リューリア、第八艦隊の軌跡 大翻弄編

第八艦隊 ヂットランド艦長の手記 (Written by Aoi_Waffle)

*第八艦隊の役目は、平時は確実な予備兵力として各艦隊をサポートし、ある時は積極的に攻勢に出て楔を打ち込むという
速い話が何でも屋艦隊としての任務をおびている。

本営艦隊…殲滅戦特化 計11隻
旗艦:戦艦ヂットランド
戦艦アーキエリン級x1 重巡タリオン級x3 重巡グオラツィオン級x1 装甲空母カラッグ級x1 艦隊護衛艦スパントス級x3 軽巡ソルテガ級x2

隷下第一戦隊…高速戦闘部隊 計9隻
旗艦:高速戦艦クレアシオ級
快速軽巡空艦メルケール級x3 軽巡メリア級x2 艦隊護衛艦グリア級x2 高速駆逐艦ヴァナラ級x2

隷下第二戦隊…扱いに困った船をまとめた 計10隻
旗艦:狙撃戦艦アノーリアン
新型戦艦バリトゥース(未完)x1 衝角艦パクスアーキリアx1 五連装実験艦オーポ級x1
細形駆逐艦ニッポディアx1 多重連結型国境防衛艦x1(x5) 鹵獲・浮遊機関型アルバレステアx1 偽装クライプティア駆逐艦(コンスタンティン級)x3

隷下第三戦隊…空雷戦闘特化 計10隻
旗艦:ツインコンスタンティン級大型駆逐艦
重雷巡オペハザン級x1 軽雷巡ニーザ級x2 駆逐艦エルクⅢ級x2 駆逐艦コンスタンティン級x4

全40隻
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X-3
とうとう決行日まで残すところあと数日となる。。
リューリア作戦。わが連邦にとって歴史の転換点として記録されることとなるであろう大作戦だ。
軍大学に入学した頃は、座学で先人たちの活躍を学び胸を躍らせていたものだ。
そんな私がこうして第八艦隊司令官としてこの作戦に参加できることはとても光栄なことだと思う。
願わくば、祖国を勝利に導いた八提督のひとりとして名を残したいものだ。


X-2
今さっき、会議を終えてきた。
八提督が招集され、作戦の方針の最終確認を行った。
作戦は至って単純で、前例のない大艦隊をもって帝国領土へ侵入。各艦隊の有機的な連携を武器に、刻一刻と変化する臨機応変に対応するといった方針で固まった。
会議は全提督と全参謀の合意を持って自然と終わったが、そこまで単純に行くものだろうかという懸念もある。
とにかく、各艦隊の動きは作戦の方針の範囲内ならば各指令の権限を自由に行使できるというから、なんとしてでも被害を出さずに敵を葬ることを考えよう。


X-1
念には念を入れること。
我が艦隊…正確に言えば第八艦隊結成前に指揮していた地区艦隊のモットーだが、今回の新編成第八艦隊にももちろん徹底させたい。
そういうことで、作戦開始ちょうど1日前に私ひとり早めに旗艦ヂットランドへ乗艦。
艦橋のデスクでこの手記を書いていると、武者震いがする。みていろよ、クランダルティン。戦いを終わらせる。

自室へ移動。
シーバを飲みつつ、心の整理をする。
不確定要素が多いこの広大な空では常に受け身で前進することとなるだろう。
受け身をしつつ進撃するというのは矛盾してそうだが、そんなことはなんとかなる。
数時間前、あの戦争バカの第四艦隊から使者がやってきて、うちの艦隊の火力増強型コンスタンティン駆逐艦が数隻ほしい(直訳)という話を聞かされた。
もうあのバカがやることは見当がついている。窓の外を見たら既にうちの駆逐艦が曳航されていた。こんな事後承諾あってたまるか。
だが、むしろいいだろう。あのバカに突撃させて、我が艦隊は受け身態勢のまま進撃することが可能になるのだから。


Xday
出撃だ。夜が明けて陽の光を浴びる我が艦隊の勇ましさよ。
寄せ集め艦隊とはいえ、昨夜のささやかな祝杯もあって兵たちの士気も高い。
扱いに困った見たこともないダガーイェン譲りの奇妙な艦たちはすべて第二戦隊にまとめてある。
これで少しは動きやすくなるだろう。さあヂットランド、キミの本当の力をみせておくれ。


