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「ここで大人しくしてるんだ、いいな」
「ええ、もちろんです。6時間後、キチンとお話致しますので……」
「どうだか……アンタの言うことは信じれるようなモンじゃない。
 そう言うなら今すぐにでも情報を提供したらどうだ?
 どうせ、もうそこから動けないことが確定しているんだ。
 さっさと殺し合いを脱出出来たほうがアンタも下手に殺されるリスクが減るぞ」
「いいえ、そういうわけには参りません。情報を話せばそのまま殺されるかもしれませんから」
「俺はアンタをお情けで生かしてやってんだぞ? それに応えようと思わないのか?」
「私は慎重なものでして。本当に私の命が保証されたと確信したらすぐにでもお話します」
「面倒くさいやつだな……」

クタタンは得体の知れない愛想笑いを浮かべる。
ミルコ・クロコップはそれを憎たらしげに睨みつけた。

ここは病院1階にあるロッカールーム。
ベンチが2台ほど並べられ、壁にずらりとロッカーが固定されている。
それ以外には何もない、窓すらもない単純な構造の部屋。
クタタンはそこに両手をロープで縛られた状態で閉じ込められた。
抉られた右腕は止血され、包帯を巻いて応急処置を施されている。

「ところでこの赤と白の球、説明書はどこにやった?」
「それがですね、付属されてなかったんですよ。不備なものですよね。
 ……あぁ、それは爆弾です。かなりの威力を持ったとなっております。
 知らずにそのボタンを押したところカウントダウンが始まったので、慌てて投げ捨てたのですが、建物が一つ壊れてしまいました」
「既に一つ使ったということは、そんなシロモノがいくつも入ってたってことか?」
「二つです。それが最後の一個となっております」
「どっちにしろ、こんなものを取っておくにはリスクが大きすぎる。後で破棄するぞ」
「フン、勿体無いですね……」
「もう一つ、この白い棒が何なのか答えろ」
「それはアーチという武器です。端を引っ張ると物体を浄化させるエネルギーが放出されます。
 私を襲ってきた老婆と男性一人には、それを使って対応したんですよ」
「そうか。もうこれ以上聞くことは無い。寝ていろ」

病院に到着した時に、まずその惨状に驚愕したものだ。
表側のほうはそれほど目立った状況ではないが、駐車場側が破壊され尽くしているのだ。
黒く焼け焦げた中規模のクレーターがあり、焦げている何かの残骸が散らばり、さらにはアスファルトがひっくり返された跡も見受けられる。
ここに向かう途中、大きな爆発の音を聞いていたが、ここが発信源だったのだろう。
窓ガラスは爆風や破片によってほとんどが粉々に砕かれ、壁には銃痕が残されており、さらには低階層の壁の一部が崩落している。

ここで大規模な闘争が行われていたのには違いない。
一つ不思議なことといえば、駐車場側以外が全くと言っていいほど被害を受けていないところだろうか。
とりあえずミルコは、ウラーとモナーに病院内の探索を頼んでおいた。
構造の把握が必要なことと、そして闘争の生き残りが中にいる可能性があったからだ。
その間にミルコが、一人でクタタンの見張りを行う。

  ∧_∧
  ( ´∀`)
ミ (  つつ
  )  ) )
 (__)__)

「ただいまモナ」

  A_A
 ( ´Д⊂ヽ
⊂    ノ
  人  Y
 し (_)
「一通り把握してきたウラ……」

しばらくして、モナーとウラーが戻ってくる。
話を聞く限り、誰かが隠れている様子はなかったそうだ。

「血が凄い箇所があったウラ……でも誰もいなかったウラ……」
「あと、ボロボロに壊されていたのは駐車場側だけだったモナ。
 そっち側でなにか起きたに違いないモナ」
「調査、ご苦労様。しばらくはそこの病室で休息を取ってくれ」
「了解しましたモナー」

殺し合いの開始から既に7時間が経過している。
目覚めてから現在まで、3人とも一睡もしていない。
ミルコはそれでも全く問題がない、しかし一般人である猫二人はそうはいかない。
今のところ身体的な疲労は少なくとも、後々響かないように休んでもらったほうがいいだろう。

