連邦機特集の記事

ネネツ自治管区 防空軍向け情報誌より、連邦機特集の記事

 

 カルログラードで亡命した旧第六艦隊所属機のレストアが完了した。ユーフー、セズレⅣ、レイテアは複数機が残存していたため共食い整備を行い、フォイレMk.3は1機が奇跡的に損傷を免れていたことから飛行可能状態までの修復に成功。ギズレッツァ、オクタヴィアは帝国戦艦との砲撃戦によって全機が格納庫ごと大破し修復不可能であった。オケアノスの搭載していたデズレリアも同上。いずれも1機ずつを外観のみ整形し静態保存するとともに、残存機体は浮遊機関と機体剛性の試験に使用。
 これまでも帝国による連邦機鹵獲はあったものの、整備士・予備部品・パイロットすべてが一体となって捕獲された機会はほぼなかったため、完全な状態で飛行試験が行える。南半球の人間による連邦機飛行試験は今回が初めてだ。
 レストア機体の操縦方法を亡命連邦パイロットより習得し、ネネツ航空隊の訓練教官パイロットのうち数人が北半球機を操縦可能となった。

 そこで先月、グレーヒェン艦隊から南半球所属機との合同試験飛行が提案され、六王湖上空にて6日、連邦軍の保有する機体の試験飛行が行われた。試験の概要とその時に判明した情報を以下に記す。フリッグ殿下の即位による帝国の体制変換以降、我が軍は各地に遠征する機会が増えつつある。パイロットや船乗り諸君はこの記事をよく読んで、敵機の性能を頭に入れておいた方が良いかもしれない。

●飛行試験参加機

ネネツ自治管区より
ムリーヤ
グランミトラ改

アーキル連邦より
ユーフー
レイテア
セズレⅣ

北パンノニアより
フォイレMk.3

南パンノニアより試験用に貸与
ストレガ 中期型

帝国本国 グレーヒェン艦隊所属艦載機より
グランヴィナス
グランビア(グレーヒェン航空隊正規仕様)


 ユーフーはフリゲート、ワレフスキーの艦載機吊り下げ装置で懸架し運用。セズレ、フォイレおよびレイテア、試験用に輸入されたストレガはサンクトウラスノルクスに搭載して試験。


加速・速力比較

高度1500メートルにて全機横並び75㎞/h状態より全開で水平加速、瞬発力および5分後に位置測定

 最初の数秒でグランビアとストレガがトップに立ち、わずかに遅れてグランミトラ改、すぐ後ろにムリーヤ、やや遅れてグランヴィナスが並び、次にセズレ、レイテア、ユーフー、フォイレMk.3の順だった。
しばらくしてセズレが順位を上げ、帝国機を次々と追い抜いた。フォイレも加速し続けて南側の機体に追いすがる。ユーフーもムリーヤに追従した。

5分後ストップをかけた時、前方はるか彼方でセズレが、211㎞/hを記録。続いてストレガ、そのすぐ後ろにフォイレMk.3とユーフー、グランビアがほぼ同じところをキープ。少し後ろにグランミトラ、さらに遅れてムリーヤ・グランヴィナス、最も後ろにレイテアという結果となった。
(連邦機は整備不良や燃料の質によって性能が落ちている可能性があることに注意)


 次に空戦試験として連邦側と帝国側に分かれ所定の空域で空中戦を実行、帝国・連邦に4機づつとした。複数回繰り返し、その際の両陣営パイロットの感想からこれら機体を相手にする際の注意点を以下に記す。

 ユーフー
:現代でもある程度通用する、旧式機としては驚異的な飛行性能を持つ。着陸できないため出現リスクはある程度予測可能なこと、そもそも今後も連邦がユーフーを使い続けるかは不明なのだが、ユーフーに対し新しい機体だからといって挑んでも撃墜されるリスクは十分に考えられる。特に爆装状態のムリーヤは低速であり、追従撃墜されやすい。爆弾を投棄して空戦に入ることも考慮に入れること。
 この機体はかねてより研究されつくしているため目新しい性質は特に指摘されなかった。実際に操縦してみて、取りつけ部の脆弱さからくる全開時の振動と良好な直進安定性が感じられるという。ただ振動は修復した際の接合具合からくるものかもしれない。
 対艦砲は強力だが二発のみのため、二撃を撃ち切った場合気にしなくていい。

 レイテア
:元が偵察戦闘機だった分、最低限の空戦能力しかない。砲撃艦に搭載されて雑用および護衛任務に就く点は我々のマコラガに近いかもしれないが、マコラガよりも遅い。しかし空力鰭が4枚装備されている分、マコラガより小回りが効き護衛機としてはより望ましい性能。その性質上単機・少数機で飛行していることが多く、空戦に入っても数の不利さえなければそこまで苦労する相手ではないが、レイテアと接触した時点でこちらの存在が母艦に報告されていることを念頭に置いておくこと。軽いので加減速力が高いことにも注意。
 対艦攻撃力は付与されていないが、軽量弾を爆装して地上支援に出ることもあるので油断していると以外な一撃をもらうかもしれない。

