定期報告txt > net

 セーブモード解除

 最終ログポイント確認・・・175209218時間52分12秒経過

 再起動メンテナンス実行。
論理思考回路・・・異常なし/最終チェック確認・・・175209218時間52分12秒
各部電子回路・・・異常なし/最終チェック確認・・・175209218時間52分12秒
量子水・・・以上なし/容量・・・許容量確認。異常なし/最終チェック確認・・・175209218時間52分12秒

再起動シークエンス、異常なし


発声システム・・・オフライン/リカバリー継続
視覚システム・・・オフライン/リカバリー継続
音声認識システム・・・オンライン
ネットワーク回路……オフライン。
フォルダ管理……データ劣化確認、バックアップフォルダD-192よりサルベージ。

音声認識による情報収集開始。ログメモリー許容量・・・15分37秒

▼△
 

「・・・か。・・・ここ・・・じあけ・・ます」

「か・・・な、きん・・・か?」

 

「・・。りません。ただ、や・・・じゅうです」

「きをつけ・・・があるかわ・・らんぞ」

「あけます」


<<重く響く開閉音>>


「・・・思ったより汚れていません。密閉されていたようです」

「すごいな。・・・周囲を見ろ、全て平坦だ。凹凸がない。・・・岩じゃないぞ?」

「それだけじゃない。これは・・・固いぞ。見てろ」

<<衝突音とともに破片が転がる音>>

「・・王宮職人に鍛えられた短剣が見ろ・・・なまくら同然だ」

 

「松明を持ってこい、奥を照らせ」

 

「エヴィアン!こっちに来てくれ!」

 

<<近づいてくる足音>>

「・・・丸い・・・なんだ?儀礼用のなにかか?」

「目玉みたいな形だな・・・エヴィアン、持ってみろよ」

「ああ。・・・ちょっと持っててくれ・・・」

 

<<金属と擦れる布の音>>

「見た目よりは・・・重いな。タムタムの殻並みだ」

 

「なあエヴィアン、真ん中の・・・それ。ぴかぴか光ってねえか?」

 

「・・・そうだな。宝石か・・・いや、違うな」

「とってみないか?」
 

「・・・だめだ。見えない岩でふさがってる」

 

 

<<荒々しい足音>>

 

「何か見つけたのか!?」

 

<<落下音>>
 

衝撃感知。

損傷チェック開始

損傷確認

・・・表面パネル16D2から23F9にかけて0.19㎜の擦過

 

対処・・・分子流動による自己修復開始

 

修復完了

 

 

「!?・・・フォルクス皇!」

 

「何を見つけたのかと聞いたのだ」

 

「は!・・・この装飾品・・・らしきものでございます」

 

「貴様・・・今それを落としたな?」

 

「・・・申し訳ありません、このエヴィアン・グリッチ・セールク。不覚でありました」

 

「それはなんだ?」

 

「は?・・・・」

 

「ここはどこだ、エヴィアン・グリッヂ・セールク近衛兵」

 

「・・・テルスタリ=キャピタル。我が皇王、我らが貴方のお住まいです」

 

「・・・違う。全く違う。ここは『住まい』ではない。・・・ここは!私の!『もの』だ!」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「こんなかび臭い地下まで来たのも、私のものがあるからだ。こんな寒々しい場所まで降りてきたのも、私の物を!私が!使うためだ!」

 

「はい・・・」

 

「いいかエヴィアン!今!貴様は!私の物を!どうした!?」

 

「・・・落としました」

 

「我が皇王とうたいながら、貴様は私の物を傷つけたのか!?」

 

「申し訳ありません・・・」

 

<<乾いた音>>

 

「っ!・・・・---っ」

 

「二度はないぞエヴィアン!今!貴様の顔を叩いたものが鋼の鞭でないだけありがたいと思え!」

 

「・・・は。ご教授、ありがとうございます」

 

「・・・エヴィアン、使えよ」(小声)

「すまない、アーラシュ・・・」

 

「・・・それで?これか、私の宝は?」

 

「中心になにか輝くものが埋まっています。エヴィアンが持てることから、何かの儀礼用の置石か何かかと・・・」

 

「ふむ・・・」

 

<<金属をさわる音>>

 

 

「・・・・つまらん」

 

<<床に置かれる音>>

 

「なんだこれは?全くもって興味が湧かん。宝物ではなくガラクタか?」

 

「しかしフォルクス皇・・・この輝きは、碧晶でもありません。見たことのない光ですが・・・」

 

<<衝突音。何かが倒れる音>>

 

「・・・貴様もかアーラシュ。私の物の何たるかをわからんのか?」

 

「フォルクス皇・・・」

 

「いいか?私の物、私だけが持つべき宝物とは、私に語り掛けてくるのだ。金は微笑み、銀は寄り添い、碧晶は私に付き従う。これも、これも、あれも、それも、すべてが私のもとに集まってくる。」

 

<<歩く音>>

 

「だがここは・・・なんだ?これはなんだ!?これは!私を呼ぶ輝きではない・・・。私にへつらい、微笑み、付き従う宝物の輝きではない!わかるか?これはガラクタだ!」

 

<<床への衝突>>

損傷チェック
損傷個所・・・外部パネル57C1から49U8にかけての擦過

衝撃による量子パネル第36層から第18層に振動確認・・・量子水漏洩確認できず

 

「ここにあるのはこれだけだ・・・これだけ!徒労だ!テルスタリ家の宝物などありはしなかった!だまされたのだ、先代に!」

 

<<早歩きの音。遠ざかる>>

 

「戻るぞ!こんな美しくない場所にいられるか、かび臭さがうつるわ!」

 

「はっ!フォルクス皇!」

 

<<大勢の足音。遠ざかる>>

 

 

「このへやは・・・ふういんしな・・・せ!そとか・・・ぎをかけろ!」

 

「りょう・・ました、あー・・しゅたいちょ・・・!」

 

<<運搬される。元の場所に戻される>>

 

「・・・欲に目がくらんでるのか・・・まだ先代の方がよかったな」

・・・

・・

 

―end―

 

 

記録終了

 

メンテナンスチェック・・・第896ブロックHUDに保存

第896ブロック容量残量・・・67ペタ

 

バグフィックス処理開始・・・情報処理領域に0.0021%の破損データ確認。消去

 

余分データ検索・・・7.52%の非生産的情報を確認。消去

 

名称登録・・・フォルクス/前歴無し

        アーラシュ/前歴無し

        エヴィアン/前歴無し

 

 

新規登録者・・・3名/初診登録予定ファイルに分類。

 

処理完了。セーフモード移行

次回の定期メンテナンスは所内規定時間960時間後にオーダー登録とする

 

 

--Netallfy/out

 

最終更新:2017年05月18日 01:24