安全を考慮して、なるべく近くの部屋に指定した。
なるべく自分の目の届く範囲に集まってもらったほうが安全だからだ。




そうして、1時間程経過しただろうか。
外から奇妙な音が響いてきた。

キュラキュラキュラキュラ……

車椅子を漕ぐような車輪の音が、徐々に大きくなってくる。

キュラキュラキュラキュラ……

ロビーの窓から外を覗き込む。
そしてその音の正体には、流石に驚きを隠せなかった。

「戦車……!? あんなものが支給されてるのか……」

病院の前の道を、一台の戦車と一人の男が歩いていた。
明らかに重厚な車体にそぐわないほど軽快な音を共にキャタピラが回る。
ミルコはすぐさまモナーとウラーを起こした。

「起きろ、今すぐそこに得体の知れない奴らが来ている」
「まさか……襲撃モナ……!?」
「わからないが、相手は戦車を所有している。仮に敵意があった場合、この建物も容易に破壊出来るだろう。
 俺が奴らの様子を見てくるからその間、ここでクタタンの見張りを頼んだ。
 あと、もし何かあった時は荷物を持って、自分たちだけでもすぐさま逃げるんだ」
「わ、わかったモナ。気をつけるモナ……」

護身用としてアーチのみを持ち、表側の方へと向かう。
防具といえるものが無い以上、身軽な方が都合がいいからだ。


 ◆


(……さん……お姉さん……)

チハの呼ぶ声が少し遠くに聞こえた。



(お姉さん、そろそろ起きてよー)
「……ついウトウトしてしまったわね。今どの辺にいるのかしら」
(もう病院の近くだよ)
「……あのさ、少し離れた場所って言わなかったっけ?」

目覚め早々、マッマの機嫌が悪くなる。
というのも、彼女はもっと慎重に行動したいと考えていたのだ。

マッマとやる夫、そしてチハは地図に書かれていた『病院』に足を運んでいた。
病院、それは先ほどの爆発が起こった場所。危険人物がいる可能性が高く、出来れば近づきたくないと考えていた場所。
しかし、爆発音を聞いてわかることはあくまで"方向"だけである。
どの程度の距離なのか、といった細かい位置情報は、高地から見ない限り特定するのは難しい。
だから爆心地である可能性を考慮し、ある程度離れた位置でこっそりと様子を伺ってから行く、という話だった。

(え、てっきり入口付近かと……。僕は中に入れないし……)
「もし中に危険な奴がいたら狙われるかもしれないじゃない! それくらいわかるでしょ!?」
(ご、ごめんなさい……)
「あーもう、私は疲れやすいトシだっていうのに、誰かさんがわがまま行って私を歩かせるから……」
「なんでやる夫に八つ当たりするお……」

度々こちらに飛び火してくるのに、やる夫はげんなりする。
完全にストレスのはけ口として扱われている気がする。正直嫌である。
でも文句は言えない。ここからあのやきう兄みたいに一人で出て行く勇気がないから。
少なくとも頭の働くマッマと、安全な戦車と行動すれば安心を得られるのだから。

「まったく、仕方ないわ……見た感じ病院に壊されてる様子とか無さそうだし、こっそりと忍び込もうか。
 本当だったらもう少し慎重に行きたかったんですけどね? はぁ……」
(面目ない……。気をつけてね)

マッマはチハの蓋を開け、外に出る。
と、その時、すぐそばから駆け寄る足音。
反応も間に合わず、突如ガタイのいい男にやる夫の体は押さえつけられる。

   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \ ←ミルコ
 |   ( ●)(●)
. |     (__人__)____
  |     `-/  ─' 'ー\
.  |      / ( ○)  (○)\
.  ヽ   /   ⌒(__人__)⌒ |  ガシッ
   ヽ  |、      ` ⌒´  /
   /   `ーー/⌒^)(⌒^ ー )
   |   、 _   __,,/ヽ   / \
「ウワアアァァァ!!」
「あんたら、殺し合いには乗っているか?」

