惑星パルエの原風景

この記事は、旧文明人によって環境が変化する前の惑星パルエがどんな天体・季候・海流だったか、というのををまるりょうが大して知識もないのに科学的に考察した二次創作です。
この記事はあくまで二次創作です。原作のフライトグライド本編および蒼衣わっふる氏のイラスト群とは何の関係もありません。公式設定ではございません。
内容は科学的な考察の記事ですが、これによってフライトグライドの一次設定を否定するつもりはありません。みなさんがフライトグライド関係の創作をするにあたって、何かインスピレーションを得たり、より濃厚なSF設定を作る際の参考にしていただければと思い作りました。
現在のパルエの環境は旧文明による自然破壊と改造、核戦争によって激変し、現在のフライトグライドの世界観を形成しました。そうなる前、旧文明人が生まれて産業革命を成し遂げるまでの頃のこの惑星は元々どのようなものだったか、ということを考察するのがこの記事の趣旨です。
 この「惑星パルエの原風景」は編集フリーとします。この記事の考察に訂正すべき点があったり、追加したい文があれば好きに編集していただいて構いません。というか私より専門的知識のある人誰か校閲してください。その場合は記事下部のコメント欄で言及していただけると助かります。

パルエの海流・季候

 まずパルエの特性を考えるにあたって、惑星パルエ自身の設定を固めておく必要があります。惑星パルエの記事によると、やや重力が強く公転周期が長く一日が短いこと以外はほぼ地球と変わらないようです。ほかの諸々の情報から、地球のようなはっきりとした四季もあるようです。地軸の傾きと自転方向は設定に無いようですが、環境を考察するにおいて重要なファクターとなります。この記事では暫定的に地球と同じ、すなわち地軸は23.4度傾いていて、北極上空から見て反時計回りに自転している(あるいはしていた)と仮定します。この仮定は以下、大前提とします。もしも自転方向が逆になれば、風向きや海流も違うものとなり結果が変わってきます。

海流

 気候を決定する重要な要素である海流について考えます。海水は比熱が大きいので、熱エネルギーの移動の多くを担っているのです。現在、パルエの海流は停止している、ないしはっきりとした流れがないようですが、かつて旧文明人が環境をいじる前には当然海洋に流れはあったと思われます。海流は自転による風の発生とコリオリ力によって、地形に沿って発達します。
 ここで問題なのが、「裏側の陸地」です。パンゲア大陸の裏側の部分に大陸があるのかわからないからです。パルエのまだ明らかになっていない半球がどうなっているのかわからなければ、海流の設定ができません。とりあえずこの考察では、巨大な大陸は存在しないことにします(小さな島嶼や浅瀬はその限りではない)。
 海流を決定していきます。地球と同じ方向にパルエは自転しているので、その結果赤道付近では東から西へ向かって風が吹きます。それに引きずられる形で東から西への海流が生まれます。この海流が大陸にあたって南北に分かれると、今度はコリオリの力が影響してきます。この力によって北に向かった流れは東に、南に向かった流れは西に偏ります。その結果、北半球では時計回り、南半球では反時計回りの大きな流れができます。
 以上を考えるとパルエでの大まかな流れはこのようになります。なるはずですたぶん。

(水色が寒流、赤色が暖流)

風と気候区分

 海流が決定したところで風の流れと気候を考えてみましょう。赤道では暖かい空気が上昇することによって低気圧が生まれ、雲に覆われその下は温暖湿潤となることが多いです。赤道低圧帯です。上昇した空気は緯度30度ぐらいのところで冷えて落ちてきます。これが亜熱帯高圧帯で、赤道低圧帯とは逆にいつも晴れているので大体砂漠です。地図を見れば、サハラや中東、オーストラリア中部やアメリカ中西部の乾燥地域は大体この辺であることがわかります。この大気の循環は、ハドレー循環と呼ばれます。
 海流とハドレー循環を考慮して、パルエの各地域の「本来あったはずの気候」を設定していきます。地名はグーグルパルエ参照です。
  • アーキル本国
 この地域はオリエント海の暖流が沖合を流れており、大陸東岸で比較的温暖だと考えられます。ラオデギア付近はケッペンの気候区分で言えばCfa、すなわち温暖湿潤気候になるでしょう。諸島連合の方からたびたび台風がやってくるほか、モンスーンの影響を強く受けます。全体的にアーキル本国の気候は、中国に近似したものになるかもしれません。
すなわち北部は冷帯気候、中南部は温帯気候です。ただ、南東部にパンノニアの陸地があるため、アーキル南東部は乾燥地帯になるかもしれません。

