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リア充爆発しろ ◆shCEdpbZWw




「オオオォォォッッッ!!!」



                    从⌒゙ヽ,  
             ,; |i    γ゙⌒ヾ,  |!  
                 _,.ノ'゙⌒';、人  l!   
               从~∧_∧ イ ,〉 k
             γ゙  (´・ω・)/ 〈,k_ノ
             (    ハ.,_,ノ~r    
             )'‐-‐'l   γ´⌒゙ヽ、
          ,、-ー''(    |!~、,il      ゝ、   
        γ    |!   〈   ヽ ミ、    丿
       ゝ (     |  ノ  _,,,..、,,ゝ、 _,.イ  /     
    \'´  γ゙ヽ.,_  ) ゙|! ̄    ̄~゙il γ⌒ヽ`(/
    Σ    ゝ.,__゙゙'k{  ヾ /      !、,___丿 て
            > ゝ-ー'゙ <


A-5のエリアに咆哮が轟くと、次の瞬間大地を揺るがす振動がかすかに広がった。
声の発信源には筋骨隆々でありながら、どこか憂いを帯びた表情の男が一人。
その右の拳はまっすぐ地面に突き刺さっており、彼の周りのアスファルトに数本のヒビを走らせていた。

(何故……何故あのような真似を……!)

怒りに肩を震わせながら男が天を仰いだ。
彼の脳裏によぎったのは、さきほどの見知らぬ空間での一連の出来事。
ひろゆきと名乗る、特徴的な唇を持つ男の所業だった。

ほんのわずかな間……時間にして数分もない、カップヌードルを作ることも出来ないような短い時間。
たったそれだけの間に3人の命が理不尽にも奪われていった。
年端もいかない少女に、そもそも何なのか分からない謎の生物……彼女たちの命もかけがえの無いものだ。
だが、彼をここまで怒りに駆り立てたのは残る1人の男の死であった。

「あの人となら……室伏さんとならいつか一緒にいい仕事が出来そうだったのに……!」

その男――室伏広治の持つ筋肉の鎧は、彼のような肉体を持つもの全ての憧れの的と言ってもよかった。
遺伝子的に筋肉の性質が全く違う欧米人に混じり、ハンマー投げという競技で互角以上に渡り合うその力。
力学的には無駄の多い、まさに素人の投げ方ながら130キロを超える剛球を始球式で披露するその異質性。
世界中から集ったあらゆるスポーツマンをまるで問題にせずあしらい、某テレビ番組に出禁を食らうそのカリスマ。
ただの筋肉バカとは違う、その行動の一つ一つに憧れを持つ者が多かったのだ。

だが、圧倒的パワーやカリスマを持つ室伏さえも、か弱き少女と同じように一瞬でその命を理不尽に奪われた。
室伏と同じく筋肉の世界に生きる彼にとっては何よりもそれが許せなかったのだ。

「許さない……絶対に許さない」

彼はすぐさまこの不愉快な催しに反旗を翻し、憧れの存在である室伏の敵討ちに走ることを決意した。
おそらく向こうは彼の顔など知る由もないのだが、それでも彼は構わなかった。
彼が怒りに肩を震わせているのは、主催者に対する怒りと同じくらいに自らに対する怒りも込められていたのだから。

「何故、あそこで僕も室伏さんと一緒に立ち上がろうとしなかったんだ……!」

見知らぬ空間に飛ばされ、見知らぬ者たちに囲まれたあの時の彼は生涯最大の困惑に囚われていた。
室伏の反逆の前に、考えるより先に行動に移せなかったのもその戸惑いが最大の原因である。
結果としては彼が室伏に同調したところで物言わぬ肉塊がもう1つ増えただけなのであろうが、そこまで彼の思考は辿り着かない。
みすみす室伏を死なせてしまったのは自分のせいだ、彼はそう思わずにいられなかった。

男の脳裏に室伏の首輪が爆ぜた瞬間の光景がフラッシュバックする。
それは彼に主催者に対する怒りと、自らに対する怒りを増幅させ……

「ウ……ウオオォォッッ!!」

また1つ大きく雄叫びをあげると、まるで丸太のようなその左腕を振り回す。
鉱石のように硬いその左の拳が道路端のブロック塀にめり込むと、その場所からブロック塀はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
名は体を表す、という言葉があるが彼の名――壁殴り代行をまさに具現化したような所業である。
もっとも、普段なら壁を破壊するまで殴りつけることは彼らの世界ではご法度だ、それを許せばただの器物損壊でしかない。
だが、怒りに震える壁殴り代行の脳裏からはすっかり業界のタブーなど消え去ってしまっていた。