パニック寸前のやる夫に対し、男は厳かな声で問いかけてきた。


 ◆


「……とりあえず、荷物を整理しておくウラ……」
「そうモナね。いらない物は捨てるモナ」

ミルコが持っていったアーチ以外の物を取り出す。
ロープ、普通の縄だ。クタタンを縛るのにも使用している。便利。
工具セット、知識が無い自分たちには使えないが、おそらく分解や組立に役立つだろう。。
バスタードソード、自分でも正直持て余してるが、一撃ぶつければノックダウン出来るはずだ。
赤いシューズ、キック力を増強させるというがサイズが合わない。
というのも、自分たちの足のサイズは異様にデカイ。


   A_A 
  ( ´∀`)
  (    )
  | | |
  (__)_)←このように太ももよりも足のサイズが大きい。
ツボを刺激して脚力を向上させる仕組みらしいので、改造すれば自分らに役立つ物となるかもしれない。
ちくわ大明神、小腹が空いた時に食べることで満足を得られる。
オレオ、小腹が空いた時に食べることで満足を得られる。
ポイントカード、お餅の絵が描かれている。該当する店で使えばお得だろう。
結局、何も捨てなかった。

そして、クタタンの持ち物である、赤と白の球体が目に入る。

「おっさん、これは一体なんだウラ?」

ウラーはロッカールームの扉越しにクタタンに尋ねた。

「そのカプセルですか。フフ、それこそがですね、この殺し合いからの脱出に必要な道具なのですよ」
「モナ!? 今それを話すって、どういう風の吹き回しモナ!?」

平然と答えるクタタンに思わず驚愕の声をあげた。
本来の約束であれば、6時間後に教えてくれるという話だったはずだ。
今それを教えてしまうのは明らかに怪しい。

「ミルコさんには既に話しましたが、それは所謂、収納箱なんですよ」
「収納? こんな小さなボールに入るわけないウラ! いい加減にしろウラ!」
「これは特別なカプセルなんです。大きさとか形状とか、"普通のカプセル"というくくりでは考えてほしくないんです。
 もちろん、その中に入っている道具の使い道や、具体的にどうすればいいかの情報は黙秘させてもらいますが」
「ふむ……そういうことかモナ……」

つまり、脱出のためのヒントがこの中に収められているということだ。
クタタンがやけに落ち着いた様子だが、その道具を見ただけで方法がわかるものではない、という自信があるのかもしれない。

「それにしても、ミルコさんが帰ってくるのがちょっと遅いモナ……。
 もしかしてホントに何かあったとか……いや、ミルコさんがそんな簡単に何かあるはずが……」
「やめろウラ! 不安を煽るなウラ」
「いやぁ、私もヒヤヒヤしますよ。彼に何かあったらマズイですね……。
 一応お二人は荷物確認を済ませて、用意をしたほうがいいと思いますよ」
「そうやって媚を売っても、簡単に心を許したりはしないモナよ。
 私はなるべくミルコさんの指示に従うつもりですからモナね」
「媚を売るだなんてそんな。身の安全を確保したいだけですよ。
 それに、後々あなたがたに脱出策を教えるんですから、媚を売る必要はないでしょう?」

ぐぬぬ、とモナーは口篭った。
ウラーはそれを横目に見て、そして赤と白のカプセルを手にした。

「まぁ、ちょっと中身は気になるからなウラ。見せてもらうウラ」
「ええ、どうぞどうぞ」
「ウラーさん、あんま勝手なことをしないで欲しいモナ!」


 ◆


病院の玄関で、ミルコとマッマたちは情報交換を行う。
ミルコが掲げる目標――脱出のために首輪を外す、そしてそのために技術力のある者を探す。
それにはマッマはおおむね賛同し、さらにその目的に対する問題点を指摘した。
少なくとも首輪の構造を把握するために、実験用の首輪が必要だと言うこと。