 セズレⅣ
:高い速力を持つ連邦の主力機。現在この機体に追いすがれる機体はネネツに存在しないが、瞬発力は生体機関と比べ小さく反応性も機敏では無いため、格闘戦に持ち込めば対処可能。また加速性能もグランビア系列には劣るため、接触時にすぐ退避を始めれば逃げ切れる可能性はある。しかし加速力も従来のユーフー系列とは一線を画しており、無改装のグランヴィナスと同等に近い。
一撃離脱戦法には乗らないこと! 速度を載せて機動するセズレには勝てない!
 四門の対艦機関砲も脅威で、艦内を掃射され死傷者が続出すると報告が頻繁に上がっている。ただ大型爆弾を載せ、空中艦を直接沈めに来たケースは今のところ報告されていない。

 フォイレMk.3
:北パンノニア領国所属の汎用機のひとつ。この機体は8ミリ級機銃と14ミリ級機銃を1挺ずつ備えた制空機で、前任機より空力特性が向上したという。完全な内燃機のみで飛行しており、今回参加した中では唯一空中停止が不可能。またスロートルが機関出力を介して速力に反映されるまで時間差があるため、瞬発力は高くない。しかし速力はネネツ現有機の平均以上で、一度高高度で速度が乗ると接近しづらくなる。剛性は比較的低く急降下に速度制限が付くため一撃離脱よりではなく、軽量を生かして格闘戦に持ち込むケースが多いが、パイロット次第という。つまり対応がひとつと定まらないため、空戦するには面倒臭い相手かもしれない。
 対艦武装に固定砲は無く軽量爆弾を二発搭載する。対艦攻撃してくる敵機を見た場合、連邦機か北パ機かを瞬時に見分けないと適切な対応を誤り大被害を被る可能性がある。

 ストレガ 中期型
:北の同志、南パンノニア自治国の保有する主力機。生体式ではなく機械式の循環装置を搭載しており、より線形な出力を引きだすことができている。中期型は前期型と比べ、循環発動機を高性能化し速力と機動性が向上。火力とその他コンポーネントに変更はない。おおむねライバルのフォイレシリーズより優勢を維持していると言われている。

 

 以下は連邦から鹵獲したものの飛行試験ができず、性能は亡命者の証言と推定に頼らざるを得ない機体

 デズレリア
:セズレの性能向上型といえる機体で、最初にその姿が確認されてから15年ほどしか経っていない精鋭部隊用の新型機である。武装については諸説あったが、今回の鹵獲によって連発銃4挺と散弾砲2門と確定した。対艦武装は積まないことから、主に航空火力艦に搭載して艦隊防空などの役目を担っていることが考えられる。

 ギズレッツァ
:配備が始まったばかりの最新鋭機。一説によればセズレの二倍というすさまじい快速を誇る多用途戦闘機である。武装は不明だが、残骸の分析により機銃2~4門・機関砲4門という大火力を持っている可能性が高くなった。
 この機についての性能は不明な点が多い。この機体の元々の持ち主は、第六艦隊の戦闘と混乱の中で行方不明になっている。亡命兵士の中でギズレッツァに搭乗した経験があったものもおらず、我々の手元には大破した機体が1機残るのみである。

 オクタヴィア・ヴァルゼ
:30数年前にロールアウトした、数機しか製造されなかったと言われる幻の試作機。どのような紆余曲折があって我が国まで来たのだろうか?
 性能は、オクタヴィアの競争試作機と言われるマーレⅡから推測できるかもしれない。もっとも、マーレⅡ自体が連邦の首都防空機であり、滅多に遭遇した記録がないが……
 帝国軍の情報供与によれば、マーレⅡは連発銃6門という多砲門主義で、セズレの2.5倍の速力(!)を持つ韋駄天迎撃機だと考えられている。にわかに信じられないが、オクタヴィアもこれに匹敵する速力があった可能性はある。もし無傷でたどり着いていれば、ネネツ人も亜音速を体験できたかもしれない。

 

 以下は諸外国の保有する・開発中の機体について、未確認情報

 艦載戦闘機 グランツェル
:帝国近衛艦隊が保有する最新鋭戦闘機であり、詳細な性能は明らかにされておらず、名前と大まかな外観ぐらいしか判明していない。グランビアをさらに鋭くしたような見た目で、おそらくセズレ以上の高速性能と、グランビアをさらに洗練させた機動性を併せ持つだろう。近衛艦隊以外への配備話は全く聞かれず、近衛艦隊所属機体の目録に未だグランビアが残っていることから、おそらく高コストでさすがの帝国といえど量産は厳しいと思われる。それは後述の新型機体計画が別途立てられていることからも推察できる。

 改グランビア級多用途戦闘機
:現在開発の進められる帝国軍新戦闘機。グランビアでは流石に辛くなってきた現状を打破するために、グランビアの完全更新を目指して開発中という。伝えられる情報によると、グランビアをベースにコストダウンを図りながら、様々な任務を1機種で担えるという。この機体の開発には、今回の試験飛行結果が生かされるであろう。
 この機体が大量生産に至れば、余剰となった中古のグランビアが我が国に流れてくるかもしれない。

 スパビア戦闘機(?)
:パンノニア地方の東に位置する北半球の国家、テルス皇国という未開の国が独自の戦闘機を保有しているという噂話がある。テルス皇国自体の詳細が不明。帝国兵からの目撃証言を集めてみると、極めて機動性が高く、生体機関を搭載したセズレと言う者もいる。ただの戦場伝説かもしれないが、要注意だ。

 トラギアⅡ戦闘機
:西のアーキル、メルパゼル共和国が配備しているという新型機。トラギアⅡは仮称で、かの国での正式名は不明。双発の空力機体で、情報部には高速と大火力が特徴という報告が上がっている。

最終更新:2017年02月10日 00:24