X+1
第一艦隊と第七艦隊と合流し、追従、三個艦隊の斜横陣で巡航する。
まだ接敵しない。 それもそうだ、我々がいるのはザイリーグ南部。連邦領内のこの辺りまで進撃されたことは、ファーストコンタクト以来ない。
クンバカルナをまじまじとみたのは初めてだ。これは提督レベルの情報だが、クンバカルナは非常時には下部ユニットが分離して護衛艦となるという。
わがヂットランドも似たようなものだ。もっとも我が艦の場合、分離してしまう時は船体が断絶してしまった時であるから、歓迎すべきことではない。
シーバをちょっと早いペースで飲み過ぎた。もう持ってきた量の2割を飲んでしまった。
念のため少し節約だ。


X+2
カノッサ東部をかすめる形で上空を通過。遠くに第五艦隊の連絡機の編隊が飛んでいるのが見える。
連絡機が飛んでいるということは、前線ではもしかしてすでに接敵しているのかもしれない。
第一艦隊をお供にしていながら、ちょっと神経質かもしれないが、これも念のためだ。
装甲の厚い重巡2隻を円陣の外縁部に移動させる。


X+3
ウェスタエゲル上空を通過。
彼の地では数十年前に連邦・帝国艦の双頭協定が行使された場所。
そのイメージが先行するが、この空域はクランダルティン曰く帝国領だ。
そろそろ会敵も近いか。


X+4
情報に遅れがあるが、ともかくどこかで戦端が開かれたとのこと。
とても弱まった無線信号だったので真偽の程は定かではない。確実な情報は第五艦隊の連絡機を待つとしよう。
第一艦隊は状況を整理し艦隊を統括するためウェスタエゲル上空で速度を落とし、しばらくこの空域にとどまる。
ここまでは計画通りだ。これより我が艦隊は単独行動を取ることになる。
第一艦隊より"武運を祈る"との発光信号をうけた。
テキスト通りの信号だ。半ば慣例化したやり取りだが、この時だけは違った印象を受ける。


X+5
ウェスタエゲルを南進し、ノスギア山脈が見え始めたところで山脈沿いに南下するよう舵をとる。
ノスギア山脈を左にみることで、左方向からの敵襲を心配する必要がなくなった。
各大型艦からレイテア偵察機7機を発艦させ、向かって右側に扇状に展開する。通常の半分の戦力ですむ。
……
大誤算だった!
偵察機3機が未帰還。
我が艦隊初の損失となってしまった。おそらく敵はもうそこまで来ている。
第一艦隊とともに前進していたから、敵領空という警戒心が弱くなっていた。


X+6
進路を東にとる。
山脈に張り付いて進んでいたら、かえって他の艦隊との連携がとれない。
思ったより敵は防衛戦を北側に敷いている可能性がある。
これよりわが第八艦隊は六王湖を抜けてそのまま大陸中央部の各艦隊の脅威となりえる敵集団を撃破することにする。


X+7
予定の空域に近づいているはずだが一向にアーキル艦隊が見つからない。
聴音班は遠方で砲撃音らしきものを聞いたらしいが、雑音に近いらしく判断材料にはできなさそうだ。


X+8
前方に黒煙を吐きつつ退却中の我が軍の艦艇を発見した。
その後方に帝国の小部隊を視認。撤退しているところを狙われていると判断し、救援に向かわせた。
敵影からしてクライプティア級駆逐艦1隻、強襲艇コアテラ3隻。我が艦隊を発見したのか一斉に会頭を始めている。
高速部隊からヴァナラ級2隻を追撃に向かわせて対処させよう。
……
被弾しながら逃げていたのは第四艦隊のヴァナラ級だった。
損害甚だしく、いったいどんな戦闘だったのかと艦長に尋ねたところ、この角材のラムで一斉突撃を敢行したという。
第四艦隊のあの男の脳内は第一紀世代から何も変わっていない…。
応急修理の後、クンバカルナのいる第一艦隊までの安全な航路を伝えてヴァナラ級と別れた。
……
先ほど差し向けた追撃部隊の2隻は敵部隊を全艦撃沈し問題なく合流出来た。


