飼育

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「ご飯、全部食べれました?」

「うん。全部、食べたよー」

 

にこにこと笑いながら、先輩は顎を軽く突き出した。眼前に置かれた餌皿を器用に押し出して、唾液で光る空のソレを見せつけるように。

 

「…よく、あんなの食べられましたね」

「あはー。京太郎君のだもん、ちょっとでも残したらもったいないよー」

 

杭につないだ鎖。そして首輪につながる鎖。薄汚れたボロの制服は、汚れた毛並みみたいにすえた匂いがした。

見下ろせば枝毛だらけの黒くて長い髪。そういえば、背丈は俺よりずっと高かった気がする…もうずいぶんと、この人が立ち上がったのを見たことが無いからその印象も薄れてしまった。

 

「京太郎くん…きょうたろうくん…」

 

甘えた声で喉を震わせながら、首筋を俺の足に擦りつける。犬がそうするように、この人もそうしている。

きっと尻尾があれば振り回しているんじゃないか? そう思わせるくらいには、幸せそうに顔を緩ませていて。

首輪の鎖の代わりにリードを付けてやると、それはもう、輝くような笑顔を見せてくれた。

 

「わわ、散歩? 嬉しいよー、久しぶりだねっ」

「たまには行かないと。ほら、こっちですよ」

 

ここで強く引くわけにはいかない。声に反して弱弱しい四つん這いの先輩は、そんなに早く動けないから。

ゆっくりゆっくり、少しずつ。けどそれでもいいんだ。だって、行先はすぐそこなんだから。

 

「……」

 

布団だ。シーツこそ新しく敷いたものの、使い古した煎餅布団。まあ…この人の寝床よりは文明的かもしれないけどな。

それでもこの人は、嬉しそうに布団へと身を投げ出した。ゴロゴロと回る姿は以前と同じ可愛らしさで…少し、嫌だった。

 

「きょうたろーくぅん…」

 

目元は期待に濡れて、手足は軽く曲げて、仰向けになって。

捲くれあがったスカートの下には何も無くて、べとべとの粘液が漏れだしている。触れてみればねちゃりと糸を引く。

 

「うぁ…ふ、はぁう…」

 

それだけで息は荒く乱れて、けものみたいに交尾を求めて見つめてくる。

言葉も無く、手で引くわけでもなく。ただ犬のように感情の溢れる瞳でねだるだけ。

 

「いきますよ」

 

たったそれだけの言葉をかけるだけで、先輩の声が薄暗い部屋に響く。何度も、なんども。

けれど、俺の名前を呼ぶ以外に意味ある言葉は、とんと出ることは無かった。