー」
「もっと心臓に悪いこと、いっぱいしてあげないとね。」
ヒロイン「こ、これ以上何かあったら、心臓が止まっちゃうよ!」
周 圭斗「ふーん。……じゃあ、もう1回キスする?」
ヒロイン「えっ……!?」
周 圭斗「アンタに死なれたら、泣いてもらえないし困るけど。」
「キスなら生きてたし大丈夫でしょ。……ほら、動くな。」
ヒロイン「あ、あの、ちょっと待って周くん。待っーー!?」
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