しっとり光沢を放つ白い米。
京太郎「これこれ、これですよ」
パカンと殻を割れば…うん、ツヤツヤの白身に包まれて、オレンジ色の黄身が随分映えるぞ。
咲「ちょっとだけー…うんっ」
咲の手元には醤油さし。ほんのちょっと斜めになった口からは、黒い醤油が黄身を染めていく。
やっぱり醤油だよな。そこに味の素をちょこっと。
和「だ、だめです、そんなにかき混ぜちゃだめぇ…」
言いながら和の茶碗の中で、ぐちゅぐちゅとお米と卵が混ざり合っていく。
見た目が悪い? 馬鹿め、米の熱で立ち上る新鮮な卵の香りがわからんのか。
優希「生臭いじぇ…けどこれがいい。はぢめての体験だじょー」
そして醤油のキリッと引き締まる匂い。茶碗に口を付ければもう、顔を包んでくるんだから困る。
久「飲精みたいよね」
聞こえない。
まこ「ずるっと行儀悪く行くのがたまらんのう」
そう。箸で無造作に掻き込んでいくのがいいんだ。
口の中で卵が絡んだ米が溢れて、喉の奥までずるずる引きずられていく。
ごくんと飲めば、今度は鼻に抜ける卵が強烈に匂い立つ。
京太郎「――ごちそうさまでしたっ!」
ああ――これがいいんだよ。歯を磨かないと、っていう僅かな後悔までが、卵かけご飯ってやつなんだ。