強盗ラオデギア

帝国と連邦の戦争が膠着状態に入ってからというもの「もう戦争は終わったんじゃないか?」 という雰囲気が微かに漂い出したある日の夕刻の首都ラオデギア。しかし、いつもの平和なこの首都は今日に限って違った。 

イーヨーイーヨーイーヨーとけたたましいサイレンがあっちらこっちらで鳴り響いていた。 

゛アーキリア警ら隊だ!前方のトラック!さっさととまれゴ、、、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ぁああああ!゛

 「よし、また1台電柱に激突しやがった!」 

「まだわんさかいやがるぜ」  

「逃げ切れるのかよ、、、ぁあ神様、、」

「ヒャッハー!こいつらとレースするのがたのしみだったんだ!!」  

 我々4人は今警察と追いかけっこをしている。 我々4人は学生時代からの仲で、よくいろんな揉め事に巻き込まれた。今回は4人ともが「ある事情で莫大な金が必要になったから銀行に出向いた」のであった。 運転するのは先程からテンション上がりっぱなしの辺境の走り屋ラーバスは3ヶ月後のモンスタートラックレースに出場する気でいたが、練習中に愛車が壊れその修理費を稼ぐため強盗にのってくれた。そしてその隣で怯えてるのがラオデギア某有名店の見習い料理人であるルグゥである。彼は、オーナーの高級車に誤って激突してしまい、その修理費を請求されている。後ろで応戦するのは私と元パンドーラ隊グスタールある。二人とも従軍経験があり射撃には自信があった。グスタールは退役後職にあびれ「金儲けのための準備金」を稼ぐため、私はパンノニアへの渡航金を稼ぐために強盗になっている。 

そして、今はその帰りである。 1匹のクルカに群がるスクムシの如く大量のパトカーが我々の乗るその名も「鬼改造トラック ラオデギア爆走号」に襲いかかってくる。 しかし、このトラックはラーバス が三日三晩かけ大破した愛車に載せるはずだったモンスタートラック用のターボエンジンが搭載されており、ボンネットからはターボチャージャーなどのエンジンパーツがはみ出ている。 

この高馬力モンスターエンジン+ラーバスのドライブテクにより今のところ特にダメージなく逃げれている。 遡ること2時間前。お昼休憩中の銀行にトラック事突っ込み、ありたっけの札束を荷台に放り込んで逃走した。たぶん怪我人はラーバスの鉄拳の餌食になった警備員2人だけであろう 。そっからというものこうして、走って逃げている。 

イーヨーイーヨーイーヨー ゛おい!トラックいい加減にしないと軍を出動させ、、うぉおおおおおお!!!゛ 

グワシャァ、、、またしてもパトカー5台が鉄くずになった。  

「なるほど、首都警らは急カーブにも弱いのか。」  

「グスタール、何発撃った?」  

「まだ10発ぐらいだな」 ほぼ威嚇でした発砲していない

「たぶん、そろそろアレが必要になるかもな」  

「ああ、とっておきのアレだな」 グスタールはにやりとする  

「そーら、きたぞ。ホルスだ」

 「ラーーバス!!!警備挺がきたぞ!!ぶっとばせ!!!」 私は運転席のラーバスに叫んだ  

「まってましたー!はっはっはっ!」 「お、おい!ラーバス、ぶっ飛ばすってこれ以上はやくなるのか、、?」 ルグゥは不安げに聞く

「なにをいうルグゥ!このエンジンはまだ50%もだしてねぇぞ?」

「え、今でも充分はやry」 ルグゥが言い切る前にラーバスはギアをトップ6に入れ込んだとたん。体がシートにめり込んだ。

「ヒーーーーーーーハーーーーーーー!!!」 ラーバスはアドレナリン全開。

 ラオデギア爆走号の排気管からは火が吹き出で、エンジンは怪物のうなり声のような音を出している。 一方荷台では私とグスタールが「とってきおきのアレ」を準備していた。 

ラオデギア橋までの大通りが一本道、さらにこのスピードで一時てきに警ら隊を振り切っているが、もうまもなく回り込まれてくるだろう

「グスタール!!前方にお巡りさんたちだ!」運転席からラーバスが叫ぶ 私とグスタールが荷台の隙間からチラリと目をやる。 

大量のパトカーが道を封鎖している。先程から一般車が消えていったのは警ら隊が誘導したのだろう。私とグスタールは反射的にグレネードランチャーに手をやり二人同時に隙間から発砲した。 大爆発とともに鉄くずと化したパトカーが宙に浮く。 

