+ | コンテスト一覧 |
光をさえぎる灰雲の中を
車の吊革にもたれて揺すられる
駅を降りて、人に押されて流れていく
ついにはじき出されていつもの扉へ
コートを脱いで、サァハジメヨウ
そう言ったのは私だったか
錠につながれたヒトのもとへ向かう
私を認めて、ヤメテヤメテと叫びだす
腹を打つたび震えだす
吐いてもだえてうなりだす
ゆれてギチギチ鳴きだす鎖と
その先のつながれた肉が
首をもたげて音を鳴らす
いずれ動かなくなる肉、落ちてまかれる血
抜ける肩の骨、揺れ動く心
そしてついに動かなくなる
降ろされる肉の手首に呪いのように
錠の食いこんだアザが黒々と残っている
明日もまた錠につながれる呪い
それを見て満足したのだろう私は
コートを取ってもと来た道へ
薄汚れた暗がりから、灰雲のただよう暗がりへ戻る
輝いた夜ははるか遠く、いつぞ昔
そんなことを考えながらまた吊革へ
ふらふら向かって、もたれて安心する
いつもの場所、いつも吊革
そしていつもある右手首のアザ
手を通してもたれかかった吊革は錠のよう
アア、オナジダナ