連邦資料館の秘匿期限満了放出資料の一部

―――――

こんなことを書くのは今更ですが、あなたが好きです。
今書いておかないと次は書けないかもしれないので今書いています。
極地に配属されて最初は周りからいびられていましたが、ハレル先輩のおかげでここまでやってこれました。
いつもあなたの後ろ姿が眩しくてずっと追い続けてきました。
でも今回の件で失敗してしまいました。
もう事の顛末はしっているとおもいますが、凍傷などで右足と右手がなくなってしまいましたので左手で書いています。
字が汚いのは許してください。
先輩はいつでもわたしを特別面倒を見てくれました。
あなたはそうは思っていないかもしれませんがわたしにとってそれは特別なことでした。
配属されてからその時から好意は抱いていたのですが、最初はあなたの一挙手一投足がキザったらしくてナンパされているのと思っていたものです。
でもそれがそうでないと分かったのはあなたと二人きりで飲みに行ったときです。
皆が出払って居ないときに駐屯地の酒蔵をひっくり返して誰かの秘蔵の酒を見つけたとき、あなたが見回りにきて鉢合わせになったんです。
口止め料としてあなたと一緒に飲むことになって、完全に二人して酔っ払ってしまってあなたのベッドで一緒に寝ましたね。
別に今更咎めている訳でもないですし、わたしがあなたを引っ張っていったような気がするので自責だと思います。
それで翌日、あなたはわたしが酩酊してわがままになっていて、さらに昨日のことを覚えていなかったにも関わらずあたかも自分が悪かったかのような説明をして責任まで取るとまで言ってくれました。
そこであなたが以外にも誠実なんだと分かったんです。
あと、その、あれです。体の相性も良かったですし。
そのときは丁寧にお断りしたのですが、今になって思えば受けておけばなと思っています。
このことがきっかけであなたが明確に好きになりました。
その後は一度は疎遠になりましたが最後は飲み交わす関係で落ち着きましたね。
実はもう一度間違いが起こらないかと期待してあなたと飲み明かしていたのですが、さすがにあなたはもう間違いは起こしてくれませんでした。
そうして時間だけが過ぎて、今に至るわけです。
すべてが遅すぎました、でも今書かなければと思ったんです。
卑怯だと鼻で笑ってもらっても結構です。
でも、あなたが好きです。

追伸
いい娘じゃないか、結婚してあげなよ。
メシマズの国から働きに来て15年も伴侶を持たなかったんだ。
それは褒めてあげても良いけど、いい加減君は潮時だよ。
向こうに釘は刺しておいたけど、君は居ない人だって確認は取ったから帰れないよ。
あと、保身のために向こうの職場を裏切れって言ってるわけじゃないし、元の職場を辞めろと言ってるわけでもない。
ちょっと手を貸してほしいだけさ。
こっちの利益もそうだけど、そちらにも益のある話だと思うんだよね。
15年も里帰りしてないなら根掘り葉掘り聞き出すようなこともないだろうからね、そこは安心していいよ。
というわけでこの手紙を処分したら早いうちに出頭すること。
処分先は君に任せるけどその辺の道端に捨てるのだけは本当にやめてくれよ?
特務部より

―――――

英雄生還も無念の死!
先日極地で奇跡的なの生還を果たしたエルカ・セルデ氏が昨日死亡していたことが軍の発表により明らかになりました。
発表によると死因は衰弱死とのことです。
彼女は極地の最奥に物資の補給に向かう途中、旧兵器の襲撃に遭い行方不明になっていたところを救助されました。
しかし凍傷などで特に右半身に欠損が多く、安否が心配されていました。
この訃報について軍の広報官は公式なコメントは避けると明言しています。
葬儀は同様に盛大に行われるという事です。

―――――

英雄の恋人?後追い自殺か
先日葬儀が執り行われた英雄エルカ・セルデの後を追って自殺したと思われるハレル氏の遺体が発見されたと軍は発表しました。
彼は宿泊していた部屋で何らかの毒を煽っており、関係者が発見したときには既に息を引き取っていたとのことです。
極地での取材の結果ハレル氏はエルカ・セルデ氏と恋仲の関係にあり、駐屯地でも仲の良いことで有名だったそうです。
葬儀の後、体調を崩し休暇を取って療養をしていた先での自殺であり、遺書も軍の筆跡鑑定によって本物であることが確認されており、他殺の可能性は有り得ないとのことです。
広報官は明確なコメントは避けるとしていますが同時に、彼の傷心を予測していながら彼の自殺を阻止できなかったことは誠に遺憾であると発表しました。

―――――

中年夫婦、遂に結婚!
毎週お送りしています「今週の新郎新婦」のコーナーですが、今回は異例のカップルのハルさん(写真右)とエルセールさん(写真左)のご紹介となります。
このお二方はなんと45歳と35歳にして遂に結婚という悲願を叶えたのであります。
というのもお二方はかれこれ10年に渡るお付き合いをしていましたが、二人の間には子供ができずにいました。
これでは結婚しても皆に申し訳が立たないということで、子宝に恵まれるようになるまで結婚は控えようと誓ったそうです。
それから10年の月日がたち、ご懐妊された暁には結婚しようというのが今回の事の顛末です。
紙面の方から、中年婚は良いが体力は持つのかとの声がたびたび寄せられます。
たしかに中年婚では体力的な問題もあり子宝にあまり恵まれない事が多いのですが、今回は神々が苦難を乗り越えた二人を祝福したのか45・35歳とは思えない体つきをしています。。
我々独自の体力測定を行いました所、お二方の身体は実年齢から10歳近く若いとの結果がでています。またお二方は体を鍛えるのが好きとのことで健康体そのもので体力もかなりありました。
(注:エルセールさんはご懐妊されているのでハルさんからの聞き取り調査での予測になります。)
そんな二人にはこれから健やかな新婚生活を送るとともにたくさん子宝に恵まれて頂きたいと思います。

―――――

最終更新:2015年01月07日 00:23