ズキン、と壁殴り代行の左拳から痛みが走る。
ブロック塀が崩れるほどの力で殴りつけたのだから当然といえば当然だ。
その痛覚が、ほんの少しであるが彼に冷静さを取り戻させた。

ふと、崩れ落ちたブロック塀の方に視線を向ける。
そこには呆然とした表情で座り込む1人の男がいた。
壁殴り代行とは対極の世界にいるのであろう、痩せ細ってところどころ骨も浮き出ているようなハンチング帽の男が。





 *      *      *





「ンフフ、困ったことになりましたねぇ」

男は苦笑した。
A-5エリアの片隅にある住宅街。彼は猫の額ほどしかない庭先に身を潜めていた。

「いきなり殺し合いなどと言われても……う~ん、どうしたものやら」

年の頃は30台中頃といったぐらいか。痩せ気味の体にハンチング帽を被っている。
一見してインドア風、ホワイトカラーの匂いを感じさせるその風貌。
彼はゲームプログラマーである……と言っても、世間一般のイメージとはちょっぴり違うのだが。

彼の主戦場はいわゆる「同人界隈」だ。
ゲームと一口に言っても、世間一般で言うメジャーなハードや次世代機などとは無縁。
普通なら滅多に陽の当たる事が無い日陰の世界である。
そんな舞台にあって彼はひときわ強い輝きを放つ男であった。

ゲーム音楽を作りたいがために、ゲームそのものをゼロから作り上げる。
一見すると些か荒唐無稽のように思えるこの所業を彼はやってのけた。
その足跡を記し始めてから15年が過ぎようとしている。
彼の作品のファンは増え、一部の困った輩の行いにより多くのアンチも産むに至った。
要望、怨嗟、様々な声が彼の元に寄せられはするが、彼はブレない。
原点が自分のやりたいことを実現するためである、今でも自分のやりたいように事を運んでいる。

同人サークル「上海アリス幻樂団」……実質的にこれを一人で切り盛りする男、その名を人はZUNと呼ぶ。



酒をこよなく愛する彼がこの日も一杯引っかけて作業に取り掛かろうとしていた。
だが、彼の記憶はそこで一度途切れ、次に残る記憶は見知らぬ空間でのひろゆきの演説と実演であった。
そこで再び意識が途切れたかと思うと、次はどことも知れぬ家の庭先である。

最初は酔いが回りすぎたかと考えたZUNだったが、首に嵌る拘束具と傍らのデイバッグがその考えを否定する。
小説などで読んだことがあるバトルロワイアル……彼はそれに巻き込まれたことを認めざるを得なかった。

ZUNは見知らぬ家に入ろうと一度は考えたが思いとどまる。
もしそこに誰か他人がやってきたとして、その人物がゲームに乗った殺人鬼だとしたら?
屋内という狭い空間では、逃走の手段も必然的に限定されてしまう。
屋外も安全というわけではないが、いざ逃げるとなった時にある程度の選択肢はある。
逃げる側はどれを選んでもさしたる問題は無いが、追う側は常に同じものを選択し続けねばならない。
恐らくは誰もが土地鑑の無い場所だろう、逃げるのは容易だ……そうZUNは踏んだのだった。



あちこちに雑草が生える庭先に腰を下ろしたZUNは続いて所持品の検分を行うことにした。
デイバッグを漁る手に、瓶のような感触を覚えた時彼の顔に笑みが浮かんだ。

「これは……?」

殺し合いの最中にあることを忘れそうな心持で取り出したそれは……彼の期待を裏切るものだった。

「……オリーブオイル?」

手の中にあったのは某芸能人によってごり押しされている植物油である。
すわビールか、ワインか、焼酎か……アルコールの類を期待した彼にとってはがっかりにも程がある代物だ。
別に彼は酒をあおって現実逃避がしたいわけではない。
先にも述べたように酒をこよなく愛する彼は、多少なりとも酒が入らないと本調子とは言えないのである。

