ガッツリ肉、サッパリ野菜。そんなのとは違う気分の時、選択肢に上るのが魚ってやつだ。
食い方も色々あるよな、刺身、焼き、煮る…みんな違ってみんな良い。日本人の心って感じだろ?
咲「じゃあ今日は女体盛り? 和ちゃんは体温高いから私かなぁ…」
刺身じゃねえ座ってろ、脱ごうとすんな。お前もわりかし体温高めだろーが!
しかし刺身は正直高い。数切れで400円近いと高校生には辛いとこだし、腹も膨れにくい。
そこでこれですよ…マグロの漬け丼! これなら米が腹に溜まって大満足だ!
和「なんなんですか? 私はマグロじゃないですから、確かめてみてくださいよ!」
なんでお前は半ギレしてんですかね。お前の頭の辞書は自費出版とかなのか。
まあキハダとか、その辺のは買わないでおくぜ。狙い目は備長マグロ、これが安いんだよ。
あんまりスーパーには無いことも多いし刺身だと正直微妙もいいところ。けど漬けならそこはあんまり関係ないからな。
久「穴さえあれば顔やスタイルはなんでもいいってことかしら?」
言いたいことは分からんでもないが言い方ってもうちょい工夫できるよね。
大事なのは前日から漬けておくこと。食う直前に付けても微妙な生臭さのほうがしっかり残っちまう。
液は醤油、みりん、料理酒、本つゆ、わさびを密閉容器へ。味を見ながら適当に混ぜて、テキトーに切った切り身を沈めていく。
そんで冷蔵庫へ入れて、次の日まで待つ。そんだけだな。
まこ「ほー…壺の中で色々混ざった液に付けこむわけじゃな」
だから言い方! 壺だと上が密閉出来てないだろ!
盛りつけは簡単に、ご飯をよそったらその上に刻みねぎを好きなだけ。漬けマグロを乗せて、最後に温泉卵を落とせば漬けマグロ丼の出来上がり!
手間もそんなにかからないし、食べる時もササッと準備できるからおすすめだ。
優希「たとえばー…旦那が急に帰ってきた時に出したりとかー…」
? まあいいんじゃね? 俺も遅い時とかでこれが出てきたら嬉しいかもな。
さて…箸を突き入れればほかほかの湯気、けどネギのおかげで上のマグロは冷たさが残ってる。いい塩梅だ。
上品にそれぞれ食べるなんてしないぜ? 米とマグロ、ねぎを一度に掻き込むのがいいだからな。
アツアツの米のかぐわしさ、醤油とワサビがベースになった香ばしさ引き立てあいやがる…それをネギの辛くサッパリした味が邪魔してくる! 次を寄越せって言いやがる!
まあ待てよ…焦らない焦らない。何のための温玉だ? 真ん中から割ってみればトロリと溢れる黄身の色。
しっかりマグロと絡ませれば…赤黒い艶に黄身の化粧、輝きが止まらねえ…口に入れればマイルドな君が、マグロの尖った味を包み込む…!
京太郎「――ごちそうさまでした!」
ああ――これがいいんだよ。素材が安いなら調味料をぶちかませ。これがお値打ちってやつ…とは違うか?