「流石に人の首に着いてる物を、ぶっつけ本番でいじるわけにはいかないでしょ?
 申し訳ないことだけど、既に死んだ人のから調達する必要はあると思うわ」
「あぁ、おそらくそれもやむを得ないだろう。外をある程度探索すればすぐに見つかるかもしれないな」
「いやだ、不謹慎ねぇ」
「そういう世界だろ、ここは」

もはや見知らぬ者の死に対する気遣いが出来るような精神状態ではない。
生きている者を救うためには、既に死んだ者の首輪を取ることもやむを得ないのだ。
死者の首を切り落とす、普通なら残酷極まりない行為だが仕方のないこと。
二人は既にそれを理解していた

ふと壁にかけられた時計を見て、10分くらい話し込んでいたことに気付いた。

「……おっと、連れを待たせてしまっていた。一旦奥へ来て欲しい」
「あなたの他にも誰かいるのね」
「モナーとウラーだ。見た目はちょっと妙だが驚かないで欲しい」
「大丈夫よ、変なヤツには慣れてるわ」
「それなら安心だ」
「待って、変な奴って誰のことだお」

蚊帳の外にいたやる夫がここでようやく会話に入った。

……と、その時。

「ひぃぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

悲鳴、とても長い悲鳴が病院内に響き渡っていた。
続けて男の声。何かを語りかけるような声。
ミルコ・クロコップはすぐさま駆け出した。
あの悲鳴はウラーのものだった。そして男の声の主は、クタタン。
ここで少し気を緩めて話し込んでいたために、クタタンに付け入る隙を与えてしまったに違いない。
早々に止めに行かなくては……!



奥へと走り去るミルコの姿を見て、

「何!? 何なの!? あっちで誰か襲われているの……!?」

あまりに突然の出来事に、マッマは大きく戸惑った。
ミルコの"連れ"が何者かに襲われたのは間違いないだろう。
だとすれば、自分たちも助けに向かうべきか。

しかし、今自分たちには銃器などに応戦出来るほどの武器を持っていない。
ここで感情に任せてミルコの後を追ったところで、何が出来るというのだろうか。
相手がとんでもなくヤバイ奴だった場合、きっと自分の命も危機に晒されるだろう。
果たして、出会って数分の者のために、危険を冒してまで助けに出るべきか。

短い時間だが、マッマは悩んだ。そしてその口から言葉がつぶやかれる。

「……ごめんなさい。私たちが行ったところで何も出来ないわ……」

出てきたのは謝罪の言葉。
不用意にリスクのある行動を取りたくなかった。
例え、助けたいという気持ちが本物であっても、無駄に死ぬ可能性がある選択は選べなかった。

「やる夫、逃げるわよ」
「わ、わかったお……」

やる夫もまた、その意見に反対しようとはしない。
これは薄情な行為かもしれない。
しかし今は、自分の命のほうが、長く行動した者の命のほうが大切だった。

二人は黙ったまま、外へと走り出した。

(あれ、お姉さんたちどうしたの?)

事情を簡単に説明し、すぐにチハに乗り込んでその場を離れた。
後でまた必ずここを訪れる。
どうか男が無事でいられることを祈らずには居られなかった。


 ◆


廊下を全力で駆け抜け、奥のロッカールームの方へと進むんだ。
そこに広がる光景は、想像しうる中で最悪のものだった。
赤、赤、赤。
生き物という容器に目一杯詰められた、血液という液体。
その大量の液体が溢れ出て、廊下に大きな池を作っている。

ぐちゃり、ぐちゃり、ぐちゃり。
肉を貪る黒い怪物の姿あった。
内臓を引きちぎり、牙でさらに滅茶苦茶に咀嚼されていく。
怪物が食しているのは、ミルコが知っている顔。
タレ目を少しだけ引きつらせた驚愕の表情を携えたまま、ピクリとも動かない。

「ネメア、アイアンヘッド」

クタタンの声に反応し、化物はすぐさま食事を中止する。
赤く――文字通り血のように赤く、ナイフのように尖った鋭い角が、ミルコの方に向けられる。
そして突撃。
ミルコはその動きを捕捉する。そしてギリギリまで引き寄せ、左側へと抜ける。
真横の位置から、強烈なキックを叩き込む。確かな手応え、怪物の体が僅かに軋む。