渋い顔をしてZUNはオリーブオイルをデイバッグに戻す。
万一の時には鈍器として使うことも出来なくは無いだろう、瓶が割れればそれなりに危険な武器にもなり得る。
とはいえ、殺し合いの舞台で支給されるにはどう考えても不都合な代物だ。
その後も荷物は漁ってみるものの、基本的な支給品を除けば武器も酒も入っておらず、彼は静かに落胆した。

「しかし、変だな……」

気落ちしながらもZUNが思索にふける。
というのも、先だってこの妙なイベントの開会を告げたひろゆきのことだった。
ZUNもひろゆきも、世間一般……というよりもweb上ではちょっとした有名人である。
そうした繋がりからZUNも彼と直に接し、盃を交わした事だってあるのだ。

「あのひろゆきさんが……ねぇ……」

生の西村博之を知るZUNが疑問に思う。
彼が本当にバトルロワイアルなどを進んで開くものなのだろうか、と。

勿論、面識があり何度か会話を交わしたことはあるが、それでその人を十分に知られるという訳ではない。
ひろゆきは表面的にはうかがい知れない、何かドス黒い考えの持ち主だったのかもしれない。
ただ、酔った時には人間の本性というものが露になりやすいものだ。
そんな状況のひろゆきを知るZUNからしてみれば、彼がこのような催しを開く動機がどうにも考え付かないのだった。

「そもそも、小説の方でも現場監督のバックには国家がいましたしねぇ」

彼の記憶に残る高見広春の「バトル・ロワイアル」やそれを原作とした映画でもそうだった。
参加者の前でデモンストレーションを行うのは所詮はただの現場監督にすぎないのだ。
もちろん、そうしたフィクションの世界では共に自ら進んでそうした任に励んだ面もあるのだが。
ただ、あの場にいて死亡遊戯の号砲を鳴らしたひろゆきのバックに何かしらの黒幕がいるのではないか。

現時点では根拠に乏しい、まだ思いつきの段階でしかない考えだが、あり得るかもしれない。
ともすれば何かしらの弱みを握られて強制させられているのでは……そこまでZUNが考えを巡らせた時だった。



「オオオォォォッッッ!!!」

雄叫びが上がったかと思うと、続いて地面が微かにだが揺れた。
しかも、声の発信源はごく近い。
具体的に言えば、ZUNのいる庭先と道路とを隔てるブロック塀の向こうから。

(ど、どうしましょう……!? ここはこっそり逃げるべきか……)

武器らしい武器が無い、ということもあったがZUNに不審人物を急襲するという選択肢は最初から存在しなかった。
むざむざ殺されるつもりも無いので、自衛のためには抵抗も辞さないが自ら進んで殺し合いに身を投じるという考えは無い。
どんなルールを張り巡らそうとも、そこには必ず穴がある。
そこを突いてZUNは何とかこの殺し合いから脱出し、元の居場所へと帰るつもりだった。
先日は新作の製作発表もしたばかりだ。
秋からは新しい漫画作品の原作監修だって控えている。
それに、何より……

ZUNがひとしきり逡巡したその次の瞬間だった。
再び大きな雄叫びが上がったかと思うと、ドカンという音と共に目の前にあるブロック塀がガラガラと崩れ落ちるではないか。
すでに30代も半ばに差し掛かっており、人として落ち着きのある年齢のZUNとて、これには流石に衝撃を受けた。
塀の向こうにいるのは野獣か怪獣か……思わず体が硬直し、身動きが取れなくなった彼の視界に映ったのは……

筋骨隆々の男がこちらをジッと見つめ、ハッと思い直したかのようにその大きな体を小さく折り畳む光景であった。





 *      *       *





すぐに謝らないと。
壁殴り代行の脳裏に真っ先によぎったのはその一念であった。
相手が殺る気のある人物で銃の類でも持っていれば不味かったが、そうでない限りは彼の身の安全は保障されたようなものだ。
刃物や鈍器で襲われたところで、肉体的スペックには彼我の差がある。
労せずして制圧することが出来るだろうという核心が彼の中にはあった。

問題なのは、ここで目の前の男に逃走を許すことであった。
なにせ、相手からすればファーストコンタクトがブロック塀をその腕で破壊した男、さながらバーサーカーである。
そんな誤解をされてその場を逃げ出し、次に会う何者かに変なことを吹き込まれかねない。
筋肉モリモリマッチョマンの変態が殺し合いに乗った、そんな情報が出回ればたちまち自分がピンチである。