X+9
どうも戦線の状況が不明確だ。
日が暮れたら、再度偵察機レイテアを7機上げて周りの状況を把握したい。夜ならば敵に撃墜されることも少ないだろう。
空母カラッグの戦闘機を直掩で付けてやりたいが、事前会議で1隻を第五艦隊に空母カノープスを譲渡してしまったため、できるだけ温存させたい。
セズレ3機を放射状に広がる各レイテアの間を縫うように発艦させた。
今日も接敵せず。偵察機の帰投を待つ。


X+10
初めて情報が入った。まず最初に第五艦隊からの連絡機と遭遇し、無線で第二艦隊撤退の知らせを聞いた。
第四艦隊はいったい何をしていたのか!? こちらの状況を第五艦隊の連絡機に伝えるとすぐに飛んでいった。
1時間もしないうちにに、昨日の偵察隊が帰投した。方位199に敵の小部隊を複数発見したとのこと。
第二艦隊の退路を守るため、彼らと帝国軍の追撃ルートの間に入るよう西進する。
余談だが、シーバが残り少ないし、うまい缶詰も最初のほうで食べてしまったので補給艦とはやく接触したい。


X+11
軽巡と重巡を中心とした帝国艦隊と会敵した。敵艦隊の総数は20隻ほど。
この規模の艦隊がこの空域にウロウロしているということは、他の艦隊も状況はよくないだろう。
まずは空雷戦特化の隷下第三戦隊による先制攻撃で敵艦隊を撹乱させ、重巡級の砲撃で真横を見せたところで榴弾の雨を食らわせた。
ここでヂットランドの新装備である交差視装置を試してみる。我が艦ヂットランドは試作新兵器でできていると言っても過言ではない。
左右に2つの艦首を持つヂットランドの特性を活かして、左艦首と右艦首から入る像から敵の未来位置を割り出して正確な偏差射撃を行う。
初弾で敵旗艦に命中。続いて第二射も命中。グラン・アーキリア。
戦闘開始後20分で、こちら側にも小破する船も増えてきた。
装甲空母カラッグは護衛を付けてやや後方に向けているし、使いものにならない第二戦隊は前に出していない。
総数では優っているのに、こちらがやや不利だった。
……
結局、戦いに勝ったにせよ、この戦いでコンスタンティン級を3隻を失いソルテガ級"エレッゲ"も一隻が中破する損害を受けた。
敵の残存7隻を取り逃がしてしまった。追撃させたいが、まずは救助が先だ。
奴らは北へ逃げていったが、もしかしたら帝国艦隊の主力はさらに北進してしまっているかもしれない。
いやな予感がするが、予感でしかない。大丈夫だ。
我々にはあのクンバカルナがついている。あのパルエ最大の大戦艦があるかぎり、心配することはない。


X+12
我が第八艦隊はこのまま南進するべきだろうか?
第二艦隊は甚大な被害を受けて既に撤退しているとの情報は入っている。これは確実なものだ。
だが第四艦隊の様子がまるでわからない。いくらあのチヨコ脳みそのバカ提督とはいえ、我が艦隊のほぼ2倍もの艦船を従えている。
みすみすやられるはずがない。
……
各戦隊長を集めて現在入っている情報を整理し、第四艦隊との合流を行うことにした。
第一艦隊と第七艦隊が後方を固めてくれているし、それに第六艦隊も補給と前線支援のために南進してくれるはずだ。
第四艦隊と第八艦隊、を主力とし、第五・第六艦隊のカバーがあるだろうから、まだ戦いは順調に進んでいる。
いち早く第四艦隊と合流し補給を受け、帝都を攻撃するべきだ。