急停止をした怪物はこちらへ居直ろうとする、そこへもう一撃蹴りを叩き込む。

「てっぺき!」

クタタンの指示、刹那、ネメアの体が水銀のような光を放つ。
鉄壁――それは、肉体を鋼の如く硬化させるポケモンの技。
ミルコのハイキックが炸裂した時、金属的な音を響かせる。

「―――ッ!?」

予測していた硬さを遥かに凌駕していた。ゆえに足の方が甚大な損傷を受けてしまう。
内部から奇妙な音が立ち、異様に鈍い痛みが走る。
これはひびが入ったに違いない。襲い来る苦痛に、ミルコはおもわず顔を歪ませた。

ネメアはそのままミルコに覆いかぶさり、マウントポジションを取る。
そして迫り来る牙……咄嗟に手に持っていたアーチをネメアの口に押し付ける。

ガンッ

不意だった。頭を思い切り鉄の塊で殴られた。
視界が大きくブレる。意識の集中が途切れたことにより、アーチをひったくられてしまう。

虚ろな目を無理やり開かせた先には、バスタードソードを構えたウラーの姿があった。
その顔は恐怖に満ち溢れ、たった今自分が行なった行為にも焦りをあらわにしていた。

「ウラー、一体何を……」
「悪くない、俺は悪くない、悪くないんだ、殺さなきゃ俺が殺される、だから悪くないんだ。
 これは正当防衛なんだ、悪いことじゃないんだ、仕方ないんだ、自分の命を優先していいんだ」
「お前は、何を言っているんだ」
「あんな殺され方はしたくない、だから仕方ないんだ。俺が生きるためだから、悪くない。
 きんきゅ、緊急き、ひ、避難法、緊急避難法が、ついて、ついてるんだ、俺には」

もはや気が動転して、言っていることが正しい文を成していなかい。
だが大まかな意味は伝わる。少なくとも、クタタンに恐怖を刷り込まれているのだろう。
モナーが殺される様を間近で見せられ、「自分もこうなりたくなければミルコ・クロコップに襲いかかれ」と。
そう言われたに違いない。

「メタルクロー!」

鋭く尖った爪が、ミルコの胸を思い切り貫く。
激痛、喉の奥から血がこみ上げ吐血する。
ほとんど致命傷に近い一撃だった。

「フフフフ、いいお姿ですねぇ。自分が虐げた人物に逆襲される気分はどうですか?」
「クソ……何なんだこのモンスターは……」
「先ほど赤と白の爆弾、正しくはモンスターボールっていうカプセルなんですけどね。
 そこに入ってたんですよ、私の従順な下僕としてね。
 ついでに言えば、このネメアを出してくれたのはウラーさんですよ、感謝しなくてはいけませんねぇ」
「やはりお前は……すぐに殺しておく、べきだった……」
「今更そんなこと言っても遅いですよ。甘かった自分をせいぜい恨みなさい」

そう嘲り、そして笑った。
あぁ、この憎らしいクソッタレに今から制裁を下せる。
散々侮辱しやがった罰を与えられる。
考えるほどに愉快な気持ちが湧き上がってくる。

「ネメア、そいつをしっかりと押さえておきなさい」

ネメアの前足が乱暴に顔面を押さえつける。
動けない様を見て、クタタンはその傍へと近寄り、思い切り蹴りつけた。
何度も、何度も、まるでサッカーボールを蹴るように放っていく。
叩かれた痛み、プライドを傷つけられた怒り、それら全てを足に込める。
頭部の形が徐々に変わっていく様を見るうちに、愉悦が溢れ出していく。

「ははは、はははは、ははははははっ!! どうだ? 何も出来ずに一方的にやられるのは?
 痛いか? 悔しいか? 私が憎いか? ははははははははははははは!!! ざまを見ろ!!」