すぐさま、敵意が無いことを示すべく、紳士的にここは頭を下げることにした。
その大きな背中を正確に45度の角度に曲げ、目の前の男に告げた。

「いや、その……驚かせてしまって申し訳ないです、少々気が動転していたものでして……」

受け入れられるかどうかはともかくとして、まずは誤解を解かねばならない。
同時に、丸腰であることを示すためにデイバッグを後ろへと放り投げた。
もっとも、壁殴り代行の場合はその肉体そのものが武器といっても差し支えないのであるが。

壁殴り代行が頭を下げ、奇妙な沈黙が訪れる。
顔を上げた時にはもうあの男は逃げているかもしれない、が誠意を示すためにも反応があるまで頭を上げるわけにはいかない。
ほんの数秒、しかし壁殴り代行にとってはそれが何倍にも感じられる時間であった。

「は、はぁ……」

どこか力の抜けた声が聞こえ、そこでようやく壁殴り代行は一つ安堵のため息を漏らすのだった。





 *      *      *





壁殴り代行が改めて驚かせたことを謝罪し、敵意が無いことを確認しあったところで二人は簡単に自己紹介を済ませた。
続いては情報交換……と言っても、互いに名簿に載る知人が少ないこともあり、これはほぼ不発に終わる。

「それで……壁殴り代行さん、でしたっけ? 貴方はこれからどうするつもりです?」

ZUNの問いかけに壁殴り代行は一瞬言葉を詰まらせる。
冷静さを取り戻せたとはいえ、基本線として室伏の仇を討つというものは変わりがない。
だが、室伏すら敵わなかったひろゆきに、自分が真っ向から挑んでも果たして勝てるだろうか。
不安感を覚えながらも、壁殴り代行は言葉を一つ一つ選ぶように紡ぐ。

「僕は……ひろゆきが許せない……何とかしてあいつに一泡吹かせてやりたいんです……!」

噛みしめるように発せられた壁殴り代行の言葉に対し、ZUNが返す。

「う~ん……気持ちは分かりますが、勝算はあるんですか?
 たしかハンマー投げの……室伏さんでしたっけ? あの人が反抗して逆に殺されちゃったじゃないですか……」
「それは……そうですが……」

勝算が薄いことは自覚しているだけに、壁殴り代行が唇を噛む。
一方のZUNはというと、ひろゆきに対する疑念を覚えてはいたものの、それを口に出すことはしなかった。
下手に面識があるなどと言うと、疑われかねないのではないか、彼はそう思いブレーキをかける。

「では、ZUNさんはどうするんです?」
「私は……」

今度は壁殴り代行が切り返す。
少しばかりの間を置いてZUNが答えた。

「室伏さんたちがそうでしたが、何より厄介なのはこの首輪です」

そう言いながら自らの首元を指先でチョンチョンとつつく。

「状況から察するに、この首輪はあの人が任意のタイミングでいつでも起爆できるんだと思います。
 ということは、もしあの人を見つけ出したとしても何かアクションを起こす前に……」
「じゃ、じゃあどうするんです? 少なくとも僕は殺し合いに乗るのは真っ平御免ですよ?
 その為に体を鍛えてきたわけじゃないんですから」

憤懣やるかたないといった感じで壁殴り代行が答える。
そんな壁殴り代行を、まぁまぁと手で制しながらZUNが続ける。

「つまり、逆に言えばこの首輪さえなんとかしてしまえばそれで一気に道は開ける……そうは思いませんか?」
「すると……既に何かしらの策はあると?」

ZUNの言葉に壁殴り代行が目を輝かせる。
どちらかといえば頭脳労働は不得手なだけに、それが道筋となると自分ひとりでは心もとない。
が、そこで信頼できるキレ者がいるのなら話は別だ。

「いや……今のところ特には……」
「……ですよね」

だが、ZUNの返答は期待通りのものではなく、壁殴り代行が大きくため息をつく。
もっとも、首輪をどうにかしようというところまで考えが及んでいなかっただけに、その手があるのかと感心もしていたのだが。

