エカテリーナの皇国奔走記

○皇歴467年 誕星の14周日(1セレン14ソル)
 今日は私の16歳の誕生日だ。天気は晴天。空から伝聞帳をばらまいていくククウィーの鳴き声がよく聞こえていた。自室で寝間着を脱ぎ、自分で縫った※ポフルに着替える。胸のあたりが少々きつくなったのは大人になった証拠と考えておこう。私の変態上司の耳に届こうものなら訓練そっちのけで四六時中揉みしだかれかねない。(あの人真面目に仕事してくれないかなあ・・・(書き殴り))

 食卓には養母さんが作ってくれた※2カルユと養父さんが朝一で狩ってきたヴンターの肉をソテーしたものが並んでいた。2人がそろって私に笑顔を向けてくる。朝の挨拶を終えると、外から朝の仕事始めを告げる鐘の音が響くのが聞こえ、そのまま朝食の祈りをささげ腹に収めた。朝からの御馳走にとても満足。(クルカの落書き)

 朝食後は手持ちの装備の整備後、半年前に配給された士官拳銃の早撃ちの練習をする。新機構を用いた新型銃器とのことだが、拳銃でありながら銃身の長さが狩猟で使う甲殻剥ぎ取り用の刀と同じとは何の冗談だろうか?軍用の※3火翔筒と同じ規格の弾丸を撃鉄を上げるだけで4連発できるのは嬉しいが取り回しが劣悪な気がする。いっそホルスターの底に穴をあけて抜かずに撃てるようにできないものか・・・。(形だけやってみたらとても間抜けなポーズをとった自分が鏡に映った。死にたい(書き殴り))

 08:00に聖都西門のメルガード聖公園に到着。公園中央の噴水管理棟に上がる(この場にいる国民の何人がこの施設が我が国の決戦艦隊旗艦の艦橋と主砲だということを知っているだろうか?(追記の書き殴り))と、案の定だらけた姿の上司がいた。とりあえず出向を告げて最初の職務は執務室の部屋掃除であった(感謝するよりも何か来てくださいてかせめて下を履いて!(書き殴り))

 昼まではいつも通りの仕事を行う。管理棟から園内を見まわし不審者がいないか監視し、正午を告げる鐘が鳴ったら主砲の耐衝撃緩和水膜壁を操作し園内を水浸しにする。(これが世間一般で言う噴水なのだろうか甚だ疑問ではある(書き殴り))笑う子供たちをみてため息をこぼし、振り返っては隠したはずの酒瓶を手に固まっている上司をみてため息をこぼすのであった。(午後から※4帝前会議なので禁酒ですクロナ様!)

 帝前会議に上司が出向いてる間は何もなく、朝配達された伝聞帳を読んで時間をつぶす。1年前に行われた連邦と帝国との戦いで、連邦の兵器開発会社が歴史的戦果を挙げたと誇張している記事は日を追うごとに小さくなり、紙面は近日中に行われるであろう帝国の皇国侵攻作戦への国民総員の備えと鍛錬を休むなという面白みのない記事がでかでかとのっかっていた。私言だがこのメッセージは的を得ている。国境付近の狩猟部族は帝国偵察部隊との小競り合いを続けてはいるが、聖都の人間は危機意識が薄い。神々が脅威を払い、皇国を守護するという信仰は、軍隊に入って2年経つと不思議と薄れている私だが、この都の人間は常識と言わんばかりに言葉の初めと終わりに必ず口にしている。この信仰が失われた時、この国の最大の敵は国民になるのではないか?そもそも、この国を守護する神々の声を聴く皇族とは何なのか?こういう考えをする私は異端者なのであろうか?疑問が潰えることはない。嗚呼、こんな感じに頭がグチャグチャになっているときにこそ出撃命令が下ってほしいと何度願ったことか。ヴンターや商人を狙った部族崩れの強盗の排除といった仕事しか回ってきたことはないが、それでも何も考えずに引き金を引けるという安堵感が、私の気持ちを何度か落ち着けたことはあったのだ。極端な考えだが、私は人間らしい死に方はしない。皇国人らしい死に方もしないだろう。
 ・・・・・・とりあえず音を立てずに部屋に入って私の胸を揉みながら「最近またフラれた?」と聞いてきた上司を伝聞帳で殴りつけた。なんだかスッキリしたので湿っぽいことを考えたときはこの人を殴ろうと思った。

※ポフル:皇国の民族衣装。ゆったりとした薄い生地で作られており、袖の取り外しが可能にすることで気候の寒暖に対応。足首から太ももにかけてのスリットがある。

※2カルユ:皇国の伝統食。麦で作られた粥のようなもの。酸味の強い木の実を砕いて味をつける。

※3火翔筒:読み「カショウトウ」。皇国軍から狩猟部族に至るまで使用されているライフルマスケット。銃身を変えずに多くの規格の弾丸が撃てるのが強み。基本規格は7.58ミリ甲殻徹甲弾

※4帝前会議:極星以上の軍人及び聖府幹部が意見具申を行い皇王が直接判定する会議。

最終更新:2015年11月23日 00:32