X+13
第四艦隊の予想進路に向けて最大戦速を指示。
が、第二戦隊がついてこれないので第四戦速で進軍することに。
使いものにならない艦ばかりで、置いて行きたいのが正直なところだが、乗っているのは同胞たちだ、見捨てる訳にはいかない。
途中、帝国軍の偵察型グランビアに遭遇。
ここで戦闘機をもったいぶってレイテア偵察機で対処させたのが間違いだった。
火力でも機動力でも劣るレイテアは単騎のグランビアの侵入を許し、ソルテガ級"エレッゲ"の第三艦橋が被弾した。
ここで参謀が指向性噴進弾の使用を具申してきた。たった1騎のグランビア、それも偵察型だったが、いまセズレを発艦させては彼らは飛び立つ間もなく
掃射でやられてしまうだろうとのこと。
それもそうだ。いつまでも「念には念を」と戦力をもったいぶっていてはいけない。
私は指向性噴進弾の使用を許可。パルエに3発しかない高級品、価格にして重巡1隻分!!くらいやがれ!!
噴進弾はあらかじめ入力した方向…とはだいぶずれていたが、予測進路上で爆発。破片でパイロットか器官のどちらかが気絶したのだろう、そのまま落下していった。
……
夕刻、上空を飛んでいた友軍機を発見。第四艦隊所属のユーフー7機だった。
あいにく、装甲空母カラッグにはトゥラーヤ式着艦装備がないため、重雷巡オペハザン級と軽雷巡ニーザ級の空雷装填用クレーンに吊るして対処する。
話を聞くところ、敵機に追い回され艦隊を見失い、2日前空をさまよっていたらしい。
とりあえず知っていることはないかと問いただすと、「クンバカルナがネネツの旗艦の奇襲にあったが返り討ちにした!アーキルの夜明けは近い!」と言い残し、倒れるように寝てしまった。
やはりクンバカルナは最強であった!!とりあえずユーフーは我が部隊に編入する。
兵士たちも疲れを忘れて乗り気でいる。シーバがうまい!!


X+14
朗報だ。友軍艦隊を発見した!!
歩くジッカスのあだ名を持つあのダマーハンの旗艦もいた。
とにかく、第一艦隊と別れてから友軍艦隊と出会っていなかったからとても心配した。
………
……

第六艦隊一部隊の連中だった。だが、そんなことはどうでもよい。
彼らの情報によると、クンバカルナが轟沈していたらしい。それだけではない、第三艦隊も壊滅状態にあるという。
最悪だ。最悪だ。アーキルの夜明けは近いのではなかったのか!?
昨日収容した爆睡状態の戦闘機隊を叩き起こした。
事実を確かめるためにことの流れを伝えると一斉にぶっ倒れてしまった。
日誌を書く気にもならない。最後のシーバを飲む。まずい。クルカのニイナに吹きかけてやった。どうだうまいか?


X+15
昨日接触した友軍の誘導のもと、第六艦隊と合流した。
簡易な登舷礼もすぐに終わらせ、すぐに接舷する。提督と話がしたい。
いったい、なにが、どうなっているのか。
運が悪いのか第五艦隊の連絡機ともほとんど遭遇せず、われわれだけ情報が数日分も遅れていたのだ。
………
……

てkかんたい はっけん、 せんとうめいれい、
かんきょうへ あがる、
………
……

まったくここ数日はクソッタレだ。まるで皇帝のクソみたいだ。
第六艦隊提督と13時間ぶりのシーバを飲みながら情報を整理していたところに、敵の中堅艦隊と会敵。
ヂットランドの共振探知機のおかげだったが、そのせいで発見が早まり全然話を聞けなかった。
帝国軍の艦隊には装甲の厚い最新型も混じっているようで、射程距離のアドバンテージもすぐに失われて接近戦に持ち込まれてしまった。
今までにないような砲撃戦に発展して、第六艦隊をかばいつつ善戦するも隷下第三戦隊旗艦とエルク級2隻、そして重巡をすべて失う。
その他ソルテガ級エレッゲを始めとして多くの艦が中破。第八艦隊は数さえまだ揃っているが、中身はめちゃくちゃだ。
おまけに、敵の別働隊を共振探知機で発見。全速で離脱を試みながら第六艦隊に無線で伝えようにも混乱で届かず、夜の闇のうちにはぐれてしまった。
わかるかニイナ。最悪なんだ。わかるか、これだ。チヨコだ。
(ゲボォ)
そうだ、私だって吐きたいよ。


X+16
とにかく戦域からの離脱を優先したため、満足な消火活動もせずにかっ飛ばしたことがたたって新型戦艦バリトゥースと細形駆逐艦ニッポディア、次いでメリア級を全て失ってしまった。
ほぼ全員の乗組員はヂットランドや随伴の大型艦に全て収容できた。
夜が明けると他にも多くの船に損害が出ており、破棄せざるを得ないものも多かった。
乗組員たちも、作戦前の高い士気を失い誰もが重い表情をしているのが分かる。口には出さないが、そろそろ限界も近いはずだ。