「とにかく、完全無欠なルールなんて存在しません。
 きっとどこかに穴があるはずなんですから、それを見つけられるように努力する、私はそういう方針です」

ZUNとしては、自身を殺し合いの舞台に縛り付けるこの首輪を取り外し次第、危険は避けて脱出を図るつもりだった。
先だって支給品を確認した際に地図も見ていたが、どうやら孤島の類ではないらしいことも分かっていた。
無理やり外せば爆発する首輪とはいえ、優勝者が出た時のことを考えれば外す手段は必ず存在するはずと踏んでいた。
つまり、どうにかして首輪を外し地図の範囲外に出てそこから帰る方法を探る、これがZUNの行動指針だった。

「なるほど……分かりました。僕はそうした方向からのアプローチが苦手ですから、首輪はお任せしましょう。
 その代わり、誰か気の触れた奴が襲ってくるようなら僕がこの身体でお守りしましょう」

首輪を何とかしたいのは壁殴り代行とて同じだ。
ZUNの発言に大きく肯き、それをサポートすべく護衛に出ることまで進言した。
だが、壁殴り代行とZUNの方針には決定的な食い違いがある。
首輪を外して脱出を図るのが目的のZUNに対し、壁殴り代行はあくまで主宰・ひろゆきへの攻撃を諦めていなかった。
大同小異、とは言うもののこの極限状況での食い違いは思わぬ危険をも招きかねないことを彼らはまだ知らない。

「……そういえば」

思い出したかのようにZUNが口を開く。

「壁殴りさんにはどんなアイテムが配られたんです?
 あいにく、私には武器と呼べるような代物がなくて……」

相手に危害を加えることを極力避けたいZUNとはいえ、この状況下で丸腰というのも避けたいことだった。
身体能力でははるかに勝る壁殴り代行が当面の味方についたとはいえ、もし彼もまた武器を持ち合わせていなければ……
そんなリスクを鑑みての発言だった。

一方、問われた壁殴り代行はというと、これまでそうした支給品に一切考えが及んでいなかったことを思い出す。
つくづく、怒りに我を忘れかけていたのだな、と述懐して苦笑いを浮かべそうになる。
いえ、まだ見てないですねと言いながら彼は自らのデイバッグを検める。
数秒後、彼が取り出したのは50センチほどの棍棒が2本。
少々不恰好なT字形で握りになると思われる突起が付いていた。

「なるほど、トンファーねぇ」

あごのあたりをポリポリと掻きながら、壁殴り代行がしげしげとトンファーを眺める。

「僕はこれが無くても何とかなりそうなので……使います?」

そして、2本のトンファーを鷲掴みにしてZUNへと差し出した。

「え、これをですか? う~ん、使えるかなぁ……」

一応は受け取ったZUNだが、トンファーなどまともに扱ったことなど無い。
持ち方をあれこれ試行錯誤しているその傍らで、さらに別のアイテムが無いか壁殴り代行は支給品漁りを再開していた。

「こ、こうかな?」

写真やマンガで見たような感じに構えてみせたZUNが試しにと右に握ったトンファーをくるりと回してみる。

コツン。



乾いた音が響き、ZUNが悶絶する。
回したトンファーがひじの骨にスマッシュヒットしたのだ。
彼の身体が骨ばっているが故に、その衝撃はさらに上乗せされる。
いわゆるファニーボーンの部分に当たったらしく、ひじから先に痺れるような感覚を覚えてしばらくうずくまってしまう。

「ど、どうもこれは私には使いこなせないみたいですね……お返ししま……」

ようやく顔を上げたZUNが壁殴り代行に目を遣ると、そこには難しそうな顔をし、背中を丸めて機械と格闘する男がいた。
その大きな手で小さなPDAを操作する光景がどこか滑稽で、ZUNは思わず吹き出しそうになるのをなんとかこらえた。

「あ、いや、どうも僕はこういう機械が苦手でして……」

悪戦苦闘するあまり、悶絶するZUNに気づかなかった壁殴り代行が苦笑いを浮かべた。
どうやら他にめぼしいアイテムも無かったようで、PDAの扱いを確かめていたようだった。

「あぁ、動かし方ですか? ここの部分をですね……」

トンファーはともかくとして、こういった分野にならZUNに一日の長がある。
地図をチェックした時にPDAもチェック済みでだいたいの動かし方は把握している。
どうせ同じものだろうと画面を覗き込んだZUNの目がある一点に釘付けになった。

