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暇を持て余した神々の馬鹿騒ぎ

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暇を持て余した神々の馬鹿騒ぎ  ◆czaE8Nntlw




ゲームクリエイターは過酷な職業だ。
良い案を出せるまで徹底的に会議を重ね、ようやく使えそうなアイデアが出れば今度は一日中データや設定を固め、また会議。連日の徹夜とてさほど珍しい事ではない。
そんな毎日が続くと、時折不思議な出来事に遭遇する。
空を飛ぶ謎の円盤を見たり、妖精と出会ったり。
なんということはない、ゲームクリエイターの職業病であり、激務の勲章のようなものだ。そんな時には一眠りすれば全て綺麗さっぱり忘れてしまえる。

忘れてしまえる……はずなのだが。

「眠れないよなぁ…やっぱり」

一番いい装備に身を包んだ佐和記はぼんやりと空を見上げて言った。
普段あまり寝ていないのだからその気になればすぐ眠れると思ったのだが、現実はそう上手く行かないらしい。
いや、これは現実ではなくタチの悪い悪夢だ。
殺し合えと言われ、飛び降りても死なず、神に出会い、自作のゲームの真似をせよと告げられる。こんな理不尽かつ不可解な現実がある訳がない。
恐らくまたPCの前で居眠りしてしまったのだろう。そうでなければよくある徹夜明けの幻覚に違いない。
…きっと、目が醒めれば会議とPC漬けの毎日が戻って来るのだ。これは只の夢。現実であるはずがない。
佐和記は必死にそう思い込もうとした。だが、自分の身体感覚がこれは夢ではないと告げる。冷たく肌を撫でる夜風は現実そのものだった。

「はは…ずいぶんリアルな“夢”だなぁ」

佐和記は乾いた笑い声を上げて、一人呟いた。









「…暇だ」

病院の駐車場にその巨体を据え、A-10神は呟いた。

「あのボンクラ共どっかでシコってんじゃねぇのか?たかが武装を見つけるだけだってえのに何時間待たせんだよ」

機体を揺らして下品なジョークを飛ばすが、誰も反応しない。ただそよ風が吹き抜けていくだけだ。

「…………だぁぁぁぁァァッ!!!」

沈黙に耐えかね、マシンガンをブっ放して叫ぶ。とてつもなくイライラするが、怒りをぶつけられそうな相手はそこら辺の立ち木ぐらいしか居ない。

「ふざけんじゃねーぞクソッタレタラコ野郎がぁぁぁぁ!!俺のマーベリックミサイルは何処だ!!アヴェンジャーの弾は何処へやった!!!さっさと返せぇぇぇ!!!!」

怒りに任せてマシンガンを乱射してみるが、一向に腹の虫は収まらない。それどころか怒りが募る一方だ。

「殺し合いをしろと言っておきながらミサイルも爆弾も無しだァ!?スカイレイダーの親父じゃあんめえし、便器なんぞ投下出来るか!!おまけになんだこのチンカスみてぇなハジキはよォ!?5.56ミリだと!?海軍野郎のチンコみてぇな短小じゃねーかよバーーーーーカ!!!!!!」

完全にアウトな台詞が病院の駐車場に響き渡るが、返事をするのは月の光と穏やかな風だけ。

「…クソ、アホらしくなって来た。なんだって俺がこんな更地でおとなしく縮こまってなきゃあいけねんだ?」

訳の分からない場所へ連れて来られて、いきなり殺し合いときた。それだけならまぁ腹は立つがここまで暴れたりはしない。
問題なのは、武装を奪われた事だ。マーベリックミサイルも、CBU-87クラスター爆弾も無い。それどころかアヴェンジャーの弾まで無くなっている。
こんな惨めな状況で地ベタにおっぽり出されようものなら良い的だ。クソ共産野郎のT-72神にでも見つかろうものなら、「人は皆、大地より生まれるのです。あなた方資本主義の亡霊にもようやくそれがご理解いただけましたかな(プッ」…等と言われるに違いない。
…そうか、T-72。T-72だ。いけ好かない共産野郎の糞戦車。あいつをブチ壊してやろう。ストレス解消にはもってこいだ。ここにいるかどうかは分からないが、当面はそいつとやり合う事を目標としておこう。
幸い向こうもそれ程ヤワではないし、少なくとも民間人にやられたりはしないだろう。