なんと清々しい感覚だろうか。なんと爽快なのだろうか。
一撃ごとに心に渦巻いていたストレスが発散されていく。
曇天の空に大砲をぶち込んで、風穴を開けて青空を拝むような、そんな感覚だ。

「あはははははははははは!!!」

人間の中にある残虐性、それを解き放つことはこれほど素晴らしいことなのか。
罪悪感や背徳感、報復に対する恐怖が無ければ、こんな面白いものはないだろう。
笑いが止まらない。


その時、クタタンの足の動きが止まる。
彼の足首を、ミルコの手ががっしりと掴んでいた。
そして。

「放しなさ……ぐがああああああああぁぁぁぁぁ!!!」
「図に……乗るな……!」

人間離れした握力によって、足を砕かんと強く握られる。
骨がミシミシと悲鳴を上げる。血液がみるみる鬱血していく。
痛みに顔を歪めながら、クタタンはすぐさま指示を下す。

「ネメア、こいつの腕を切り落とせ!!」

メタルクロー。
ミルコの丸太のように太い腕が容易く引きちぎられる。
噴水のように、大量の血が吹き出して、床をベッタリと染める。

「ひぃぃ……ッ!」

離れて見ていたウラーは耐え切れず悲鳴を上げる。
白い壁や床を赤黒い液体が染め上げ、鉄臭い空間が出来上がっていた。
スプラッタ映画そのもののような光景が、眼前に広がっているのだ。

「ウラー……聞け……」

名指しで呼ばれ、ウラーは飛び上がった。
ミルコは息も絶え絶えな様子だった。
死は目前に迫っている。その中で、自分はどんな怒りの言葉をぶつけられるのか。
それが怖くて、ウラーはガタガタと震えだす。

「――いいか、聞けよ!!!?」
「ひ、はいィッ!!」

突然、病院に響き渡るような力強い怒号が放たれる。


「間違ってもお前は助かっちゃいねぇぞ、次がお前の番だ!! それを理解しろよ!!!」


「五月蝿いですねぇ。病院では静かにするものですよ」

クタタンは足首を掴んでいた手を引き剥がし、思い切りミルコへと投げつける。
そして平坦な声で指示を下す。

「ネメア、殺しなさい」
「グオオオオォォォォン!!」

咆哮を上げ、ミルコを首筋から噛み千切った。


 ◆


『ウラーさん、あんま勝手なことをしないで欲しいモナ!』

モナーの制止も聞かず、ウラーは何の気なしにカプセルのボタンを押した。
ポン、と小気味の良い音と共にカプセルは開かれ、中から現れたのは。

『グオオオォォォォン!!!』

漆黒の毛並みを持つ、禍々しい怪物の姿があった。
獅子のようで魔物のようで、死者のような呻き声を上げつつ、全身から強い血の臭いを放っていた。
俺もモナーもその場で腰を抜かして、ただ震えていた。
その怪物が俺たちを獲物として見ている、このまま殺されてしまうと思った。

と、その時クタタンはドア越しに囁いた。

『ウラーさん、そのカプセルを私に渡してください。
 その最強の生物を使役出来るのは私だけなのですから。
 この生物、ネメアを使ってあなたを殺し合いから守り抜きます、どうですか?』

それは悪魔の囁きだった。
そして俺は、それに応じてしまった。
『最強の生物が俺を守ってくれる』というのに期待を抱いたのもあるかもしれない。
しかし、このままでは怪物に食われるかもしれない、という恐怖が俺の背中を押したんだ。



『ウ、ウラーが裏切ったモナ……』
『すまないウラ。でも俺はどうしても死にたくないウラ……。
 生き残らせてもらいたいウラ……本当に許して欲しいウラ……!』
『……どっちにしろ、同じモナよ! この次に死ぬのはきっと……』
『さぁネメアさん、アイアンヘッドです』
『オマエモナー!!』

鋭い角で突き上げられ、モナーの臓器が破壊される。
そこからは描写するに値しない。ただただ、食事が行われていた。

『俺は……俺は……』

モナーの言葉が耳に張りついていた。
そうだ、選択を間違えてしまった。きっと用済みな自分は、このまま殺されるんだ。
ネメアの爪によって拘束を解いたクタタンが、笑みを浮かべながらこちらに近づく。

