うるさいハンドミキサーは大事な相棒だ。
機械に頼らず生クリームなんて作ろうと思ったら、腕が上がらなくなっちまう。
ま、贅沢なんてしませんよ。植物性の生クリームをトロっと冷やしたボウルに流し込めばいい。
咲「わわっ、京ちゃんの手の隙間から白くてドロってした液体が漏れちゃってるよぉ…」
ボウルの下には氷水。ハンドミキサーがガチャガチャ音を立てて、混ぜる砂糖で角が立つ。
ほら、ハンドミキサーが重くなってきた。ちょっと持ち上げるとひっついてきた生クリームが甘くてしつこい光を照り返しやがる。
和「ダメです…そんなにかき混ぜたら泡立ってきちゃいますぅ…」ハアハア
指についたのを舐めてみな。そしたら分かるさ、安いクリームと砂糖の混ざった、よくある生クリームの美味さがな。
で、その後はこっちですよ。夜に卵と牛乳の液に付けておいた食パン。
マーガリンを溶かしたフライパンの上に乗せれば…ジュワっと広がる卵の焼ける匂い。牛乳が混ざって随分とマイルドだけど、それがいい。
優希「私の用意した卵に京太郎の買ってきた牛乳…ちょっとエッチだじぇ」ポッ
さあ出来てきたぜ。焦げ目がついたらひっくり返す、俺の好みはちょっと固めだが…柔らかいのもいいかもな。
しっかりマーガリンの香ばしい焦げ目がついたフレンチトーストの出来上がりだ!
おっと…ちょっと焼きが甘かったかな? ナイフで切ったら中は少し生な部分も…いや、これもいいだろ。
久「ぴったり閉じてると思って開いたらビッチョビチョってこと? 須賀君も好きねえ」
知らんがな。
そんなことより、お待ちどさん! 生クリームの出番だぜ!
黄色と茶色の眩しいトーストの上に、クドイ生クリームを豪快にぶちまけろ!
まこ「こりゃあ凄い。見えとる部分が全部粘っこい白で覆われとる…」
最後はナイフで一口大に切って、フォークで摘まんで口の中。
口の中をコーティングする生クリームと、噛めば噛むほどジュワッと広がる卵とマーガリン。どこかキャラメルっぽい味がするのは気のせいか?
飲みこめば、もっとすごい。食道を落ちる生クリームが最後の抵抗とばかりにしつこく残りやがる。
なんつー、クドイ。これを全部食べたら吐き気がしそうだ。
京太郎「――ごちそうさまでした!」
ああ――これがいいんだよ。その日の飯が食えないくらい気持ち悪くても、それが生クリームの醍醐味だろ?