無事なコアパーツ、食料、水、その他使えるものは運びだして、いくつかの船を雷撃処分する。これもしかたがないことだ。
ここで残存部隊をまとめる。計上してみないと被害がわからない。

本営艦隊…殲滅戦特化 計5隻(-6)
旗艦:戦艦ヂットランド(中破)
戦艦アーキエリン級(中破)x1 装甲空母カラッグ級x1 艦隊護衛艦スパントス級(大破)x1 軽巡ソルテガ級(大破)x1

隷下第一戦隊…高速戦闘部隊 計3隻(-6)
旗艦:【パクスアーキリアと衝突し真っ二つ】
快速軽巡空艦メルケール級x1 艦隊護衛艦グリア級(大破)x1 高速駆逐艦ヴァナラ級(大破)x1

隷下第二戦隊…扱いに困った船をまとめた 計8隻(-2)
旗艦:狙撃戦艦アノーリアン(中破)
衝角艦パクスアーキリアx1 五連装実験艦オーポ級x1(中破)
多重連結型国境防衛艦x1(x5) 鹵獲・浮遊機関型アルバレステアx1 偽装クライプティア駆逐艦(コンスタンティン級)x3

隷下第三戦隊…空雷戦闘特化 計2隻(-8)
旗艦:【下部構造断絶、自沈】
重雷巡オペハザン級x1 駆逐艦コンスタンティン級x1(中破)

全18隻(-22)

我が艦隊は半数以上の損害を出してしまった。
このまま帰路につこうと北上しようとも、たぶん、いや確実に帝国の艦隊に屠られるだけだろう。
ここで決断する必要がありそうだ。

1)本国へ撤退
2)あくまで第四艦隊と合流
3)第五艦隊と合流
4)第六艦隊と合流

我々に残された選択肢はこの3つ。
1,本国へ撤退する案は一番現実的だが、先程も書いたとおりもはやこの戦力で単独行動するのは死しか意味しない。
2,まだ戦力が残っているだろう第四艦隊に編入してもらい、帝都陥落にすべてをかける
3,どこにいるのかは分からないが、後方で待機しているはずの第五艦隊と接触し共に撤退を具申する。
4,危険は承知で来た航路を戻り、第六艦隊と再び合流を試みる。方向がわかる分こちらが確実だ。

チヨコと香辛料を混ぜて作った代用コーヒーをがまずい。

X+17
結局夜通し参謀と議論を交わしても結論は出なかった。
傷だらけの残存艦隊で円形陣を組み、決死の構えでいる。我々は何を待っているのだろうか。
第五艦隊の救援か?それとも、結論が地平線の向こうからやってくるとでも思っているのかもしれない。
作り笑顔で艦隊を見回す。
ポンコツの第二戦隊が目に入る。
貴重な戦艦を操艦ミスで撃破したパクスアーキリア…砲塔持ちのくせに左右120度しか旋回できないクソ重巡…
魚の糞みたいに繋がる連結型の国境防衛艦に…鹵獲アルバレステア…
――そうだ。
アルバレステアだ!!
この合計4隻の偽装艦を本国方向に先行させて、進路上の帝国軍をかき乱しつつ撤退するのだ!!
早速簡易指示書を発行する。シーバなしに覚醒とは、私も随分と疲れているようだが、そんな暇はない。


X+18
"モドキ作戦"
航海長が「クルカモドキでスクムシ共をやっつけるということですな」とジョークを飛ばしたのが命名の由来だ。
私自身も結構気に入っている。実際間違ってはいない。
この作戦が成功すれば、本国に帰ることができるだろう。

偽装アルバレステアと同じく偽装クライプティア3隻を組ませて、我が艦隊の進路上27ゲイアスに先行させる。
帝国軍がおそらく使っていると思われる生体式の無線機械は、鹵獲艦であるアルバレステアしか積んでいないし、そもそも使い方がわからない。
向こうからの信号に応答することができなければこの作戦もすぐにバレてしまうだろうが、今はこれに賭けるしかない。
帝国捕虜になったとか、挙句の果てには帝国の女を抱いたことがあるとかいった、とにかく帝国に関して何らかの情報を持っている人材で固めておいた。
作戦開始だ。僅かだが、希望が見えてきた。

 