殺される。すぐに殺される。

『ひぃぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』
『落ち着いてください、私は約束を守ります!! あなたを殺す気はない!!』

俺は悲鳴を止め、クタタンの次の言葉を待った。

『我々が生き残るために、邪魔をするであろうミルコ・クロコップも排除します。
 チャンスを見て、思い切りミルコ・クロコップに攻撃をしなさい。
 彼を倒せば、あなたの行いを攻める者は誰もいない。それに、最強の味方を得ることが出来るんです』

クタタンの命令を断る勇気は、俺の中にはなかった。
そして、その通りに実行した。かつての仲間が死ぬ様をただ見ていた。


 ◆


抗えない嘔吐感。
ウラーはその場で胃の中の物を吐き出した。
目の前の惨状が、仲間を裏切った罪悪感が、俺の中で蠢いていた。

「俺は、俺は、うわああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

ボロボロと涙がこぼれ落ちる。。
この殺し合いから生きて返してくれると行ったミルコが、もう動かない。
まるで兄弟のように容姿が似ていたモナーが、もう動かない。
自分がどれほど取り返しのつかない行いをしたのか、それを痛感した。

「ウラーさん、あなたの判断は正しかった。
 あなたは生きるために何かを犠牲にする決断をしたのです。
 それを恥じる必要がどこにあるのでしょうか」

クタタンはそう言って俺の背中をさすった。
先ほど、ミルコを蹴りつけていた時とは全く違う、とても優しげな口調だった。

「アンタが……アンタさえ居なければ俺はこんな……」
「選択したのはあなたでしょう。安心してください、私の頭脳とネメアの力があれば、あなた一人くらい背負うのは容易ですよ。
 生き残りたいんでしょう? 生き残るのがあなたの願いですよね?」
「あぁ……」
「なら、死んだ彼らのことは忘れてしまいなさい。自分の命だけを考えればいいのです」
「…………」
「そうそう、あなたにご褒美を与えましょう。
 私たちが生き残るのに、最高に有利になるものです。
 ちょっとPDAを使わせていただきますよ」

クタタンは自身のPDAと、ウラーのPDAを同時にいじる。
何かしらの通信を行い、そしてウラーにPDAを操作していた。
これでOKです、と言って、その画面をこちらに見せる。

「私の殺害レベルをそちらに移し、忍法帖プログラムの"専用ブラウザ"をインストール致しました。
 周辺にどのくらいの参加者がいるのかを、完璧に把握出来る画期的なアプリです。
 これで不意打ちを受けることも無くなります、死のリスクがグッと減らすことが出来るのです」
「……俺はホントに、これで良かったウラか……。
 ホントにあんたは俺を助けてくれるんだろなウラ……?」
「もちろんです。私の下に付いたからには、相応の待遇を与えますとも。
 殺し合いを終わらせるためのあなたの手伝い、期待させていただきますよ」

その優しげな顔の裏で、何を考えているのだろうか。
最初からわかっていた。クタタンを絶対に信用出来るはずが無いと。
モナーの最後の言葉が、ミルコの最後の言葉が脳内にこだまする。

きっと良いように利用された上で、必要とあらばすぐに俺を殺すつもりだろう。
そう、自分が殺される番を後回しにしただけなのだ。

でも、もう後には戻れない。
クタタンと共に行動する以外に、自分が少しでも生きる道は残されていないのだから。


【モナー@AA 死亡】
【ミルコ・クロコップ@AA 死亡】


【C-3/病院内/一日目・午前】
【クタタン@ゲームハード】
[状態]:健康、右腕に治療済の切り傷
[装備]:ネメア@ポケットモンスターアルタイル・シリウス、PDA(忍法帖【Lv=02】、ちくわ大明神@コピペ、アーチ@エルシャダイ
[道具]:PDA(忍法帖【Lv=00】、ちくわ大明神@コピペ、アーチ@エルシャダイ、
[思考・状況]
基本:優勝し、世界を美しいモノへ創り上げる
1:相手を見極め、出来るならば他の参加者に「協力」を呼びかける
2:ウラーは手駒として利用するつもり
3:いわっちには自分の思想を理解してもらいたい