「ま、あの野郎の相手になんのは俺様ぐらいのモンだしな。そうと決まりゃあ武器探しよ、あのスカタン共は頼りにならん。俺も動くとするか」

A-10神が動き出すと同時に、ジェットエンジンの爆音が闇を切り裂くように響く。隠密行動が要求される殺し合いの場ではあまり好ましくない行動だが、A-10神は全く気にしない。ハナから隠れるつもりなど毛頭無いので当然と言えば当然だが。

「チキショー、狭っ苦しい道だぜ。せめてテキサスみてぇな砂漠なら動きやすかったのによ」

独り言というにはいささか大き過ぎる声を上げながら、翼をぶつけないよう慎重に機体を動かすA-10神。

「あの、すみません」
「あん?」

その巨体に声を掛けたのは、悪夢に囚われた男だった。








「はあ。A-10神、ですか」

A-10神の荒っぽい自己紹介に、佐和記はこの数時間で何度吐いたか分からぬ溜め息で返した。
一体何だというのだ。ここに来てから神様に出会うのは二回目だ。しかも今度は軍用機の神様。脈絡がないのにも程がある。いや、夢では良くある出来事か。

「で?お前はなんて名前だ?…まあ、知ったところで糞の役にも立ちゃしねぇが、一応聞いといてやる」

名前か。
本来ならば本名を名乗るべきなのだろうが――――。

(自らが手がけたゲームの主人公のマネをしなさい。
 神は言っている、『全てを救えと』。そしてそのまま長い旅を始めるのです。
 セリフやドヤ顔なんかもトレースすれば尚良し
 クリア出来たら無罪、敗北したら地獄行きです)

そうだ、これは夢なんだ。なら、少しばかり遊んでもバチは当たらないだろう。

「…イーノック。他にも71通りの名前があるけど」
「イーノック?ケッ、クソったれキリスト野郎の親戚かなんかか?…まぁいい。とりあえず俺の武装を探す手伝いを……」

佐和記、いやイーノックは内心ほくそ笑んでいた。
なるほど、少し恥ずかしくはあるが快感だ。自分は神様を騙したのだ。こんな経験、夢でしか出来ないだろう。

(…どうせ夢なら、好き勝手やるのもいいかもな)

夢に囚われた男が、夢から醒めるのはいつだろうか。



【C-3 病院付近/一日目・黎明】

【竹安佐和記@ゲームサロン】
[状態]:健康、現実逃避
[装備]:一番いい装備@エルシャダイ
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品(1~3)
[思考・状況]
基本:どうせ夢なら、好きな様にやる
1:A-10神と話してみる。
2:これが現実だとは思いたくない。
3:イーノックとして行動する?
4:さっきの男はいったい…?


【A-10神@軍事】
[状態]:損傷無し、燃料満タン
[装備]:MINIMI軽機関銃(150/200)@現実、アヴェンジャー(0/1350)@現実
[道具]:基本支給品、PDA(忍法帖【Lv=00】)、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本:「敵」は全て殲滅する
1:佐和記にも武装探しの手伝いをさせる。
2:アヴェンジャーを奪った主催者は絶対に殺す。
3:T-72がいれば戦う。
4:兵器が手に入ったら、存分に暴れる。

※竹安佐和記の名前を「イーノック」だと思っています。


No.51:メンタルヘルス 時系列順 No.56:調査未だ足りず
No.54:夢で逢えたら 投下順 No.56:調査未だ足りず
No.23:バカとノートと機関銃 A-10神 No.67:feeling of love
No.27:【髪は】バトロワ内でした悪行を懺悔する絵師【言っている…】 竹安佐和記 No.67:feeling of love

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