X+19
"クルカモドキ"たちと距離をとって追従している我が艦隊は14隻。
戦隊を解消し、すべて旗艦直属とする。二列縦隊の最後尾は戦艦アーキエリン級と五連装実験艦オーポ級にまかせる。
現在はリューリア上空を西進中。このまま敵が少ないと思われるエクナン半島にむけて進撃し、メル=パゼル共和国までの最短ルートで撤退を試みる。
……
まだ接敵の予兆はない。

 

X+20
眼下に着底した状態の味方空母と軽巡と思しき残骸を発見する。
レイテア偵察機を発艦させ確認させたところ、第五艦隊所属のものと思われる。
空母が落とされたということは、第五艦隊のあの鉄壁の防空網ももはや存在していないだろう。
この調子では第四艦隊もだめだろうか…。思えば我々が撤退を決めた際に、第四艦隊にもその旨を伝えておけばよかった。
今はただ、各提督が懸命な判断を下していることを祈るばかり。

高速駆逐艦ヴァナラ級が機関の大爆発をおこし、下降を始めたため、アンカーで食い止めつつ乗員を旗艦とアーキエリンに収容する。
我が艦隊の残存戦力、残り17隻となる。


X+21
食料いよいよ底をつき始める。
さらなる節約を全艦に徹底させる。
……
先行するクルカモドキから緊急信号、敵のグランビア中隊を発見。数15機。
ついにこの時が来た。アルバレステアが手はず通りに生体パルス信号をいじくりまわす。
グランビア隊もアルバレステアに気づいて近づいてきているようだが、まだ偽物だとはバレていないはずだ。
その間に装甲空母カラッグから全セズレ隊18機を発艦させ、雲塊に待機させる。
狙撃戦艦アノーリアンに対空散弾を装填させ、合図を待たせる。
敵機、クルカモドキまで1レウコを切る。
発砲開始!!
アノーリアンの狙撃砲から38cm超長距離対空散弾6門が炸裂する。
ヂットランドの交差視装置に乾杯、3機を同時撃破。見事なものだ!!
セズレ隊に突入の指示を出すが、クルカモドキたちにはまだクルカでいてもらう。
……
セズレ隊が大鷲のようにグランビアに襲いかかる。
グランビア隊は数の劣勢をどうにかして補うため、味方の対空弾幕圏内に逃げ込もうとするがこれが運の尽きだ。
"カノーニ!!"
発砲合図とともに鹵獲アルバレステアと偽装クライプティアから対空砲が放たれる。
10秒のうちに4機が落とされる。
あとは数の勝負だった。もともと対空戦闘ではセズレに軍配があがる。
このクルカモドキ作戦は、敵を生還させないことが一番重要だ。心が痛むが、グランビア隊は全員撃破させてもらう。
第五艦隊の残骸はメル=パゼル共和国へ船首を向けていた。我が艦隊が第五艦隊に追いつくことができれば…。
追記:食料庫に虫が湧いていた


X+22
クルカモドキが帝国の巡回部隊を地平線に確認する。艦隊規模約12隻。
総数では勝るといっても大半が損傷を受けているため、まともに戦っては勝ち目がない。
帝国軍に欺瞞信号を打ちつつ迂回する。
この不自然な信号を偽物だと勘付かれてしまえば終わりだ。
奴らがそれに気付けばすぐに我が第八艦隊を追撃してくるだろう。
だが追ってくるか否かを確認するためにこの場で足踏みをしている暇はない。

国境防衛艦に互換性のない砲弾・爆薬をありったけ仕込み、5隻を無人にして等間隔に配置する。
即席対艦爆雷だ。
帝国は、勝ち目のなくなった国境防衛艦がむやみに攻撃してこないことを知っている。
クランダルティンが捕虜を生け捕ろうと接舷したところで自爆させるのだ。
艦橋に張った糸が突っ張ると自爆装置が発動する仕組みだ。これは旗艦室のクルカトラップを応用したもので、多くの艦が採用している。
これですこしでも時間稼ぎができるはずだ。
残存艦艇16隻。


X+23
空はただただ広い。
いま、一体何隻の友軍が空を飛べているだろうか。
第五艦隊はどこだろうか、第六艦隊はなにをしているのだろうか。
第四艦隊は…たぶんだめだろう。第一艦隊は敗れたにせよ。護衛の第七艦隊はどこかで持ちこたえてくれているはず。
今はただ、こうして孤独に撤退するしかない。