  • 南北パンノニア
 パンノニアの張り出し(暫定的にパンノニア半島と呼ぶ)は赤道をまたいで南北に分布しています。ここは大陸東岸で暖流の直撃を受けるため、熱帯雨林気候となるのが一番ありそうです。ジャングルやセルバのように広大な熱帯雨林と複雑な生態系が、かつてはあったことでしょう。
 具体的には、赤道直下の沿岸を中心に熱帯雨林が、その周辺を囲むように乾季と雨季にはっきり分かれたサバナ気候(イメージ的には低木の生えた草原に象やキリンが走り回っている、あの感じ)が出ていると思います。一方、パンノニア半島中央に向かうにつれて降雨量は少なくなり、ステップの草原が広がっていたでしょう。湿潤な大気はパンノニア半島根本の山脈で途絶え、以西は乾燥地域が広がっています。
 熱帯雨林は土壌が弱く、肥沃な土はほとんどありません。多量の降雨が洗い流すためです。この地域の多数の植物は高い気温と降雨によって命をつながれていますが、一度伐採してしまうとわずかな土壌は流されて、生態系は二度と戻らなくなります。おそらく旧文明人が木材と地下資源開発のためにパンノニア半島で大規模な伐採を行った結果、現在のような乾燥したパンノニアの大地が生まれたのでしょう。なお余談ですが熱帯雨林の一般的な土壌であるラテライトには、鉄鉱石とかニッケルとかボーキサイトとかが埋まってます。

  • サンテルスタリ皇国
 アーキルとパンノニアに挟まれたこの国も熱帯~温帯の湿潤気候となるでしょう。皇国の周りをぐるりと覆うような山脈のせいで東からやってきた湿潤な空気は皇国領土内に大雨を降らせます。現在なお、パンゲアにおいてもっとも湿潤な地域のうちの一つようです。山脈が多く国防にも適しているし本当に恵まれています。

  • アナンサラド王国
 降雨の多い皇国とは山脈でさえぎられていて一見不毛の地帯に見えるアナンサラドですが、山脈に多量に降った降雨の一部が地下水となってアナンサラド側に流れ込むため、井戸を掘ればそこまで水不足に悩まされることはなかいでしょう。自噴井もあるかもしれません。ただし調子に乗って大規模農業などを始めると、地下水位の低下と塩害に悩まされることになります。そういうことはもっと東でやってください。皇国にある程度の降雨がある以上、現在でも少なくとも国が滅ばない程度の地下水は手に入るはずです。ただし気候的には砂漠気候です。赤道直下なので気温も上がり暮らしやすくはないと思います。

  • ノスギア山脈東部・無人地帯
 現在は旧兵器がうようよいる地帯です。逆に言えば、旧文明でも重要な地域であったということでしょう。沿岸地域のうち北部、パンノニアとの南部限界あたりからセントラレナーヴあたりまで温帯気候、それ以南が冷帯気候といったところでしょうか? 温帯気候には日本のような温帯林が、冷帯気候にはシベリアのタイガのような森林がひたすら広がっているでしょう。
 温帯・冷帯の森林は熱帯林より土壌がしっかりしているので、伐採したからといってそう簡単に滅び去ることはありません。たとえ旧文明人が開発し、農地を増やし、遺伝子組み換え植物を植えまくったとしても自然はより強いのです。旧文明が崩壊した後人間の手が下されなくなれば、人間の世話を前提に生産量に特化したそれらは生存競争で敗れ去り、数百年でかつての大森林と生態系が戻ってくることでしょう。現在、最もパルエの原風景に近いのがこの無人地帯と言えます。
 一方、内陸の山脈近くは雨が降らず乾燥しています。特徴的なのがリタ・クレーターです。大昔からあったのか人工的な爆発でできたのかはわかりませんが、外輪山によってさえぎられ、内陸湖のある内部は独自の生態系が発展している可能性が高く、一大陸で全体的に生物多様性の小さいパンゲアにおいて注目すべき存在でしょう。この世界の博物学者がここに行けるまでにはあと何年かかるでしょうか?