「……ん? なんでしょうこのアイコン? 私のには無かったですが……」

怪訝そうな表情に変わるZUNを見て、壁殴り代行が不安そうな顔に変わる。

「え、そんな、もしかして危ないものじゃ……」

おろおろする壁殴り代行を尻目に、ZUNがアイコンをクリックしアプリケーションを起動させた。

「おお……!」
「これは……!」

思わず2人が声を揃える。
起動したアプリケーションの中身は「顔写真つき参加者一覧表」というものだった。
試しに見てみると、写真のほかにも簡単ながらプロフィールも掲載されている。

「なるほど、こういう形で支給されるアイテムもあるってことですね……」
「よかった……ZUNさんがいなきゃ、しばらく気がつかないところでしたよ……」

そう言って壁殴り代行が安堵のため息を漏らした。

今回の死亡遊戯で初対面の相手の顔と名前が一致することはかなり有効な情報となる。
なにせ、6時間後との定期更新では殺された参加者に加え、加害者の実名まで公開されるのだ。
危険人物の顔が一目で分かるこの支給品は大当たりと言ってもよかった。

「これで危険を未然に防げる可能性も出てきましたね……
 少しではありますが、脱出に向けて希望の光が見えてきましたよ」

柄にも無く興奮気味のZUNを見て、壁殴り代行も思わず大きく頷いた。
そして、脱出という単語を聞いてふと壁殴り代行が尋ねる。

「そういえば脱出、って……どうしても帰らなきゃいけない目的でも?」
「あぁ……まぁ、もちろんやり残した仕事もありますし、まだまだ生きてやりたいこと、飲みたい酒も沢山あるんですが……」

そして僅かに頬を染めて次の言葉をつなぐ。
今のZUNにとって、ゲーム製作やそれに付随するさまざまなプロジェクト、さらには酒と同程度に大事なこと。

「実は私、新婚でして……愛する妻のもとになんとしても帰りたいものなのですよ」

はにかみながらZUNが発した言葉。

そして2人の間に数秒の沈黙が流れ。

表情を崩さぬまま壁殴り代行が左の拳を半壊状態のブロック塀にもう一度突き立てる。

ドカン、という音とともに再びブロック塀が音を立てて崩壊した。



【A-5・住宅街/1日目・深夜】
【壁殴り代行@ニュー速VIP】
[状態]:目の前のリア充に対するちょっとした嫉妬、左拳が痛い
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【Lv=00】、詳細名簿インストール版)、トンファー
[思考・状況]
基本:首輪を外して室伏の仇を取りに行く
1:ZUNの護衛をしつつ、首輪解除の手段を探る

※壁を殴りすぎると拳が破壊される可能性があります


【ZUN@ゲームサロン】
[状態]:健康、目の前の筋肉男に対するちょっとした恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、PDA(忍法帖【LV=00】)、瓶入りオリーブオイル
[思考・状況]
基本:首輪を外してこの場から脱出する
1:壁殴りさんに守ってもらいながら首輪解除の手段を探る
2:酒が飲みたい

※主催・ひろゆきの真意を疑っています。黒幕の存在もあり得ると考えています。


※A-5の住宅街のブロック塀が一部崩れています


<<支給品紹介>>

【瓶入りオリーブオイル@現実】
速水もこ○ち推奨の調味油。
某情報番組の料理コーナーを象徴するアイテムの1つである。

【トンファー@トンファーキックのガイドライン】
長さ50センチくらいの棍棒に、握りの突起がついてTの字になったもの。2本セット。
これを用いた主な技として、トンファーキック、トンファー置きっぱなし式ブレーンバスター、トンファービ~ムなどがある。
前者2つはともかくとして、最後のは多分この場じゃ使えない……よね?

【詳細名簿インストール版PDA@現実】
参加者の顔写真と簡単なプロフィールが見られるアプリケーション。
データのやり取りは不可能。


No.08:川越シェフがバトルロワイアル中に料理をしている画像下さい 時系列順 No.10:【戦車攻め?】喪男×戦車×腐女子【喪男受け?】
No.08:川越シェフがバトルロワイアル中に料理をしている画像下さい 投下順 No.10:【戦車攻め?】喪男×戦車×腐女子【喪男受け?】
壁殴り代行 No.42:探し物はなんですか~?
ZUN No.42:探し物はなんですか~?