午後、クルカモドキが帝国軍駆逐戦隊を発見。
ガルエ級3隻、強襲艦ラーヴァナ1隻、コアテラ2艇。
おそらく属国艦隊だ。損傷していて助けを求めている。
とても複雑。彼らは満足な装備もなく、征服者である帝国軍にこうやって頼らなくてはいけないのだ。
そしてこの偽装艦隊は帝国軍ではなく、敵である我々連邦艦艇なのだ。
少年雑誌ならばここで共闘と行きたいところだが、そううまくは行くはずもない。
接舷すると見せかけて一斉攻撃、これを撃滅。
追記:クルカのニーナが行方不明だ。


X+24
エクナン半島付近へ到達。
スルクフィルの国境線をかすめる形で北へ進路を取る。
ソルテガ級エレッゲ軽巡がついに力尽きる。快速軽巡空艦メルケール級に移乗させる。
残存艦艇15隻。このままでは脱落艦が増えてしまう。最寄りのジェット気流はここから5ゲイアスの距離にあるが、この船体では持たない。
艦隊を再編させる。

【本隊】
旗艦:戦艦ヂットランド(中破)
戦艦アーキエリン級(中破)
狙撃戦艦アノーリアン(中破)
装甲空母カラッグ級
艦隊護衛艦グリア級(大破)
艦隊護衛艦スパントス級(大破)
五連装実験艦オーポ級(中破)
重雷巡オペハザン級
快速軽巡空艦メルケール級
駆逐艦コンスタンティン級(中破)
衝角艦パクスアーキリア

【クルカモドキ隊】
鹵獲・浮遊機関型アルバレステア
偽装クライプティア駆逐艦(コンスタンティン級)x3

計15隻(-25)


X+25
午後17時50分。共振探知機に異常探知。
斜め左後方7時40分、スルクフィル方面より帝国軍の中型艦隊がこちらへ接近中とのこと。
直ちに迎撃体制を取らせる。
艦隊を再編成した矢先に追撃を食らうことになった。
先行させていたモドキ隊を本隊と敵艦隊の間へ割り込ませたいが、間に合うか!?

観測望遠鏡からで敵艦隊を補足。フレイア級3隻とクライプティア級10隻。
接触まであと25メウ。
モドキ隊は、間に合わない。
ボロボロの11隻対13隻、今回ばかりは運の尽きかもしれない。

我々の目的は、帝国軍との戦闘ではない。
既に知っているようにリューリア作戦は失敗した。
これより艦隊を二分し、1%でも各艦の生還率を高めたい。
我が、ヂットランドが殿となる!!
各艦は自分のことだけを考え、逃げろ!!
セズレ隊は我々に構わず、人員を乗せて連邦領土へ直帰!!

【戦闘記録】
友軍
戦艦ヂットランド(中破)
五連装実験艦オーポ級(中破)
重雷巡オペハザン級
衝角艦パクスアーキリア

敵軍
稲妻戦隊フレイア級軽巡x4
稲妻戦隊クライプティア級x10

オーポ、オペハザン、パクスアーキリアが駆けつけてくれた。
礼を言う暇はない、今はこの追撃艦隊のことだけを考える。

ヂットランドの偏差射撃計算のもと、オペハザンに空雷を全弾発射させる。
だが、この帝国艦隊は今までのものとは全く違っていた。空雷は全弾回避され、当方へ突っ込んでくる。
いったい何者だろうか?こんな部隊は聞いたことがない。
オーポ級の五連装は再装填に時間がかかるので、最後の抵抗手段として発砲を自重させつつ、ヂットランドの各砲座で応戦。
どうやら敵は高速で飛来し、追い抜き際に我々を集中砲火するつもりらしい。
どうにかしてこれを回避するため、各艦に距離を取らせる。
モドキ隊は、もう、間に合わない…

我が艦隊の怒りの弾幕を回避しながら敵が1レウコまで迫る。
オペハザンの空雷は再装填中。彼らの自衛用の船首の1門の15センチ砲だけではもう何もできない。
窮地のオペハザンを助けるためオーポ級に射撃を命じる。目標は最先頭のフレイア級。
5本の25cm砲が火を吹き、フレイア級を真っ二つにする。だがこれで発砲できるのはヂットランドだけになった。