  • クランダルト帝国
 帝国は広大な領地をもっていますが、まずクランダルト本国から考えます。帝国西岸は寒流に洗われているため、同緯度の東岸よりも気温は低めでしょう。首都インダストラリーゼは寒帯気候です。首都から東にかけて、かつては針葉樹林が広がっていたでしょう。それより南部はツンドラ気候で、帝国北部の地域は亜熱帯高圧帯+沖に寒流という悪条件のため乾燥した砂漠が広がっていました。その砂漠は現在も変わらず、むしろ周囲に広がっています。
 本国北部からずっと広がっている無人地帯、ヒグラートの土地は今も昔も乾燥しています。パンノニアとの国境にある山脈にすべて水分を持っていかれる上内陸奥深く、乾燥しないわけがないです。ただ、アナンサラドと同じように皇国との国境の山脈に降った雨が地下水となってエゲル盆地あたりにたまっているかもしれません。盆地で難透水層に地下水がたまっているためエゲル盆地は鑚井盆地である可能性があります。何百万年もかけて移動してきた地下水がヒグラート渓谷の地下奥深くに潜在している可能性はあるでしょう。また、これはヒグラートだけに限りませんが、化石水が存在していたならば地下から水分を補給できます。ただし乾燥地帯に化石水があったとしても、旧文明時代に消費され枯渇しているでしょう(化石水は石油と同じで補充されない)。

  • ネネツ自治管区
 ネネツは冷帯~寒帯に位置します。寒帯にはツンドラ気候と氷雪気候がありますが、山脈部は氷河におおわれていた氷雪気候、それ以外はツンドラ気候や寒帯気候です。河川は冬季には大半が凍結して重要な道路となる(あるいはなった)でしょう。

  • エウルノア王国・テナー首長国・カルラ市国
 現在カノッサ湿地帯となっているこの場所。湿地帯を形成する水分は西海岸からの水蒸気による降雨やアナンサラドからの地下水と思われます。ではかつてはどうだったかというと、赤道直下沿岸地域なのでやはり高温多雨の密林が広がっていたでしょう。より内陸には、西にあるヒグラート渓谷がすごい乾燥地帯なので、現在の地球のアフリカにあるサヘルのような乾燥地帯が広がっていたでしょう。自然破壊と開発が進むにつれて徐々に砂漠化し、乾燥地帯は帝国の大半を飲み込みました。

  • メル=パゼル共和国
 大陸西岸、赤道に近い位置から北に細く広がるこの土地は、多分南部の一部が熱帯多湿。北部は乾燥気味の温帯気候です。北から寒流が流れ込んでいることから沿岸部は砂漠気候になる気がします。また北部は亜熱帯高圧帯に覆われておりやはり乾燥地帯です。夏季にはアノール地方からの季節風が吹き砂嵐に覆われる、あまり好条件とは言えない地域でした。旧文明の惑星改造によってなのか、現在は若干の湿潤地域になっているようです。(まぁ熱帯なのに寒帯林があるぐらいだしね……)

  • アーキル連邦 本国および共和国・自パ以外の連邦領土部分
 ほぼ砂漠です。オアシスの水は化石水あるいは旧時代の水合成装置によるものでしょうか?

  • フォウ王国
 大部分はほぼ寒帯気候(ツンドラあるいは一面の氷原)、東部は暖流が流れ込むため比較的温暖(といっても冷帯)、中央部は乾燥地域が食い込んでいる感じでしょうか。全体的には東海岸に比べ西海岸の方が寒冷です。アーキル本国から北の王国領には、広大な針葉樹森林地帯だったでしょう。

  • ワリウネクル諸島連合
 大陸東岸沖に位置するこの国家の、とくに南~中央部には台風が直撃する地域となっています。この諸島は全体的に海洋性気候なので、季節はありますが比較的マイルドで月ごとの平均気温の差は少ないです。偏西風の影響を受けるのでオランダの風車のような風を生かす装置が名物になっているかもしれません。現在の諸島連合もこの風を生かせる帆船を作れたからこそ、造船大国となったのでしょう。南部は熱帯多雨気候、北部は西岸海洋性気候です。日本というより東南アジアやニュージーランドに近い気候でしょう。

最終更新:2015年08月15日 02:00
添付ファイル