【ネメア@ポケットモンスターアルタイル・シリウス】
[状態]:支給品、健康
[思考・状況]
基本:クタタンの指示に従う
※使える技は、アイアンヘッド、悪の波動、メタルクロー、鉄壁です。


【ウラー@AA】
[状態]:死に対する恐怖、悲しみ、罪悪感
[装備]:バスタードソード@FF&ドラクエ(FF7)
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】"専用ブラウザ"をインストール済)、オレオ@イタチコラ画像、ポイントカード@当店のポイントカードはお餅ですか
[思考・状況]
基本:生存最優先
1:クタタンに着いていく
2:とにかく死にたくない……
3:化け猫(お断りします)とライオン(サバンナ)を警戒

※忍法帖プログラム"専用ブラウザ"をインストールしたため、周囲の参加者の位置がわかるようになりました。




【C-3/病院付近/一日目・午前】

【やる夫@ニュー速VIP】
[状態]:負傷(中程度)、血が付着、テンションsage、擬似賢者モード
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2(確認済み)、しょうゆ一㍑(1/4消費)@現実
[思考・状況]
基本:性欲喪失。とりあえず今は生き延びる
1:病院から離れる、ミルコたちに罪悪感
2:アイツ(やきうのお兄ちゃん)は怖いけど……でもマッマの言う通りにする
3:チハからは離れたくないけど、畜生マッマから離れたい。今のとこ出来そうにないけど
4:やらない夫がちょっと心配。でもやっぱりおにゃのこには会いたい
※擬似賢者モードによりテンションが下がり、冷静になってます。性欲が回復すれば再び暴走するかもしれません。

【畜生マッマ@なんでも実況J】
[状態]:健康
[装備]:ぬるぽハンマー@AA
[道具]:基本支給品一式×2、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~1(治療に使えそうなものは無いようです)、ハイヒール一足@現実
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める
1:病院から逃げる、ミルコたちに罪悪感
2:あのバカを追いかける。
3:とりあえず、やる夫を戦闘要員兼弾除けにする。グンマーはどうしようか……
4:やる夫の友達のやらない夫に親近感

※ミルコ・クロコップと情報を交換しました。
※爆心地が病院だと言うことを知りました。


【チハ@軍事】
[状態]:損傷無し、燃料残り77%、内部が少し醤油臭い
[装備]:一式四十七耗戦車砲(残弾無し)、九七式車載重機関銃(7.7mm口径)×2(0/20)
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品1~3(治療に使えそうなものは無いようです)
[思考・状況]
基本:死にたくない
1:マッマの言う通りにする
2:殺し合いに乗った人には会いたくない
3:やきう兄に強い警戒。グンマーは……
※チハは大戦中に改良が施された、所謂「新砲塔チハ」での参戦です。
※チハは自分の武器の弾薬が無い事にまだ気づいていません。


《支給品紹介》
【オレオ@イタチコラ画像】
『NARUTO -ナルト-』の登場人物、うちはイタチのコラ画像において、
「サスケェ!お前の前のたなの オレオ とって オレオ!」というセリフから、
オレオを支給。白いクリームを黒いクッキーでサンドイッチした美味しいお菓子。

【ポイントカード@当店のポイントカードはお餅ですか】
どこかの店のポイントカード。無料で作ってもらえて、使うたびにポイントが貯まる。
正直、ハズレ支給品と思われる。


No.96:Do it right 時系列順 No.98:天才あらわる
No.96:Do it right 投下順 No.98:天才あらわる
No.76:さー、新展開。 ウラー No.:[[]]
ミルコ・クロコップ 死亡
モナー 死亡
クタタン No.:[[]]
No.92:答えのない自問自答 やる夫 No.102:孔明「これがチハちゃんですか」
畜生マッマ
チハ