クライプティア級3隻が本艦へ突っ込んでくる。距離、0.6レウコ!!
射程距離に入りしだい、のこる2発の指向性噴進弾を射出。
次いで、まだ使っていなかった対艦爆雷を全弾48発を一斉発射。一斉射に耐えかねて射出装置が爆炎を上げる。
噴進弾が1隻に命中、クライプティアが沈んでいく。カネの無駄遣いだ。
もう1隻のクライプティアがが僚艦を回避しつつこちら側へ方向を変えずに突撃しようとするが、爆雷の雨を食らって火だるまになるのが艦橋から見えた。

立て続けに3隻を撃破したが、クライプティアは燃え盛りながらヂットランドへ突っ込んでくる。
衝突回避はもうできないので、各員に衝撃に備えさせる。ヂットランドの質量なら耐えられるはずだ。
次の瞬間、ヂットランドにすさまじい衝撃が響き渡った。
クライプティア級は右舷船首にぶつかり、まるで床に叩きつけたペンのようにバウンド、回転しながらヂットランド船体へ張り付いたのだった。
私は衝撃でふっとばされた操舵士の下敷きとなっていた。気絶している操舵士を退けて舵輪を握る。
めちゃくちゃになった艦橋からはひん曲がった艦首とぺしゃんこに潰れた砲塔が見えていた。

帝国艦隊は2時の方向へ通り過ぎていった。
いったい何秒間わたしは気絶していたのだろうか。
私は気が動転しながらも、僚艦を探した。
そこにはフレイア級と互いに真正面から刺し違えたパクスアーキリア級と、大炎上を引き起こしているオペハザンとオーポ級の姿があった。
さらにさらに、恐ろしいことにヂットランドの船体は、艦橋基部と本隊が皮一枚でつながっている惨状であった。

接舷して乗組員を救助したいが、ヂットランドはもはや航行能力を失っていた。
パクスアーキリア級には生存者はいない…連絡艇を出そうにも、ヂットランドのいたるところで火災が発生しておりそれどころではなかった。
幸いモドキ隊が我々を再発見してくれて、残る乗員の救助を行ってくれた。


X+26
翌朝、火災が鎮火すると、空にはオーポ級しか残っていなかった。
オペハザンは午前0時11分に大爆発をおこし、パクスアーキリアと刺し違えたフレイア級は午前2時にゆっくりと沈んでいった。
気づくと、ヒグラートが見えていた。
祖国の空まで、もう一息だ。機関は燃え尽きていたが、浮遊機関だけでも推力は少しは残っている。
オーポ級に牽引されながら2隻本国を目指す。
偽装艦は、乗組員をヂットランドとオーポ級に移乗させた後全艦自爆処理とした。
ヂットランドの艦内は傷だらけの兵士で溢れかえっている。


X+27
ヒグラート上空。
敵と出くわさないことを祈る。


X+28
地平線に艦影見ゆとの報告。
全乗組員に絶望の表情。
だが、それは共和国の駆逐艦艦隊であった。助かった。
すぐにありったけの発光弾を射出。
赤、赤、黄色、赤、赤、黄色
"救援を乞う、救援を乞う"

共和国のシグニット級2隻からなる警邏隊であった。
詳しいことは後日記述する。
ヂットランドには最低限の人員を残して、負傷兵を移乗させる。

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X+X
こうして日誌をっくことができていてひとまず安心したいところだが、
第八艦隊で生き残ったのは我々と、カラッグ級装甲空母だけだった。
リューリア作戦は完全な失敗に終わった。
第一戦隊は壊滅し、第二艦隊はオールドレディと数隻を残すのみ。
第三艦隊の消息は不明だし、第四艦隊は帝都付近で自爆を遂げたという。
第五艦隊は徹底交戦の後、戦略空母を数隻従えて生き残った。
第六艦隊と第七艦隊はまだ情報がない。
連邦はこのさきどうなるのだろうか。
内地の艦隊はおろか首都防衛艦隊でさえ消滅した今、連邦の生存が脅かされている。
今はただ、生き残ったことに感謝しつつ、今後のことを考えることしかできない。

日誌の冒頭を読み返すと頭が痛くなってくる。
この日誌は、同じ過ちを繰り返さないために軍事大学へ寄付することとしよう。
願わくば、近い将来このバカバカしい戦争が終わって、平和な大陸が実現することを祈る。

 

最終更新:2016年10月12日 00:16