そして、その爆炎の隙間を風のように通過した。  

「危なかった」 私は呟いた  

「あ、ああ」 グスタールも顔が青ざめていた。 

゛おい!トラック野郎ども!いい加減止まれ!゛ 眩しいサーチライトとともに怒号が向けられた

「グスタール!出番だ!」  

「あいよ!」 するとグスタールはトラックの側面にある荷降ろし窓からにゅっと黒光りする長い筒状のものを突き出した

「パイファードライオンの徹甲弾。くらいやがれ!!」 銃口から爆炎とともに大砲のような轟音がなる。 

「旧兵器ようだからちと強すぎたか?」 グスタールはニヤリとする 彼のライフルはパンドーラ隊にいた当時から使用していたもので、その銃身には大量の人名が記されている。その中にはパンドーラ隊で有名なビーデスの名前も記されている。 

彼の放った徹甲弾は警備艇ホルスの浮遊機関のみを見事にぶち抜いた。

 ゛ぬぅ!?、、うおおあぉおおおおおお!!!!゛ パイロットの悲鳴はスピーカー越しに響き渡った。 

ふたりの乗組員はバランスを崩しぐるんぐるまわる堕ちていくホルスから放り出されラオデギアの運河に無事叩きつけられた。 

一方ホルスはそのまま近くの「はねとびクルカ」の駐車場に向け墜落し、いつかの「クルカ人形トラック」に突き刺さった。

 目の前の惨劇にドライバーと思わしき男性は名物の「クルカパイ」を地面に落とし、呆然としてる。

「もうすぐラオデギア橋だ!!!」 ラーバスは叫ぶ。 計画ではラオデギア橋の側にあるボロ屋はかつて計画されていた

「トンネル鉄道」の駅の名残で中を進むと数100mに渡り地下トンネルが広がっている。  

そこで4人で金を分割し、トラックを捨てしばしの別れになる。ここからが正念場だ。 

私は気を引き締めてライフルに弾を込める。

「グスタール!やるぞ!」

「ああ!お前のタイミングに合わせる!」

「いくぞ!せーの!」 私たちは荷台から上半身をのばし、後方にむけありったけの弾丸を打ち込んだ。ライフル弾。グレネード弾。手榴弾。チョコレート。余った弾丸はすべて使う。

パトカーはおもしろいように横転大破していき数を減らしていった。しかし、未だ数台がボコボコになりながらも追いかけてくる。 警備隊員も負けじと発砲するが、彼らのピストル程度の銃では到底こちらには大きなダメージは与えられない。

 ボロ屋に向かうべくラオデギア橋近くの裏路地に急カーブする。 どんどん小さくなっていく後ろでやっとこさ追いかけてきたパトカー達もカーブにはかてず後方で揃ってでんぐり返りをしていた。ホルスも路地の遮蔽物に阻まれ我々を見失ったようだ。

 我々の乗るトラックの前方についたドーザーで路地裏のあらゆるものを破壊しながら目標にちかずく。 そして、ボロ屋に銀行以来2回目の突入をした。  

「掴まれぇえええええええ!!!」 ラーバスが叫ぶ。 ガン! ドン! グシャン! 数回に渡り何かにぶつかり、横転を繰り返した後なんとか停止した。

「あたた。。。みんな無事か?」

「頭がギンギンするぜ。。。」ラーバスがうめく

「オーナーに叱られてる方が良っぽといいよ、、、俺は死んでるのか、、?」ルグゥが呟く

「愛銃は無事だぜ」グスタールも無事なようだ。

「よ、よし、みんなはやく分前をとって分散しよう!、直にここにも警ら隊がくる。」 皆で分前をとり、最後に別れの挨拶をした後みなみな解散していった。 

 

 

 「そうして、私は道中警ら隊から逃れ、無事パンノニアに渡航することができたわけで、、そうしてこの小さなバーを営んでるわけでございます。」 あれから既に4年の歳月がたった。 戦争は既に和平の段階に入ったようで。連日新聞はパンノニアの統一を伺わせる記事で潤っていた。   

「へぇ、マスターすごい過去持ってるんですね」常連のお客につい、過去の話をしてしまっていた。

「いえいえ、、私もいろいろわけがあってあのような強引な方法を取らざるを得ませんでした。。もうコリゴリでありますよ。」 私は静かに笑った。

「しかし、あれから4年も経つのですから時間の流れは早いものですね」

「ああ、ほんと長かったよ。」 急に常連の口調が変わった

「黙っていたが、私はアーキリア警ら隊のものだ。ご同行ねがってよろいかな」

 ついにきたか。 私はそう思ったが同時に笑がこみ上げてきた なぜなら私はもう既に祖国に帰れたのだから。

最終更新:2015年10月05日 10:05